赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 どうも、今回は諸事情により投稿が少し遅れてしまいました。今回で三十話目、これからも精進してまいります。

 さて今回はプール回、に見せかけたお披露目会。遂にヴォーティガーンの少女の名前を公開させて頂きます。『ヴォーティガーン』に合う女性名を色々考えたのですが、丁度いい情報がネットに転がっており、それを採用しました。皆さんのご意見も頂ければ幸いです。

 よろしければ今回もお気に入り登録や高評価、感想をお願いします。

 それでは第三十話、どうぞ!


『プール』と白き来訪者

 あの後、サーゼクスとグレイフィアは泊まった次の日に兵藤家を出立した。表向きは町の下見ということなのでお付きとしてついたイッセーと共にアルトリアも護衛としてついて回ったが、観光しているようにしか見えなかった。

 

 ゲームセンターでレースゲームに興じ(冥界にゲームセンターを設立したいらしい)、ハンバーガーショップで全種注文し制覇したり。(冥界にも有名チェーン店をオープンしたいと言っていた)、神社に行きお参りしたり(魔王の絶大な魔力で神社の神聖な力を払いのけてむりやり参拝した)と、いった感じに地上を満喫していった。イッセーは自分達には分からない視座があると言っていたが、アルトリアとしても何か意味があると信じたい。

 因みにスーツ姿のサーゼクスは兎も角メイド姿のグレイフィアを引き連れていたからか、目立って仕方なかった。

 

 

 さてそんな日から数日が経った、ある日。イッセーとアルトリア、リアス、アーシアの四人は駒王学園が学生寮として提供しているマンションの前にいた。

 

 

「おはよう」

 

 

 合流したのはゼノヴィアだ。彼女は兵藤家近くにあるマンションにて一人暮らしをしている。悪魔となった彼女は二度とヴァチカンの土を踏めない。そのためこの町に住むことになったが、流石に旧校舎で住むのはいやだったらしく学生寮としてマンションを借りることになった。

 

 

「アーシア、例の宿題は済ませたか?」

「はい。ゼノヴィアさんは?」

「私は…日本語で分からない所があってね。教えてくれないかな?」

「はい!お任せください!…でも漢字はまだちょっと」 

「私もだ。日本人というのはこんなにも複雑な文字を覚えていくのだから恐ろしい。経済大国の片鱗を垣間見るね」

「それは私が教えましょう。伊達に6年間日本で暮らしていません」

 

 

 雑談しているアーシアとゼノヴィア、そしてアルトリア。出会いは最悪だったが、なんだかんだで友情を深める事が出来ている。アーシアとゼノヴィアは同じキリスト教徒として、アルトリアとゼノヴィアは同じ聖剣使いとして、仲良くなるきっかけには欠かなかった。

 

 

「なるほど、これも主のお導きだね」

「はい、主のお導きだね」

「「アーメン…うっ!」」

「2人とも反射で祈っていますね……」

 

 

 こうやって、二人で何かあるたびにお祈りして、同時にダメージを受けている。この光景も何度目か、彼女達は何か感動する度に神に祈っている

が、祈りがもはや日常の一つなのだ。クスクス笑いながら、リアスが言う。

 

 

「さて、あなたたち。今日は私達限定のプール開きよ」

 

 

 そう、オカルト研究部は生徒会からの命令でプールの掃除を任されていた。本来なら生徒会の業務だが、先日のコカビエルの件で学園の修復などの後始末を引き受けた分、代わりにこちらの業務をオカルト研究部がやることになった。代わりにプールを一番最初に使っていい事を条件にリアスは掃除を快諾し、アルトリアは部員では無かったが先日はオカルト研究部側として戦った為、清掃に参加する事となった。

 

 学園に到着すると、朱乃、祐斗、小猫たちが既に到着しており、皆でプールに向かった。鍵を開けてプールに入ると状態は中々に酷かった。プールサイドには落ち葉が散乱し、火災時用に溜めてある水は濁り切り、水面には苔やら何やらが浮いている。

 

 

「さ、みんな!始めるわよ」

「「「ハイ、部長!」」」

 

 

