赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

4 / 53
 
 フリードのエミュって意外と難しい。ふざけ過ぎるのもシリアス感が無いし、真面目過ぎるのもダメだし、やっぱどうしても字体が固くなるような気がする。
 他キャラもエミュレートが上手くいってるか心配。

 上手く書けてるか不安ですが、お楽しみ頂ければ幸いです。

 それでは、第四話どうぞ!


『はぐれエクソシスト』と『聖女』

 

 自身の駒を知り、ショックを受けたイッセー。しかし、その後にリアスから、主の許可が降りれば『女王』や『騎士』『僧侶』『戦車』になれる事を知り、何とか持ち直す事が出来た。

 

 その後もイッセーは上級悪魔を目指して、自転車であちこちを走り回っている。そして今日もまた簡単な契約を取りに、とある家へとやってきた。

 

 

「すみませーん。グレモリー眷属の者なんですけれどー。留守なのか?」

 

 

 何の変哲もない一軒家。カーテンは閉じられ、窓からは一切の光が見えない。留守なのかと思い帰ろうとした瞬間、玄関の扉が僅かに空いているのが見えた。

 

 

「開いてる?いくら何でも物騒過ぎないか?」

 

 

 許可なく入る事に引け目を感じたが、このまま帰るわけにもいかなかったので、イッセーは恐る恐るだが入る事にした。

 真っ暗な玄関に立つ、廊下には灯りは付いていない。二階へ続く階段もあるが、こちらも電気はついていない。一階奥の部屋だけ灯りらしきものがついているが、電気照明ではない淡い光だ。

 

 

「あれってもしかして蝋燭?悪魔召喚の為の演出なのかぁ?」

 

 

 それにしてもこの不気味さは説明が付かないし、人の気配もなさすぎる。家主の許可なく入る事への負い目からか、抜き足差し足でイッセーは歩を進めた。奥の部屋のドアを開けると、光の正体はやはり蝋燭であった。 

 

 

「ちわーす。グレモリー様の使いの悪魔ですけど……。依頼者の方、いらっしゃいますか?」

 

 イッセーが小さい声で人がいるか確認するが、返答は無い。余りにも静かすぎる。何かあったのか、ただ単に隠れているだけか。イッセーは意を決して、中へと足を踏み入れる

 そこはリビングで、ソファーやテレビ、テーブルなどが置いてある。どこにでもあるリビングの風景だった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「!?!?」

 

 

 人は余りにも衝撃的な事が起きたとき、叫ぶこともなく息がひきつるという。人間の男性だ。この家の主人か?何があるかは分かる、だが理解が追い付かない。

 その遺体は見るに堪えなかった。体は切り刻まれており、臓物らしきものも傷口からこぼれている。逆十字の恰好で壁に貼り付けられている。それも太く、大きな釘が男の両手、両足、胴体に打ち付けられている。その姿は授業で見たキリストの磔刑のようだった。磔刑というには余りにも残酷で、冒涜的だが。

 

 

「ウッ、ゴボ!?おげぇぇ………」

 

 

 イッセーの脳が目の前の事象を理解した瞬間、今度はそのグロテスクな惨状に堪えられず、胃からモノが逆流しその場で吐いてしまった。吐瀉によって僅かに歪む意識の中、男が打ち付けられている壁に血文字らしきものが書かれて事に気付いた。

 

 

「な、なんだ、これ…何なんだよこれはぁ!?」

「『悪いことする人はお仕置きよ!』って聖なるお方の言葉を借りたものさ」

 

 突然、後方から若い声が聞こえてきた。振り向くとそこには白髪の男が立っていた。若い。外国人みたいだが、神父の恰好をした十代ぐらいの男だった。神父はイッセーを見るなり、ニンマリと笑った。

 

 

「んーんー。これはこれは、悪魔くんではあーりませんかー」

 

 

 実に嬉しそうだ。その時、俺の脳裏に悪魔の仕事を始める前にアルトリアから言われた言葉がよぎる。

 

