赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 ドーモ、ファブニルです。

 なんか凄いことになっている終章。もう規模感がヤバい、それしか言えない。

 さて今回で第四章は閉幕。赤白の初戦も一旦は終了し、後はエピローグのみ。更にゲストにも登場して頂きます。お話の最後にはロウィーナ・ヴォーティガーンのステータスをまとめたものを載せさせて頂きますので、皆さまもロウィーナの姿をご想像下さい。

 よろしければ今回もお気に入り登録や高評価、感想をお願いします。

 それでは第三十九話、どうぞ!


戦いの終わり、新たなる出逢い

「…へへへ、『白龍皇の籠手(ディバイディング・ギア)』ってとこか?」

 

 

 アルトリアの目に信じられない光景が飛び込んできた。

 

 ロウィーナに釣られて、二人の戦いを見守る中、イッセーはアスカロンを活用して見事ヴァーリの鎧を破壊せしめた。これにはロウィーナも「ほう…」と感心する様子を見せていた。

 問題はその後だ。破壊された『白龍皇の鎧』の宝玉をイッセーが拾ったかと思うと、それを右手に移植せんとした。これにはアルトリアも狼狽し、ロウィーナもまた信じられない眼を向けていたが、結果としてイッセーの賭けは成功し、新たな力を手に入れた!

 

 

「ば、馬鹿な……」

『有り得ん!こんなことはあり得ない!』

 

 

 ロウィーナが目を見開き、アルビオンが驚愕の声音を出していた。

 

 

「いや、可能性は少しだけあった。俺の仲間が聖と魔の融合をして、聖魔剣なんてものを創り出した。それは神がいない為にバランスが崩れているから、実現可能になったらしい。まあ、お偉いさん方の言葉を借りるなら、システムエラーとか、プログラムバグとかいう状態か?それをちょっと利用したのさ」

『…「神器プログラム」の不備をついて実現させたというのか?いや、しかし、こんなことは…。思いついたとしても実際に行うのは愚かだ…。相反する力の融合は、何が起こるか分からない。それがドラゴンの関わるものだとしたら、死ぬかもしれなかったのだぞ?否、死ぬ方が自然だ』

 

 

 未だに信じられない様子のアルビオン。しかしイッセーは胸を張って言う。

 

 

「ああ、無謀だった。だが、俺は生きている」

 

 

 その言葉に嘆息するドライグ。

 

 

『だが、確実に寿命を縮ませたぞ。いくら悪魔が永遠に近い時間を生きようとしても』

「一万年も生きるつもりはないさ。だが、やりたいことが山ほどあるから、最低でも千年は生きたいけどな」

 

 

 それでも充分長生きだろうが、それは人間の尺度の話であろう。

 

 

「……フフフ、流石はイッセーです。ロウィーナ・ヴォーティガーン、貴女は言いましたね。イッセーはそこまで強くなれないと。確かにイッセーはヴァーリ・ルシファーに比べれば弱い。ですが彼の素質は未知数です。今もまた不可能と思われた相反する龍の力を取り込む事に成功した。最強の白龍皇?結構、こちらの兵藤一誠は前人未到の赤龍帝ですとも」

「………」

 

 

 今度はロウィーナが顔を歪ませる。自身の予想に反した結果に不快感を示した訳ではない。寧ろそれだけの事を成したイッセーには敬意を表する。しかしアルトリアに言い負かされた事には苛立ちを感じていた。そして未知は興奮であると同時に恐怖だ。ここからどれだけ強くなるのか、ロウィーナはイッセーへの警戒心を引き上げた。

 

 

 パチパチパチ……

 

 

 ヴァーリがイッセーへ拍手を送る。

 

 

「おもしろい。なら、俺も少し本気を出そう!俺が勝ったら、君の全てと君の周りにある全ても白龍皇の力で半分にしてみせよう!」

 

 

 ヴァーリが空中に漂い、腕を大きく広げる。それに合わせて光の翼も巨大に伸びていく。

 

 

「半分?俺の力ならともかく、俺の周囲を半分にするってどういうことだ?」

 

 

 その問いかけにヴァーリは哄笑を上げた。

 

 

「無知は怖い!知らずに死ぬのも悪くないかもしれないな!」

Half Dimension(ハーフディメンション)!』

 

 

 宝玉の音声と共に眩いオーラに包まれたヴァーリが眼下に広がる木々へ手を向ける。次の瞬間!

