絶花とアルトリアの邂逅とか、天聖から見たエクスカリバー評とか、まぁ、まだネタの構想だけですが。
それとヴォーティガンからヴォーティガーンに変更しました。音の感じから「ー」を省いてましたが、やっぱ元の設定に寄せた方が良いと思い、此方に修正しました。一通り直しましたが、直っていない部分があったら誤字報告などして頂けると幸いです。
よろしければ今回もお気に入り登録や高評価、感想をお願いします。
それでは第三十一話、どうぞ!
「イッセー、アーシアちゃん。あとでお父さんと一緒に行くからね。アルトリアちゃんにも伝えておいて」
遂に訪れた授業参観の日。兵藤三希は朝から気合いを入れておめかしし、イッセー達を送り出した。尤も、彼女や夫である五郎の目的はアーシアの姿を見る事だが。我が子と親しい少女というのはアルトリアという前例があるものの、アーシアは謂わば「娘」だ。寝食を共にする彼女の姿をこの目に納めたい。中々子宝に恵まれなかった二人にとってアーシアは実の子も同然なのだ。
さて今回のイベント、授業参観とはいうが、正確には「公開授業」だ。保護者が来ていいのは当然だが、中等部の学生が授業風景を見学してもいいことになっている。更にその中学生の保護者も同伴で見学可能という、かなり自由なスタイルと取っている。
「…気乗りしないわね」
リアスがため息を吐きながら言う。情愛の強いグレモリー家だけに彼女の父ジオティクスと、兄サーゼクスはリアスを溺愛している。年頃の少女であるリアスにはそれが恥ずかしいのだろう。そもそも紅髪のイケメンが二人も教室を訪れればそれだけでかなりの騒動になる。リアスとしてはせめて目立たないようにはしてほしいと心の底から思っていた。その後、学校の玄関でリアスと別れ、イッセーとアーシアは教室でアルトリアと合流した。
◆
授業が始まり、解放された後ろの扉からクラスメートの保護者達が入ってくる。最初の授業は英語。英国出身のアルトリアにしてみれば国語と同義だ。授業参観だからかいつも以上に気合いの入った先生が袋に入った長方形の物体をみんなに配る。
それは紙粘土だった。おかしい、一限目は英語の筈。自分は美術の教室に入ってしまったのだろうか?怪訝に思うクラスに先生が嬉々に言う。
「いいですかー、今渡した紙粘土で好きなものを作ってみてください。動物でもいい。人でもいい。物でもいい。自分が今脳に描いたありのままの表現を形作って下さい。そういう英会話もあります」
いや、その理屈は可笑しい。完全に美術、若しくは図工の授業だ。そんなツッコミを無視して先生は授業を始めた。
「レッツトライ!」
Let's try!ではありませんよ先生。そんなツッコミを他所に皆が紙粘土に向き合う。
「む、難しいです」
アーシアを見るともう制作中だった。日本の生活にもすぐ慣れたあたり、順応力が高いのだろうか。
「アーシアちゃん、ファイトよ!」
「アーシアちゃん、かわいいぞ!」
聞き覚えのある声に後ろに振り向くと、いつの間にか兵藤家夫妻が立っていた。そういえばイッセーから三人の授業風景を見に行くと言われた事を思い出す。二人は周りの迷惑にならない範囲でアーシアにエールをおくっていた。アーシアが二人に気がつき振り向いて嬉しそうに手を降る。
周りを見れば既に何人かが紙粘土をこねている。イッセーはアルトリア同様に後ろの両親を見ていた。さていつまでも驚いていられないと、アルトリアも紙粘土に手を付ける。
