創作掲示板に載せてもらったり、感想色々頂いているのに申し訳ないです。
今回からテロリストの皆さんが出てきます。結局のところD×Dの物語ってこの『禍の団』関係が多くを占めるイメージ。
よろしければ今回もお気に入り登録や高評価、感想をお願いします。
それでは第三十五話、どうぞ!
「……あれ?」
イッセーが気づいた時、職員室の室内は少しだけ変わっていた。ミカエルが部屋の外を見やり、サーゼクスとグレイフィアは真剣な面持ちで話し込んでいる。アルトリアはサーゼクスの側に控えていた。
「お、赤龍帝も復活したか」
アザゼルがイッセーの方を見て言う。
「何かあったんすか?」
イッセーがアザゼルに訊ねる。周囲を見て見れば、動いている者と停まっている者に分かれていた。各陣営のトップは全員動いていた。サーゼクス、セラフォルー、グレイフィア、アルトリア、そしてミカエルとアザゼル、それと『
「眷属で動けるのは私とイッセー、祐斗、ゼノヴィアだけのようね」
リアスは動けていたが、アーシア、朱乃、小猫、ソーナ、椿姫は停止していた。
「イッセーは赤龍帝を宿す者、アルトリアは最強の聖剣エクスカリバーの担い手、祐斗は
リアスが言うように、ゼノヴィアは聖なるオーラを放ち続ける危険極まりない剣を持っていた。咄嗟に亜空間から引っ張り出したのだろう。
「時間停止の感覚はなんとなく、体で覚えた。停止させられる寸前にデュランダルの力を盾に使えば防げると思ったのだけど、正解だった」
時間を停止させられる瞬間を体で覚えたという事だ。その感覚の鋭さにイッセーは舌を巻いた。
「それはともかく。部長、何があったんですか?」
「どうやら「テロだよ」」
質問に答えようとしたリアスの言葉を遮って、アザゼルが言い放つ。
「外、見て見ろ?」
アザゼルが顎で窓の方を示す。イッセーが窓に近づくと
カッ!
突然、閃光が目の前に広がる!光と同時にこの新校舎も揺れている。が損傷した様子は見られない
「攻撃を受けているのさ。いつの時代も勢力と勢力が和平を結ぼうとすると、それをどこぞの集まりが嫌がって邪魔しようとするもんだ」
アザゼルが外を指差す。指した方へ視線を向けると、校庭と空中に人影らしきものがあった。よく見れば、黒いローブを着込んだ如何にも魔術師な一団がこちらへ攻撃を放っていた。その攻撃は新校舎に打撃を与えている様子はない。だが、攻撃が止む様子は見えなかった。目的は会談の邪魔なのだろうか。いつの間にかイッセーの隣に立っていたアザゼルが不敵な笑みを浮かべながら言う。
「いわゆる魔術師、魔法使いって連中だな。かつて『魔術王』ソロモンが神からの啓示を基に神や悪魔の魔力操作を人間向けに再構築したのが魔術、魔法の類だ。…放たれている魔術の威力から察するに一人一人が中級悪魔クラスの魔力を持ってやがりそうだな」
中級悪魔というだけで、現時点のイッセーよりも強い。そんな存在が何十何百と、空に浮かぶ魔法陣から出現している。
「ようするに人間が悪魔みたいな力を振るえるってことだ。もちろん、悪魔にも出来ないことも可能らしいがな、神器所有者が魔術を覚えたりしていると、とても厄介だ。ま、奴らの攻撃はこの校舎には被害を出せないさ。俺とサーゼクス、セラフォルーとミカエルで強力無比な防壁結界を展開しているからな。おかげでここから出られないが…」
「全く、魔女っ子の私を前にして失礼なのよ。あんなのが基準になったら魔女っ子が危険な存在だと思われちゃうわ」
セラフォルーが魔法陣で結界を操作、維持しながら愚痴をこぼす。魔女っ子と魔法使いの定義はさておき、アザゼルがイッセーにもわかりやすく嚙み砕いて、魔術師について教えている。一見すると不真面目だが、その実態は博識且つ教え上手なのだろう。
「さっき、時間が停止したのは?相手に時間停止の魔法が使える者がいるとか?」
「いや、おそらく、力を譲渡できる神器か魔術でハーフヴァンパイアの小僧の神器を強制的に
つまりはギャスパーが敵に手に落ち、テロの道具として利用されているという事だ。
「ギャスパーは旧校舎でテロリストの武器にされている…。どこで私の下僕の情報を得たのかしら…。しかも、大事な会談をつけ狙う戦力にされるなんて…ッ!これほど侮辱される行為もないわっ!」
リアスの全身から紅いオーラを迸らせている。せっかく余計な不和を招かないようにと留守番をさせていたのに、裏目に出てしまった。魔術師たちの行いは領主として、ギャスパーの主人としてのリアスの逆鱗に触れたようだ。
「ちなみにこの校舎を外で取り囲んでいた堕天使、天使、悪魔の軍勢も全部停止させられているようだぜ。まったく、リアス・グレモリーの眷属は末恐ろしい限りだ」
アザゼルがリアスの肩に手をポンと置くが、リアスは容赦なく手を払いのけていた。払いのけられたアザゼルは、ため息を吐きながらその手を窓に向ける。すると、外の空に無数の光の槍らしきものが。
バッ!
