赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 ドーモ、ファブニルです。

 今年も後半月、FGOは終章まで後僅か、冬木で何が起こるのか。今から楽しみです!

 さて今回はニ天龍の初対決。アルトリアとロウィーナもまた初めて刃を交えます。ロウィーナがどんな手を繰り出してくるのか、お楽しみ下さいませ。

 よろしければ今回もお気に入り登録や高評価、感想をお願いします。

 それでは第三十八話、どうぞ!


『赤い龍』VS『白い龍』

 アザゼルがカテレアを倒した。だが、魔術師達を始めとしたテロリストはまだ残っている。すると、ヴァーリとロウィーナが高度を下ろしてくる。

 

 

「流石はアザゼル。だが鎧が解除されたな。まだまだ人工神器は研究が必要という事か」

「加えて隻腕か、この状態のアザゼルと戦っても面白くなさそうだな」

 

 

 ヴァーリとロウィーナに向き直るアザゼル。

 

 

「さてヴァーリ、ロウィーナ。どうする?俺はまだやれるぞ?鎧が無くても片手でも十分にお前らと戦える」

 

 

 アザゼルは手に光の槍を出現させ、その穂先を白龍皇と奈落の魔竜に向ける。構えるアザゼルをヴァーリは一瞥するだけだった。

 その瞬間、夜空に浮かぶ魔法陣が書き換わる!グレイフィアが魔法陣の解析を終えたのだ。今空にはグレイフィアの銀色の魔法陣が浮かびあがっている。

 

 

「解析完了、権限を奪いました。これよりテロリストの殲滅に移ります」

 

 

 次の瞬間、魔法陣から光の雨が降り注ぐ。グレイフィアの圧倒的な火力の魔法弾によって残った魔術師、悪魔達は次々と消し飛んでいく。しかし、結界の外にいるイッセー達には当たらない。彼女の卓越した魔法の技量により無差別に攻撃せず、敵だけを攻撃しているのだ。

 

 

「す、すげぇ」

「アレがグレイフィアの実力よ、これでテロリスト達を一掃出来るわ!」

「フン!」

 

 

 しかしそんな攻撃もまた白龍皇達には通じない。すかさずヴァーリが両手を掲げ、防御魔法陣を展開する。彼の青い魔法陣が銀色の雨を防ぎ続ける。苛烈な攻撃にさらされても尚、ヴァーリとロウィーナは無傷だった。

 

 

「グレイフィアの魔法を全て防ぐとはね……」

「最強の『女王』、即席程度ならなんとか防げるか……」

「隙あり、で御座る」

 

 

 そんな魔法の雨をすり抜けながら走る白い軌跡、メタトロンだ。手に光の小刀を持ち、敵の首級を狙う。両手で魔法陣を展開するヴァーリには防ぐ手立てが無い。ヴァーリまで後僅か、メタトロンの小刀がヴァーリの首を……

 

 

「やらせると思うか?」

 

 

 ヴァーリとメタトロンの間に入る人影、ロウィーナだ。ヴァーリを護るように間に入った彼女に向かってメタトロンは小刀を振るう。しかしその一撃は肉に突き刺さる音ではなく、ガキン!という金属音を発した。小刀の刃は彼女を切り裂くことなく、ロウィーナの持つ剣によって阻まれたのだ。

 

 

「!あの剣は……」

「オイオイ、マジかよ……」

 

 

 その剣は凄まじいオーラを放っていた。眩く輝く銀色の刀身、血のような真っ赤な鍔の装飾、放つオーラは聖剣とも、魔剣とも取れる強く禍々しいモノ。

 

 それはかつて王権の象徴としてとある国の王が所持していた聖剣。しかし叛逆者によって簒奪されたのち、聖なる光は歪み、戦いの混乱の中で歴史の闇に消えていった。

 

 何百、何千年と生きた天使と堕天使はその剣に見覚えがあった。そしてそれ以上に、一人の少女はその剣をよく知っていた。

 

 

『あれは、まさか……』

「…燦然と、輝く王剣(クラ、レント)……?」

 

 

 それはアルトリアの先祖にとって因縁浅からぬ剣であった。血塗られた聖剣を振るうロウィーナはメタトロンの攻撃を往なすと、返す刀でメタトロンに一太刀浴びせる。すかさず防御するが、クラレントの一撃は光の小刀を容易く折り、メタトロンに手傷を負わせた!