 

 

 グバンッ!

 

 

 木々が一瞬で半分の太さになってしまった!さらに周囲の木々が圧縮されるかのように半分になっていく。

 あれはまさか周囲の空間そのものに『半減』を掛けているのか!?いけない、あのままでは空間そのものが歪んでしまう!

 

 

「イッセー!離れてください!奴は空間そのものを『半減』しています!」

「空間を、半減?」

「兵藤一誠。お前にも分かりやすく説明してやろう」

 

 

 と、アザゼルが言う。補足説明してくれるのはありがたい。

 

 

「あの能力は周囲の物を全て半分にしていく。つまり白龍皇が本気になったら、リアス・グレモリーのバストも半分になる」

 

 

……………………?

 

 

 はい?え?バストが半分?いやいやいや、確かにやろうと思えばそういう事も出来るかもしれないが、よりにもよって何故そこでバスト?幾らなんでもこの状況で何を………

 まとまらない頭でそこまで考えた時、イッセーに異変が見られた。全体的に動きがぎこちなくなり、ギチギチと音を立てながら振り向いていく。やや恐怖を感じるその動きから、イッセーはリアスを見やった。まさか、まさかあの堕天使は……!

 

 

「ふ、ふざけんなァァァァァァァァァァァァッッッ!!」

 

 

 バストサイズでイッセーの危機感を煽り出した!何故!?いや確かにイッセーの胸好きはここにいる誰もが知っている。そんな彼にあの技の危険性を伝え、且つやる気を出させるには一番だろう。だとしても言うかそんな事!?

 

 

「貴様ッッ!部長のォォォォォ!俺の部長のおっぱいを半分の大きさにするつもりかァァァァアアアアアアアアアアッッ!!」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!』

 

 

 鎧の各所にある宝玉から音声が幾重にも鳴り響く!このレベルの覚醒はコカビエル戦以来、いやそれ以上か!?

 

 

「許さないッッ絶対にてめぇだけは許さないッッ!ぶっ倒してやるッッ!ぶっ壊してやるッッ!ヴァーリィィィィィィィィィッッ!」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!』

 

 

 イッセーの周囲が弾け飛ぶ!オーラの波動でクレーターが発生し、新校舎の外壁にひびが入り、窓ガラスが弾け飛ぶ!その圧は離れた位置にいる者たちにも痛いほど感じられた。

 

 

「アッハッハッハッ!なんだそりゃ!?マジかよ!主様の胸が小さくなるかもしれないって理由でドラゴンの力が跳ね上がりやがった!」

 

 

 ゲラゲラと爆笑しているアザゼル。ふざけた発破だが効果は覿面だ。認めたくないがスケベな人間のツボを突くのにアザゼルは最適だ。

 

 

「リアス・グレモリーに手を出してみろッ!二度と転生できないぐらい徹底的に破壊してやらぁぁぁぁぁっ!この半分マニアがぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

 

 イッセーの絶叫で結界が少々割れた。夜空の雲を吹き飛ばし、隠れていた萬月が姿を現す。

 

 

「乳への執着で覚醒するだと……」

「今日は驚く事ばかりだ。まさか、女の乳でここまで力が爆発するとは。しかし、おもしろい!」

 

 

 白龍皇がイッセーへ向かって、飛び出してくる。しかし、強化され感覚が研ぎ澄まされたイッセーには遅く感じられた。彼はその場から素早く離れ、飛び出してきたヴァーリを横合いから蹴り飛ばした!

 

 

「まずこれはアルトリアのおっぱいの分!」

「速いッ!スピードでヴァーリを超えるのか!?」

 

 

 ロウィーナが信じられない様子でその光景を見つめる。彼女にとってヴァーリは絶対に近い存在だった。あの出会いからずっと一緒に過ごしてきた。同じマンションに住み、共に鍛え、『刃狗(スラッシュ・ドッグ)』の皆と共に様々な敵と対峙してきた。彼の実力を疑ったことは無い。そんな彼が今、遥かに格下であるはずの兵藤一誠に圧倒されている。

 現に今、高速で動き回るヴァーリを難なく捕まえるとイッセーは拳を突き出した。

 

 

「これは部長のおっぱいの分!」

 

 

 ヴァーリの腹部に右拳で一撃!