アザゼルが手を下げるのと同時に光の槍が雨となって、魔術師達に降り注ぐ。魔術師達は防御障壁を展開するが、それをなんなく貫き、魔術師達を一掃する。校庭には魔術師達の無数の死体が散らばっていた。光の槍の弾幕はコカビエルで見たが、ただ手をかざしただけでこれか。改めアザゼルの強さを実感する。
「この学園は結界に囲われています。にもかかわらず、彼等は結界内に出現してきた。この敷地内に外の転移用魔方陣とゲートを繋げている者がいるという事です。加えてこちらの転移は阻害されている。そしてリアス・グレモリーの眷属の能力を利用したテロ、考えたくはありませんが……」
「内通者、裏切り者がこの中にいるってか?どちらにしても『
「ここから逃げられないんですか?転移じゃなくても他に何か……」
イッセーの質問にアザゼルは首を横に振る。
「無いこともないが、別に逃げないさ。学園全体を囲う結界を解かないと俺達は外へ出られない。だが、結界を解いたら人間界に被害を出すかもしれないだろ。俺は相手の親玉が出てくるのを待ってんだよ。しばらくここで籠城してれば痺れを切らせて顔出すかもな。早く黒幕を知りたいもんだ。それに下手に外へ出て大暴れすると敵の思う壺かもしれないってわけだ」
アザゼルは余裕の態度を崩さない。相手が正体を現すまで待ちの姿勢か。
「というように、我々首脳陣は下調べ中で動けない。だが、まずはテロリストの活動拠点となっている旧校舎からギャスパーくんを奪い返すのが目的となるね」
と、サーゼクスが言う。現状一番危険なものを奪還するってわけか。籠城していてもトップの方々まで停められたら負けが確定だからな。
「お兄様、旧校舎、根城の部室に未使用の『
「なるほど、『キャスリング』か。普通に奪い返しに行くのは彼らも予想しているだろうから、これは相手の虚をつける。何手か先んじえるね」
キャスリング。『王』と『戦車』の位置を瞬間的に入れ替えらせるチェスのルールの一つだ。チェスを基にしたレーティングゲームの特殊技の一つでもある。つまり、リアスは瞬時に旧校舎へ転移する事が可能なのだ。
「よし。だが、一人で行くのは無謀だな。グレイフィア、『キャスリング』を私の魔力方式で複数人転移可能にできるかな?」
「そうですね、ここでは簡易術式でしか展開できそうもありませんが、お嬢さまとも一方なら転移可能かと」
「リアスと誰かか……」
「サーゼクス様、俺が行きます!」
イッセーが名乗りを挙げた。大切な後輩の危機にジッとしているなど、彼には出来なかった。
「テロリストに捕らわれているハーフヴァンパイアをどうにかできればいいのだろう?なら簡単な事だ。その辺り一帯を消し飛ばせばいい」
そんな会話に水を差すようにヴァーリが非情な提案を持ち出す。
「なんなら俺がやろうか?」
「テメェ!なんてことを!」
「ちったぁ空気を読めよ、ヴァーリ。和平を結ぼうって時にそれはやめろ」
「仕方ないだろ、アザゼル。私もヴァーリも、こうもジッとしてては暇でしょうがないんだ」
「ロウィーナ、お前もか。なら外に出て攪乱してくれ。お前ら二人が出てくれば連中も動揺するだろうさ」
「フッ、了解だ。行くぞロウィーナ」
「あぁ、暇つぶしにはなるかもな」
そう言って二人は神器の翼とドラゴンの翼を展開して、会議場から飛び出していく。高速で飛び上がった二人に、魔術師たちは目を奪われた。巨大魔法陣を背に二人が並び立つ。
「行くぞ、
『
音声の後、ヴァーリの体を真っ白なオーラが覆う。光が止んだ時、ヴァーリの体は白い輝きを放つ
「見せてやろう、
続いてロウィーナが魔力を昂らせる。するとその身体に変化が生じた。展開していた黒い翼と同色の、あの時と同じ異形へと左腕が変わり、更には足もまた竜の脚というべき物へと変化する。さながら人に化けたドラゴンの、化けの皮が剥がれかけたような、そんな姿だ。
ドドドドドドンッ!