 

『白髪の神父、フリード・セルゼンという男を見たときは全力で逃げてください。貴方が殺されたあの時、私も貴方を助けようと公園に向かっていました。しかし、その男に足止めを食い、貴方を助けることが出来ませんでした。今の貴方では奴に勝てません。もしその男に会っても、決して戦わないでください』

 

 

「あれは~誰だ♪誰だ♪誰だ♪あれは~フリード♪フリードマ~ン♪フリードマ~ン♪異端者の名を受けて~♪クソ悪魔ぶっ殺すため戦う男~♪フリードソードで斬りつける♪フリードピストル火花吹く♪クソ悪魔はぶっ倒れ♪俺はおまんま頂きだ♪」

 

 

 突然、白髪の神父が歌いだす。かの有名な悪魔の男の替え歌を使っているのは此方を悪魔と知って馬鹿にしてるのか、単純にリズムが好きなのか。

 

 

「おまえが、フリード・セルゼンか!」

「ありゃ?俺っちの名前知ってんの?いえ~す、俺っちのお名前はフリード・セルゼン。とある悪魔祓い組織に所属している末端でございますですよ。あ、別に俺っちが名乗ったからっておまえさんは名乗らなくていいよ。悪魔のお名前なんかに俺っちの記録容量使いたくねーですので」

 

 

 明らかにふざけた態度。イッセーが今まで出会ったことの無いタイプの異常者だ。でもこんな奴でもアルトリアを足止めできるんだよな。ここは逃げるのが正解だが、イッセーにはそれより聞くべきことがあった。

 

 

「おい、お前か?この人を殺したのは?」

「イエスイエス。俺が殺っちゃいました。だってー、悪魔を呼び出す常習犯だったみたいだしぃ、殺すしかないっしょ。悪魔をぶっ殺すのが俺っちたちの目的だけど、悪魔に縋っちゃうような屑も抹殺対象なんだよねぇ」

 

 

 イッセーは目の前の存在が理解出来なかった。この世界に入って日が浅いのもあるが、悪魔祓いというのはこうも簡単に人を殺すのか!?

 

 

「ふざけんな!人間が人間殺すってのはどうなんだよ!おまえら聖職者の敵は悪魔だけじゃないのか!?」

「はぁぁぁ?ばっかじゃねぇの?ハハハ、久々にワロタ。いいか、よく聞けクソ悪魔。悪魔に頼るってのは人間として終わった証拠なんですよ。エンドですエンド。だから、俺が殺してあげたのさー。俺、悪魔と悪魔に魅入られた人間をぶっ殺して生活してるんで、お仕事でござんすよ」

「悪魔だって、ここまでの事はしねぇ!」

「マージで何言ってんの?悪魔はクソですよ。クソのような存在なのですよ?常識ですよ?自覚ないんですか?マジ、胎児からやり直したほうがいいって。って、人間から転生したっぽい悪魔のおまえさんに胎児もクソもないか。むしろ、俺がおまえらを退治!なーんてな!最高じゃね?最高じゃね?」

 

 

 会話を断ち切りフリードは懐から、刀身のない剣の柄と、拳銃を取り出した。ブィン、と空気を振動させる音。柄だけの剣が、ビームサーベルのような光の刀身を作り出す。これこそ悪魔祓いの基本装備たる光の剣である。

 

 

「という訳で、今からおまえらの心臓にこの光の刃を突き立てて、このカッコイイ銃でおまえらのドタマに必殺必中フォーリンラブしちゃいます!」ダッ!

 

 

 フリードがその場から飛び出し、光の刀身が横薙ぎに放たれる。

 

 

「うわっ!」

「バキュン!」

 

 

 イッセーは寸でのところでそれをかわすが、間髪入れずに放たれた弾丸が彼の脚に着弾する!