 

 

「ぐおッ!?」

「メタトロン!」

 

 

 ロウィーナからの反撃を受け、メタトロンは後退した。手で押さえる肩口に深い傷が刻まれている。

 

 

「不覚……!」

「下がりなさいメタトロン。セラフォルー殿、回復をお願いします」

「えぇ!」

「クラレント、アーサー王伝説に出てくるあの聖剣か!」

「かつてアーサー王が所持していたと言われる王権の象徴。たしかに叛逆の騎士モードレッドに奪われ、カムランの戦いでアーサー王に致命傷を負わせた後ぱったりと話を聞かなかったが……」

 

 

 聖剣の関係者たる祐斗とゼノヴィアが、想像以上のビックネームの登場に驚く。

 

 

「……何故だ、何故貴様がその剣を!!」

「ん?あぁ、これか。『禍の団』から入る際に貰ってな。まだ余り使っては無いが、中々いい剣だ」

 

 

 そう言いながらクラレントを軽々と振るう。どうやらクラレントはモードレッドの死後、『禍の団』にまで流れ着いたようだ。

 

 

「アーサー王に倒されたヴォーティガーンが、アーサー王を死に至らしめた聖剣を振るう。縁とは不思議なものだな?」

「戯言をッ……!」

『落ち着くんだマイロード!』

 

 

 挑発するかのようなロウィーナの笑みに、アルトリアは苦虫を嚙み潰したように顔をしかめる。

 

 

「フッ、なぁ兵藤一誠。運命ってのは残酷だと思わないか?」

 

 

 ヴァーリは唐突にそんなことを口走る。

 

 

「俺のように魔王プラス伝説のドラゴンという思いつく限り最強の存在がいる反面、そちらのようにただの人間に伝説のドラゴンが憑く場合もある。幾ら何でもこの偶然は残酷だと俺は思うな。ライバル同士のドラゴン系神器(セイクリッド・ギア)とはいえ、所有者二名の間の溝はあまりに深すぎる。天と地以上にその差は大きい」

 

 

 イッセーとヴァーリ、確かに両者の生まれは対照的だ。片や魔王の血を引き、生まれながらの強者の資質を併せ持つのに対して、もう片方は悪魔に転生して半年も経たない一般家庭の生まれだ。イッセーも自分の境遇が小馬鹿にされ、苛立ちを見せる。それに対して、ヴァーリはおかしそうにうなずく。

 

 

「君の事は少し調べた。父は普通のサラリーマン。母は普通の専業主婦で、たまにパートに出ている。両親の血統はまったくもって普通。先祖に力を持った能力者、術者がいない。君の友人関係もアルトリア・ペンドラゴンを除いて特別な存在ではない。君自身も悪魔に転生するまでごく普通の男子高校生だった。『赤龍帝の籠手』以外、何もない」

 

 

 マスクに隠れて見えないが、その様子からは憐みと嘲りが見て取れた。

 

 

「つまらないな。あまりにつまらな過ぎて、君の事を知った時落胆よりも笑いが出た。『ああ、これが俺のライバルなんだ。まいったな』って。俺のバディであるロウィーナのライバルは騎士王の血を継ぐエクスカリバーの担い手と豪華極まりないのに、俺のライバルの貧相さは見るに耐えん。せめて親が魔術師か何かならば、話は少しでも変わったかもしれないが……そうだ!こういう設定はどうだろうか?君は復讐者になるんだ!」

 

 

 ヴァーリはまるで良い事思いついた!という様子で語る。復讐者?一体何を……いや、ここまでの会話の流れから分かってしまった。分かりたくはなかったが、奴は!

 

 

「俺が君の両親を殺そう。そうすれば、君の身の上が少しは面白い物になる。親を俺のような貴重な存在に殺されれば晴れて重厚な運命に身を委ねられると思わないか?どうせ、君の両親は今後も普通に暮らし普通に老いて、普通に死んでいく。そんなつまらない人生よりも俺の話した設定の方が華やかだ!」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、アルトリアの内側から強烈な怒りが込み上げてきた。奴は言った、兵藤一誠の両親を殺すと。巫山戯るな、戦いの過程においての犠牲ではなく、態々自分の戦いを彩る装飾に奴はあの人達の死を使う気だ。

 

 兵藤五郎は確かに普通のサラリーマンだ。だが、彼の何気ない優しさにアルトリアは幾度も救われてきた。小中学校の授業参観の日、親のいない自分の為に時に彼は仕事を休んでまで来てくれた。

 

 兵藤三希もまた普通の主婦だ。だが彼女の温かさはいつもアルトリアを癒してくれた。赤の他人の自分を何度も家に招き入れて貰い、食卓を囲むことも有った。兵藤家で食べた彼女の手料理は今でもアルトリアの大好物だ。