「 (しかし何を作りましょうか。頭に描いたもの………) 」
アルトリアの頭の中に様々な思いが巡る。先の『
「 (もっと深く、心の底から感じる物を……) 」
深呼吸し、瞑想と呼べるほどに集中する。周囲の雑音が消え、自身の意識に集中する。
頭の中に一つの情景が浮かび上がる。それは何処かの草原。夕暮れの中、石の台座に突き刺さった一本の剣。そこに一人の少女が立っている。その後ろにはフードを被った男が立つ。
『………………。』
『……………。…………………。』
男が少女に何かを問いかける。その問いに少女は淀みなく答え、そして剣の柄に手を伸ばす。
これがいつの記憶なのか、なんの場面なのかは分からない。だが、何故か心に強く突き刺さるその光景を形にせねば。その思いだけが彼女の中を巡る。自然と体は動いた。
自分によく似た少女
細身の身体 自分と同じ髪型
手には剣
細身の剣を天に掲げるその姿は、まるで伝説の一場面のように…………
「ペンドラゴンさん!」
ハッとする。彼女の肩を、先生が叩き呼び掛けた。気づけば時計の針は少し進んでいた。しまった、記憶が無い。いつの間にか寝てしまったのだろうか、こんな大勢が見ている前で居眠りなどクラスの恥だ。
焦って周りを見渡したのち、自分が夢中なって粘土を作っていたことに気づく。
「素晴らしい出来です、ペンドラゴンさん!君に芸術の才能もあったとは驚きだ!」パチパチパチ
彼女の机の上には先ほどまで見ていた光景が形作られていた。色は紙粘土の色のままだが、台座から引き抜いた剣を掲げるその姿は、まるでアーサー王伝説の始まりのような……
「 (あれは、もしや過去の出来事?リアスが私には霊媒の才能があると言っていましたが、無意識に降霊でもしていたのでしょうか?それとも過去のアーサー王の記憶が私に刻み込まれているとでも?いえ
オォォォォォォッ!
自分の作り上げた物に疑問を抱いていると、すぐ近くで歓声が巻き起こった。何事かと振り返ってみると、その歓声の中心はイッセーだった。見ると、イッセーの作ったものに皆が注目していた。
それは裸婦像だった。いや、正確にいればリアス・グレモリーの裸婦像だった。その出来栄えは学生の領域を超えて、芸術作品、若しくはフィギュア並みの精度をしていた。同性としてリアスの裸を何度か見たが、ほぼ完全再現と言っていい。
「兵藤君!君にもまさかこんな才能があるなんて!今日は二つも素晴らしい才能に出会えた!あぁ、諦めていた芸術家への夢が燃え上がってきたぞ!」
「イッセー、それと俺の芸術作品を交換してやってもいいぞ」
「いや、俺は5000円出す!」
「なら私は7000円出すわ!」
「10000円!」
「13000!」
「20000!!」
英語の先生の意外な昔の夢が判明したが、公開授業はイッセーの作品によってオークション会場へと変わってしまった。こんなのでいいのかと後ろをみれば、兵藤夫妻は息子の傑作に喜びを隠せないでいる。なんだかんだ言っても、彼等にとっては血を分けた可愛い息子なのだ。
その姿を微笑ましく、羨ましく思っていると、隣の教室から国語(日本語)の先生が怒鳴り込み、結局オークションはお流れとなった。
◆
昼休みに入ると、皆はそれぞれ友達や家族と思い思いに談笑している。そんな中、イッセー、アルトリア、アーシアはリアス、朱乃とベンチに座っている。イッセーはクラスメートからの作品への魔の手をかいくぐり、リアスに完成品を魅せに来たのだ