巻き起こる爆風!見れば、魔術師の群れが白い鎧を着込んだ者に蹂躙されていた。夜の空に光の軌跡を描きながら敵の群れへ飛び込み、一騎当千の様相を見せていた。魔術師の集中砲火をまったく気にせずに宙を舞い、大出量の魔力弾を校庭に放っていた。魔術師達は成す術もなく、消滅させられていくが、直ぐに魔法陣が次の魔術師達を呼び出す。
ズバシャァァッ!!
続いて青黒い軌跡が空に浮かぶ。ヴァーリ同様、魔術師の集中砲火を意にも介さず突っ込んでいく。そして接近した瞬間、異形の左腕で魔術師たちを薙ぎ払った!その勢いのまま空中で蹴りを放ち、魔術師を消し飛ばす。その荒々しい戦いぶりに魔術師達は再び消滅させられたが、再度魔法陣が魔術師達を召喚する。
「あんな簡単に
「ロウィーナ・ヴォーティガーン、実力は相当なものですね。万が一戦うなら第三段階まで解放しなければ……」
白い龍を宿す者と、その加護を受けた者の末裔。自分達と似た存在の彼らにイッセーとアルトリアは思いを巡らせていた。
「サーゼクス様、間もなく準備が整います」
「分かった。アザゼル、君は噂では神器の力を一定時間自由に扱える研究をしていたな?」
「ああ、そうだな、それがどうした?」
「赤龍帝の制御はできるだろうか?」
「………」
サーゼクスの問いにアザゼルは黙り込んだ。しかし、堕天使の総督は懐を探り出すと。
「おい、赤龍帝」
アザゼルがイッセーを呼ぶ。が、称号で呼ばれたイッセーは不満気に返した。
「お、俺は兵藤一誠だ!」
「じゃあ、兵藤一誠。こいつを持っていけ」
アザゼルがイッセーへ何かを投げる。それは腕輪のようだった。
「そいつは神器をある程度抑える力を持つ腕輪だ。例のハーフヴァンパイアを見つけたらそいつを付けてやれ。多少なりとも力の制御に役立つだろう」
「でも、これふたつあるけど…?」
イッセーの言う通り腕輪は二つあった。一つはギャスパーの物。もう一つは……
「もう一個はお前のだ。『
イッセーの弱点を言い当てたアザゼル。一体どこからその情報を?確かにイッセーは駒八つ消費の『兵士』だが、その力に対応できるだけの力をまだ有していない為、リアスに力を抑えられている。
「これは俺の私見に過ぎないが、駒配分的にドライグが七、お前が一ってところか?いや、七と九割:一割かもしれねぇな。『プロモーション』もドライグの真の力を発現する為に必要な土台作り。どちらにしても封印の解放ってのはドライグの力を解き放つってことだな、リアス・グレモリー」
アザゼルの問いにリアスは目を細めるだけで特に答えなかった。
「そのリング、使うのは最後の手段にしておけ。体力の消費までは調整できんから、いきなり至ったら無駄に消耗するだけだ。『鎧』装着中は体力か魔力を激しく消耗させる」
と、アザゼルが補足説明を加える。このリングは便利な反面、タイミングを間違えれば一気にピンチになる。どうでもいい相手に使ってその後に控える強者に無防備を晒すことは出来ない。さらにダメ押しにアザゼルは口にする。
「よく覚えておけ。今のお前は人間に毛が生えた程度の悪魔だ。強大な神器を有していても宿主が役立たずでは意味がない。今のお前でも相手が未熟な者なら、ドライグの力を振りまくだけで勝てるが、その力よりも上の者や能力を把握している者にとってみれば御しやすい代物だ。何せ、お前自身がその神器の弱点だからな。使いこなせないというのはそれだけ弱味の塊なんだよ。力を飼いならせなければいずれ死ぬぞ」