 

 

「ぐあぁぁ!」

 

 

 イッセーが呻き、その場に膝をついた。普通の弾であれば悪魔の耐久力から、痛みの程度は精々がBB弾程度だろう。しかしイッセーは撃たれた痛みと同時に、内側が焼かれるような感覚を味わった。

 

 

「どうよ!光の弾丸を放つ悪魔祓い特性の祓魔弾は!銃声音なんざ発しません。光の弾ですからねぃ」

 

 

 そう、イッセーの感じている痛みは光の痛み。光は悪魔にとって毒、一度食らえば全身に痛みが走る。痛みに苦しむイッセー。しかしフリードにとってはお構いなし、寧ろ望むところであった。

 

 

「オラ死ね!即死ねクソ悪魔!血肉をぶちまけて塵となれ!俺様の悦楽のためにぃ!」

 

 

 フリードはキレた笑いを発しながら、光の剣を振り上げ、トドメを刺そうとする。

 

 

「やめてください!」

 

 

 痛みに悶えるイッセーの耳に聞き覚えのある女性の声が。フリードは襲い掛かろうとする格好のまま動きを止め、視線だけ声のした方へ向ける。

 そこには見覚えのある、もう会えないと思っていた金髪のシスターは居た。

 

 

「あ、アーシア……」

「おんや、助手のアーシアちゃんじゃあーりませんか。どうしたの?結界は張り終わったのかな?」

「フリード神、!い、いやぁぁぁぁぁっ!」

 

 

アーシアが壁に打ち付けられているこの家の遺体を見て、悲鳴を上げた。

 

 

「かわいい悲鳴ありがとうございます!そっか、アーシアちゃんはこの手の死体は初めてですかねぇ。ならばよーく、とくとご覧なさい。悪魔に魅入られたダメな人間さんはそうやって死んでもらうのですよぉ」 

「そ、そんな…」

 

 

そして、アーシアの視線が此方へ向くと、目を見開いて驚いている。

 

 

「……フリード神父、その人は……」

「人?ノンノン!こいつはクソったれの悪魔だよ。そこんとこ間違えちゃダメダメ」

「っ。イッセーさんが……悪魔?」

 

 

 彼女は先日知り合った少年が悪魔だった事にショックを受け、言葉を詰まらせる。

 

 

「え、何何?君ら知り合い?わーお。これは驚き大革命。悪魔とシスターの許されざる恋とかそういうの?マジで?」

 

 

 おもしろおかしそうにフリードはイッセーとアーシアを交互に見てくる。

 

 

「アハハ!言っとくけど悪魔と人間は相入れません!特に教会関係者と悪魔は天敵さ!それに俺らは神にすら見放された異端の集まりだぜ?俺もアーシアたんも堕天使さまからのご加護がないと生きていけない半端ものですぞぉ?」

 

 

 フリードの口から飛び出した言葉にイッセーは軽いショックを受ける。信じたくなかった、部長とアルトリアの思い違いだと思いたかった。あんないい子が堕天使の下僕(しもべ)だなんて………

 

 

「まあまあ、それはいいとして俺的にこのクソ悪魔を斬らないとお仕事完了出来ないんで、ちょちょいといきますかね。覚悟はOK?」

 

 

 フリードが光の剣を改めてイッセーへと突きつける。このままでは、光のダメージと痛みで未だ体が動かせないイッセーは確実に死ぬだろう。そんな殺す者殺される者の間にアーシアが入り込んだ。イッセーの前に立ち、庇うように両手を広げる。

 

 

「は?おいおい、マジですかー。アーシアたんキミィ、自分が何をしてるか分かっているのでしょうか?」

「……はい。フリード神父、お願いです。この方を許して下さい。見逃して下さい」

 

 

 その一言にイッセーは声を詰まらせた。まさか俺を庇ってくれるのか?悪魔の俺を?そんな疑問が駆け巡る。

 

 