 

 そんな彼らを殺させてなるものか!怒りに震え、剣を持つ手に力が籠る。その瞬間、彼女の怒りをより大きな力が覆った。イッセーだ、二人のパスを通じて彼の尋常ではない怒りが雪崩れ込んでくる。

 

 

「ヴァーリ・ルシファー、きさm「殺すぞ、この野郎」ッ!?」

 

 

 ぼそりとイッセーが呟く。アルトリアはイッセーから初めて濃い殺意を感じた。

 

 

「…お前の言う通り、俺の父さんは朝から晩まで家族の為に働く普通のサラリーマンだ。俺の母さんは朝昼晩と家族の為にうまい飯を作ってくれる普通の主婦だ。…でも、俺をここまで育ててくれた。俺にとって最高の親なんだよ」

 

 

 そうだ。あの二人が、兵藤一誠をここまで育て上げたのだ。

 

 

「…殺す?俺の父さんと母さんを?なんで、てめぇなんかの都合に合わして殺されなくちゃいけないんだよ。貴重だとか、運命だとか、そんなの知るかッ!」

 

 

 強い力と感情がパスを通して自分にも流れてくる。そうだ、あの人たちはニ天龍の戦いを彩る道具ではない。ヴァーリ・ルシファー、お前は赤い龍の逆鱗に触れたぞ!

 

 

「てめえなんぞに俺の家族を殺されてたまるかよォォォォォォッッ!」

Welsh Dragon over booster(ウェルシュドラゴンオーバーブースター)!!!!

 

 

 イッセーの怒りの咆哮に呼応し、神器が真っ赤で強大なオーラを解き放ち始めた。彼の装着していた腕輪が砕け散り、その身体を真っ赤な光が覆う。光が収まった時、イッセーは『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』を装備していた。

 

 

「っ。見ろ、アルビオン。兵藤一誠の力が桁違いに上がったぞ。怒りという単純明快な理由が引き金だが、これは…ハハハハ、心地よい龍の波動だな」

『神器は単純で強い思いほど力の糧とする。兵藤一誠の怒りは純粋なほど、お前に向けられているのさ。真っ直ぐな者、それこそドラゴンの力を引き出せる真理のひとつ』

「ドラゴンとは元来、純粋な力の塊だ。そういう意味ではお前より奴の方がドラゴンと相性がいいわけだな、ヴァーリ」

 

 

 ロウィーナの言葉は冷静な分析であると同時に嘲りの色も持っていた。彼女はこう言いたいのだ、イッセーが単純馬鹿だと。

 

 

「だが!頭が悪いのはどうだろうか!兵藤一誠!君はドライグを使いこなすには知恵が足りなすぎる。それは罪だよ」

「さっきからベラベラ俺が分からないことを言ってんじゃねぇっ!アスカロンッ!」

Blade(ブレード)! 』

「そう!それこそ、バカというやつなんだ!」

 

 

 イッセーは背中の魔力噴出口からオーラを噴き出して、ヴァーリへ向かって飛び出す。ロウィーナは何も言わずにその場から離れ、地面に降り立つ。そのまま、イッセーとヴァーリが空中で戦いだした二天龍の戦いに誰も手を出す事も出来ず見守る事しか出来ない。

 だが、皆が二人の戦いを見入る中、彼等のバディというべき二人の少女は互いに睨み合っていた。

 

 

「さて、白と赤の対決が始まったが、私たちはどうする?さっきも言ったが私はお前が覚醒しなければ特段殺す理由はない」

「その覚醒がなにを指しているのか私には分からない。ただ、一つ聞いておきたい。ロウィーナ・ヴォーティガーン、お前もまた戦いを彩る為に一般人を殺す事を良しとするのか?」

 

 

 これだけは聞いておきたかった。彼女がヴァーリの暴言を良しとするか否か。テロリスト相手に甘い対応だとは思うが、それでも確かめなければならなかった。

 

 

「そうだな。私はアイツほど回りくどいわけではないからな。だが、私の手はとっくに血に濡れている。今更二人分の血が付いたところで大差はないだろう?なんなら今から殺しに行く事も出来る」

「……そうですか。ならば、ロウィーナ・ヴォーティガーン!今ここで貴様を打ち倒す!そして父祖アーサー王に代わってその剣を回収する!」

「フッ、お前がそれを語るか。良いだろう。アルトリア・ペンドラゴン。大昔のブリテンの因縁をここで晴らすのも面白い!」

 

 

 互いの剣を構えた二人は同時に駆け出し、剣を振り下ろす!

