赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 どうも、ファブニルです。

 遂に12月。社会人になり、趣味として再開した小説投稿。最近は定期的に投稿できておらずお恥ずかしい限りです。
 もうすぐ評価ポイントも1000、40話まで後4話なので頑張って年内に両方とも達成したいです!

 よろしければ今回もお気に入り登録や高評価、感想をお願いします。

 それでは第三十七話、どうぞ!


魔王と堕天龍

 時は少し遡る。

 

 堕天使の総督アザゼルと魔王の末裔カテレアが校庭の遥か上空で光と魔の攻防戦を繰り広げ始めた。アルトリアもまた、カテレアが呼び出した配下の悪魔と戦闘を始めている。

 そんな中、木場祐斗はどうすればいいか悩んでいた。こうなった以上は魔王様をお守りするか、リアス部長を追うべきか、どちらがいいだろうかと。そんな彼へサーゼクスが声を掛ける。

 

 

「木場祐斗君。私とミカエルはここでこの学園を覆う結界を強化し続ける。アザゼルとカテレアが暴れる以上、被害は大きくなるかもしれない。できるだけ外へ被害を出したくないからね。悪いのだが、グレイフィアが魔術師転送用の魔方陣の解析が済むまでの間、外の魔術師達を始末してくれないか?」

 

 

 魔王直々の命令、コレは悪魔にとって光栄の極みだった。

 

 

「はい」

「ありがとう。妹の騎士が君で良かったよ。その禁手(バランス・ブレイカー)を妹と仲間の為に振るってくれたまえ」

「はっ!ゼノヴィア、一緒に来てくれ!」

「ああ、私もリアス・グレモリーの『騎士』だ。木場祐斗、私達は二振りそろってこそだと思う。いざ、参ろうか」

 

 

 祐斗とゼノヴィアはお互いに頷き合うと、校庭へ切り込んでいった。

 

 

「メタトロン、アルトリア卿一人では心許ない。貴方も加勢して下さい」

「承知したで御座る!」

 

 

 ミカエルは同じく会談に参加していた熾天使の一人「メタトロン」に加勢を任せ、自身はアザゼルが抜けた分の結界維持に努める。熾天使(セラフ)の一人、メタトロン。忍装束に着替え、何やら忍法などと言っているが、皆気にしたら負けだと思う事にした。

 

 

「はっ!」

「ぐわっ!?」

 

 

 アルトリアが聖剣を振るい、レヴィアタン配下の悪魔を斬りつける。が直ぐには消えず、傷口を抑えながら手に持つ剣で斬りつけてきた。

 

 

「くっ!」

 

 

 レヴィアタン配下は想像以上にしぶとかった。彼女自身これまで何人もの反体制派の悪魔を斬り殺してきたが、彼らの耐久力は異常だ。

 

 

「助太刀するで御座る!忍法セラフ手裏剣!」

「グギャッ!?」

 

 

 悪魔達に苦戦するアルトリアの元へ幾つもの手裏剣が飛来する。それが当たった瞬間、悪魔は断末魔と共に消滅した。すかさずアルトリアの背後に降り立ち、二人は互いに背中合わせとなった。

 

 

「感謝します。メタトロン殿」

「礼には及ばぬで御座る。しかし此奴らの様子、唯ならぬモノを感じるで御座るな」

 

 

 メタトロンの口調は置いておき、その意見には賛成だった。彼らの様子は余りにも不自然だ。殆どが下級や中級クラスの悪魔で構成されているというのに聖剣に抵抗し、熾天使クラスの技を受けてようやく倒れた。

 

 

「この強さ、いえしぶとさは」

「何かカラクリがあるで御座るな」

「フフフ、貴様らに教えてやる。我らは『蛇』の力で己を強化しているのだ」

「蛇?」

 

 

 カッ!ドッ!ドオオオオオオオオオオッ!