 まずプールサイドやプールに浮く大きなゴミを魔術で水流を操作して回収、プールの水を抜き、ブラシとホースでプールに張り付いた苔などの汚れを落としていく。

 皆体操着姿でブラシを持ち、ゴシゴシと黒い汚れを落としていく。ふと横を見るとイッセーの顔がだらしなく歪んでいた。

 

 

「イッセー、ブルマ姿か水着の妄想も良いですが顔を引き締めて下さい。にやけ過ぎですよ」

「へっ!?あ、あぁ悪ぃ……」

 

 

 アルトリアの忠告にすぐ顔を引き締めるが、結局すぐに戻ってしまいにやけ顔が止まる事は無かった。

 

 

 

 

 清掃を終え、朱乃の生み出した水をプールに溜める。これで準備は終わった。皆が更衣室に向かい、一足早く着替え終わったイッセーが今か今かと待っていると、その時は訪れた。

 

 

「ほら、イッセー。私の水着、どうかしら?」

 

 

 まずはリアス。赤いビキニタイプの水着を着ており、イッセーに水着の感想を聞いていた。

 

 

 ブッ!

 

 

 リアスの水着を見たイッセーは、勢いよく鼻から血が飛び出る。平均的なビキニタイプよりも水着が少し小さく、中身が今にも胸が零れそうなデザインであり、イッセーには刺激が強すぎたようだ。

 

 

「あらあら。部長ったら、張り切ってますわ。うふふ、よほどイッセーくんに見せたかったんですわね。ところでイッセーくん、私のほうはどうかしら?」

 

 

 と、朱乃がやってくる。朱乃も同じくビキニタイプで、リアスと対極的な真っ白の水着だった。二大お姉様のビキニ姿にイッセーの興奮は止まらなかった。

 

 

「朱乃さん、最高です!」

「イッセー、私の水着はどうでしょうか?」

『私のチョイスなんだが、気に入ってくれたかい?』

 

 

 次に来たのはアルトリア。彼女もビキニタイプだが、白と青のクロスホルタービキニだった。露出は前2人より少々少ないが、セクシーさとオシャレさが入り混じった魅力を醸し出している。エロさと同時に甘酸っぱい可愛いという感情が湧き上がった。

 

 

「似合ってる!ナイスチョイスだぜ、エムリス!」

「イッセーさん、わ、私も着替えて来ました」

 

 

 イッセーが振り向くとそこにはアーシアがもじもじしながら立っていた。アーシアは学校指定のスクール水着だ。胸には「あーしあ」と名が書かれていた。

 

 

「アーシア、かわいいぞ!お兄さん感動だ!よく似合ってる!」

「えへへ。イッセーさんにそう言われると嬉しいです。小猫ちゃんも同じスクール水着なんですよ」

 

 

 そう言われイッセーが目線を向けると、小猫もまたアーシアと同じくスクール水着を着ていた。胸には「こねこ」とかかれており、その容姿も相まってアーシア以上に似合っていた。まさにマスコットといった様子だ。

 

 

「…卑猥な目つきで見られないのもそれはそれって感じでちょっと複雑です」

 

 

 何やらぶつぶつと残念そうに呟いているが、小猫のような少女に本気で欲情するのは流石に非常識と言わざるを得ない。イッセーは変態だが、常識は持ち合わせていた。

 すると、リアスはそんな小猫の肩に手を置き、ニッコリ微笑みながら言う。

 

 

「それでね、イッセー。悪いのだけれど」

「はい?」

 

 

 

 

 

「「いち、に、いち、に」」

 

 

 イッセー、そしてアルトリアは今小猫とアーシアの手を持って、彼女たちのバタ足の練習に付き合っていた。先ほど、リアスから

 

 

「小猫とアーシアは泳げないの。イッセー、そしてアルトリア、相手をしてあげてちょうだい」

 

 

というお願いをされた。当の二人は「ぷはー」と時折息継ぎしては、一生懸命にバタバタと足を動かしている。水泳部の助っ人も務めるアルトリアと違いイッセーは泳ぎはそこまで得意ではない。が、人に教えるぐらいなら問題ない。

 

 

「ぷはー。…先輩、付き合わせてしまってゴメンなさい…」

 

 

 小猫ちゃんがイッセーに申し訳なさそうに言っている。

 

 