 

 

 ガギンッッ!

 

 

 剣同士がぶつかり合い、鋭く重い金属音を発する。力と力の衝突により、衝撃波が発生し髪を靡かせる。ギチギチ…という鍔迫り合いだけでも凄まじい圧を放っている。同じ剣士として祐斗やゼノヴィアは固唾を呑むしか出来なかった。

 

 

「凄まじい力だな……だがお前と私では決定的な違いと差がある」

「違いと差だと?」

 

 

 次の瞬間、ロウィーナの左腕が振るわれる。あの龍の爪で抉られればアルトリアとて無事では済まない。すかさず距離を取り、宙で体制を整えながら魔力とオーラを刃に込めた。

 

 

「ハァッ!!」

 

 

 飛ぶ斬撃。魔力やオーラを圧縮し、刃を振り抜くことで斬撃を飛ばす魔法剣士の技の一つ。エクスカリバーの斬撃ともなれば生半可な防御を貫通する。それこそドラゴンとて無傷ではすまない。

 

 

「甘い」

 

 

 しかしその斬撃はロウィーナの展開する黒い渦に吸い込まれ、消え去った。

 

 

「これが私とお前の違いだ。『卑王』ヴォーティガーンは騎士王と太陽の騎士の振るった聖剣の光を呑み、逆に返り討ちにしたと言われる。それがこの『星光呑む奈落の孔(ホロウ・オブ・ヴォーティガーン)』の力だ」

「クッ、ならば!」

 

 

 着地し、再び魔力を高める。聖剣による一撃が効かないなら魔術で攻めるだけだ!アルトリアは魔力を高め、ロウィーナを刺し貫くイメージを形作り、魔力を収束させる。

 

 

「風よ!荒れ狂え!風王鉄槌(ストライク・エア)!!」ヒュゴォォォ!ドォン!!

「ほう、ならば!」

 

 

 ロウィーナもクラレントを振りかぶり魔力を高める。それに呼応するかのようにクラレントの柄がガチガチ、と嫌な音を立てながらスライド、変形する。柄から四枚のパーツが開いた次の瞬間、膨大な魔力が柄からあふれ出す。そのままロウィーナはクラレントを思い切り振り抜いた!

 

 

 ギュオォォォォオォォォッ……!!

 

 

 ドラゴンのブレスの如く放たれた魔力の嵐は風王鉄槌とぶつかり合う!赤黒い魔力はアルトリアの放った一撃を押しとどめ、その勢いを散らしてしまった。

 

 

「名付けて『魔竜鉄槌(バスター・オブ・ヴォーティガーン)』、とでもするか」

「そんな、魔力放出の一撃で……」

 

 

 それはなんてことの無い、魔力放出を用いた攻撃だ。魔力の収束を始めとした技術などほとんどない力技。にも拘らずアルトリアの一撃は掻き消されてしまった。アルトリアとて魔力量には自信があった。だが目の前のロウィーナはそれ以上、まるで人型のドラゴンか何かの如く魔力を生み出し続けている。

 

 

「これがお前と私の差だ。圧倒的な魔力差の前では多少の技術などないに等しい」

『相性は最悪、だがそれでも剣術と聖剣の習熟度でいえば君の方が上だ。焦る必要はない』

「えぇ、その通りです!」

 

 

 再び距離を詰め、切り掛かる。ロウィーナはそれをクラレントで受け止め、押し返す。金色と黒と青の残光が舞い、空のニ天龍達に劣らぬ激しい斬り合いを繰り広げる。全く勝ち目が無いように思えるがそうでもない。アルトリアの攻撃は幾度もロウィーナの隙を突き、クラレントによる防御をすり抜けるが、ロウィーナの魔力放出によって阻まれている。

 

 

「ハァッ!!」

「くッ、オォッ!!」

 

 

 エムリスの言葉は正しい。ロウィーナにとってクラレントはあくまでも補助武器、そのルーツをエクスカリバーと同じくするクラレントはエクスカリバー同様に折れず、毀れない。加えてクラレントはかつての戦いによる穢れで呪われており、本来の力を発揮できていない。聖剣の質においてはアルトリアに軍配が上がる。

 

 

「天にて二天龍が相争い、地でペンドラゴンとヴォーティガーンが凌ぎを削る。千数百年前のブリテンの再来で御座るな」

 

 