 

 

Divide(ディバイド)!』

 

 

 同時に移植したばかりの白龍皇の力が発動し、ヴァーリを覆うオーラが激減したように感じた。

 

 

「ぐはっ!」

 

 

 吐瀉物を口から吐き出すヴァーリ!そのままイッセーは攻撃を続ける!

 

 

「これは朱乃さんのおっぱいの分!」

 

 

 顔面に頭突きの一撃!よし!兜が完全に壊れた!アルトリアは押しているイッセーにガッツポーズを見せる。

 

 

「これはアーシアのおっぱいの分!」

 

 

 続いて光の翼を発生している背中の噴出口を破壊!これで機動力は削がれた!

 

 

「これはゼノヴィアのおっぱいの分!」

 

 

 勢いよく、空中高く蹴り上げるッ!凄い、凄いですイッセー!

 

 

「最後だッ!これは半分にされたら丸っきり無くなっちまう小猫ちゃんのロリおっぱいの分だぁぁぁぁああああッッ!」

「ガハッ!」

 

 

 猛スピードでタックルを決める!かなり最低な事を口走っているが、それでもヴァーリをボロボロにしている事実に皆が歓声を上げる。

 イッセーの猛タックルに吹き飛ばされ、地面に叩きつけられるヴァーリ。その口からは血反吐が吐き出されるのだった。

 

 

「!ヴァーリ!」

 

 

 叩きつけられたヴァーリに駆け寄らんとするロウィーナ。そこに先ほどまでの余裕はなかった。が、そんなロウィーナをヴァーリは手で制止する。ボロボロになっているにも拘わらず、ヴァーリは嬉々とした笑みを浮かべていた。

 

 

「…おもしろい。本当におもしろい」

『ヴァーリ、奴の半減の力に対する解析は済んだ。こちらの力の制御方法と照らし合わせれば対処できる』

「そうか。これであれは怖くないな。安心しろ、ロウィーナ。そう簡単に俺は負けない」

 

 

 不安げなロウィーナを安心させるように穏やかな笑みを浮かべる。その顔にロウィーナは安心した様子を見せる。

 

 

「そうだな、すまない。兵藤一誠の成長に焦ってしまった。お前は私の『明けの明星』だったな」

「そうだ。俺はルシファーの血を引く最強の白龍皇だ。そう簡単には死なないさ」

 

 

 ロウィーナを落ち着かせるとヴァーリは血を拭いながらゆっくりと立ち上がる。

 

 

「アルビオン、今の兵藤一誠ならば白龍皇の『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を見せるだけの価値があるんじゃないだろうか?」

『ヴァーリ、この場でそれは良い選択ではない。無暗に『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』となればドライグの呪縛が解けるかもしれないのだ』

「願ったり叶ったりだ、アルビオン」

 

 

 !?『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』と言ったか!?マズイ、アレがここで解放されれば例え結界があったとしてもこの街が文字通り消滅しかねない!

 

 

「まずい!エムリス!」

『流石に『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』は危険すぎる。ここで決めるよ!マイロード!』

 

 

 『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』の危険性を知っていたアルトリアはすかさずエクスカリバーを第二段階へと至らせようとする。しかしそこにロウィーナが立ち塞がった。

 

 

「させん!」

 

 

 エクスカリバーに対抗するかのようにロウィーナが魔力を昂らせる。魔力を剣に集め、凄まじい一撃を放たんとしている。その動作はまるで『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』のようだ。

 

 

「フッ、『我、目覚めるは、覇の理に……』」

『自重しろ、ヴァーリッ!我が力に翻弄されるのがお前の本懐か!?』

「ロウィーナ・ヴォーティガーン!あれが解放されればこの場にいる全員の命が危ない!そこにはヴァーリ・ルシファーも含まれる。それでも貴方は!」

「ヴァーリの願いは私の願いだ!今もまたアイツは己の意志を貫く為に覇の力を使わんとしている。私はその意思を尊重する。それを邪魔する者は全て私が奈落へ叩き落す!」

 