「もう嫌です……。悪魔に魅入られたといって、人間を裁いたり、悪魔を殺したりなんて、そんなの間違ってます!」

「はぁぁぁぁぁああああっ⁉︎ バカこいてんじゃねぇよ、クソアマが!悪魔はクソだって、教会で習っただろうが!お前、マジで頭にうじでもわいてんじゃねぇのか⁉︎」

 

 

 フリードの表情が憤怒に包まれる。

 

 

「悪魔にだって、いい人は居ます!」

「いねぇよバァァァカ!」

「私もこの前までそう思ってました…。でも、イッセーさんはいい人です。悪魔だって分かってもそれは変わりません!それに、人を殺すなんて許されません!こんなの!こんなの主が許すわけがありません!」

 

 

 死体を見かけ、親切にしてくれた男の子が悪魔だと知り、それでもなおアーシアは強い意志で神父に物申した。しかし、そんな訴えはフリードには断じて受け入れない物だった。

 

 

「キャッ!」

「アーシア!」

 

 

 彼女の訴えに耐えかねたフリードは拳銃を持つ左手で、アーシアを殴りつける。イッセーが駆け寄ると、彼女の美しい顔には生々しい青痣が浮かびあがっていた。

 

 

「ア”ァ~、姐さんからはキミを殺さないように念を押されているけれど。ちょっとムカつきマックスざんすよ。殺さなきゃいいみたいなんで、ブチ犯すくらいはしていいですかねぇ?それぐらいしないと俺の傷心は癒えそうにないんでやんすよ。と、どうせなら庇いたかったこのクソッタレの死体の前でシてやりましょうかねぇ!」

 

 

 再度、神父はイッセーへ光の刃を向ける。このままでは自分は死ぬ、アルトリアの言う通り逃げるべきか?いやそんな事は出来ねぇ!と、イッセーは決心し、神器を出現させる。そして脚の痛みを押し殺して立ち上がる。

 

 

「わりぃな、アルトリア。でも、庇ってくれた女の子見捨てて逃げるわけには、いかねぇよ!!」

「え?え?マジ?マジ?俺と戦うの?何をする気か知らないけど?死んじゃうよ?苦しんで死んじゃうよ?あ、そういうのお望み?そんじゃあ、手足1㎝角の細切れになっても耐えられるか実験と参りましょう!」

 

 

 そんな不気味なことを言ってくる。しかし引くわけにはいかなかった。男として、兵藤一誠という悪魔として、此処で引けば一生ハーレム王と胸を張って名乗る事は出来ねぇ!

 決意を胸に突っ込もうとした、その瞬間。

 

 

 ポロロロン♪

 

「何事、さッ!?」

「!?ハープ?」

 

 

 生と死の鉄火場に相応しくない優美なハープの音色が響き渡る。その瞬間、フリードの持つ光の剣と拳銃、更にはカソック下に隠されていた武器までもがバラバラに切り刻まれた!

 

 

「全く、私は逃げるように言ったのですが。そういう所もまた素敵ですが……

 

 

 廊下に出る扉。そこに弓のような、竪琴のような物を携えたアルトリアが立っていた。

 

 

「遅れてしまい申し訳ありません。ですが、今度は間に合いましたか?」

「あ、アルトリア!」

「おんやまぁ~、いつぞやのお嬢さん!まさかマジのマジで悪魔の手先だったとは。あんなヤベー武器持ってるのにクソ悪魔を助けるなんて、こりゃあカミサマもびっくりでござんしょ。しかしまぁ、決意を持って戦いに臨んだ男の子としては、女の子に助けられるのはさぞ情っけねぇことでしょうなぁ~」

 

 

 そう言って小馬鹿にするフリード。イッセーの顔が歪むが、そんなことも言ってはいられない。アルトリアとしても男同士の一対一の戦いを邪魔したくはないが、実力差が有り過ぎる。彼に此処で死んでもらっては困るので、今は耐えて貰いたかった。

 続いて、赤い魔法陣が室内に浮かびあがる。そこから現れたのはこの街を支配する、よく知る悪魔たち。

 