 傷を癒すメタトロンの眼の先には二つの戦いが映る。ニ天龍は赤と白の残光を残しながら激しくぶつかり合い、それぞれの化身が激しく刃を交えさせる。

 

 

「かつて卑王は我が父祖の一撃に敗れた!例え相性が悪くても勝つ見込みはある!」

「確かにそうだな。だが忘れたか?お前と私では決定的な差がある。それは己が何者かを知っているか否かだ」

「己が、何者かだと?」

「私はなぜ自分がこの世界に生まれたのか、何の役目を持って生まれたのかを知っている」

『!?耳を貸すな、アルトリア!』

「え、エムリス?」

 

 

 エムリスが突然叫び出す。いつも自分をマイロードと呼んでいる彼が名前で呼び出した。その隙を突き、ロウィーナは魔力放出によってアルトリアを吹き飛ばす。

 

 

「グッ…!」

「私はお前が齎すかもしれない千年王国を阻止するために生まれたのだ。人ならざる神秘の駆逐された真の意味での人間の世界。その傲慢を正すためにな!」

「!?!?」

 

 

 ロウィーナの口から放たれた言葉にアルトリアは耳を疑った。千年王国?人ならざる神秘の駆逐?何を訳の分からない事を言っているんだ、この女は?

 

 

「アザゼル、今の彼女の話……」

「……お前の言いたいことは分かる。そうさ、アイツは噂によく聞く英雄の末裔なんてもんじゃない。文字通りの『終末装置』さ」

「!?そんな危険な物を貴方は!」

 

 

 戦場の後方、下がったアザゼルとミカエルの会話が耳に入る。『終末装置』?自分もイッセー同様に今日は疑問だらけだ。しかし疑問を振り払い剣を握り直す。

 

 

「そんな事は今は関係ない!貴様が白龍皇に与し、秩序を乱さんとする以上、私はお前を倒す為に剣を振るうだけだ!」

「フッ、思考放棄か。まぁいい。と、あちらは中々面白い事になってるぞ?」

 

 

 ロウィーナが見る方に視線を向けると、そこでは、二天龍の戦いが更なるステージへと進もうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

時はイッセーが空中に飛び出す時まで遡る。

 

 

「さっきからベラベラ俺が分からないことを言ってんじゃねぇっ!アスカロンッ!」

Blade(ブレード)! 』

「そう!それこそ、バカというやつなんだ!」

 

 

 背中の噴射口からオーラを噴き出して、イッセーはヴァーリに向かって飛び出す。しかし、ヴァーリは軽やかに避け、タックルをかわした。しかしイッセーは態勢を宙で立て直し、避けた先のヴァーリに再度飛び込んでいく。籠手からアスカロンを伸ばして、我流剣術で攻撃を繰り出していく。

 しかしただ振り回すだけの斬撃では、高速で動きで避け回るヴァーリに一太刀も浴びせる事が叶わない。

 

 

『ヴァーリ、その剣は龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の力を帯びている。一太刀浴びれば大きなダメージは否めないぞ』

「そうか、アルビオン。だが、当たらなければ意味無いさ!」

 

 

 ヴァーリの言う通り、イッセーの腕前では掠る事すらできない。ここに来てイッセーはもっと剣士組から剣術を習っておくべきだった事を後悔していた。しかしこの禁手(バランス・ブレイカー)状態ならば倍増能力を好きな配分で一時的に使用可能だ。

 

 

『だが使うたびに体力か魔力を消耗する。倍増する能力が高ければ比例して、お前のスタミナを奪う。それが本来の俺の禁手(バランス・ブレイカー)能力だ。仮初とはいえ、たった一回で鎧を維持する力を消耗してしまう愚行だけは犯してくれるなよ?アザゼルから貰った腕輪でも限界があるぞ。使うたびに禁手(バランス・ブレイカー)している時間が減少する』

 

 

 戦うどころか鎧を維持するだけでも体力を奪われる。余りにも高燃費だが、対となるヴァーリは余裕そうである。

 

 

「んじゃあヴァーリだって」

『奴の体力は凄まじいようだ。対の存在である白龍皇もまた能力を使うたびに力を削るが、所有者のスタミナが強大ならば使用できる時間も膨大だろうな』

 

 

 圧倒的な力量差にイッセーは歯噛みする。しかしそんなイッセーの感傷を待つヴァーリではない。

 

 

ドンッ!