「いやいや、別にいいさ。女の子の泳ぎの練習に付き合うってのも面白くて俺は全然問題ないよ」

「すみません、アルトリアさん。アルトリアさんも泳ぎたいでしょうに……」

「構いません。じきに水泳部の助っ人で泳ぐ事になりますから。それにリアスのことです、夏にはグレモリー家のプライベートビーチに行く事になるでしょう。その時に一緒に泳ぎましょうか」

「はい!行きましょう!」

 

 

 そのままバタ足練習を続ける。二人ともまだまだ力みがあるため手は離せない。

 

 

「ととと、端に着いたよ」

 

 

 二十五メートルをバタ足で泳ぎ切った小猫は勢いあまって、イッセーにぶつかってしまう。偶然にもそれが抱き着いているかのような態勢になってしまった。これはいつものパターンで殴られるやつかと、すかさず魔術で水のクッションを作ろうとしたが、小猫の反応は違っていた。

 

 

「…イッセー先輩は、意外にやさしいですよね、…どスケベなのに」

 

 

 イッセーの腕の中に抱かれ、春頃より逞しくなった胸板にくっ付く小猫。頬を赤らめながら彼の対応を褒めていた。小猫の対応がかなり軟化している。

 

 

「ま、まあ、俺だって後輩に何かしてあげたいしさ。いつも小猫ちゃんには迷惑かけているから、こいうときはぜひとも手伝いたいね」

 

 

 そう言い、イッセーは小猫の頭を撫でている。すると

 

 

 ザバン!

 

 

 誰かがプールに飛び込む音が聞こえてくる。他のコースでリアスが優雅に泳いでいた。すると、イッセーが急に水に潜っていく。

 

 

『Transfer!!』

 

 

 イッセーが神器を発動し、自身の顔に譲渡した。魔術で水面を覗くとイッセーの目が緑色に発光している。自分の目を強化して、リアスの泳ぐ姿を視姦しているのだ。せっかく小猫も見直したというのにこの対応、揺るがないというかそれはそれ、という事か。

 そう思い小猫を見ると、小猫は手をチョップの形で振り上げていた。

 

 

 ゴッ!

 

 

 そして、そのチョップは容赦なくイッセーの頭に振り下ろされた。ゴボッ!っと水中でイッセーの息が漏れ、ザバッと上がってくる。当然の帰結だ。

 

 

「…まだ練習は終わってませんよ?」

 

 

 不機嫌な様子の小猫、イッセーは誤魔化すように咳払いしつつ、小猫に言う。

 

 

「よし、練習を続けようか」

「全く……アーシア、続けましょう。次は魔術で支えます、自分で身体を伸ばして泳いでみましょう」

「ハイ、アルトリアさん」

 

 

 

 

「…きゅぅぅぅぅ疲れましたぁ」

「大丈夫ですか?アーシア」

 

 

 プールサイドに敷いたシートの上でアーシアがグテっと寝転がっていた。バタ足の練習に始まり、魔術を用いた泳ぎ、クロールなど手伝っていたが、予想以上に張り切っており、釣られてアルトリアと共にコースを何度も往復してしまった。水泳は水の抵抗によって想像以上に体力を使う。未だに体力不足なアーシアにはキツかったのだろう。今はパラソルの下で身体を休めている。

 一方の小猫はさすがの体力であり、今ではプールサイドの日陰で本を読んで休んでいる。アルトリアとイッセーもビニールシートに座っているが、馴れない事をしたからかイッセーの方は疲れが見える。

 

 

「アルトリアは平気そうだな……」

「私の魔術は流れを操作するのも得意です。空気と水流操作の一環で水中で何日も過ごした事もあります。文字通り鍛え方が違いますよ」

「…すーすー」

 

 

 寝息が聞こえ横に見れば、アーシアが疲れて眠ってしまっていた。

 

 

「おやおや、日焼け止めも塗らずに……」

 

 

 アルトリアはアーシアに手のひらを向け、日光避けの魔術で膜を張る。

 

 

「アーシア、寝ちゃったな」

「えぇ、こうしてプールで泳ぐのは初めてらしいですから。はしゃいでしまったのでしょう」

 

 

 天涯孤独なアルトリアにとって、アーシアは妹か娘のような存在だった。心優しく、お人好しで、世間知らずで、それでいて力強い芯を持っている。出会いの影響もあり、イッセー同様アルトリアもまたアーシアに強い庇護欲を抱いていた。彼女は私が守護らねばならぬ、そう思うアルトリアだった。