 

 

 空から聞こえてくる轟音と、眩い光。上を見上げてみれば、アザゼルとカテレアが激しい攻防を行っていた。アザゼルが自分の身の丈を遥かに超える極太の光の槍を幾重にも出現させ、カテレアに投げ放つ。カテレアは空中に幾重もの防御方陣を張り巡らせて光の攻撃を防いでいる。

 実力ではアザゼルの方が上にも関わらず、カテレアは予想以上に食い下がっていた。

 

 

「あの悪魔、実力からいえば当に傷だらけの筈……」

 

 

 カテレアが、懐から小瓶を取り出し、中に入っていた小さな黒い蛇らしきものを吞み込んだ?刹那。

 

 

 ドンッ!

 

 

 空間が激しく振動し、駒王学園全域に力の波動を波立たせる。カテレアの全身から放つ魔力が膨れあがり、不気味なオーラを漂わせていた。目の敵にしているセラフォルーに迫る質量を持っている。今呑み込んだ蛇はいったい……

 アザゼルが無数の光の槍を彼女に向けて放つが、それをカテレアは右腕を横になぐだけで難なく消失させてしまった。

 

 

「なんと!?あのアザゼルの攻撃をああも容易く!」

 

 

 堕天使総督アザゼルの力は今日この場にいる方々の中でも一、二を争うレベルだ。そしてメタトロンはノアの大洪水の頃から堕天使達と因縁を持つ。彼の実力をよく知るが故にその事実に驚いた。

 

 

「見たか!アレこそオーフィスの齎した『蛇』の力!『無限の龍神』の力を借り受けたのよ!」

「いくら聖剣を持とうが熾天使が出ようが関係ない!死ね!」

 

 

 そう言った悪魔達は一斉に蛇を呑み込まんとする。今の彼らが強化されれば、上級以上の力を纏う事になる。そうなればアルトリアどころか、メタトロンも危うくなるだろう。

 

 

 ガガガッ!

 

 

「「「!?」」」

「素直に飲ませると思うで御座るか?生憎拙者、そういった隙は見逃さぬで御座る」

 

 

 『蛇』を封じた小瓶に光力で生み出したクナイが突き刺さる。メタトロンの攻撃だ!一斉に『蛇』を呑もうとした悪魔たちは固まり、その隙に割れた小瓶から『蛇』はするり、と何処かへと消えていった。

 

 

「お見事です、メタトロン殿。まるで本物の忍者ですね」

「いえいえ、拙者などまだまだ未熟者で御座る。いつか本物のNINJAに弟子入りして腕を磨きたいで御座るな」

 

 

 謙遜するメタトロン。さて、これで気勢は削げた。後は混乱する悪魔たちを倒していくだけである。

 

 

「お、おのれぇ……」

「怯むな!この数で押せば……」

「ほう、この程度の小部隊で拙者を止められるとでも?アルトリア殿、拙者が前に出ます故後詰をお願いしたい」

「承知しました」

「では、参る!」

 

 

 翼を広げ、白い軌跡となってメタトロンが突っ込む。手に光力で生み出した忍者刀を持ち、悪魔たちを斬りながら隙を潰すように手裏剣を飛ばす。予め強化されたとはいえ、熾天使には遠く及ばず一人また一人と消滅していく。

 アルトリアもまたメタトロンに続き、悪魔たちを剣で、槍で、弓で淡々と屠っていく。が、殆どの悪魔はメタトロンが倒していった。流石は熾天使(セラフ)のメンバーというべきか、悪魔を倒すのに手馴れている。彼が敵にならなくて良かったとアルトリアは密かに思った。

 

 ふと周りを見れば、祐斗とゼノヴィアも外に出て魔術師達を斬り倒していた。祐斗の聖魔剣が魔術師を魔術ごと切り払う。ゼノヴィアもまたデュランダルを振り回し、複数の魔術師を消し飛ばす。が、その余波で工程や校舎が破壊されていく。デュランダルは暴れ馬とは聞いていたが、ここまで周りへの被害が大きいとは思わなかった。

