赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 どうも、ファブニルです。

 今回はタイトル通り三大勢力の会談についてです。とある作品を引用し、原作より会談シーンを盛ってみました。気に入っていただければ幸いです。

 また関係は余りありませんが、戦隊がとんでもないことになっているようで……アルトリアの第一段階は細めのリョウテガソードっぽい、エクスカリバーを大きくし、機械的にした感じをイメージしていたので、インスピレーションを受けた身としては大分ショックです。これからどうなるのかじっくり見守っていこうと思います。

 よろしければ今回もお気に入り登録や高評価、感想をお願いします。

 それでは第三十四話、どうぞ!


三大勢力会談

「さて、行くわよ」

 

 

 部室に集まるグレモリー眷属とアルトリア。皆リアスの言葉に頷いた。

今日は三大勢力の会談の日、ついにこの日が来たのだ。会場となるのは、駒王学園の新校舎にある職員会議室。今日は休日。時間も深夜で人は誰もいない。すでに各陣営のトップ達は新校舎の休憩室で待機している。そして、学園全体が強力な結界に囲まれ、現在誰も入れず、また会談が終わるまで外にも出られない。結界の外には、天使、堕天使、悪魔の軍勢がぐるりと囲んでいる。一触即発の空気だと様子を見てきた祐斗が言っていた。

 もし、会談で問題が起こったり、協議が決裂したら、この場で過去の戦争が繰り返されることになる。大事な日だ今日の為に今まで準備してきたんだからな。リアスの後に続いて部室を後にしようとする。

 

 

『ぶ、部長!み、皆さぁぁぁぁん!』

 

 

 部屋に置かれた段ボールから声を掛けられる。中身は勿論引きこもりヴァンパイアだ。

 

 

「ギャスパー、今日の会談は大事なものだから、時間停止の神器を使いこなしていない貴方は参加できないのよ?」

 

 

 と、リアスはやさしく告げていた。確かに神器の制御が出来ないギャスパーが、何かのショックで会談中の時間を停めれば、無礼どころか攻撃と見なされ大変なことになる。何よりそんな事態になった場合一番傷つくのはギャスパーだ。また自分のせいでと引きこもりが悪化しかねない。というわけでギャスパーは留守番だ。

 

 

「ギャスパー、おとなしくしていろよ?」

「は、はい、イッセー先輩…」

「持ってきたゲーム機置いていくから、それで遊んでもいいし、菓子や飲み物も沢山買ってきたから食べてもいい、残っても小猫ちゃんのおやつになるだけだしな。リラックス効果のあるアロマも炊いてる。紙袋もあるから、寂しくなったら存分にかぶれ」

「は、はいぃぃぃ!」

 

 

 イッセーはギャスパーに紙袋を渡して部屋を出て行ったリアス達に続く。そんなイッセーにアルトリアが呟く。

 

 

「イッセー、昔よりも面倒見が良くなりましたか?」

「ん?かもな。アーシアとかギャスパーを見て、俺がしっかりしなくちゃって思うようになったんだよ」

 

 

 イッセーも変わった。もうただ変態なだけの男ではない。守るもの、超えるもの、目標が彼を成長させているのだ。

 

 

◆ 

 

 

 コンコンコン、とリアスが会議室の扉をノックする。

 

 

「失礼します」

 

 

 扉を開くと、そこには特別に用意させたという豪華絢爛なテーブル。それを囲むように見知った人たちが座っていた。空気は静寂に包まれており、全員真剣な面持ちだった。その雰囲気にはさしものアルトリアも緊張してしまう。アーシアが不安そうにイッセーの服の端をつかむ。イッセーもまた安心させる為に彼女の手を軽く握ってやった。

 

 悪魔側はサーゼクス・ルシファーとセラフォルー・レヴィアタン。そして給仕係としてグレイフィアがお茶用台車の脇で待機している。

 

 天使側は金色の羽のミカエルと見知らぬ男性の天使。恐らくは熾天使やそれに準ずる存在だ。

 

 堕天使側は黒い翼を十二枚も生やしたアザゼルと『白い龍(バニシング・ドラゴン)』ヴァーリ、『奈落の魔竜(ヴォーディガーン)』ロウィーナ。アザゼルはこちらを視線に捉えると、口の端を愉快そうにあげていた。

 

 全員が装飾の施された衣装を着ていた。

 

 

「私の妹と、その眷属。そして名誉騎士候アルトリア・ペンドラゴン卿だ」

 

 