 

「兵藤くん、助けに来たよ」 

「あらあら。これは大変ですわね」 

「…悪魔祓い」

 

 

 そう、グレモリー眷属の悪魔達だ。仲間が駆けつけてくれた事で安心したのか、力が抜けイッセーは膝をついてしまう。

 

 

「うひゃあ~、悪魔様団体でご来店ですかぁ。本来なら光の力でお・も・て・な・ししてあげたいんですけど、さっきので万策尽きちゃいましたからねぇ」

「これでもはぐれ悪魔祓いとの戦闘には少し心得があります。そういう輩は隠し武器や予備の3,4つは備えているものですから」

「うむむ、これはマズイ。俺っちだけなら無理でしょうなぁ。俺っちだけなら、ね」

 

 

 明らかに意味深な発言をするフリード。その瞬間、アルトリアとグレモリー眷属は光の力が接近しているのを感じた。

 

 

「!?部長、複数の堕天使がこちらに接近中ですわ」

「援軍ね。私たちだけでは不利……アルトリア、いけるかしら?」

「迎撃は可能です。この家を傷つけ、消し飛ばしても宜しいのであれば」

「なら駄目ね。本拠地へ帰還するわ。朱乃、転移の用意を」

「はい」

 

 

 リアスに促され、朱乃が部室への転移魔法を唱えだす。ここで迎撃するのも選択肢の一つだが、悪魔の存在を表にすることは出来ない。ここは退くしかなかった。

 

 

「部長!あの子も一緒に!」

 

 

 イッセーはアーシアに目を向ける。フリードに背き、悪魔を庇おうとした彼女が無事で済むとは思えなかった。

 

 

「無理よ。この魔法陣は私の眷属と食客であるアルトリアしか転移できないわ。そもそもあの子は堕天使側、敵なのよ」

「そんな……」

 

 

 再びイッセーがアーシアに目を向けると、アーシアと視線が合う。彼女はニッコリと笑うだけだ。

 

 

「アーシア!」

「イッセーさん。またお会いましょう」

 

 

 それがその場での最後の会話だった。次の瞬間、朱乃の詠唱が終わり、床の魔法陣が再び赤く光出し、一行は部室へ転移していた。

 部室に戻ってきたイッセーの脳裏にはアーシアの最後の笑顔だけが浮かびあがっていた。

 

 

 

 

 

「悪魔祓いは二通りあるわひとつは神の祝福を受けた者たちが行う正規の悪魔祓い。こちらは神や天使の力を借りて悪魔を滅するの。そしてもうひとつが『はぐれ悪魔祓い』よ」

 

 

 イッセーは部室で朱乃から治療を受けながら、リアスの話を聞いていた。

 

 

「はぐれ?」

 

 

 イッセーの問いにリアスは頷く。この界隈、往々にして『はぐれ』というものは存在する。

 

 

「悪魔祓いという行為は神の名の下に魔を滅する聖なる儀式。だけれど、悪魔を殺す事自体を楽しむようになるエクソシストがたまに現れるわ。悪魔を倒す事に生き甲斐や悦楽を覚えてしまった輩の事。彼等は例外なく神側の教会から異端者として追放されるわ。もしくは、有害とみなされて裏で始末される」

「始末…殺されるって事すか」

「でも、生き延びる者もいる。そういう輩はどうなると思う?簡単よ。堕天使のもとへ走るの」

「おんなじ、堕ちた者同士って事ですか」

「そうよ。堕天使も天から追放されたとは言え、光の力。悪魔を滅する力を有しているわ。堕天使も先の戦争で仲間や部下の大半を失った。そこで彼らも私たちと同じように下僕を集めることにしたの」

 

 

 言葉にすれば簡単な話。悪魔を殺したいエクソシストと悪魔が邪魔な堕天使は利害が一致した。そして悪魔が『悪魔の駒』で眷属を集めるように、堕天使は天使側に居られなくなった人材を集めているという訳だ。