 

 

「ぐはっ…!」

 

 

 一瞬、息が詰まる。胸に重い拳の一撃を食らったのだ。余りの速さに目で追う事も出来ず、その威力の重さに視界が霞む。体が震え、鎧にもヒビが入っている。こんな攻撃を何発も受け続ければあっという間に戦闘不能になるだろう。

 

 

「弱い、弱すぎる!これが俺のライバルか!フハハハハハ!」

 

 

 地に伏したイッセーを散々に嘲笑うヴァーリ。

 

 

「イッセー!」

 

 

 結界の中からリアスが心配そうに見守っている。今にも飛び出していきそうなのを、サーゼクスが引き留めていた。

 

 

「部長、俺は大丈夫です…!」

 

 

 惚れた女の前で恰好悪い様は見せられないと立ち上がる。しかし、二人の差は如何ともしがたい。それはイッセーにも分かっていた。

 イッセーは一般家庭の両親の間に生まれて、悪魔に転生し、偶然ドラゴンの力も得ていた。対してヴァーリは旧魔王の血筋で、尚且つ伝説のドラゴンの力を得て生まれてきた。自分に才能なんてないし、あいつには溢れるほどの才能があるんだろうさ、と自嘲する。強力な神器を使いこなす、強い所有者という理想的な存在。まさにヴァーリのことだ。

 

 

Divide(ディバイド)!』

 

 

 白龍皇の宝玉から音声が聞こえ、イッセーの力が一気に消失する。先ほどの一撃がトリガーとなって『半減』が発動したのだ。

 

 

Boost(ブースト)!』

 

 

 しかし、イッセーの神器も発動して、力はもとに戻る。

 

 

『奴は相手の力を半分にし、減らした分の力を自分に加算するんだよ。つまり、おまえの力を奪い、自分の力としている。スタミナは回復できないがな。あくまでパワーのみだ』

「じゃ、じゃあ、俺はマイナスからもとに戻っても、奴はプラスになっていくのか!?」

『そうだ。だが、どんなに宿主がスゴくても上限はある。見ろ、キャパシティを超える力は背中の光の翼から吐き出す事で、身を滅ぼすことなく力の上限を維持し続けているのさ』

 

 

 イッセーがよくよく目を凝らせば、ヴァーリの翼から赤い光の粒が吐き出されている。あれが余剰分のエネルギーか。

 

 

「ほらほらほら!」

 

 

 遊ぶようにヴァーリが撃ちだしてくる無限にも等しい魔力の弾。イッセーは逃げることも叶わなかった。軽く出しているであろう弾の一発一発が重いダメージを残していく。鎧が無ければとっくに消し飛んでいただろう。

 だがイッセーはどうしても一撃をヴァーリに喰らわせたかったでなければ、心の中のドス黒いモノを吐き出すことすら出来ないからだ。しかしヴァーリは攻撃を続けながら、挑発を繰り返す。

 

 

「攻撃も単調だ。ただ突っ込むだけ。それでは意味がない。宝の持ち腐れ。力の使い方も下手だ。これでは白龍皇と赤龍帝のライバル対決は……」

 

 

ゴォオォォォォォオオッッ!

 

 

 ヴァーリが言い切る前に、イッセーは背中の噴出口からオーラを一気に噴かせて弾幕の中へ飛び込んでいく。すかさずヴァーリが張った魔力の弾幕が体のあちこちに当たるがそれでも止まらない。全てはこの一発のために。左手を強く握る。力はここ一点で十分だ。

 

 

「突貫か、バカの一つ覚えだな。そんなもので」

 

 

 ヴァーリが防御魔法陣を前方に展開して防御しようとするが、イッセーには勝算があった。

 

 

「ドライグ!アスカロンに力を譲渡だッッ!」

『承知ッ!』

Transfer(トランスファー)!』

 

 

 ドクン!

 

 

 左手に強大な力の波が流れていく。剣の心得はない。ならば、とイッセーは剣を籠手に収納したままの状態で龍殺しの力だけを拳に宿らせたのだ。

 

 

 バキンッ!

 

 

 龍殺しの拳は白龍皇の力の篭もった防御魔法陣をなんなく破壊し、顔面へ鋭く打撃を食いこませていた。

 

 

「ッッ?!???????」

 

 

 予想外の一撃に驚いたのか、ヴァーリの体勢がぐらりと歪む。

 

 

バキッ…。

 

 

 白龍皇の兜はマスク周辺からヒビが広がり、崩れた箇所からヴァーリの顔の一部を覗かせていた。その顔には驚愕の色がハッキリと見える。その隙を見逃さず、イッセーは白龍皇が余ったパワーを噴き出しているという光の翼の付け根に手を回した!