 サーゼクス様が他の陣営にリアスとアルトリアを紹介する。リアスも会釈で返し、アルトリアも会釈する

 

 

「先日のコカビエル襲撃で彼女たちが活躍してくれた」

「報告は受けています。改めてお礼を申し上げます」

 

 

 ミカエルがリアス達へ礼を言う。それに対してリアス達は冷静に振る舞い、再度会釈する。

 

 

「悪かったな、俺の所のコカビエルが迷惑かけた」

 

 

 あまり悪びれた様子もなく、アザゼルが言う。一種族の長とは思えない軽さだったためにリアスも内心イラっとしたが表面上は冷静を取り繕う。

 

 

「そこの席に座りなさい。アルトリア卿はこっちに」

 

 

 サーゼクスの指示を受け、グレイフィアがリアス達を壁側に設置された椅子に促す。その席にはソーナが既に座っていた。彼女の隣にリアスが座る。その横にリアスがイッセーを座らせ、その後に朱乃、祐斗、アーシア、ゼノヴィア、小猫と続いて座った。アルトリアはサーゼクスの指示の元、彼の後ろに控える。それを確認したサーゼクスが言う。

 

 

「全員がそろったところで、会談の前提条件をひとつ。ここにいる者たちは、最重要禁則事項である『神の不在』を認知している」

 

 

 という事はソーナやグレイフィアもまた知ってた、或いは階段に際して知らされたのか。チラリと周りを見れば、先程と変わりのない面々をみてアルトリアはそう思う。

 

 

「では、それを認知しているとして、話を進める」

 

 

 こうして、サーゼクスのその一言で三大勢力の会談が始まった。

 

 

 

 

 会談は順調に進んでいた。議題はまず各勢力の現状の確認から始まり、今後どうすべきか、陣営ごとの対応、交流についての話へと移っていった。

 

 

「というように我々天使は…」

 

 

 ミカエルが喋り。

 

 

「そうだな、そのほうが良いのかもしれない。このままでは確実に三勢力とも滅びの道を…」

 

 

 サーゼクスも発言する。

 

 

「ま、俺らは特にこだわる必要もないけどな」

 

 

 たまに喋るアザゼルの一言で場が凍り付くこともあったが、堕天使の総督はわざとその空気を作って楽しんでいるように思えた。

 会談は続き、ついにリアスの出番となる。議題はコカビエルの一件について

 

 

「さて、リアス。そろそろ、先日の事件について話してもらおうかな」

「はい、ルシファー様」

 

 

 サーゼクスに促され、リアスとソーナ、朱乃が立ち上がり、先のコカビエル戦での一部始終を話し始めた。それに聞き入る三大勢力の面々。リアスは冷静に淡々と自分が体験した事件の概要を話していた。報告を受けた各陣営のトップはため息をつく者、顔をしかめる者、笑う者と反応は個々に違った。

 

 

「以上が、私、リアス・グレモリーとその眷属悪魔、及びアルトリア卿が関与した事件の報告です」

 

 

 全てを言い終えたリアスはサーゼクスの「ご苦労、座ってくれたまえ」という一言で着席する。

 

 

「ありがとう、リアスちゃん☆」

 

 

 セラフォルーもウインクをリアスに送っていた。

 

 

「さて、アザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」

 

 

 サーゼクスの問いに全員の視線が黒髪の総督へ集中する。アザゼルは不敵な笑みを浮かべて話始めた。

 

 

「先日の事件は我が堕天使中枢組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部コカビエルが、他の幹部及び総督の俺に黙って、単独で起こしたものだ。奴の処理は『白龍皇』と『奈落の魔竜』がおこなった。その後、組織の軍法会議でコカビエルの刑は執行された。『地獄の最下層(コキュートス)』で永久冷凍の刑だ。もう出てこれねぇよ。その辺の説明はこの間転送した資料に全て書いてあっただろうそれが全部だ」

 

 

 簡潔な説明といえば聞こえがいいが、用は説明が面倒で端折っただけ。一切悪びれる気もない態度にミカエルがため息を吐きながら言う。

 

 

「説明としては最低の部類ですが、貴方個人が我々と大きな事を起こしたくないという話しは知っています。それに関しては本当なのでしょう?」

「ああ、俺は戦争に興味なんてない。コカビエルも俺の事をこき下ろしていたと、そちらの報告でもあったじゃないか」

 

 

 たしかに、アザゼルの言うように、コカビエルはあの時自分達のボスであるアザゼルの事を悪様に罵っていた。戦争に消極的で神器にしか興味のない者だと。今度はサーゼクスがアザゼルに訊く。