「わ、わかっているよ」
イッセーはアザゼルに返答するが、痛いところを突かれたからか返事に詰まる。イッセーは未だ発展途上の存在だ。最も弱い赤龍帝の宿主という噂は彼の中で重くのしかかっているようだ。イッセーが成長するまでは私がしっかりせねば、とアルトリアは気を引き締める。
しかし、アザゼルの説明は凄くわかりやすい。問題の把握、整理、説明が上手い。総督以外でなら教師などがよく似合うと思ってしまうほどだ。
「アザゼル、神器の研究はどこまでいっているというのですか?」
ミカエルがため息を吐きながらアザゼルに訊くが、彼は不敵に笑うだけだった。
「いいじゃねぇか。神器を作り出した神がいないんだぜ?少しでも神器を解明できる奴がいた方がいいだろう?お前だって知らないことだらけだと耳にしているぞ?」
「研究しているのが貴方だというのが問題だとは思うのですが…」
そんな会話をしている中、リアスはグレイフィアから特殊な術式を額ごしに受けていた。
「お嬢様、しばしお待ちください」
「急いでね、グレイフィア」
「アザゼル。こんな状況だが先ほどの話しの続きだ」
サーゼクスがアザゼルに訊く。
「あー、何だ?」
「神器を集めて、何をしようとした?『
アザゼルはその問いに首を横に振った。
「備えていたのさ」
「備えていた?戦争を否定したばかりで不安を煽る物言いですね」
ミカエルが呆れるように言う。
「言ったろ?お前らに戦争はしない。こちらからも戦争を仕掛けない。ただ、自衛の手段は必要だ。って、おまえらの攻撃に備えているわけじゃねぇぞ?」
「では?」
「———『
「…カオス・ブリゲード?」
初めて聞く名だが、サーゼクス達も知らないようで眉を寄せていた。
「組織名と背景が判明したのはつい最近だが、それ以前からにうちの副総督シェムハザが不審な行為をする集団に目を付けていたのさ。そいつらは三大勢力などの危険分子を集めているそうだ。中には
「その者たちの目的は?」
金品か、政治的な目的か、イデオロギーか、ミカエルが尋ねる。
「破壊と混乱。単純だろう?この世界の平和が気に入らないのさ。テロリストだ。しかも最大級にたちがわるい」
成程。なら、今回のテロも彼らによる可能性がある。現に魔術師という三すくみ外からの攻撃に晒されているのだから。
「組織の頭は『
『———ッ!』
!?まさか、あの二体の上を行く存在は少ない。インド神話にその名も高きヴリトラですらあの二体には僅かに届かない。彼ら以上の領域に至れるものはそれほどまでに少ないのだ。そしてその領域に至っているのは僅かに2体。となればおのずと答えが分かる。現代にまで『無限』の象徴として語られる龍神だ。
「…そうか、彼が動いたのか。『
サーゼクスも表情を険しくさせる。この中で唯一、かの存在を知らないイッセーだけは以前、ヴァーリが言っていた一番強い奴、というのがオーフィスなのではと考えた。
皆が驚く中、突如声が響き渡る。
『ええ、オーフィスが「
カッ!
声と同時に会議室の床に魔法陣が浮かび上がる。この形は、まさか!