「部長!俺が作った粘土、見てください!」
「これって、私?」
「あらあら、凄い出来栄えね」
リアスはイッセーが作り上げたミニフィギュアを受け取り、朱乃と二人でその出来栄えに感心する。
「良くできてるわね」
そう言い、リアスは微笑みながら手でさわっている。イッセーが自分をモデルにしてくれたことが嬉しいのか、大事そうに撫でている。
「あらあら。流石、毎日部長の体を見て触ってるイッセーくんですわね」
朱乃も像の出来に驚きながらも微笑を浮かべていた。
「私も今度作ってもらおうかしら」
「!それって、脱いでってことですか!?」
「再現するためなら脱ぎますわよ、勿論おさわり有りで」
「マジですか、朱乃さん!」
「「「ダメ(よ)(です)!!」」」
朱乃の言葉に食いつくイッセー。すると、そんなイッセーの頬をリアスが引っ張る。そしてアーシアもまたアルトリアと共にイッセーを止めた。ただでさえリアスやアーシア、そしてアルトリアとの爛れた関係が噂されているのに、朱乃まで加われば収集が付かなくなってしまう。
「ところでリアス、サーゼクス様はいらっしゃったのですか?」
アルトリアからの質問にリアスは額に手を当ててため息をついていた。
「ええ、父も一緒に来たわ」
大分疲れている様子だ。どんな授業になったのか気になるところだが、聞かない方が良いだろう。こういう時に踏み込むのは良くない。
そんなリアスの悩みなぞ知った事かとばかりに謎の地響きが聞こえる。どうやら学園の男子たちが体育館に向かって走っているようだ。
「何事ですか……?」
「みんな!」
「木場、どうしたんだよ」
「それが学校中大騒ぎなんだ。なんでも魔女っ子の撮影会があるとかで……」
「「!?」」
◆
カシャカシャ!
フラッシュがたかれ、カメラを持った男たちが体育館に集まっていた。外からでは何を撮っているかは分からなかった。祐斗の話では「魔女っ子」らしいが……
人だかりの中心には一人の美少女がアニメキャラのコスプレをしている。『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』のミルキーのコスプレだ。彼女がステッキを回すと、カメラを持った男たちが興奮して写真を撮る。イッセーもまたチラチラ見えるパンツに興奮して写真を撮ろうとスマホを構えていた。すると、人垣を越えてきたリアスたちが中心にたどり着き、驚愕の顔を浮かべる。
「なっ!?」
「あ、アレは!」
中心にいたツインテールの美少女はリアスやアルトリアのよく知る人物だった。何故ここに?という疑問は彼女の家族を考えれば頷けるという答えに変わった。
「オラオラ!天下の往来で撮影会たーいいご身分だぜ!」
そんなことを考えていると生徒会の一員である匙が人だかりに飛び込んでくる。生徒会の他女子生徒も匙に続いて中心の撮影現場にやってくる。
「ほらほら、解散解散!今日は公開授業の日なんだぜ!こんなところで騒ぎを作るな!」
匙の仕事ぶりは手早く、あれほどの人だかりが蜘蛛の子を散らすようにいなくなっていく。撮影をしていた男子生徒も匙にどつかれて渋々去っていった。残ったのはオカルト研究部と生徒会、そして問題を起こした渦中の人物だけだった。
「あんたもそんな恰好をしないでくれ。って、もしかして親御さんですか?そうだとしても場に合う衣装ってものがあるでしょう。困りますよ」