 

 

「アザゼル、一つ訊きたいのだが、どうしてここ数十年神器の所有者をかき集めている?最初は人間たちを集めて戦力増強を図っているのかと思っていた。天界か我々に戦争をけしかけるのではないかとも予想していたのだが…」

「そう、いつまで経ってもあなたは戦争を仕掛けてこなかった。『白い龍(バニシング・ドラゴン)』を手に入れたと聞いた時には、強い警戒心を抱いたものです。更にはその後にかの『魔竜』まで手に入れたと聞けば」

 

 

 ミカエルの意見もサーゼクスと同様の様子だった。二人の意見を聞いて、アザゼルは苦笑する。

 

 

「神器研究の為さ。なんなら、一部研究資料もお前達に送ろうか?って研究していたとしても、それで戦争なんざ仕掛けねぇよ。俺は今の世界に十分満足している。部下に『人間界の政治にまで手を出すな』と強く言い渡しているぐらいだぜ?宗教にも介入するつもりはねぇし、悪魔の業界にも影響を及ぼせるつもりもねぇ」

 

 

 姿勢を崩し、手をひらひらさせて自分は関係ないとアピールしている。彼ら相手に下手な嘘は通じないと考えたのだろう。個人では悪魔の営業に介入していたが。

 

 

「言っとくがロウィーナはヴァーリが勝手に連れてきただけだ。急にいなくなって戻ってくるまで俺は何も聞いてなかったんだぜ?ったく、俺の信用は三すくみの中でも最低かよ」

「それはそうだ」

「そうですね」

「その通りね☆」

 

 

 サーゼクス、セラフォルー、ミカエルの意見が一致していた。やはり、堕天使の総督は信用されてないようだ。アザゼルはそれを聞き、面白くなさそうに耳をほじっていた。

 

 

「チッ。神や先代ルシファーよりもマシかと思ったが、お前らもお前らで面倒くさい奴等だ。こそこそ研究するのもこれ以上性に合わねぇか。あー、わかったよ。なら、和平を結ぼうぜ。もともとそのつもりもあったんだろう?天使も悪魔もよ?」

 

 

 アザゼルの一言に各陣営は少しの間、驚きに包まれていた。和平は選択肢の一つにあった。だが今までの対立や軋轢を考えると、その結論に至る可能性は低いと考えられ、あくまで理想程度に留まっていた。それをアザゼルから提示されるとは思わなかった。アザゼルの一言に驚いていたミカエルが微笑む。

 

 

「ええ、私としても条件を飲んで頂ければ和平は望むところです。このままこれ以上三すくみの関係を続けていても、今の世界の害となる。天使の長である私が言うのも何ですが戦争の大体である神と魔王は消滅したのですから」

 

 

 ミカエルが和平をしたいというのは、アスカロン受領の際に聞いていたことだが、条件?アザゼルがミカエルの言葉に噴き出して笑う。

 

 

「ハッ!あの堅物ミカエル様が言うようになったね。あれほど神、神、神様だったのにな」

「…失ったものは大きい。ですが、居ないものをいつまでも求めても仕方がありません。人間たちを導くのが、我らの使命。神の子らをこれからも見守り、先導していくのが一番大事なことだと私達セラフのメンバーの意見も一致しています」

「おいおい、今の発言は『堕ちる』ぜ?と思ったが、『システム』はお前が受け継いだんだったな。良い世界になったもんだ。俺らが『堕ちた』頃とはまるで違う」

 

 

 サーゼクスもミカエルと同意見を口にしだす。

 

 

「我らも同じだ。魔王がなくとも種を存続するため、悪魔も先に進まねばならない。戦争は我らも望むべきものではない。次の戦争をすれば、悪魔は滅ぶ」

 

 

 サーゼクスの言葉にアザゼルも頷いた。この場のトップとも現状を見て、最適解を選んでいる事が確認出来たからだ。

 

 

「そう。次の戦争をすれば、三すくみは今度こそ共倒れだ。そして、俺たちの所属する、俗に言う『聖書』勢力は人間界にも大きな影響を持つ。もし滅びれば間違いなく世界は終わる。俺らは戦争をもう起こせない」

 

 

 先程までふざけた調子だったアザゼルが一転して真剣な面持ちとなる。

 

 

「神がいない世界は間違いだと思うか?神がいない世界は衰退すると思うか?残念ながらそうじゃなかった。俺もお前達も今こうやって元気に生きている」

 

 

 アザゼルは腕を広げながら、言った。

 