 

 

『キー!キー!』

 

 

 すると赤いコウモリがイッセーの元へ飛来する。それは、リアスの使い魔だった。使い魔が翼で指差すの方を見ると、リアスがイッセーに向かい小瓶を持ちながら、手招きしていた。イッセーはそれを見ると、先程までの疲労は何処へやら。驚きの速さでリアスの元へ走っていった。やはりエロが絡んだイッセーは違うな、と呆れ半分で見つめる。

 

 オイルの瓶を渡されたイッセーがリアスにオイルを塗り始める。憧れのリアスにオイルを塗れるとはイッセーも本望だろう。そこへ、朱乃がやってきた。どうやら二人にちょっかいを掛けている様だ。何か言い合っているらしく、このままではケンカに発展しそうなので仲裁へと向かう。あぁなった女同士の喧嘩を仲裁できる男はそういない。

 

 

「リアス、アケノ、そこまで……」

 

 

 その時だ。リアスの手に赤黒い魔力弾が生成され、朱乃の後方へ射出される!

 

 

「朱乃。ちょっと、調子に乗りすぎよね?あなた、私の下僕で眷属だということ、忘れているの?」

「あらあら。そんな風にされてしまうと私も困ってしまいますわ。──リアス、私は引かないわよ?」

 

 

 二人が魔力を纏いながら戦闘態勢に入る!マズイ、二人ともやる気だ!

 

 

「ユウト!」

「アーシアさんは任せて!」

 

 

 すかさずプールから上がった祐斗に指示を飛ばし、眠っているアーシアを保護させる。すかさずエムリスを起動させ、魔力を高める二人を見やる。鎮圧するのは容易だ。だがそれでは折角綺麗にしたプールが滅茶苦茶になってしまう。

 

 

「第一段階、応用限定解除!」

「あなただって処女じゃないの!」

「あら、そんなこと言うなら今すぐイッセーくんに処女を貰ってもらうわ」

「ダメよ!イッセーには私の処女を貰ってもらうの!」

 

 

 処女、という事はこの二人はイッセーと過ちを犯したがっている。あの二人がここまで熱を挙げるとは驚きだが、そんな話題でこれ以上プールを滅茶苦茶にされる訳にはいかない。そもそも年頃の娘が「処女処女」と叫ぶものではない。

 

 

「リアス!アケノ!何をやっているのですか!」

「止めないでアルトリア!いい加減朱乃に眷属悪魔の主従を叩き込まないといけないわ!」

「ごめんなさいね、アルトリアちゃん。私、彼のことをリアスに渡したくありませんの」

 

 

 完全にヤル気だ。普段なら互いに行動を制し合う2人が完全に修羅場を形成している。然も実質的なアドバイザーであるアルトリアの言葉に取り合わないとは相当だ。

 

 

「だいたい朱乃は男が嫌いだったはずでしょう!どうしてよりによってイッセーにだけ興味を注ぐのよ!」

「そういうリアスも男なんて興味ない、全部一緒に見えるなんて言ってたわ!」

「男性観の変化を叫ぶよりプールの変貌に気を遣ってください!」

 

 

 赤黒い滅びの魔力と、黄色い雷の魔力が飛び交う。プールを壊させる訳にはいかないと、アルトリアは着弾予定地点にシールドを張り破壊を防ぐ。

 

 

「そもそも私達の中で一番イッセーと仲が良いのはアルトリアじゃない!イッセーの向ける視線がアルトリアだけ違うわ!」

「ハイ!?」

「そうですわ!先程話してる時のイッセー君の穏やかな顔!まさかアルトリアちゃんは既にイッセー君と……!」

「ありません!というか私に矛先を向けないで下さい!」

 

 

 まさか自分に矛先が向くとは思わず、2人の攻撃を大楯で防ぐ。その一撃は今まで模擬戦などで受けてきたモノより、心無しか強く感じた。迫真というか、鬼気迫るというか、恋する乙女の執念恐るべしである。

 我を忘れてヒートアップした2人をなんとか抑える。とそんなことをしている間に、イッセーは姿を眩ませていた。

 

 

「!イッセーがいないわ」

「あの子、どこに行ったのかしら」

「……!いました。女子更衣室の中です!」

 

 

 パスを頼りに行方を追うと、そこにはゼノヴィアの気配もあった。そういえばプールに来ていない。今までどこで何をしていたのやら。

 

 

「──抱いてくれ。子作りの過程をちゃんとしてくれれば好きにしてくれてかまわない」

「「「!?」」」

 

 

 中に一緒にいるであろうゼノヴィアからとんでもない発言が飛び出した!先ほどまでの処女云々を飛び越えて子作りと言い出したのだ!