 

 ロウィーナとて『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』の危険性は承知している。だが、ロウィーナには彼を止めることは出来ない。実力の問題ではない。あんな楽しそうな彼を止めることなど、彼女には出来なかった。

 

 

「ならば仕方ない。『束ねるは星の伊吹、輝ける命の奔流。』」

「『煮えたぎれ星の怒り。ヒトの希望よ、奈落に堕ちよ!』」

 

 

 詠唱が重なり、高められた魔力とオーラが結界を圧する。この数瞬後に起こる爆発を皆が覚悟したその時。

 

 

 ズバン!ガシャァァン……!

 

 

 結界が裂け、夜空に浮かぶ月をバックに人影が二つ、イッセー達の元へ舞い降りた。

 

 

 

 

 

 

 神速でイッセーとヴァーリ、アルトリアとロウィーナの間に割って入る二人。一人は三国志の武将がきているような鎧を身に纏った男、もう一人は背広をキッチリと決め、手に聖剣を持つ眼鏡の美青年。

 

 

「ヴァーリ、ロウィーナ、迎えに来たぜぃ」

「全く、二人とも暴れ過ぎですよ」

 

 

 爽やかそうな顔つきの若い男は気軽にヴァーリへ話しかける。

 

 

「美猴にアーサーか。何をしに来た?」

 

 

 ヴァーリは口元の血を拭いながら立ち上がった。

 

 

「それは酷いんだぜぃ?仲間がピンチだっつーから遠路はるばるこの島国まで来たってのによぅ?他の奴らが本部で騒いでるぜぃ?北の田舎(アース)神族と一戦交えるから任務に失敗したのなら、さっさと逃げ帰ってこいってよ」

「どうやらカテレアはミカエル、アザゼル、ルシファーの暗殺に失敗したようですね。なら観察役の貴方たちの役目も終わりです。さ、帰りましょう」

「そうか、もう時間か」

「やれやれ、楽しい時間はあっという間だな」

 

 

 ロウィーナは魔力を散らせると、ヴァーリの隣へと降りたつ。

 

 

「なんだ、お前らは!?」

 

 

 イッセーが突然現れた男を指を指して訊く。

 

 

「片方は闘戦勝仏の末裔だ」

 

 

 答えたのはアザゼルだった。その名には聞き覚えがあった。その一方でイッセーはその名に覚えが無かったようで、疑問符を浮かべていた。

 

 

「ソッコーで把握できる名前で言ってやる。奴は孫悟空。西遊記で有名なクソ猿さ」

「そ、そ、孫、悟空ぅぅぅぅぅっ!?」

 

 

 聞き覚えのある有名な名にイッセーが驚愕する。

 

 

「正確に言うなら、孫悟空の力を受け継いだ猿の妖怪だ。しかし、まさか、おまえまで『禍の団(カオス・ブリゲード)』入りとは世も末だな。いや『白い龍(バニシング・ドラゴン)』に『奈落の魔竜(ヴォーティガーン)』に孫悟空か。お似合いでもあるのかな。そして、最後の一人はまさかの人選だな」

 

 

 アザゼルが眼鏡の男に視線を向ける。正確にはその手に持つ聖剣と腰に帯びた聖剣にだが。今度はミカエルが話し出す。

 

 

「その二振りの聖剣、片方は分かれた聖虹剣カレトヴルッフ最後の一振り『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』ですね。そしてもう一本は……」

「聖王剣、コールブランド……」

 

 

 アルトリアが震えながら口にする。それはかつてペンドラゴン家がカレトヴルッフと共に生み出したもう一本の聖剣だったからだ。その剣はペンドラゴンの血を引く者にしか扱えない。そういう風に作られているからだ。つまりそんな剣を振るえる彼はアルトリアと同じく騎士王の血を引くペンドラゴン家の人間ということだ。

 

 

「お初にお目にかかります、三大勢力の皆々様。私はアーサー、アーサー・ペンドラゴンと申します」

「ペンドラゴン……って事はもしかしてお前、アルトリアの!」

 

 

 イッセーは幼馴染を見やる。その視線の先でアルトリアは目を見開き、震えながらゆっくりと近づいていく。

 