 

「神がいなくても世界は回るのさ」

 

 

 彼の言ったことはある意味真理だった。神々の時代や、三大勢力が血で血を洗う戦争を行なっていた時代と今は違う。時代が降るに連れ、神秘は失われ、地上は神ではなく人の統べる地となった。誰のせいでもない、それが時代の流れなのだ。

 

 

「では次に、各勢力の戦力について話し合おうか。ミカエル、君は先程条件と言った。それはこれから話し合う事に関連しているのではないかな?」

「えぇ、その通りです。まず堕天使陣営。先程聞いた通りならあなたたちは最近神器(セイクリッド・ギア)の研究をしているようですね」

「ああ。俺は神の如き強者(アザゼル)であると同時に『解き明かす者』だ。そんな俺があんな面白い物放置するわけねえだろ」

「ええ。ですからその研究成果と回収した一部の神器の譲渡、そしてこれから私たちと共同研究をすることを求めます。特に『神器システム』に直接関わる研究があればそれを優先的に。その対価として、天界への立ち入りこそできませんが、我々の持つ神器の貸与や『システム』の限定開示も行いましょう。」

 

 

 その条件にアザゼルは眉を顰めた。いくらなんでも条件が緩すぎる。どころか好条件と言ってもいい。神器を持っていかれるのは痛いが、教会側の神器研究を進められる上に、そして一部とは言え『システム』に関われるのはあまりにも利益が大きい。

 

 

「…そんなことでいいのか?俺が『システム』を作り替えるとかは思わなかったのか?」

「ええ。まあ確かに貴方ならやりかねないとは思いますが、私が開示するのは『システム』の中でも神器に関わる部分のみ。そこを作り替えられたところで大元の動きは変わりませんから。そしてそれ以上に、神器で苦しむ人を減らせることのメリットの方が大きいです」

 

 

 なるほど、とアザゼルは小さく頷いた。確かに神器は人生を歪めることがある。最近では神の不在故かその事例も多く、神器のせいで歩けなくなったり命を落とす事例まで確認されている。先日もグレモリーの眷属が神器に苦しんでいた。そういった事態を減らすため、という理由なら三大勢力で最も神器の研究が進んでいる自分たちに便宜を図るというのも理解できる、と。

 

 

「続いて悪魔陣営。ここに私たちが要求するのは現状二つです。」

「なんだろうか、ミカエル」

「『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』の制限、そして名誉騎士候アルトリア・ペンドラゴン、彼女を我々の元に迎え入れる。この二つを求めます」

 

 

 ミカエルの発言にその場の殆どが驚愕の表情を浮かべた。現在の悪魔陣営の象徴とも言っていい『悪魔の駒』への干渉に、サーゼクスの食客であり切り札の一つ、アルトリアの引き抜き。先程のアザゼルへの要求よりもはるかに厳しい物だ。

 

 

「ミカエル、それはできない。今や『悪魔の駒』は冥界になくてはならない物だ」

「これでも『悪魔の駒』に関しては大分譲歩させていただきました。理想を言えば撤廃して貰いたいですが、それでは反発を招く。だからこその制限です」

 

 

 ミカエルの目には執念とも言える決意が宿っていた。先程の温和な態度とは大違いと言っても良い。本当なら撤廃が理想だが、協調の為にも譲歩しなくてはならない。だからこその制限だ。

 

 

「『悪魔の駒』は世界各地で問題を起こしています。人間だけではなく、各地の希少種族が貴族階級の悪魔によって無理矢理眷属にさせられている事例は数多く報告されている。そんな事態は神の子の守護を任された我らとしては何としても防ぎたい」

「制限に関しては俺も賛成だ。特にこれからは俺らが団結しなきゃならん。そんな中で他神話の種族に手を出すような事はやめた方がいいな」

「…確かに一部の非道な悪魔による眷属入りのトラブルは我々も感知している。だが、殆どの悪魔は眷属を大切にしている」

「それはグレモリーみたいな一族だけじゃねぇか、サーゼクス。ミカエル、和平への条件として上げるならちゃんと根拠はあるんだろうな?」

「勿論、こちらに資料を用意しています」

 

 

 そう言ってミカエルがお付きの天使に出させたのは何かの資料だった。天使の手からひとりでに飛んでいった資料はその場の全員に行き渡る。そこには口にするのも憚られる程の内容が散りばめられていた。

 

 

「それは我々が独自調査した範囲ですが、それでもこれだけの犠牲者が出ています。今後我々が協調していくのなら『悪魔の駒』を悪魔以外に使う際には事前に許可を得てから使用していただきたい」