「えー、だって、これが私の正装だもん☆」
匙が注意するが、彼女はかわいらしくポーズを取り聞く耳を持たない。その態度に奥歯をギリギリ鳴らす匙だが、リアスを確認すると頭を下げる。
「これはリアス先輩。ちょうどよかった。今魔王様と先輩のお父様をご案内していたところなんですよ」
匙が廊下の後方へ顔を向けると、ソーナ・シトリー会長先導の元、紅髪の男性二人が近づいてくる。
「何事ですか?サジ、問題は簡潔に解決しなさいといつも言って……!?」
厳格なソーナがそこまで言いかけた後コスプレ少女を見かけると、言葉を止めた。
「ソーナちゃん!見つけた☆」
少女はソーナを見つけると嬉しそうに抱き着いていく。対するソーナは完全に固まっていた。
「(まさか、会長の知り合いか?匙の奴対応に困ってるな。ん?二人とも、どこか似ているような気が……)」
疑問に思ったイッセー。サーゼクスが構わずコスプレ少女に声を掛ける。
「ああ、セラフォルーか。君もここへ来ていたんだな」
「セラフォルー…?その名前ってもしかして……」
「あの方は現四大魔王のお一人、セラフォルー・レヴィアタン様。そして、ソーナのお姉様よ」
「えええええええええええええッ!?」
イッセーの叫び声が廊下に響く。そう、このコスプレ少女こそ、現魔王にして、元シトリー家次期当主。かつてのクーデターにおいてサーゼクスと共に活躍した英雄、セラフォルー・レヴィアタンだ。
「セラフォルーさま、お久しぶりです」
「あら、リアスちゃん☆おひさ~☆元気にしてましたか?」
同じ魔王にも関わらず、サーゼクス以上にノリが軽い彼女にリアスもまた反応に困っていた。
「は、はい。おかげさまで。今日はソーナの授業参観に?」
「うん☆ソーナちゃんったら、酷いのよ。今日の事、黙ってたんだから!もう!お姉ちゃん、ショックで天界に攻め込もうとしちゃったんだから☆」
「お久しぶりでございます、魔王セラフォルー・レヴィアタン様。外交を司る貴方様がその様な事を……」
「もう!アルトリアちゃん固過ぎ☆冗談だよ!攻め込むとしても『神の子を見張る者』にだから☆」
笑顔でとんでもない事を吐くセラフォルーにさしものイッセーも動揺を隠せないでいた。
「イッセー。ごあいさつなさい」
リアスに促され、イッセーは頭を下げて挨拶する。
「は、はじめまして、兵藤一誠。リアス・グレモリー様の下僕『
「初めまして☆私、魔王セラフォルー・レヴィアタンです☆『レヴィアたん』って呼んでね☆」
ピースサインを横向きでチェキする魔王様。
「ねぇ、サーゼクスちゃん。この子達が噂のドライグちゃん?」
サーゼクスを『ちゃん』付け呼びするセラフォルー。同格の魔王様だからか、同年代の悪魔だからか。中々に対応がフランクだ。
「そう、彼が『
「あらあら、グレモリーのおじさま」
「ふむ。セラフォルー殿。これはまた奇抜な衣装ですな。いささか魔王としてはどうかと思いますが…」
「あら、おじさま☆ご存じないのですか?今この国ではこれが流行りですのよ?」
「ほう、そうなのですか。これは私が無知だったようだ」
「ハハハハ、父上。信じてはなりませんよ」
そんな会話を繰り広げるグレモリー親子とセラフォルー。
「ぶ、部長、想像を遥かに超えて軽いノリなんですけど、そのレヴィアタン様が…」
イッセーの困惑ぶりにリアスも「ゴメンなさい」と謝ってくる。初見でこれに困惑しない人も中々いないだろう。彼女の職務などを聞いていれば尚更だ。