 

「アーサー、アーサー・ペンドラゴン……まさか、貴方は、私の!「違います」……え?」

「仰りたいことは分かります。ですがアルトリア・ペンドラゴン殿、私と貴方は家族でも何でもない。私は貴方の兄やそれに類する存在ではありません」

 

 

 コールブランドを振るい、ペンドラゴンの姓を持つこの男にアルトリアは淡い期待を寄せていた。目の前の彼は自分の家族かもしれない、天涯孤独だと思っていた自分にようやく血の繋がっや家族が現れたのかもしれない。しかしそんな願いはバッサリと切り捨てられた。

 そのショックにアルトリアの膝は震え、唇は何か言葉を吐こうとパクパクと開閉し続けていた。

 

 

「では我々はこれにて」

「じゃあな~また会おうぜぃ、赤龍帝と騎士王ちゃん♪」

「待て!逃がすか!」

 

 

 美猴が棍を地面に突き立て、不可思議な闇を発生させる。そこに四人は吸い込まれていった。捕まえようと走り出そうとしたイッセーだが、

 

 

 カッ!

 

 

 赤龍帝の鎧が解除され、アザゼルから貰った腕輪も崩れ去った。アルトリアもまたアーサーから受けた言葉によってその場から動けないでいる。

 

 

「アザゼル!あのリング、まだないのか!?こいつを逃がすわけにはいかない!」

 

 

 イッセーが叫ぶが、アザゼルは淡々と答える。

 

 

「あれは、精製に恐ろしいぐらいの時間がかかる。量産もできん。それにあったとしても、多用すれば完全な禁手(バランス・ブレイカー)になれる可能性が薄れるんだよ。あくまで緊急処置用だ」

 

 

 焦るイッセーだが、既に立っている事も出来ず、地に膝を着いている。アルトリアは膝こそついていないが、剣を杖替わりにしてやっと立てている状態だ。

 

 

「あれだけの力を一瞬とはいえ爆発的に発散すれば体力やらも空っぽになる。いまの赤龍帝じゃ、貯蔵できるものがかぎられていて長時間の戦闘は無理だ」

 

 

 アザゼルの言葉をイッセーは痛いほど感じていた。既に体力は底をついている。やる気だけがあってもこれでは何もできない。

 

 

「旧魔王の血族で白龍皇である俺は忙しいんだ。敵は天使、堕天使、悪魔だけじゃない。いずれ、再び戦う事になるだろうけど、そのときはさらに激しくやろう。お互いにもっと強く…」

「ではな、騎士王の現し身よ。言っておくがアーサーの言葉は事実だ。それを肝に銘じて置くことを勧めておく。それはそれとして覚醒しないことを切に願うよ。まぁ、覚醒した時は魔竜の真髄をお前に…」

 

 

 二人はそれだけ言いかけると、美猴、アーサーと共に闇の中へ消えていった。

 

 

「クソッ、逃がしちまった!あの半分野郎次会った時は「イッセー」!アルトリアッ!?」

「何も、何も聞かないで下さい……」

 

 突然アルトリアがイッセーの胸に飛び込んでくる。顔をうずめてよく見えないが、その眼に涙を浮かべている事にイッセーは気づいた。泣いている理由はイッセーにも分かる。

 

 

「ようやく、ようやく家族に会えたと思ったのに……私にも本当の家族がいると思っていたのに……なのにッ……」

 

 

 普段から凛々しく、涙など流さないようなアルトリアの嗚咽にイッセーはただただ抱きしめてやる事しか出来なかった。こんな時、何と声を掛ければいいのか、まだまだ彼には分からなかった。

 

 

 

 

 

 

「イッセー!」

「イッセーさん!」

 

 

 アルトリアの嗚咽が落ち着いた頃、そこへリアスと共にアーシアも駆け寄ってきた。どうやら魔術師達は停止の制御を複数個所に分けていたらしく、残党を全て狩りつくしてようやく動けるようになったらしい。

 

 

「酷い傷……すぐに回復します!」

「アルトリア、貴方……」

「…いえ、大丈夫です。もう泣き止みましたから」

 

 