「だが『悪魔の駒』によって救われた命もある。赤龍帝や聖魔剣の木場祐斗などがその例の一つだ」

「あぁ、ウチの下っ端がやらかした奴か。赤龍帝だと分かってたなら引き込めたんだが、勿体ねぇ」

 

 

 悪魔の駒には条件付きだが、死者蘇生の力もある。もしイッセーや祐斗、ギャスパーの様に生命の危険に晒されている者が居るのに、許可を待っていては手遅れになる。

 

 

「それに関しては我々にお任せを。緊急時には各地の教会で治療を受けられる体制を確立します。その上で悪魔、被契約者双方の交渉の後に転生をすればよろしいかと」

 

 

 生命の危機による緊急措置、という逃げ道は使わせないという意思。身内に眷属問題の被害者がいるサーゼクスとしてはその対応には頷かざるを得ない。

 

 

「……了解した。詳細はこれから詰める事にしよう。だが第二の件は認められない。彼女は私の食客だ。眷属ではないが、実質的にはそうと言ってもいい」

「ですが彼女は悪魔では無い。それに聖剣使いです」

「聖剣使いであれば我が妹の元に先日デュランダルを持つゼノヴィアが加わった。これに関して君たちは何も言わなかったではないかな?」

「その通りです。彼女を手放したのは痛いが好機でもあった。彼女を悪魔に託したのは我々の誠意の一つでもある」

「誠意?」

「神秘の薄れた現代において、貴重な神秘を保有するデュランダルとアスカロンを差し上げる事は我々としても身を切る思いです。その二振りを渡してでも私はエクスカリバーが欲しい。どうか彼女を譲ってはいただけないでしょうか」

 

 

 誠意、とは言っているが要するに、デュランダルとアスカロン渡すからエクスカリバー寄越せという事だ。厚かましい、とは言えない。どちらも強力な聖剣であり、デュランダルに至ってはかつての教会の切り札というべき剣だった。

 

 

「ミカエル、貴重な二振りを我々にくれた事には感謝している。しかし既に『悪魔の駒』の使用制限を受け入れている上に、これ以上要求するのであれば和平など到底「おいおい、落ち着けよお前ら」!アザゼル」

 

 

 ミカエルとサーゼクスが危うく口論になりかけた瞬間、アザゼルが割って入った。この問題に関与していない堕天使だからこそできる仲裁。このまま言い争いになっても何も得が無い。

 

 

「なぁ、ミカエル。お前は一体何を恐れている?」

「恐れ?彼が?」

「確かに天使としては悪魔の力をある程度削ぎたいだろう。悪魔は俺たちの中で唯一自力で種を増やせる存在だ。このままなら確実に地力今のお前の態度はこの状況に合ってねぇ。何がお前を駆り立てる?」

 

 

 アザゼルの言う通り、ミカエルの態度は和平を目指すには余りにも強権に過ぎる。逆に言えばそれほどしなければならない事情があるのではないだろうか。

 

 

「……分かっています。私の発言が和を乱す内容である事は。ですがそれでも我々はエクスカリバーが欲しい、いやせめてエクスカリバーが必要になった際に十全にそれを振るえるようにしたいです。人類のために、世界のために」

「世界のため?」

「エクスカリバーはただの聖剣ではない。人類とこの星の願いが生み出した神造兵装『星の聖剣』。その中でも最強に位置するのがエクスカリバーです」

 

 

 それはアザゼルもサーゼクスも、リアス達も聞かされたエクスカリバーの素性だ。何故彼は今さらそんな事を話したのか?

 

 

「ですが、エクスカリバーには単なる聖剣以上の役割が存在します。これは私も見聞きしたわけではない、未だに神が御存命であった頃に拝聴したものです」

「へぇ、あの神がそんな事をねぇ。聴かせてもらおうじゃねぇか、何をお前に話したのか」

 

 

 アザゼルが身を乗り出しながら興味津々で耳を傾ける。その場の誰もがミカエルの方を向いた。

 

 

「エクスカリバーの、星の聖剣の役割。それは人類に仇なす存在、世界の外側の存在から人と星を守る事。対『人類の脅威』への特攻武器、それこそが星の聖剣たちの真の正体です。悪魔や堕天使もまた『人類の脅威』であるがゆえにその特攻範囲に入ってしまうだけで、本来の主目的は世界の外から来るフォーリナーに対抗するための武器である。神はそう仰られていました」