 

 

「……イッセー?これはどういうことかしら?」

 

 

 扉を開けはなち、腕を組んだリアスが眉を歪めながらイッセーに問いかける。彼女にしてみれば愛する者を賭けてライバル二人と熾烈な争いを繰り返している最中に、当の相手が新参の少女と逢引きした挙句に子作りをしようとしているではないか。到底許せるものではない。

 

 

「あらあら。ずるいわ、ゼノヴィアちゃんったら。イッセーくんの貞操は私が貰う予定なのですよ?」

「うぅ、イッセーさん……。酷いです……。わ、私だって言ってくれたら……」

「……油断も隙もない」

「イッセー、私があの2人を相手している間に……」

 

 

 アルトリアと朱乃、着いてきたアーシアと小猫からそれぞれ非難の言葉が飛ぶ。

 

 

「どうした?イッセー、さあ、子供を作ろう」

 

 

 しかしそんな事はお構い無しにゼノヴィアは子作りを迫る。目標に真っ直ぐというか、信仰という枷が外れたからか、かつてでは考えられないほどに猪突猛進だ。「子供を作ろう」という言葉を聞き、女性陣の顔色が変わる。すかさずリアスと朱乃がイッセーの肩を掴んだ。

 

 

「部長!こ、これには訳

「わかっているわ。私が悪いの。性欲過多なあなたから少しでも目を離した私のせいよね。でもね、イッセー。子供を作ろうってどういうことかしら?」

「そうですわね。ちょっと、その辺の男心を聞きたいものですわ。どういう経緯があれば子供の話になるのかしらね?」

 

 

 リアスも朱乃も笑顔を浮かべている。いや、笑顔を貼り付けている。目元はこの男をどうしてくれようかと言わんばかりだ。そしてイッセーの身体をふわりと小猫が持ち上げる。

 

 

「…連行です」

「ア、アルトリア、た、助け……」

「安心して下さい。ゼノヴィアにも話を伺います。それぞれにたっぷりと事情聴取を掛けるので」

「た、助かった……ってそれ俺も受けるじゃねぇか!」

「むぅ、部長に副部長、アーシアに小猫。最大の壁はアルトリアか。だがライバルが多いがそれだけ燃えるというもの。イッセー、隙あらば私は君と子作りをするつもりだから覚悟しておいてくれ」

 

 

 この流れ、ゼノヴィアが暴走したのだろう。彼女を後押しした身としてはイッセーに申し訳ない気持ちがあるが、それはそれとして連行する。

 その後2人はプールサイドでこってり絞られ、正座で説教され続けたのだった。

 

 

 

 

 

 あの後それぞれに事情聴取を行った結果、ゼノヴィアが信仰に変わる新たな生きがいの一環として子作りを申し込んだことがわかった。曰く、 “二天龍たるイッセーとの子なら強い子が生まれてくれるはず”との事である。

 然も事情聴取の途中に、 “アルトリアとの方が身体の相性が良さそうだから是非イッセーと子作りしている様子を見せてくれ”と言い出した結果、今度はアルトリアが標的になった。

 

 

「はぁ、酷い目にあったぜ……ん?」

 

 

 結局説教も途中でうやむやになり、先に帰ろうとイッセーが校門へ向かおうと校舎を出た時、視界に銀色が映り込む。

 そちらを見れば、校門の所に濃いダークカラーな銀髪の美少年と黒髪ロングの美少女が立っていた。少女の目元は大きめの帽子に遮られて見えないがその光景は一瞬、絵画の一場面かと思ったほどだ。年齢はイッセーと同じぐらいだろうか。ただ校舎を見上げていただけなのに、何故かそれだけの行為が幻想的に見えた。

 