 二人に続いて停止していた他のメンバーもやってくる。ふと周りを見れば三大勢力の兵士達が事後処理を始めていた。破壊された校舎の復元、魔術師達の死体の処理など、それらをそれぞれの長が取り仕切っている。

 悪魔、天使、堕天使の共同作業。今これから成さんとしている和平の姿がそこにはあった。

 

 

「アザゼル、すまない。君の片腕を奪った彼女の件は悪魔側に問題があった。その傷に関しては」

 

 

 サーゼクスが何か別の形で償う言葉を言おうとしたときアザゼルは手で制して「いらない」という意思を見せた。

 

 

「俺も…ヴァーリとロウィーナが迷惑かけた」

「…彼等は裏切ったか」

「もともと、力や己の役目に興味を注いでいた奴等だ。結果から見れば、『ああ、なるほどね』と納得できる。だが、それを未然に防げなかったのは俺の過失だ」

 

 

 アザゼルの瞳はどこか寂しげだった。それはまるで我が子を想う親の眼だった。その空気を変えるためにミカエルがサーゼクスとアザゼルの間に入る。

 

 

「さて、私は一度天界に戻り、和平の件と『禍の団(カオス・ブリゲード)』についての対策を講じてきます」

「すまない、今回このようなことになって。会談の場をセッティングした我々としては不甲斐なさを感じている」

「サーゼクス、そう責任を感じないで下さい。変革には混乱が生まれるもの。私としては三大勢力が平和の道を共に歩めることに喜んでいるのですよ?これで無益な争いも減るでしょう」

「ま、納得できない配下も出るだろうがな」

 

 

 と、アザゼルは皮肉を言った。

 

 

「それは仕方ありません。長年憎み合ってきたのですから。しかし、これからは少しずつでも変わっていくでしょう。問題はそれを良しとしない『禍の団(カオス・ブリゲード)』ですけどね」

「それについては今後連携を取って話し合おう」

 

 

 サーゼクスの案にアザゼルもミカエルも頷いていた。

 

 

「では、私は一度天界に帰ります。すぐに戻ってきますので、そのとき正式な和平協定を結びましょう」

 

 

 と、この場をあとにしようとするミカエルにイッセーは話しかける。

 

 

「あ、あの、ミカエルさん!」

「何ですか、兵藤一誠さん」

「一つだけお願いがあります」

「いいでしょう、時間がありませんが、ひとつだけ聞きましょう」

 

 

 それはどうしても聞き入れて欲しい願いだ。

 

 

「アーシアとゼノヴィアの神への祈りでダメージを食らうのは『システム』のせいですよね?」

 

 

 二人は元信徒。時折、昔の習慣が抜け切れずに祈りを捧げてはダメージを受けていた。

 

 

「はい。悪魔や堕天使が神へ向けて祈りを捧げれば『システム』が動いて軽くダメージを与えるようにしています。これは神が健在でも不在でも『システム』に組み込まれたものですから、自然に動きます。それがどうしました?」

「アーシアとゼノヴィアが祈りを捧げる分だけ、ダメージを無しにできませんか?」

 

 

 いつも見ていて、苦笑いしかできなかった。だが、可能なら普通にお祈りぐらいさせてあげたかった。悪魔だって信じる物は自由でいいだろう。宗教のしがらみ等分からぬイッセーだからこその願いだった。

 

 

「——っ」

 

 

 その願いを聞き、ミカエルは驚きの表情を見せていた。願いが予想外のものだったからか?イッセーの両脇にいたアーシアとゼノヴィアも驚いていた。しかしミカエルは小さく笑うと、うんうんと頷く。

 

 

「わかりました。二人分ぐらいなら、なんとかなるかもしれません。二人ともすでに悪魔ですし、勝手に教会本部に近づくこともないでしょうしね。アーシア、ゼノヴィア、問います。神は不在ですよ?それでも祈りを捧げますか?」

「はい、主がおられなくとも私はお祈りを捧げたいです」

「同じく。主への感謝と、ミカエル様への感謝を込めて」

 

 

 二人の答えにミカエルは微笑んだ。

 

 

「わかりました。本部に帰ったら、さっそくそうしましょう。ふふふ、祈りを捧げてダメージを受けない悪魔が二人ぐらいいてもいいでしょう。おもしろいでしょうね」

 