 次第に数を減らしていく悪魔に対して、魔術師達はどんどん転移してくる。

 

 

「!あれは……」

 

 

 すると旧校舎の方から人が駆けてきた。遠くからでもよく分かる紅髪、リアスである。そしてイッセーと、その後ろにはギャスパーの姿がある。

 

 

「おぉ、無事ハーフヴァンパイアを取り戻せたで御座るか!重畳重畳」

 

 

 メタトロンもそれを確認し、安堵の表情を見せる。人質となっていたギャスパーを取り戻せた以上、後は敵を殲滅するのみだ。

 

 

「そんな、私の下僕たちが……」

「おいおい、強化したからって余所見してるひまがあるのか?」

 

 

 自分の家来たちが次々とやられていく様に狼狽するカテレア。かつて四大魔王の一角として数多の軍勢を率いていた頃とは比べ物にならないが、それでも皆真のレヴィアタンに仕える者として十分な実力を持っており、その力も『蛇』によって強化していた。そんな彼らが碌な痛痒も与えられず一方的に蹂躙されるなど信じられなかった。そしてそんな隙を、アザゼルもまた見逃さない。すかさず多数の光の槍を投射する。

 

 

 ヒュボッ!

 

 

 しかしその攻撃がカテレアを貫くことは無かった。突如、彼女の目の前に黒い渦が出現する。まるで深淵の孔のような、ブラックホールのような渦に光の槍は吸い込まれていった。それはアザゼルが何度も見た事のある『孔』だった。

 そんな時だった、横合いからの予想外の一撃が堕天使の総督を襲った———

 

 

 

 

「悪いな、アザゼル」

「すまない、だがこっちにも事情があるんだ」

 

 

 眩い輝きながら、俺達の前に白龍皇が舞い降りる。その傍らにはロウィーナもいた。そこにカテレアが並び立つ。

 

 

「和平が決まった瞬間、拉致したヴァンパイアの神器を発動させ、テロを開始させる手筈でした。頃合いを見てから私と共に白龍皇と奈落の魔竜が暴れる。三大勢力のトップの一人でも葬れば良し。会談を壊せればそれで良かったのです」

 

 

 やはり、強い。旧魔王の血筋だけでなく、オーフィスの『蛇』によって強化もされている。今の自分ではエクスカリバーを解放しない限り勝ち目はない。他のグレモリー眷属も似たような事を考えている中、イッセーだけはカテレアの格好に釘付けになっていた。

 

 

「いやらしい視線を感じるわ。その子が赤龍帝なのですか、ヴァーリ?」

「ああ、残念ながら、そうだよ。本当に残念な宿主なんだ」

「そうね、そっちの星の聖剣の担い手と比べると尚更ね」

「私としては少々不満だがな、自分が何者か分かっていないのがもどかしい」

 

 

 ロウィーナの発言にアルトリアは引っ掛かりを覚えた。私が何者か?どういうことだ?

 

 

「残念残念言うな!俺だって懸命に日々を生きてんだ!……って、なんでお前達とアザゼルが対峙してる?つーか、その姉ちゃんだれだよ?」

 

 

 まだ状況を分かっていないイッセーをカテレアは哀れむような目で見ていた。

 

 

「なるほど、本当に残念な子ね。ヴァーリ、ロウィーナ、この子たちは殺すの?」

「私はどちらでもいい。アイツが覚醒すれば殺す必要も出てくるが、今は別に殺す必要もない」

「俺もどうしようか迷っているのが本音だ。正直、俺は彼にそこまで期待をかけているわけじゃないんだ」

 

 

 ヴァーリの言葉にチンプンカンプンなイッセーだったが、アルトリアもまた今の状況は兎も角ロウィーナの発言に疑問を抱いていた。

 

 

「…まったく、俺もやきが回ったもんだ。身内がこれとはな…」

 

 

 穴から這い出ながら自嘲するアザゼル。ヴァーリがマスクを兜にシュバッと収納させて、顔を見せる。

 