 

 

「そして悪魔狩りにハマりこんだ危険な悪魔祓いたちは、堕天使の加護を受けて悪魔と悪魔を召喚する人間へ牙をむくようになる。あのフリード・セルゼンはその類ね。背後に堕天使がいる組織に属する『はぐれ悪魔祓い』の者。普通の悪魔祓いでさえ、その多くは殉教者で危険なのに、はぐれの場合はそれ以上に善悪倫理のリミッターが無いわ。一番相対したくない存在と言えるわ」

 

 

 イッセーにも分かる。あれは相当邪悪な存在だ。完全に戦うこと、殺す事に喜びを感じていた。あんな神父がたくさんいるであろう堕天使陣営に関わるのは危険だと。それは分かっている。だが、

 

 

「部長。俺はあの子を、アーシアを救いたいです!」

「無理よ。どうやって救うの?あなたは悪魔。彼女は堕天使の下僕。相容れない存在同士よ。

彼女を救うってことは、堕天使をも敵に回すことになるの。そうなったら私たちも、堕天使と戦わねばならないわ」

「……」

 

 

イッセーは何も言い返せなかった。彼は最早グレモリー眷属の一人、彼の独断専行で迷惑をかけられない。どうにかリアスやアルトリア達に迷惑をかけずにアーシアを救う方法はないか?そう考えてみるが、答えは見つからない。

 

 彼は己の無力さを痛感する。女の子一人救えない。ハーレム王を目指すには彼はまだ弱すぎる。

 

 

 

 

 

 翌日、想像以上に足にダメージが残っていたのか、リアスの優しさか、そのイッセーは休日という事もあって休みをもらった。悪魔稼業を始めてから初めての休み、取り敢えず街繰り出す事にしたイッセー。しかし休みの日にであっても彼の頭にはアーシアをどうすれば助けられるか、その事しかなかったが答えは出なかった。

 部長たちを巻き込んででも助け出すか、はぐれになる覚悟でグレモリー眷属を抜けるか、食客とはいえ悪魔ではないアルトリアに頼み込むか、どれも最善手とはいえず、八方塞がりであった。

 

 

「はぁ~、結局俺が強くなるしかないのかな~」

 

 

 昨日の戦闘で改めて実感した。自分は弱い。フリード相手に手も足も出ず、アルトリアや部長たちが来てくれなければアーシアはおろか自分の身すら危うかった。

 

 

「木場に剣でも教わろうかな、それか朱乃さんに魔法を教わるか、アルトリアに神器の力を解放してもらおうかなぁ………アルトリアかぁ」

 

 

 強くなる方法を模索するイッセーの頭にアルトリアから言われた言葉がよぎる。曰く、今の自分の神器はまだ力を抑えた状態であり、それを解放するにはイッセー自身が強くなるしかないのだと。アルトリア、小学生からの幼馴染だが知らないことが多すぎる。彼女の持つ剣もそうだが、思えば彼女は何故自分の神器を解放できたのか、何故力をセーブさせることが出来たのか、悩みと疑問だけが増えていく。

 考えていても仕方がないと、取り敢えず昼飯だけ買って帰ろうとハンバーガーショップに向かったが、店の前で見覚えのある金髪が目に入る。

 

 

「アーシア?」

「イッセー、さん?」

 

 

 救いたいと思った少女との再会は、思っていたよりあっさりと行われた。

 




  
 弓形態
 アルトリアの持つ武器の形態の中でも、剣杖と並ぶ遠距離武器。展開した姿は弓、というより竪琴のような弦楽器に近い。魔力の矢や実体矢よりも弦の音で空気を切り裂き、それを相手に飛ばす攻撃を得意とする。

 アルトリアはこの弓形態をマスターする為に、弓術だけでなく弦楽器も覚える必要に迫られた。結果アーチェリー部は勿論、音楽系の部活にも助っ人として参加出来るまでにその腕を高めるに至った。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。