 

 

 それはこの場の誰もが初めて耳にする言葉だった。『人類の脅威』、世界の外側から来るフォーリナー、外来者に対する切り札など、現所有者であるアルトリアですら知らなかった。

 

 

「人類の、脅威。アルトリア、エムリス。君たちは知っていたか?」

「いえ……全くの初耳です」

『同じく、そんな情報は私にも記録されていない』

「そんな秘密がねぇ……やっべ、益々興味が沸いてきやがった」

 

 

 皆が顔を見合わせるが、まだ情報を飲み込めきれていない。イッセーに至っては今自分の頭から煙が出ているのではないかと思い始めた。

 

 

「『星の造った聖剣。その使い手が現れた時は用心せよ。あれが動くときは必ず時代も動く』。神が私に仰られた言葉です。現にかの騎士王がエクスカリバーを振るった時期を境に、神秘は急速に失われて時代は大きく動きました。今、星の聖剣の担い手が現れたという事は近いうちに脅威が訪れる証拠だと私は考えています。だからこそ、彼女を保護したい。サーゼクス、クーデター政権である今の冥界の情勢は安定しているとは言えない。加えて悪魔はプライドが高く、『悪魔の駒』に代表されるように他種族をコレクションの様に見ている節がある。そんなところに置いて、万が一彼女が害される事態になれば、世界は……」

 

 

 誰よりも真面目に、誰よりも神に支えてきたが故にミカエルは恐れていた。神の遺した聖剣の真実、いずれ訪れる世界と人類の脅威に対する事が出来なくならないか。人間たちを守れなくなる事を彼は恐れているのだ。

 

 

「……ミカエル。君の気持ちは分かった。私としても彼女が害される事態は避けたい。だが彼女は重要な存在だ、そう簡単には渡せない。故に彼女の存在を我々で保証するのはどうだろうか」

「保証?」

「簡単なものなら肩書きを増やす、彼女の給金や褒賞を各勢力から出し合う。兎に角彼女に手を出せば、我々が黙っていないぞという事を示す」

 

 

 要は特定の陣営に帰属しない。若しくはあらゆる陣営に立場を持つ。そんな存在にしようという事だ。本来なら独立した機関か何かを作る必要があるが、今はまだこれが精一杯だろう。

 

 

「お前に喧嘩売る奴がそこまで理性的とは思えねぇが、悪くはないんじゃねぇか?世界の共有財産、特定の陣営に縛られない、陣営を超えた世界の切り札って訳か」

「その刃が正しく振るわれるなら、我々は問題ありません」

「感謝する。では次は………」

 

 

 その後会談は順調に進んでいった。一時は剣呑な雰囲気を持っていたミカエルだったが、懸念事項であった『悪魔の駒』の制限と、エクスカリバーとアルトリアの悪魔側での独占。この2点が解決した事で和平へのしこりが無くなったのか、特に利害をぶつける事なく和平に意欲的な態度を見せていた。

 

 

 

 

 

「では、こんな所だろうか?」

 

 

 サーゼクスの一言で、皆が大きく息を吐く。どうやら話し合いべき事は話し終えた様だ。グレイフィアがお茶の給仕をしている中、ミカエルがイッセーの方に視線を向ける。

 

 

「さて、話し合いもそろそろ兵藤一誠殿のお話を聞いてもよろしいかな」

 

 

 全員の視線が彼に再び集中する。神社でのお願いを彼はしっかりと覚えていた。イッセーがミカエルに訊きたかったこと。それは……

 

「アーシアをどうして追放したんですか?あれほど神を信じていたアーシアを、なぜ教会から追放したんですか」

 

 

 アーシアが驚き、イッセーを見やる。リアスが咄嗟にイッセーの肩に手を置くが、ミカエルは真摯な態度で答えだした。

 

 

「それに関しては申し訳ないとしか言えません。…神が消滅した後、加護と慈悲と奇跡を司る『システム』だけが残りました。この『システム』とは、簡単に説明すると、神がおこなっていた奇跡などを起こす為のもの。神は『システム』を作り、これを用いて地上に奇跡をもたらしていました。悪魔祓い、十字架などの聖具へもたらす効果、これらも『システム』の力です」

「神がいなくなって、『システム』に不具合が起こったんですか?」

 

 

 イッセーの質問にミカエルが頷く。

 

 

「正直なところ、『システム』を神以外が扱うのは困難を極めます。私を中心に『熾天使(セラフ)』全員で『システム』をどうにか起動させていますが……神がご健在だった頃に比べると、神秘の減少も相まって神を信じる者達への加護も慈悲も行き届きません。残念なことですが、救済できる者は限られてしまうのです」