 ふと、その少年がイッセーに気付いたのか、視線をこちらへ向ける。その瞳は引き込まれるぐらいに透き通ったアイスブルーの蒼い眼だった。少年は天使のような微笑みで話しかけてくる。

 

 

「やあ、いい学校だね」

「えっと…まあね」

「……」

 

 

 イッセーは彼に対抗しようと無理矢理笑顔を作ってさわやかに答えていた。

 

 

「俺はヴァーリ。白龍皇、『白い龍(バニシング・ドラゴン)』だ」

 

 

 っ!イッセーは目の前の少年の発言に耳を疑った。今こいつなんて言った。

 

 

「ここで会うのは二度目か『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』赤龍帝。兵藤一誠」

 

 

 彼の蒼い瞳がまっすぐイッセーに向けられる。その瞳を向けられたイッセーも相手が何者なのか理解し、眼を見開いたまま固まってしまう。

 その瞬間、左手に強い痛みを感じた。燃える様な感覚と共に、左手が赤く変色し、ドラゴンの形に変化した。つい先日アルトリアや朱乃にドラゴンの気を吸い出して貰ったばかりだというのに、ドラゴン化が進行している。

 

 

「目的はなんだ?俺か、それともアルトリアか!?」

 

 

 身構えるイッセーに『白い龍(バニシング・ドラゴン)』、ヴァーリは不敵な笑みを見せる。

 

 

「そうだな。たとえば、俺がここで君に魔術的なものを掛けたり」

 

 

 ヴァーリが手をイッセーの鼻先に向けようとした。その時、

 

 

 ザッ!

 

 

 三本の剣がヴァーリの首元に刃を突き付けた。瞬時に現れたアルトリアと祐斗、ゼノヴィアが聖剣エクスカリバーと聖魔剣、聖剣デュランダルをヴァーリに向けている。全員が『騎士』の神速、若しくはそれに匹敵する速度で距離を詰めていた。

 

 

「何をするつもりかわからないけど、冗談が過ぎるんじゃないかな?」

「ここで赤龍帝との決戦を始めさせるわけには行かないな、白龍皇」

「白き龍よ、ここは引きなさい」

 

 

 3人はドスの効いた声音で忠告する。しかし、ヴァーリは少しも動じていなかった。

 

 

「止めておいたほうがいい。手が震えているじゃないか」

 

 

 ヴァーリの指摘は当たっていた。ピタリと彼の首周りに向けられた刃。だが実際には僅かに震えている。全員が彼我の実力差を分かっているのだ。

 

 

「誇っていい。相手との実力差が分かるのは、強い証拠だ。俺と君達との間には決定的なほどの差がある。あの一撃が放たれるまでコカビエルに勝てなかった君達では、俺には勝てないよ」

 

 

 まるで歯牙にも掛けていない。彼にとって警戒するに値したのはあの時イッセーとアルトリアの2人で放った一撃くらいなのだろう。実力差がわかっているからか、祐斗、ゼノヴィアは剣を引き、アルトリアもまた剣を待機形態に戻した。

 

 

「遊びすぎだ、ヴァーリ。お前がコイツらにやられるとは思わないが、下手に奴等に殺気を向けるな。またシェムハザかバラキエル辺りからグチグチ言われるぞ」

 

 

 その声はヴァーリの後ろから発せられていた。ヴァーリと共にいた白いワンピースの少女は被っていた帽子を取り、呆れ顔でヴァーリに忠告した。

 

 

「お前、あの時アルトリアの攻撃を防いだ!」

「安心しろ、ロウィーナ。別に彼らとここでやり合うつもりは無いさ。心配性だな」

「バディが戦闘狂だからな。自然と周りに気を使うのさ」

 

 

 ロウィーナ、それが彼女の名前か。アルトリアが彼女に視線を向けると、彼女は挑発するかの様な表情を浮かべ、ヴァーリの隣に並び立つ。

 

 

「私も自己紹介させて貰おう。私の名はロウィーナ、ロウィーナ・ヴォーティガーン。周りには『奈落の魔竜』と呼ばせている。間違っても『卑王』などという言葉を使ってくれるなよ?」

「ロウィーナ、ヴォーティガーン……」

 

 

 黒い髪に琥珀色の瞳、此方を品定めする目線にアルトリアは嫌な感覚を覚えたが何かを察したのか、すぐにイッセーに目線を移す。ジロジロと彼の各所を観たのち、左腕に目線を向け、ため息を吐いた。