 

 その回答にイッセーは心の中でガッツポーズを取る。

 

 

「これでアーシアは問題なく、神様にお祈りできるな。まあ、いないけどさ」

 

 

 アーシアはうるうると目元を潤ませ、イッセーへ抱き着いてきた。

 

 

「イッセーさん!」

 

 

 アーシアを優しく抱き返す。今日2度目の抱擁だ。

 

 

「イッセー、ありがとう」

 

 

 ゼノヴィアも礼を口にする。イッセーはアーシアとゼノヴィア、両者の頭を撫でてやる。

 

 

「別にいいさ、これから遠慮せず祈ればいいさ」

 

 

 笑顔を向けるイッセーにゼノヴィアの頬がほんのり赤く染まる。また一人堕としたのかと、イッセーに白い眼を向けるアルトリア。

 

 

「ミカエル様、例の件、お願いします」

 

 

 そこに祐斗がミカエルに何やらお願いしていた。打ち合わせのタイミングか何処かで接触する機会があったのか、いや恐らくは聖魔剣をプレゼントする際に話したのだろう。

 

 

「貴方から進言のあった聖剣研究の事も今後犠牲者を出さぬようにすると、貴方からいただいた聖魔剣に誓いましょう。大切な信徒をこれ以上無下にすることは大きな過ちですからね」

 

 

 成程、確かに聖剣計画は教会の汚点の一つだ。それが繰り返されないように願い出たのだろう。ミカエルとしても方法が確立された今、わざわざ命を奪う必要はない。

 

 

「やったな!木場!」

「うん、ありがとう、イッセーくん」

 

 

イッセーがわが身の事の様に祐斗と共に喜んでいた

 

 

「ミカエル、ヴァルハラの連中への説明はお前がしておけよ。下手にオーディンに動かれても困るからな。あと、須弥山にも今回の事を伝えておかないとうるさそうだ」

「ええ、堕天使の総督と魔王が説明しても説得力がないでしょうから、私が伝えておきます。『神』への報告は慣れてますから」

 

 

 それだけ言い残すと、ミカエルは大勢の部下を連れて、天へ飛んで行った。アザゼルが堕天使の軍勢を前に言い放つ。

 

 

「俺は和平を選ぶ。堕天使は今後一切天使と悪魔とは争わない。不服な奴は去ってもいい。だが、次に会う時は遠慮なく殺す。ついてきたい者だけ俺についてこい!」

『我らが命、滅びのその時までアザゼル総督のためにッッ!』

 

 

 怒号となった部下たちの忠誠。アザゼルはそれを見て「ありがとよ」と小さく礼を言っていた。見事なカリスマだった。かの騎士王アーサーもこうして騎士たちをまとめたのだろうか。アザゼルは自分の軍勢に指示を出すと、魔法陣を展開させて堕天使達が帰っていく。

 悪魔の軍勢も同様に魔法陣から転送していっているようだ。あれほどの軍勢がひしめき合っていた校庭は、どんどん寂しくなっていき、ついには極少数の人員だけとなっていた。

 

 堕天使で唯一残ったアザゼルは、大きく息を吐くと校門の方へ去っていく。

 

 

「後始末は、サーゼクスに任せる。俺は疲れた、帰るぞ」

 

 

 手を振って帰ろうとするが、一度だけ立ち止まり、イッセーに向けて指を指した。

 

 

「そうだ、赤龍帝。当分、ここに滞在する予定だからそっちのリアス・グレモリーの『僧侶』共々世話してやるよ。制御出来てないレア神器を見るのはムカつくからな」

「え?」

 

 

 驚くイッセー。という事はイッセーを鍛えるためにこの街に滞在するのか。トップがそれでいいのか?