 

「いつからだ?いつから、そういうことになった?」

「コカビエルを本部に連れ帰る途中でオファーを受けたんだ。ロウィーナはその後誘った形さ。申し訳ないとは思っているが、こちらの方が面白そうなんでな」

「ヴァーリ、『白い龍(バニシング・ドラゴン)』がオーフィスに降るのか?」

「いや、あくまで協力するだけだ。魅力的なオファーをされた。『アースガルズと戦ってみないか?』こんなこと言われたら、自分の力を試してみたい俺では断れない。アザゼルは、ヴァルハラ、アース神族と戦う事を嫌がるだろう?戦争嫌いだものな」

「ロウィーナ、お前もそうなのか?」

「まぁな、そもそも私はヴァーリと共にある。それがあるべき形だ。それに私だって興味がある、神々との戦いというものにな」

「俺はお前達に『強くなれ』と言ったが、『世界を滅ぼす要因だけは作るな』とも言った筈だ」

「関係ない。俺は永遠に戦えればいいだけだ。それにロウィーナの在り方を考えれば、それは無理な話なのは分かっていただろう?」

「…そうかよ。いや、俺は心のどこかでお前達が手元から離れていくのを予想していたのかもしれない。ヴァーリ、お前は出会った時から今日まで強い者との戦いを求めていたものな。そして出会った頃真っ白だったロウィーナは、一番一緒にいたお前に染まった。こうなる事は必然だったのかもな」

 

 

 二人の言葉を聞いたアザゼルは諦めるように苦笑し、どこか悲し気にため息を吐きながら肩を落とした。

 

 

「今回の下準備と状況提供は白龍皇と奈落の魔竜の二人ですからね。彼等の本質を理解しておきながら、放置しておくなど貴方らしくない。結果、自分の首を絞めることとなりましたね」

 

 

 と、カテレアはアザゼルを嘲笑した。苦笑するアザゼルを尻目にヴァーリは自身の胸に手を当て、イッセーに向かって言う。

 

 

「改めて自己紹介だ。俺はヴァーリ。本名はヴァーリ・ルシファーだ」

「「「!?」」」

 

 

 !?ルシファー!そういえばヴァーリはいままで姓を語らなかった。なにか出生に秘密があるのか、生まれた家を嫌っているのかとは思っていたが、明かされたそれはトンデモない爆弾だった。

 

 

「死んだ先代の魔王ルシファーの血を引く者なんだ。けど、俺は旧魔王の孫である父と人間の母との間に生まれた混血児。『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の神器は半分人間だから手に入れたものだ。全くの偶然だが、ルシファーの真の血縁者でもあり、『白い龍(バニシング・ドラゴン)』でもある俺が誕生した。運命、奇跡という言葉は、俺のための言葉かもしれないな」

 

 

 そう言うヴァーリの背中から、光の翼と共に悪魔の翼が幾重にも生え出した。悪魔、それも旧魔王ルシファーであり白龍皇でもある。俄かには信じがたいが、なんという巡り合わせか。

 

 

「嘘よ…。そんな…」

 

 

 兄がルシファーの名を襲名しているリアスも驚愕の表情を浮かべている。しかし、アザゼルは肯定した。

 

 

「事実だ。もし、冗談のような存在がいるとしたら、こいつのことさ。俺が知っている中でも過去現在、おそらく未来永劫においても最強の白龍皇になる」

 

 

 最強の白龍皇。悪い意味でだが、間違いなく歴史に名を残すだろう。イッセーの宿命のライバルがここまで厄介な存在とは。助けてあげたいが自分にもロウィーナという過酷な試練が待っている事を考えるとそんな暇はないかもしれない。

 

 

「さぁ、覚悟を決めてもらいましょうか、アザゼル」

 

 

 未だにアザゼルを嘲笑うカテレア。

 

 

「…チッ、さっき膨れ上がったオーラの量、オーフィスの野郎に何をもらった?」

 