 

 

「正直言って、期待はずれだな。アザゼルは喜びそうだが、この男は強くならないだろう」

 

 

 その声色は明らかに此方を見下していた。

 

 

「まぁ、そう言ってやるな。ところで、兵藤一誠、アルトリア・ペンドラゴン。君達はこの世界で自分が何番目に強いと思う?」

「は?」

「いきなり何を……」

「まだまだ未完成な君達は上から数えた場合、四桁、千から千五百の間ぐらいだ。いや、赤龍帝はもっと下かな?」

 

 

 相手の真意が分からない。強さのランク付けの様だが何が言いたいのか分からなかった。

 

 

「この世界は強いものが多い。『紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)』と呼ばれるサーゼクス・ルシファーでさえ、トップ10内に入らない」

 

 

 サーゼクスをも超える強者、恐らく各陣営、特にトップクラスの神の事だろうが、ヴァーリが指を一本立てる。

 

 

「だが、一位は決まっている。不動の存在が」

「?誰のことだ?自分が一番とでも言うのかよ」

 

 

 イッセーの問いに彼は肩をすくめた。

 

 

「いずれわかる。ただ、俺じゃ無い。ロウィーナでも無い。それと、兵藤一誠は貴重な存在だ。十分に育てた方がいい、リアス・グレモリー」

 

 

 蒼い瞳から放たれた視線が4人の後方へ向ける。そちらを向けば、そこにはリアスが立っていた。その表情は明らかに不機嫌だった。リアスの周りにはアーシア、朱乃、小猫もいた。そして皆、戦闘態勢に入っていた。

 

 

「白龍皇、なんのつもりかしら?貴方が堕天使と繋がりを持っているのなら、必要以上の接触は」

「『二天龍』と称されたドラゴン。『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』と『白い龍(バニシング・ドラゴン)』。過去、関わった者はろくな生き方をしない。あなたはどうなるんだろうな?」

「社会的、物理的な死。コミュニティからの追放、若しくはコミュニティの崩壊。二天龍の影響で起きた滅びは数え切れん」

「っ!」

 

 

 2人の言葉にリアスは言葉を詰まらせていた。何か心当たりがあるのか、二天龍について調べたのだろうか?

 

 

「今日は別に戦いにきたわけじゃ無い。ちょっと先日訪れた学舎を見てみたかっただけだ。アザゼルの付き添いで来日していてね、ただの退屈しのぎだよ。ここで『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』とも『騎士王の現し身』とも戦わない。それに、俺達もやることが多いからさ」

 

 

 『白い龍(バニシング・ドラゴン)』ヴァーリはそれだけ言い残すと、『奈落の魔竜(ヴォーティガン)』ロウィーナと共にこの場を後にしていく。2人が去ってもまだ緊張の糸は取れない。全員が各々の武器を閉まったが、皆、表情を緩和させることはなかった。

 アザゼル、そして『白い龍(バニシング・ドラゴン)』に『奈落の魔竜(ヴォーティガン)』。予想だにしない者達が集いつつあった。




 ヴォーティガーンの情報 その三

 ロウィーナ。その名を付けたのはヴァーリとアルビオンである。



 ブリテンのとある湿地帯。そこに一人の少年がいた。ダークカラーな銀髪と、蒼い瞳。その肩には白いドラゴンのぬいぐるみが乗っかっている。


「アルビオン、此処なのか?」
『そうだ、ここから強い、懐かしい気配を感じる』


 薄暗く、ジメジメした湿地帯。こんなところに何があるのか。そう思った時、ふいに大きな気泡が浮かぶ、気泡は次々と立ち上り、次第に水底から影が浮上してくる。何か来る!そう身構えたヴァーリだったが、浮かんできたのは魚でも獣でも、魔獣でもなかった。黒い髪をした、自分と同じくらいの少女だった。
 体に付いた水を振り払い、辺りを見渡す。そして、少女とヴァーリの目が合った。


「……白き、龍、アルビオン?」
「…そうだ、俺はヴァーリ。『白い龍(バニシング・ドラゴン)』アルビオンを宿す者だ。お前は?」
「……ヴォーティガーン、我が名は、ヴォーティガーン」
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