 

 

「赤は女を。白は力を。どちらも純粋で単純なもんだ。さてそれに対して騎士王と奈落の魔竜の因縁は何処まで複雑に絡み合うのかねぇ。どっちも面白そうじゃねぇか」

 

 

 アザゼルはそれだけ言うと、口笛を吹きながら去っていった。その時はアザゼルの一言が冗談だと思っていた。

 

 

 

 

西暦二十××年七月。

 

 

天界代表ミカエル、堕天使中枢組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』総督アザゼル、冥界代表魔王サーゼクス・ルシファー、三大勢力各代表の元、和平協定が調印された。以降、三大勢力の争いは禁止事項とされ、協調体制へ。この和平協定は舞台になった俺達の学園の名を取って「駒王協定」と称されることになった。




人物設定
 ロウィーナ・ヴォーティガーン
禍の団(カオス・ブリゲード)』 ヴァーリチーム所属
身長 163㎝ B:85 W:57 H:89 

 ヴァーリチームに所属する少女であり、実質チームのナンバーツー。長く美しい黒髪と持ち、琥珀色の眼をした美少女。一見すると清楚な美少女だが、ヴァーリの影響で戦闘意欲が高い。しかし根っからの戦闘狂というわけではないので、何処かちぐはぐさを持つ。

 その正体は星が生み出した『終末装置』。アルトリア・ペンドラゴンが未来に齎す可能性のある『千年王国』を阻止するために復活したブリテン島の化身たる竜。生まれてすぐ、その誕生を察知したヴァーリとアルビオンによって『神の子を見張る者(グリゴリ)』に保護され、そこで教育と鍛錬を受ける。またヴァーリと共にいた為、『刃狗(スラッシュ・ドッグ)』チームとも交流が深い。
 誕生から多くの時間をヴァーリと共に過ごしており、その影響を多分に受けている。その関係は兄妹とも、恋人ととも、何とも取れない関係になっている。少なくとも互いの半裸はある程度見慣れている模様。


 『幻想転身(トランスファンタズム)
 ロウィーナが自身の正体であるドラゴンへと転身し、戦闘形態へと移行する為の能力。幻想種たるドラゴンの力を解放(回帰)することが出来、基本的には手足、翼などの限定的な個所に発現させる。その力は最強の存在、ドラゴンの力そのものであり一撃一撃が致命打、咆哮一つで並みの魔術を上回る。
 その気になれば全身を転身させ、ドラゴンそのものに変生する事も出来る。但し竜化が進み過ぎると元に戻れなくなり、最悪『終末装置』としての機能を呼び起こしてしまう為、使用には細心の注意が必要。


 『星光呑む奈落の孔(ホロウ・オブ・ヴォーティガーン)
 ヴォーティガーンとして備わった対『星の聖剣』の能力。光を中心に様々な力、物体を『奈落の孔』に吸収、無力化する。アバトン家の(ホール)のように吸った物を吐き出すなどの器用な運用は出来ないが、その出力に関しては理論上無限。この力こそが彼女、ヴォーティガーンが『終末装置』と呼ばれる所以である。


 燦然と輝く王剣(クラレント)
 ロウィーナが『禍の団(カオス・ブリゲード)』に入団するにあたって渡された魔剣。かつては星の聖剣の一振りとしてブリテンの宝物庫に納められていたが、叛逆の騎士モードレッドによって奪取された後、魔剣へと堕ちる。以後は所有者を転々とした後、ロウィーナが担い手となった。
 モードレッドが無理矢理使用し、アーサー王の血で穢れ呪われた事で、かつてより性能は落ちているが星の聖剣由来の頑丈さと切れ味、魔力を増幅する力は健在である。その為圧倒的な魔力と膂力を誇るロウィーナは重宝している。


 『魔竜鉄槌(バスター・オブ・ヴォーティガーン)
 ロウィーナが放つ技。といっても魔力放出を用いた極初歩的なビーム斬撃。しかし圧倒的魔力を誇るロウィーナが使えばその一撃も必殺技となる。現時点でアルトリアの『風王鉄槌(ストライク・エア)』の貫通力を相殺できる程度の力を持っているが、今後の鍛え方によっては一撃一撃が第二段階の『約束された勝利の剣』並になる事も可能。


『?????・??・????????』
 ロウィーナが放とうとしていた必殺技。しかしお披露目する前に戦いを止められたため、その詳細は分からず。

 見た目のイメージは『テイルズオブベルセリア』のベルベット・クラウと『コードギアス』のC.C.。小綺麗になり、少々尻側に寄ったベルベットを想像すればヨシ。
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