 

 

 

 コカビエルも似たようなことを言っていた。神がいないから、救えるものに限界があると。

 

 

「その為、『システム』に影響を及ぼす可能性のあるものを教会に関するところから遠ざける必要があったのです。影響を及ぼす者の例としては、一部の神器これはアーシア・アルジェントの持つ『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』も含まれます。そして、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』、『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』なども」

「アーシアの神器がダメなのは悪魔や堕天使も回復できるからですか?」

 

 

 その問いにもミカエルは再び頷く。

 

 

「はい。信徒の中に『悪魔と堕天使を回復できる神器』を持つ者がいれば、周囲の信仰に影響が出ます。信者の信仰は我らが天界に住む者の源。その為、『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』は『システム』に影響を及ぼす禁止神器としています。それと、影響を及ぼす例に…」

 

 

ミカエルさんの言葉を遮って、ゼノヴィアが続ける。

 

 

「神の不在を知る者ですね?」

「ええ、そうです、ゼノヴィア。先ほども申した通り、貴方を失うのはこちらとしても痛手でしたが我々『熾天使(セラフ)』と一部の上位天使以外で神の不在を知ったものが本部に直結した場所に近づくと信仰の揺らぎによって『システム』に大きな影響が出るのです。申し訳ありません。貴方とアーシア・アルジェントを異端とするしかなかった。加えて貴方を手土産の様に扱ってしまった事、この場で謝罪します。申し訳ありません」

 

 

 ミカエルがアーシアとゼノヴィアへ頭を下げる。まさか、天使のトップがアーシアとゼノヴィアに頭を下げるなんて、当の二人も目を丸くしていた。流石に反応に困る事態だ。しかし、ゼノヴィアは直ぐに首を横に振り、微笑む。

 

 

「いえ、ミカエル様、謝らないでください。これでもこの歳になるまで教会に育てられてた身です。いささか理不尽を感じてはいましたが、理由を知ればどうということもありません」

「貴方が悪魔に転生した事。それはこちらの罪でもあります」

「いいのです。…多少、後悔も致しましたが、教会に仕えていた頃にはできなかったこと、封じていた事が現在私の日常を華やかに彩ってくれています。そんなことを言ったら、他の信徒に怒られるかもしれませんが…。それでも今の私はこの生活に満足しているのです」

 

 

 ゼノヴィアが自分たちとの生活をそんな風に感じてくれていた事にアルトリアは喜びを感じていた。大分浮世離れしすぎている所もあるが、彼女は真っ直ぐで誠実な少女なのだと再認識する。続いてアーシアも手を組みながら言う。

 

 

「ミカエル様、私も今幸せだと感じております。大切な人がたくさんできましたから。それに憧れのミカエル様にお会いしてお話もできたのですから光栄です!」

 

 

 ミカエルはアーシアとゼノヴィアの言葉に安堵の表情を見せていた。

 

 

「すみません。貴方達の寛大な心に感謝します。デュランダルはゼノヴィアにお任せします。サーゼクスの妹君の眷属ならば下手な輩に使われるよりも安全でしょう」

 

 

 アザゼルがアーシアを見ている。アーシアも気付き、体をビクっとさせていた。

 

 

「赤龍帝を殺した俺の所の部下が、そこの娘も騙して殺しかけたらしいな。その報告はうけている」

 

 

 イッセーはハッキリとアザゼルに言った。

 

 

「そう、アーシアは死にかけた。俺も堕天使に殺されたけど、それ以上にアーシアだ!あんたの知らない所で起きた事かもしれないが、あんたに憧れていた堕天使の女性がアンタの為にアーシアを一度殺そうとしたんだそれを忘れるなよ」

「イッセー、控えなさい!」

 

 

 この会談においてイッセーに発言の権利はない。先ほどの発言はミカエルの恩情による特別措置でしかない。加えてその言い方は和平の場にはそぐわない物だ。リアスも強く諫める。

 

 

「俺達堕天使は、害悪になるかもしれない神器所有者を始末しているのは確かだ。組織としては当然だろう?招来、外敵になるかもしれない者を事前に察知できれば始末したくなる。それでお前達は死んだ。理由はなんの才能もない人間のそいつでは赤龍帝の力を使いこなす事が出来ずに暴走させて俺達や世界へ悪影響を与えかねないからだお前さんに関しては巻き添えだから申し訳ないがな」

