赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 ドーモ、ファブニルです。

 今年も年の瀬。本作もこれが今年最後の投稿となります。4月から始めた本作ですが、此処までの応援ありがとうございます。来年も投稿頑張って参ります!

 さて今回はエピローグ。次回からは5章となりますが、結構改変を加えていく予定です。お楽しみにお待ち下さい。

 よろしければ今回もお気に入り登録や高評価、感想をお願いします。

 それでは第四十話、どうぞ!


次なる戦いに備えて

「てなわけで、今日からこのオカルト研究部の顧問になることになった。アザゼル先生と呼べ。もしくは総督でもいいぜ?」

 

 

 会談の数日後。着崩したスーツ姿のアザゼルがオカルト研究部の部室に居た。全員がもれなく言葉を失っている。

 

 

「…どうして、貴方がここに?」

 

 

 額に手を当て、困惑している様子のリアス。

 

 

「ハッ!セラフォルーの妹に頼んだら、この役職だ!ま、俺は知的でチョーイケメンだからな。女生徒でも食いまくってやるさ!」

「それはダメよ!ってなぜソーナがそんなことを」

「堅いな、リアス・グレモリー。いや、何。サーゼクスに頼んだら、セラフォルーの妹に言えと言うんだ。だから頼んだ」

 

 

 何という粗雑な理由、それで通すソーナもどうかと思うが……いや、まさかこちらにアザゼルという厄介ごとを押し付けたのか……?彼女の気質を考えればあり得る話だ。

 

 

「って、その腕は?片腕失いましたよね?」

 

 

 イッセーがアザゼルの腕を指差す。確かにあの時左腕を斬り落としたはずだ。

 

 

「ああ、これか。神器研究のついでに作った本物そっくりの義手だ。光力式レーザービームやら小型ミサイルも搭載できる万能アームさ。一度、こういうの装備したかったんだよな。片腕失った記念に装着してみたわけだ」

 

 

 バシュッ!

 

 

 アザゼルの左腕が飛び出した。部屋中を跳ね返り、クルクルと横に何回転もする。なるほど機械仕掛けの腕か、そう云えば円卓の騎士の一人、ベディヴィエール卿も義手の騎士だったはず。義手、とはいかないが籠手型の形態も模索してみようか。

 

 

「さて、悪魔の学園に堕天使の俺が滞在するのは本来御法度。そこで俺がこの学園に滞在できるように出された条件はグレモリー眷属の悪魔が持つ未成熟な神器を正しく成長させること。神器マニア知識が役に立つわけだ」

 

 

 確かにアザゼルの神器への造詣の深さは、これまでの交流でよく分かっている。彼以上に神器を知っている者など、それこそ今は亡き『神』くらいだろう。

 

 

「お前達も聞いただろうが、『禍の団(カオス・ブリゲード)』ってけったいな組織がある。将来的な抑止力の一つとして、『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』と『騎士王の現し身』たるおまえら二人の名が挙がった。というよりも、対『白い龍(バニシング・ドラゴン)』と『奈落の魔竜(ヴォーティガーン)』専門だな。仕入れた情報では、ヴァーリは自分のチームを持っているって話だ。仮に『白龍皇眷属』と呼んでおくか。判明しているメンツはヴァーリとロウィーナ、孫悟空にアーサー。あと何人かいるらしい」

「ヴァーリ達はまたここに攻めてくるでしょうか?」

 

 

 アルトリアの問いかけにアザゼルは首を横に振った。

 

 

「もう攻めてこないだろうさ。一応のチャンスだった三大勢力のトップ会談での暗殺だが、それも失敗した。奴等の当面の相手は天界、冥界だ。冥界は俺の命令で全堕天使が悪魔と共闘する。そう簡単に冥界を落とすことはできない。天界もセラフの連中が黙っていないだろう。それに天界には居候の強い聖獣、魔獣もいるしな」

「…戦争ですか」

「いや、まだ小競り合いレベルだな。奴等も俺達も準備期間と言える。安心しろ、お前らがこの学園の高等部どころか、大学部を卒業するまで戦なんて起きやしない。学園生活を満喫しとけ。ただ、せっかくの準備期間だ。いろいろと備えようじゃねぇか」

「うーん…」

 

 

 イッセーが頭を捻りながらアザゼルに何か言おうとするが、特に何も出てこないようだった。

 

 

「赤龍帝、難しく考えるな。どうせ、脳が足りねぇんだから、余計な心配をしても埒があかんぞ。お前の敵はあくまでも白龍皇ヴァーリだ。それだけは忘れるな」

 

 