 

 

「お前の神器の効果はここから来てるそうだな。だったら!」

Transfer(トランスファー)!!』

 

 

 イッセーの力が一気に彼の禁手、『白龍皇(ディバイン・ディバイディング)の鎧(スケイルメイル)』へと流れ込んでいく。刹那、イッセーは体から力が一気に抜かれる感覚に襲われた。だが、これでいい。

 

 

「何ッ!?」

「吸いだす力と吐き出す力を一気に高める!処理しきれなくなるほどな!」

「くっ!」

 

 

 ビィィィィィィン!

 

 

 

白龍皇(ディバイン・ディバイディング)の鎧(スケイルメイル)の宝玉全てが白、赤、青、黄と目まぐるしく色を変えながら点灯を繰り返す。途端にヴァーリの体から凄まじいほどに感じたドラゴンの力が消失していく。

 イッセーは神器の特性を利用した。相手の力を奪い、自分の糧にしていく能力。しかし、加算されていく力の上限は決まっており、それは宿主の力量次第。上限を超える力は光の翼から噴き出されて処理される。なら、奪う力と噴き出す力を同時に加速させたらどうなる?処理しきれないほどの力を奪い、同時に過剰なまでに力が吐き出される。過剰なエネルギーを注ぎ込まれた装置の結果は大体同じ、自壊だ。

 

 

『ッ!なんてことだ…ッ!機能がオーバードライブする!ヴァーリ、一度体勢を立て直せ!』

 

 

 ヴァーリがアルビオンの声に反応して、両腕をクロスして防御しようとするが、もう遅い。

 

 

 バガンッッ!

 

 

 アスカロンの力がこもった左拳を打ち出すと、ヴァーリの防御をすり抜け更に腹部に打撃が突き刺さる。白く輝いていた白龍皇の鎧はあっけなく壊れていく。まるで紙の如く鎧を破壊してしまった。龍殺しとはここまで凄まじいのかと、その一撃を放ったイッセー自身が一番驚愕していた。

 

 

 ゴボッ…

 

 

 鎧の解除されたヴァーリの口から鮮血が飛び出す。腹部を押えながらよろよろと降下し、地面に片膝をつく。口の端から血を流しながら、ヴァーリは楽しそうに笑っていた。

 

 

「…ハハハ、スゴいな!俺の神器を吹っ飛ばした!やればできるじゃないか!それでこそ、ライバル」

「…殴らせてもらったぜ。お前だけは殴らないと気がすまなかった」

 

 

 家族を馬鹿にした意趣返しだと喜ぶイッセーだが、ドライグが舌打ちする。そうこうしているうちにヴァーリの鎧は再び元の状態に戻ったからだ。

 

 

「!鎧がもう!」

『所有者を戦闘不能にするまで戦いは終わらんさ。このままではいかんな。埒が明かない。制御装置の限界時間内に奴を倒すのは至難の業だ。逃げるのが一番の得策だが、そういう訳にもいかないのだろう?』

「当然だ!部長達を置いていけるか!ていうか、この結界内でどこに逃げるってんだ!向こうじゃ、アルトリアだって戦ってんだ!」

『では、どうする?実力の差は大きく開いたままだ。制御装置のお陰でなんとかできているが、制限時間付きでは話にならん。このままでは負けるぞ?』

 

 

 ドライグの言葉は正しい。どうしたものかと思っているイッセーの視界にとあるものが映り込んだ。その瞬間、彼の脳内である考えが浮かぶ。

 

 

「 (…試してみるか?いや、ものは試しだ。どうせ、このままじゃ俺は時間が来て負ける!その前に何とかしなきゃ!)なあ、ドライグ。神器は想いに応えて進化するんだよな?」

『ああ、そうだが…。どうした?』

 

 

 イッセーは足元に転がっている『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の宝玉を拾った。先ほど、イッセーが殴った時に鎧が破損して飛び出した物だ。一から鎧を再生しているのか、地面には白い鎧の破片が落ちている。その中から最も状態のいい宝玉を選んだ。

 この破片たちは時間が経てば消える。ヴァーリにとってみればこの宝玉も時間が経てば塵に返るようなどうでもいいものだろう。だが、これには少なくとも白龍皇の力が僅かだが宿っている。

 

 

「俺のイメージをお前に伝える。やってみてくれ!」

 

 

 イッセーは脳内で思い描いたものを内にいるドライグへ伝達させる!強く思い描くんだ!このイメージが可能ならば、俺は。

 

 