「そうか。そう来るわけか!今回の黒幕は!グレイフィア、二人を早く飛ばせ!」
「はっ!」
サーゼクスが舌打ちをしながらグレイフィアに指示を飛ばす。彼女は二人を会議室の隅に行くように急かせると、小さな魔法陣を床に展開した。ちょうど二人ほどしか収まらない規模の大きさだ。今はこれが精一杯なのだろう。
「お嬢様、ご武運を」
「ちょ、ちょっとグレイフィア!?お兄様!」
リアスの戸惑いを遮るように転移の光が二人を包み込み、旧校舎へと飛ばした。
転移魔法陣が消えてすぐ、会議場では信じられない展開が起ころうとしていた。会議室の床に現れた魔法陣、それを見て三大勢力の首領面々は驚愕していた。正確にはアザゼルは笑い、サーゼクスは苦虫を嚙み潰したような表情をしていたが。
「———レヴィアタンの魔法陣」
そうこれはレヴィアタンの魔法陣だ。だが現魔王セラフォルー・レヴィアタンの紋様ではない。彼女がレヴィアタンの名を継いだ者なら、これを使うのはレヴィアタンの血を継ぐ者だ。
「ヴァチカンの書物で見た事あるぞ。あれは旧魔王レヴィアタンの魔法だ」
魔法陣から現れたのは、褐色の女性。胸元が大きく開き、深いスリットも入ったドレスに身を包んでいる。眼鏡をかけるその姿は知的というよりやや神経質な印象を与える。
「ごきげんよう、現魔王サーゼクス殿、セラフォルー殿」
不敵な物言いで、ドレスの女性はサーゼクス様に挨拶する。
「これはどういうことだ?先代レヴィアタンの血を引く者。カテレア・レヴィアタン」
サーゼクスは苦々しく問いかける。彼女こそ旧魔王の一族。かつての大戦で旧四大魔王が滅び、サーゼクス達新しい魔王を立てようとした時に徹底抗戦を唱え、魔王の座を争ったのが、旧魔王の血を引く者達だったという。すでに戦力が疲弊しきった戦後の悪魔達は、最後の力を持って、タカ派の旧魔王軍の一門全てを冥界の隅へ追いやったと聞く。
「世界に破壊と混沌を!」
次の瞬間、彼女の手に持つ杖からまばゆい光が発せられる!光は会議室を覆い、そして爆発を起こした。会議が行われていた部屋の周辺は吹き飛び、爆風と黒煙が辺りを覆う。
が、しかし全員が無事であった。サーゼクス、ミカエル、アザゼル、そしてアルトリアの四人が咄嗟に防御用の術式を構築したからである。トップ三人によって構築された球状の結界とアルトリアの展開した『
「フッ、アハハハハッ!三大勢力による防御結界、何と見苦しい!」
その様子をカテレアは嘲笑した。
「君がこの様な暴挙に至ったということは……」
「えぇ、旧魔王派の者達はほとんどが『
———っ!ここに来て、旧魔王派が。厄介ですね……
「新旧魔王サイドの確執が本格的になったわけか。悪魔も大変だな」
アザゼルは他人事のように笑うだけ。そちらも幹部が離反した上にこの街で討伐されたからこうして集まっているというのに呑気なものである。
「カテレア、今のは言葉通りと受け取っていいのだな?」
「その通りです。今回のこの攻撃も我々が受けおっております」
「———クーデターか」
そう、これはクーデター。現魔王派に対する旧魔王の反乱だ。三大勢力が集うこの場でだ、しかも彼女たちはテロリストの集団に手を貸している。
「…カテレア、何故だ?」
「サーゼクス、今日この会談のまさに逆の考えに至っただけです。神と先代魔王がいないのならば、この世界を変革すべきだと、私達はそう結論付けました」
神の不在、三大勢力の和平、それを全て知った上でのクーデターか。しかも考えていることはここにいる面々とは全く逆の道だ。
「オーフィスの野郎はそこまで未来を見ているのか?そうとは思えないんだがな」
アザゼルの問いかけにカテレアは息を吐くだけだ。
「アレは力の象徴としての、力が集結するための役を担うだけの神輿です。かの力を借り、一度世界を滅ぼし、もう一度構築します。新世代を私達が取り仕切るのです」
なるほど、あくまでもオーフィスの元に集っただけで、かの龍神が支配している訳ではないと。だがそれでも外で暴れている魔術師達のような賛同者というわけか。サーゼクスは皮肉気に笑う。