 

 アザゼルの問いかけにカテレアは笑った。

 

 

「ええ、彼のドラゴンは無限の力を有している。世界変革の為、少々力を借りました。おかげで貴方と戦える。サーゼクスとミカエルを倒すチャンスでもあります。彼等は愚かなトップ。貴方もですよ総督」

「…俺はそうだ。愚かかもな。シェムハザがいなけりゃ、何もできねぇ。只の神器マニアだ。けどよ、サーゼクスとミカエルはそこまでバカじゃねぇと思うぜ?少なくともてめぇよりは遥かに優秀だ」

 

 

 アザゼルの言葉にカテレアは顔を歪ませる。

 

 

「世迷言を!いいでしょう、今ここでトドメを刺します。新世界創造の第一歩として、堕天使の総督であるあなたを滅ぼす!」

 

 

 アザゼルの言葉に神経を逆撫でられたカテレアは強い口調で殺意を向け、大きな魔法陣を構える。絶体絶命な状況にも関わらず、アザゼルは愉快そうにしている。するとアザゼルが懐から一本の短剣らしきものを取り出した。見た目は金色の短剣、いや短槍というべき形をしており、柄尻に紫色の大きな宝玉が付いている。

 

 

「それは?」

 

 

 訝し気に見るカテレアに、アザゼルは円錐に尖った切っ先を向けた。

 

 

「…俺は神器マニア過ぎてな。自分で神器を制作したり、レプリカも作ったり、色々やってる。まあ、ほとんどの物が屑でどうしようもない奴ばかりでな。全く神器を開発した神はすげぇよ。俺が唯一、奴を尊敬するところだ。だが、甘い。『神滅具(ロンギヌス)』と『禁手(バランス・ブレイカー)』なんていう神と魔王、世界の均衡を崩せるだけの『バグ』を残したまま死んじまったんだからな。ま、だからこそ、神器は面白いんだけどよ」

「安心なさい。新世界で神器なんてものは絶対に作らない。そんなものが無くても世界は機能します。いずれは北欧のオーディンにも動いてもらい、世界を変動させなくてはなりません」

 

 

 その反応にニンマリと口の端を吊り上げた後、アザゼルは吐き捨てる。

 

 

「それを聞いてますますお前らの目的に反吐が出る思いだ。ヴァルハラ?アース神族?横合いからあの隻眼ジジイ(オーディン)に全部かっさらわれるつもりかよ!やっぱお前ら見通しが甘いぜ。というよりもな、俺の楽しみを奪う奴は消えてなくなれ」

 

 

 アザゼルの持つ短槍の宝玉から紫の光が放たれる!光はアザゼルの身体を覆うほど激しく輝き、すぐ近くにいたカテレア達は余りの光量に手を翳した。

 

 

「ッ!ま、まさか!アザゼル、あなたは!」

 

 

 何かを気付いたカテレアを前に堕天使の総督は力のある言葉を発した。

 

 

禁手化(バランス・ブレイク)…ッ!」

 

 

 一瞬、更に激しい閃光が辺りを包み込む。光が止んだ後、そこに現れたのは黄金の全身鎧(プレート・アーマー)を纏ったアザゼルの姿だった。金色に輝き、生物的なフォルムを持つ装甲と全身の各所に紫の宝玉を備えたその姿は、まるで二天龍の鎧を彷彿とさせる。

 

 

 バッ!