『ッ。…相棒、危険なイメージを送り込んでくるものだな。こんな事()()()を含め誰もやろうとしなかった。だが、おもしろい!死ぬかもしれないが、その覚悟はあるか?』

「死ぬのはカンベンだな。俺はまだ童貞のままだ、どうせなら部長の処女をもらってから死にたい。痛みなら、我慢してやる!それで目の前のクソ野郎を超えられるならなッ!」

『フハハハハハハハハッッ!いい覚悟だ!ならば俺も覚悟を決めよう!正気の沙汰ではないが我は力の塊と称された赤き龍の帝王!お互い、生きて超えてみせるぞ、相棒!否ッ!兵藤一誠ッッ!』

「応ッ!」

「何をするつもりだ?」

 

 

 ヴァーリが興味深そうに訊いてくる。その様子をこの場にいる全ての者が見守っていた。

 

 

「『白い龍(バニシング・ドラゴン)』アルビオン!ヴァーリ!もらうぜ、お前の力!」

 

 

 イッセーは右手の甲に存在する赤龍帝の緑の宝玉の上から先程拾った『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の青い宝石を叩きこんだ!

 

 

「お前の消失の力!俺の神器に移植してやる!」

「ッ!俺の力を取り込む気か?」

 

 

 ヴァーリはイッセーが何をやろうとしているかに気付き、驚きの声を挙げる。戦いの中、イッセーの脳裏にとある場面が思い出された。それは先日のコカビエルとの一戦だった。あの戦いの中で不可能とされた聖と魔の融合を木場祐斗は果たした。なら同じことが出来るのではないか?と。

 右手から白銀のオーラが発生し、俺の右半身を包み込む。宝玉からの現象か?そう思った次の瞬間。

 

 

 ドクン…

 

 

 イッセーの中で何かが脈打ち、途端に形容しがたい激痛が宝玉を埋め込んだ右手から全身に瞬時につたわっていく!

 

 

「ぐっ、アッ、うがあああああああああああああああああッッ!」

 

 

 痛い、痛い痛い!痛い痛い痛い!!猛烈な痛みにイッセーは叫び声を挙げる!その痛みはかつて喰らった光の槍やフェニックスの炎などとは比べ物にならないほどの物だった!

 

 

「ぬがああああああああああああ!あ、あ、あ、あああああああああああああああああああっっ!!」

『無謀な事を。ドライグよ、我らは相反する存在だ。それは自滅行為にほかならない。こんなことでお前は消滅するつもりなのか?』

 

 

 淡々と話すアルビオン。

 

 

『ぐおおおおおおおおおおおっっ!』

 

 

 ドライグも苦悶を漏らしていた。神器に宿る龍帝もまたイッセー同様に激痛を味わっているのだ。だが、ドライグは悲鳴を出しながらも、笑いを含ませる。

 

 

『アルビオンよ!お前は相変わらず頭が固いものだ!我らは長きに亘り、人に宿り、争い続けてきた!毎回毎回同じことの繰り返しだった!』

『そうだ、ドライグ。それが我らの運命。お互いの宿主が違ったとしても、戦い方だけは同じだ。お前が力を上げ、私が力を奪う。神器をうまく使いこなした方がトドメをさして終わりとなる。今までもこれからも』

 

 

 アルビオンの言葉にドライグは不敵な笑いを向ける。

 

 

『俺はこの宿主、兵藤一誠と出会って一つ学んだ!バカを貫き通せば可能になることがある、とな!』

「バカで結構!どうせ才能で勝てないなら、バカを通して勝ってやる!バカと天才は何とやらだ!俺の想いに応えろォォォォォッッ!」

VanishingDragon(バニシング・ドラゴン)Power is taken(パワー・イズ・テイクン)!!』

 

 

 イッセーの右手が眩い白い光に包まれた!真っ白なオーラが右腕を包む!

 

 

 そして

 

 

 龍帝の右手には白き籠手が出現していた。




 はい、ロウィーナが最近手に入れた武器はクラレントでした!最初はアロンダイトかなぁと思ったのですが、原作での所在がどうなるか分からないのと、どうせなら因縁付けられるようにしようとクラレントを引っ張ってきました。

 ここまで至る道のりとしましては下記の通りです。

 カムランの戦い→モードレッド死亡→落ち武者狩り的な感じでクラレントが何者かに奪取→呪われた聖剣として各地を転々とする→『禍の団』に流れ着き、保管→厄介払いも兼ねてロウィーナへ譲渡

 因みに、本作ではクラレントもまた星の聖剣の一振りと考えております。今後の活躍にご期待くださいませ。
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