「…天使、堕天使、悪魔の反逆者が集まって自分達だけの世界、自分達が支配する新しい地球を欲したわけか。それのまとめ役が『ウロボロス』オーフィス」
トップは神すらも恐れた最強のドラゴン。ニ天龍や龍王達よりも強いとされる無限の力を有した神に等しいドラゴンが後ろにあるのは厄介極まりない。
「カテレアちゃん!どうしてこんな!」
セラフォルーの叫びにカテレアは憎々し気な睨みを見せる。
「セラフォルー、私から『レヴィアタン』の座を奪っておいて、よくもぬけぬけと!私は正統なるレヴィアタンの血を引いていたのです!私こそが魔王に相応しかった!」
「カテレアちゃん…。わ、私は!」
「セラフォルー、安心なさい。今日、この場で貴方を殺して、私が魔王レヴィアタンを名乗ります。そしてオーフィスを象徴たる神とし新たな『システム』と法、理念を私達が構築する。ミカエル、アザゼル、そしてサーゼクス、貴方達の腐敗した時代には終わってもらいます」
そう言った瞬間、更に魔法陣が追加される。そこから多数の悪魔たちが召喚された。
「レヴィアタン家に仕える悪魔たちか、愚かな……」
「黙れ!王位を簒奪し、カテレア様達と我らを冥界の隅へ追いやった怨み!片時も忘れた事は無いぞ!」
「貴様ら紛い物の魔王に変わり、我らが新秩序を創り出すのだ!」
彼等はクーデター時に生き残った悪魔たちだ。その多くが魔王たちとは別の地域に収監され、一部は刑期を終えた者もいた。しかし彼らはサーゼクス達への恨みを捨てることは無かったのだ。サーゼクスもセラフォルーもミカエルも表情を陰らせている。しかし一人だけ、愉快そうに笑う者がいた。
「ふっ…。くっくっくっくっ」
彼だけは。心底おかしそうに。悪童らしい邪悪な笑みを見せていた。
「アザゼル、何が可笑しいのです?」
カテレアの表情と言動には明らかに怒りが含まれている。
「ハハハ。お前いや、おまえら、こぞって世界の変革かよ」
「そうです。それが一番正しいのですよ、アザゼル。この世界は」
「あぁ、もういい。そういうのは聞き飽きてんだ。そもそも目標があまりに陳腐で酷すぎる。第一さっきから言ってる台詞、一番最初に死ぬ敵役のそれだぜ?」
「アザゼル!この私を愚弄するというの!」
カテレアは激怒し、全身から魔力のオーラを迸らせる。主と自分達を侮辱されて配下も魔力を昂らせる。一触即発の空気だ。
「サーゼクス、ミカエル、カテレアは俺がやる。手を出すんじゃねぇぞ?」
アザゼルが前に出る。戦意が高揚でもしているのか、彼の周りを薄暗いオーラが覆い始め、空へと飛びあがる。
「……カテレア、降るつもりはないのだな?」
サーゼクスからの最後通告が降される。カテレアは首を横に振った。
「ええ、サーゼクス。貴方は良い魔王でした。けれど、最高の魔王ではない。だから私達は新しい魔王を目指します」
「そうか、残念だ。アルトリア卿!」
「ハッ!」
「魔王サーゼクス・ルシファーが命じる。星の聖剣をもって叛逆者を一掃せよ!」
「!Yes, my master. 名誉騎士候、アルトリア・ペンドラゴン。眼前の敵を駆逐します!」
サーゼクスの命を受け、アルトリアはエクスカリバーを第一段階で展開する。悪魔たちもそれぞれの武器を手にし、周囲の魔術師達も魔術を発動させんとする。
空中のアザゼルを追うようにカテレアも飛行し、同じ高さに浮かぶ。そしてアザゼルは十二もの黒き翼を展開する。その羽は常闇よりも暗い、濡羽色をしていた。
「旧魔王レヴィアタンの末裔。『終末の怪物』の一匹。相手としては悪くない。カテレア・レヴィアタン、俺といっちょハルマゲドンでもシャレ込もうや」
アザゼルの迫力ある挑戦状にカテレアも不敵な笑みで応じる。
「望むところよ、堕ちた天使の総督!お前たちもかかれ!」
「オォォォォォォッ!」
「参ります!」
今回、オリモブとしてレヴィアタン家に仕える悪魔たちを出させて頂きました。流石に落ちぶれたとはいえ襲撃が内通者の彼以外魔術師しかいないって可哀そうというか、単身で来るとかマ?と思ったので。
そしてロウィーナの戦闘形態。なんの名前も無しに変身するのは味気ないと思ったので幻想たる存在にその身を転ずるという事で幻想転身(トランスファンタズム)というのを作ってみました。