 

 

 アザゼルは先程のヴァーリの様に背中から十二枚もの漆黒の翼を展開させる。濡羽色の羽根が周囲に舞った。ドラゴンを模した黄金の鎧が黒い翼を羽ばたかせ、その手に二又に分かれた巨大な光の槍を握る。

 その姿に名をつけるなら、『堕天龍』と呼ぶのが相応しいだろう。

 

 

「『白い龍(バニシング・ドラゴン)』を始めとしたドラゴン系神器を研究して作り出した、俺の傑作人工神器だ。『堕天龍の閃光槍(ダウン・フォール・ドラゴン・スピア)』、それの疑似的な禁手(バランス・ブレイカー)状態。名付けて『|堕天龍の鎧《ダウン・フォール・ドラゴン・アナザー・アーマー》だ」

 

 

 鎧越しに感じる波動は濃密であり、それまで放っていた堕天使の物だけでなく、強力なドラゴンの波動も放っている。

 

 

「ハハハ!見ろロウィーナ!流石だ!やっぱりすごいなアザゼルは!」

「あぁ、凄いな。まさか禁手(バランス・ブレイカー)を作れるほどとは。感じるぞ、あの神器から私に匹敵する、龍王クラスの力を!」

 

 

 愉快そうにヴァーリが笑う。ロウィーナもまたアザゼルの研究成果と放つオーラに賛辞を送る。二人とも、ここまでの強者を目の前にしてこの笑いとは。アザゼルの姿とオーラに恐れ慄くカテレアとは対照的だ。

 

 

「ヴァーリ、ロウィーナ。保護者として、てめぇらの相手をしてやりたいところだが…。まあ、『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』と騎士王の現し身と仲良くやってな」

 

 

 まるで我が子に向かって、あの子達と遊んでこいとばかりなアザゼルの言葉にイッセーは引いてしまう。

 

 

「でも、アザゼルと戦った方が楽しそうだ」

「確かにな。だが我々の因縁を考えればあちらが正しい相手だろう。アザゼルの方もカテレアとやり合う気だからな」

 

 

 ヴァーリはそう答える。ロウィーナもまた賛成の姿勢を示しつつ、目線を地上のアルトリアへと向けた。

 

 

「…力を有したドラゴンをベースにしましたね?」

 

 

 カテレアの問いにアザゼルは答える。

 

 

「ああ、ちょっくら『黄金龍君(ギガンティス・ドラゴン)』ファヴニールをこの人工神器に封じてな。二天龍『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』と『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の神器を模したのさ。今のところは成功ってとこか」

「アザゼル!それだけの力を持ちながら、貴方は!」

「『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』をバックにしておいてよく言うぜ」

「…神器の研究はそこまで進んでいなかったはずです…」

「その様子じゃ、俺の組織を裏切った輩が神器研究をいくらか持ち出したみたいだな。だが、無駄だ。真理に近い部分は俺とシェムハザしか知らない」

 

 

 状況が悪くなる感じたカテレアは魔力をフル稼働させる。同時にオレンジと黒のオーラが彼女の身体を覆った。

 

 

「私は偉大なる真のレヴィアタンの血を引く者!カテレア・レヴィアタン!貴方如き忌々しい堕天使に負けはしない!」

 

 

 覚悟を決めたとばかりに吼えるカテレア!それに対し、アザゼルは手招きする。

 

 

「来いよ?」

「舐めるなッ!」

 

 

 特大のオーラを纏ったカテレアはが両手を前に出した瞬間、腕が伸びた!伸びた腕は幾重にも枝分かれし、まるで蛇の様にアザゼルへと殺到する!

 

 

 ズバァッ!

 

 

 しかしアザゼルは槍を一薙ぎし、殺到してきた全ての腕を消し飛ばす!

 

 

 ザンッ!

 

 

 一瞬の出来事だった。カテレアに向かってアザゼルが飛び込んだかと思うと、槍を突き出したまま彼女の後ろにあられる。刹那。

 

 

「ガッ!?アァァァアァッ……」ブシューッ!

 

 

 カテレアの体から鮮血が噴出した!肩口からバッサリと斬り抉られ、傷口と口腔から血を吹き出す。あの傷では幾ら強化しようと出血多量で死に至るだろう。勝負は決した。

 

 

「グッ、ただでは、やられません!!」

 

 

 カテレアが再び自身の腕を触手のように変化させ、アザゼルの左腕に巻き付ける。その身体に怪しげな紋様が浮かび上がった!