「言うのを忘れていた。いえ、言いたくなかったのだけれど、現四大魔王様方はどなたもこんな感じなのよ。プライベート時軽いのよ、酷いぐらいに」
ため息を吐きながらリアスは言う。実際のところその通りだ。現魔王はシスコン2名、内1人はコスプレ趣味、怠け者と、皆有能な統治者ではあるが、私生活などに癖がある。彼女は特に顕著だろう。
「ソーナちゃん、どうしたの?お顔が真っ赤ですよ。せっかくお姉さまである私と再会なのだから、もっと喜んでくれてもいいのですよ?『お姉さま!』『ソーたん!』って抱き合いながら百合百合な展開でもいいと思うのよ、お姉ちゃんは!」
そう言ってセラフォルーはうつむくソーナの顔を覗き込む。ソーナはその対応に恥ずかしさから身体をプルプルと震わせている。
「…お、お姉さま、ここは私の学舎であり、私はここの生徒会長を任されているのです…。いくら、身内だとしてもお姉さまの行動は、あまりに…。そのような格好は容認できません」
「そんな、ソーナちゃん!ソーナちゃんにそんなことを言われたら、お姉ちゃん悲しい!お姉ちゃんが魔法少女に憧れているって、ソーナちゃんは知ってるじゃない!きらめくスティックで天使、堕天使をまとめて抹殺なんだから☆」
「お姉さま、ご自重ください。魔王のお姉さまがきらめかれたら小国が数分滅びます」
妹の反応にショックを受けながらステッキを振り回すが、実際セラフォルーなら国を滅ぼすくらいは訳ないので、本当に自重してほしい。
「なあ、匙。先日の堕天使幹部が襲来してきたとき、会長はお姉さんを呼ばなかったけど…これを見る限り、仲が悪いからってわけじゃないよな?」
「逆だ、逆。話ではセラフォルー・レヴィアタン様が妹を溺愛しすぎているから、呼ぶと大変なことになるってさ。妹が堕天使に汚されるとわかったら、何をしでかすかわからなかったらしいんだよ。即戦争だよ。あそこはセラフォルー様を呼ばずにルシファー様を呼んで正解だ。しかし、俺も初めてお会いしたけど、これは…」
新人悪魔二人がセラフォルーの破天荒ぶりにドン引きしている。確かにあの場でセラフォルーを呼んでいれば、単身乗り込んで駒王学園を丸ごと氷結させかねないと、アルトリアはそんなIFの展開を考え身震いした。
「うぅ、もう耐えられません!」
あの冷静沈着なソーナが目元を潤ませて、体育館から走り去る。
「待って!ソーナちゃん!お姉ちゃんを置いてどこに行くの!」
魔法少女、否魔王少女がそれを追って走り出した。
「ついてこないでください!」
「いやぁぁぁぁん!お姉ちゃんをみすてないでぇぇぇぇぇっ!ソーたぁぁぁん!」
「『たん』付けはお止めになってくださいとあれほど!」
そのままシトリー家は追いかけっこを始めた。あの調子では何かの拍子に学校を壊しそうだが、その点はセラフォルーの分別に期待するしかない。
「うむ。シトリー家は平和だ。そう思うだろう、リーアたん」
「お兄様、私の愛称に『たん』付けで呼ばないでください…」
セラフォルーに当てられたのか、サーゼクスもとんでもない事を口走る。リーアたん呼び、聞いたのは何年振りか。
「そんな…リーアたん。昔はお兄様お兄様といつも私の後ろをついてきていたのに…。反抗期か…」
ショックを受けた様子のサーゼクス。が、本気でショックを受けたというより少しからかっている様子だ。
「もう!お兄様!どうして幼少時の私のことを!」
パシャ!