「おかげで俺達は悪魔だ」

「嫌か?少なくとも周囲の者たちはお前達が悪魔になったことを喜んでいると思うぜ」

 

 

 確かに今の仲間たちはイッセー達の悪魔入りを喜んでいる。それは事実だった。

 

 

「嫌じゃないさ!皆が良い奴らで、優遇もしてもらってるのも理解してる。だが!」

「今更俺が謝っても後の祭りだ。だから、俺は俺にしか出来ない事でお前達を満足させようと思う。それが償いになるかはお前ら次第だがな」

 

 

 満足させる?アザゼルは何をしようとしているのか、悪魔側に不利なる事ではないのは察せられるが……

 

 

「さて、そろそろ俺達以外に、世界に影響を及ぼしそうな奴等へ意見を聴こうか、ドラゴンたちと騎士王の末裔に。まずはヴァーリ、お前は世界をどうしたい?」

 

 

 アザゼルの問いかけに白龍皇ヴァーリは笑う。

 

 

「俺は強い奴と戦えればいいさ」

 

 

 不敵な笑みを浮かべつつ、少々にべのない態度でヴァーリは言った。

 

 

「お前はどうだ?ロウィーナ」

「私はヴァーリ達から意味を貰った存在だ。まぁ、そこの騎士王の現し身と一戦交えるのも良いかもしれない」

 

 

 こちらも戦いしか興味がないのか?いや、どちらかというと何処か虚無というべき反応だ。

 

 

「やれやれ、白側は味気ねぇなぁ。んじゃ次は赤側だな。可愛い騎士王ちゃん、そっちはどうだ?」

「私は騎士です。弱き人々を護るのが使命だと考えています。それと、私の大切な人達を護り、共にいることが出来ればそれで構いません」

「じゃあ、赤龍帝、お前はどうだ?」

「正直分からないです。なんか、小難しい事ばかりで頭が混乱してます。世界がどうこう言われてもなんというか、実感わきません」

 

 

 それは、イッセーの正直な感想だった。彼にはまだまだ世界の命運は遠い世界の出来事の様にしか感じられなかった。

 

 

「だが、お前は世界を動かすだけの力を秘めた者の一人だ。選択を決めないと俺をはじめ、各勢力の上に立っている奴らが動きづらくなるんだよ」

 

 

 と、アザゼルに言われて困っているイッセー。

 

 

「兵藤一誠、では恐ろしいほどにかみ砕いて説明してやろう。俺らが戦争したら、お前も表舞台に立つ必要が出てくる。そうなればリアス・グレモリーを抱けないぞ」

「ッ!」

 

 

 なるほど、確かにその話題ならイッセーは食いつくだろう。

 

 

「和平を結べば戦争する必要もなくなる。そしたら、後に大事なのは種の存続と繁栄だ。毎日、リアス・グレモリーと子作りに励むことが出来るかもしれない。どうだ?分かりやすいだろう?戦争なら子作りは無しだ。和平ならやりまくりだ。お前はどっちを選ぶ?」

 

 

 仮にも人間世界に多大な影響を持つ三すくみの会談の筈がなんとも頭の悪い話を展開している。 

 

 

「和平で一つお願いします!ええ、!平和ですよね!平和が一番です!部長とエッチがしたいです!」

 

 

 アルトリアは手で顔を覆い、天井を見上げた。ここまで直球で言うか!

 

 

「ちょっと、イッセー!?」

「イッセー、貴方という人は……」

「イッセー君、サーゼクス様がおられるんだよ?」

 

 

 そう、リアスの兄であるサーゼクスがこの場にはいるのだ。しかしサーゼクスは小さく笑っていた。

 

 

「えっと…。俺、バカなんでこの会談の内容も九割ぐらい意味不明です。でも、俺が言えるのは、俺に宿る力が強力なら仲間の為に使います。部長、アルトリア、朱乃さん、アーシア、それに他のメンバーも、もし危険に晒されたら俺が守ります!…て、俺、まだ弱いんですけどね。けど、俺が出来るのはそれぐらいですから。体張って仲間と共に生きてこうかなって…」

 

 

 イッセーが言い切ろうとしたとき、世界が、停止した。




 今回のミカエルの強硬な態度は、勝手ながらチキンうまうま先生(ID:410569)の『聖なる剣を携えて』を参考にさせて頂いていただきました。あれで教会側への視点が新しくなりました。
 あの作品ほど血の気は多くは無いですが、仮にも人類の守護者としての熾天使について表現できていれば幸いです。
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