 確かにそうだ。アルトリアもイッセーは今は互いのライバルとの決着だけを考えるべきか。テクニックでは勝っていた、しかし純粋な馬力と相性は悪い。これをどうするべきかを考えなくては。

 

 

「騎士王の方は現状を理解しているようだな。いいか赤龍帝、お前がヴァーリを退けられたのは、ミカエルから貰った龍殺しの剣(ドラゴンスレイヤー)赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の力が合わさったからだ。あと、奴は手を緩めていた。そうじゃなければ負けていたな。というよりも今回は相性のお陰で戦えたに過ぎない。仮に相手がヴァーリ並の力を持つドラゴン以外の存在だったら、お前は殺されていた」

 

 

 アザゼルの言う通りだった。開戦当初のヴァーリは明らかに手を抜いていた。イッセーの思わぬ成長に段々と本気になっていったが、それでも真剣勝負には届かないだろう。

 

 

「それで、白龍皇の力はあれから使えるのか?」

 

 

 と、アザゼルがイッセーに訊ねる。

 

 

「いえ、まったく機能しません」

 

 

 会談の後何度か試してみたが、イッセーが手に入れた「相手を半分にする力」どころか白い籠手自体使えなくなっていた。

 

 

「だろうな。あんな強力な物、そう簡単に扱えるはずがない。他のドラゴンの力を取り込むまでは良い。それを自由に使えるかどうかはまた別だ。下手すれば禁手(バランス・ブレイカー)に至るよりも難しい技能かもしれない。だが、一度取り込んだ力はドライグの魂に登録されているだろう。あとは修行しだいだな。それも地獄のようなしごきを長期的にこなしてだ。弱いくせに無茶に張り切ると死ぬぞ」

 

 

 アザゼルの指摘は尤もだ。幾ら聖魔のバランスが乱れていたとしても完全な渾沌と化した訳ではない。あんなイレギュラーはそう簡単には起こせないだろう。

 

 

「赤龍帝の力が不安定すぎる。その能力は凄まじいが、まだまだ使いこなせていない。相手が格下ならそれで瞬時に倒せるだろうが、格上の相手には封殺される。お前も悪魔として今後レーティングゲームにも参加するなら、強大な力を安定させろ。まず、禁手(バランス・ブレイカー)になってからだな。全ては戦い方次第だ、それも含めて教えないとな」

「レーティングゲーム詳しいんだな」

「ゲームのファンは悪魔だけじゃないんだぜ?和平協定のお陰でゲームを堂々と観戦する天使や堕天使も多く出るだろうよ」

 

 

 なるほど。という事はそのうち、天使や堕天使からの参加もありえるのか?そうなれば自分にも出場の目があるかもしれない。

 

 

「とりあえず、長時間戦える体作りからだな」

「…はい」

 

 

 イッセーの才は未だに未知数だ。ここから何処まで行けるか分からない。だが結局のところ才を発揮する基礎の体力が足りない。体作りは急務だろう。

 

 

「俺、強くなれますか?」

 

 

 それはイッセーの真っ直ぐな問いかけだった。それに対して、にんまりと悪戯な笑みを見せるアザゼル。

 

 

「強くさせてやるよ。俺は暇な堕天使様だからな」

 

 

 今はこの総督を信じるしかないか。すると、イッセーがギャスパーを指差す。

 

 

「仮に今度攻めて来たらギャスパーの時間停止でどうにかできないですかね?」

「せ、せ、せ、せせせせせせせ、先輩!な、な、な、な、ななななな、何をおっしゃるんですかぁぁぁぁぁぁ!ヒィィィィィッ!」

 

 

 イッセーの提案にギャスパーは泣いて叫んでいた。

 

 

「単独じゃ話にならん。どんなのが『禍の団』にいるかわからないしな」

 

 

 しかしアザゼルはバッサリと切り捨てる。未だに段ボールの中に篭もっているギャスパーでは激しい戦禍に耐えられない。加えて『禍の団』には様々な勢力のはみ出し者が在籍しているという。彼らの中にギャスパー特効の強者がいたら終わりだ。

 

 

「ゴメンなさい!役立たずでゴメンなさい!どうせ僕は役立たずです!屑です!豚の餌です!海よりも深く猛省し、エベレストよりも高い目標を持ちますからぁぁぁぁ!見捨てないでぇぇぇぇぇッ!」

 

 

泣きながら、段ボールに逃げ込むギャスパー。まずは、段ボールを卒業かね。

 

 

「そうだ、聖魔剣の。おまえ、禁手(バランス・ブレイカー)状態でどれくらい戦える?」

「現状一時間が限界です」

「ダメだな。最低でも三日は継続できるようにしろ」

 

 