 

 

「あれは、自爆用の術式だわ!」

 

 

 リアスが術式と魔力の昂りからカテレアの狙いを察した。死なば諸共という事か!アザゼルは触手を引きはがそうとするが、一向に剥がされる気配は無い。

 

 

「アザゼル!この状態になった私を殺そうとしても無駄です!私と繋がれている以上、私が死ねばあなたも死ぬように強力な呪術も発動します!」

「ッ。犠牲覚悟で俺に大ダメージってか。安っぽい発想だが、効果は絶大なわけだ」

「イッセー、距離を取るわよ!このままでは自爆に巻き込まれる!」

「でも、部長!アザゼルは?」

「彼もいち組織の総督ならなんとかするわ!それよりも私達が巻き込まれて死ぬ!早く!」

 

 

 イッセーとリアスが急いで距離を取る。ある程度離れた所で、リアスが防御障壁を幾重にも展開して爆破の余波に備えようとしていた。

 

 

「メタトロン殿、私の後ろへ!『今は遠き白亜の壁(ロスト・ウォール)』!!」

「かたじけないで御座る!」

 

 

 アルトリアもまた防御結界を展開し、メタトロンと自分を護る。あの魔力量からしてサーゼクス達の居る辺りまで爆風が及ぶ可能性がある。破られる心配は無いだろうが、万が一は魔力を空にする覚悟で第二段階まで防御を引き上げるしかない。

 

 

「わっ!」

 

 

 ギャスパーの悲鳴!見ればギャスパーの両眼に何かの呪術的な紋様が刻まれていた。

 

 

「それは封じさせてもらう。流石に停止の力は厄介だ」

 

 

 ヴァーリか。恐らくギャスパーはカテレアを停止させることで爆発を防ごうとしたのだろう。それを察知したヴァーリに邪魔されたようだ。ヴァーリ・ルシファー、魔術の才能まで備えているとは。奴はどれだけ万能なのかと、アルトリアは警戒を強めた。

 

 

「その触手は私の命を吸った特別製。そう簡単には切れませんよ」

 

 

 不敵に笑うカテレア。アザゼルは切るのを諦めたのか、肩をすくめた。次の瞬間。

 

 

 バシュッ!

 

 

 左腕ごと触手を切り離す!なんの躊躇もなく自分の腕を斬り落とした!アザゼルの左腕の傷から鮮血が迸るが、すかさず治療し事なきを得る。斬り落とされた腕の方は塵と化した。

 

 

「ッ!?自分の腕を!?」

 

 

 驚くカテレアだが、その腹部をアザゼルが投げ放った光の槍が貫く!

 

 

「片腕ぐらいお前にくれてやるよ」

 

 

 シュワッ。

 

 

 カテレアの体は爆破することなく、塵と化して空へ消えた。堕天使の長の光ともなれば悪魔には耐え難いダメージを与える。カテレアは抵抗する事も出来ずに消失していった。

 

 

 カッ!

 

 

 アザゼルの鎧が解除される。堕天使の総督は失った腕に未練もなさそうにして、舌打ちだけした。

 

 

「チッ。人工神器の限界か。まだ改良の余地が多分にあるな。…核の宝玉が無事なら、また作り直せる。もう少し俺に付き合ってもらうぜ、『黄金龍君(ギガンティス・ドラゴン)』ファヴニール」

 

 

 と、手に持つ宝玉に軽くキスをしていた。こうしてテロの首謀者カテレアとアザゼルの決着はあっけなくついたのだった。




 ハイ、ミカエルのお付きはメタトロンでした。最初はウリエル辺りにしようかと思っていたのですが、fateでも有名な天使としてメタトロンに来てもらいました。
 因みに天使は基本DD基準です。型月でミカエルやアザゼルが出てくるとかどんだけだよって奴ですから。

 さて、次は白側陣営戦。赤VS白、なるべく早く仕上げるのでお楽しみにお待ちください!
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