フラッシュの音、見れば怒ったリアスを写真に撮るジオティクスが居た。なにやら感無量のご様子だ。
「いい顔だ、リアス。よくぞ、ここまで立派に育って…。ここにこれなかった妻の分まで私は今日張り切らせてもらおうか」
「お父様、もう!」
どうにも魔王の家族は個性的である必要があるのかと感じる。が、こうしてじゃれ合っている様子は普通の家庭と変わらない。歴史のある家だからもっとお堅いと思っていたイッセーは驚きを覚えた。
「魔王様と魔王様の御家は面白い共通点があるのですよ」
朱乃が微笑みながら愉快そうに言う。
「共通点?」
「魔王様は皆様面白い方々ばかりなのです。そして、そのご兄弟はほとんど真面目な方ばかり、うふふ、きっとフリーダムなご兄弟が魔王様になったことで、真面目にならざるを得なかったのでしょうね」
その傾向にリアスもまた当てはまっていたのだ。苦労してるんだろうなぁ、とまだ見ぬ魔王の家族達に思いをはせるイッセー。そこへ
「イッセー、此処にいたのか」
「父さん」
「こんにちわ、ゴロウさん」
学内を一通り見て回ったのか、イッセーの両親が手を上げながら現れた。
「兵藤くん、此方のお二人がご両親かな?」
リアスの父、ジオティクスがイッセーに尋ねる。
「はい。俺の父と母です」
「そうか。うむ」
ジオティクスがイッセーの両親の前へ立つ。
「初めまして、リアスの父です」
握手を求めながら、ジオティクスが五郎へ手を差し出す。相手の紅髪の紳士がリアスの父親だと知り、二人の表情が楽し気なものから一変して緊張の色が濃くなった。いつも世話になっているリアスの父がこんなダンディかつサーゼクスから社長であると聞いた二人からすればこうなるのも無理はない。
「こ、こ、こここここここれは、どうも!あっ、えっと、兵藤一誠の父です!リアスさんにはお世話になっておりまして、えーと、その…」
外野が見てられないほど、テンパってしまっている。
「いえ、こちらこそ、リアスがお世話になっておりまして、いずれ、ご挨拶に伺おうと思っていたのですが、なにぶん私もサーゼクスも多忙な身でして、なかなか機会を作れませんでした。この度、幸運に恵まれたようです。今日はお会いできて光栄です」
「そ、そんな!私達も一度ご挨拶しなければいけないと父さんと、いえいえ、夫と話していたのでしたのですわ」
三希も言葉が可笑しくなっている。普段慣れていない言葉を使うから混乱してるのかまさか順番に家族の恥ずかしい所を見るとは思わず、イッセーもリアスやソーナの時同様に恥ずかしさで顔を赤らめていた。
「うむ。落ち着いた場所でお話ししたいものです。ここは目立つ。何よりもお互いの子供達が恥ずかしいでしょう」
流石は見た目は40代ほどだが、数百年生きたサーゼクス以上の歳を重ねた年配の悪魔。これまで出てきた魔王二人と違って常識があり、空気を読めるとは。年の功というべき優雅な所作で祐斗を呼ぶ。
「木場君」
「はい」
「すまないが、落ち着ける場所まで案内してくれないだろうか?」
「はい。それでは、ご案内します」
祐斗はイッセーの両親に一礼すると、廊下を歩きだした。
「それではリアス、兵藤一誠君。私は少しお話をしてくる。サーゼクス、アルトリア、あとは頼めるな?」
「はい、父上」
「お任せください、グレモリー卿」
サーゼクス抜きで、という事は親同士での会話という事か。やはり娘の様子などをじっくりと聞きたいのだろうか。
「イッセー、父さんと母さん、ちょっと話してくるから」
「ああ、父さん、変な事言うなよ?」
「イッセーの言う通り、リアス先輩のお父様に失礼のないようにね」
「任せろ」
そうして祐斗の先導の元、兵藤夫妻とジオティクスはこの場を後にした。
「リアス」
「なんでしょう。お兄様」
「ちょっと、いいだろうか。すまないね、イッセー君、妹を少し借りるよ。朱乃くんも一緒に来てくれるかな?」
続いてサーゼクスもその場を後にする。なにやらリアスと朱乃に話があるようだ。
「はい」
朱乃も応じた。何の話だろうか。駒王町の運営に関してか、会談の内容を詰めるのだろうか?
「は、はい。俺もいいですけど…」
サーゼクスはリアスと朱乃を連れて、いずこかへ消えていってしまった。結果その場にはイッセー、アルトリア、アーシアの三人が残されてしまった。
「とりあえず、教室に戻るか」
「そうですね」
「はい」
こうして偶然の産物だったが、それぞれの家族の交流会となった。
「家族、ですか……」
一人の少女の心に小さなシミを残して。
ヴォーティガーンの情報 その4
ヴァーリとロウィーナは出会ってからほぼずっと一緒に暮らしている。その為ヴァーリの影響を多分に受けている。