 祐斗からの答えにも満足いっていないアザゼル。だが、対する祐斗は気合の入った表情になっていた。

 

 

「お、俺は限定条件付きで十秒ですけど…」

 

 

 恐る恐る言うイッセーにアザゼルは半眼になっていた。

 

 

「お前は一から鍛えなおす。白龍皇の禁手(バランス・ブレイカー)は一か月は保つぞ。それがお前との差だ。アルトリア、お前さんが見せた限定解除、あれのバリエーションは他にあるのか?」

「エクスカリバー以外にはその(アヴァロン)の模倣ならやった事があります。エムリス曰く他にも応用限定解除があるとか」

「やはりな。エクスカリバーを封じている鞘、そいつは間違いなく強力な神器を元に作られている。そしてその鞘が大剣や弓、槍へと変形していた。形状から察するにあれは円卓の騎士の武器の模倣だ。となるとその発展形として各々の力を再現した形態もあるはずだ。」

「詳しいんすね。やっぱ実際に見てきたんですか?」

 

 

 イッセーの問いかけにアザゼルは懐かしげに目を細める。

 

 

「まぁな、あの時代は大っぴらに神秘が存在した最後の時代だ。俺も天界も注目してた。だからこそ『騎士王の現し身』だなんて言われてる奴がどんなのか気になっていたが、本当にそっくりだよお前」

 

 

 次にアザゼルの視線が朱乃に向く。

 

 

「まだ俺らが、いや、バラキエルが憎いか?」

 

 

 バラキエル、確か朱乃の父親がかの『雷光』だったか。その名を聞いた瞬間、朱乃は厳しい表情で返す。

 

 

「許すつもりはありません。母はあの人のせいで死んだのですから」

「朱乃、お前が悪魔に降った時、彼奴は何も言わなかったよ」

「当然でしょうね。あの人が私に何かを言える立場であるはずがありません」

「そういう意味じゃねぇさ。いや、まあ俺がお前ら親子の間に入るのも野暮か」

「あれを父だとは思いません!」

 

 

 朱乃はそうハッキリと言い切った。家族仲が良い者、悪い者、そもそも家族が居ない者……ここ最近で色んな家族の形を見てきた。

 

 

「そうか。でもな、俺はお前がグレモリー眷属になったのは悪かないと思うぜ。それ以外だったら、バラキエルもどうだったかな」

「………」

 

 

 アザゼルのその言葉に朱乃は何も返す事は無かった。ただ黙って、複雑そうな表情を見せていた。と、今度はイッセーにアザゼルの視線が向く。

 

 

「おい、赤龍帝、イッセーでいいか?イッセー、お前、ハーレムを作るのが夢らしいな?」

「ええ、そうっスけど…」

 

 

 確かにイッセーの夢はハーレムだったが…。

 

 

「俺がハーレムを教えてやろうか?これでも過去数百回ハーレムを形成した男だぜ?話を聞いておいて損はない」

「マ、マ、マママママッマママ、マジッスか」

「ああ、マジだ。お前、童貞か?」

「は、はい!」

「よし、女も教えてやる。適当に美女でもひっかけて男になったほうがいいな。これでも俺は人間の女の乳を揉んで堕ちた身の上だ。エロに関して妥協はねぇさ」

「そ、そんな事で堕ちたんスか!?え?マジで!?」

 

 

 驚きの新事実だ。堕ちた経緯は知っていたが、堕ちた具体的な理由は初めて聞く。イッセーの疑問にリアスがうんざり顔で頷く。

 

 

「本当よ。伝承の通り、グリゴリの幹部達は人間の美女に誘惑されて、天界の貴重な知識を教えてしまって堕ちたのよ」

 

 

 それを聞いてアザゼルは笑っていた。

 

 

「あの頃は俺達も若くてな。童貞丸出しで『神様はエライ!』『神様はスゴイ!』って盲信してたもんだ。ハハハッ、結局誘惑に負けて女抱きまくったら、童貞失って、天使の位も失っちまった。まぁ、ギリシャのプロメテウスみたく内臓(モツ)突かれないだけマシだマシ」

 

 

 頭を掻きながらタハハ、と笑うその姿には何処か親しみを覚える。この人を惹きつける才能もまた彼が堕天使の長を勤められる理由なのだろう。

 

 

「あー、なんだか、急に堕天使さん達に親近感湧いてきたよ」

「おおっ、話が分かるじゃねぇか。そうだ、男なら欲望のままに生きろ。女を食らえ!強くなりたきゃ喰らえ!抱いて抱きまくれば、自身と共に強さもついてくる。俺が卒業式をプロデュースしてやろう。部下の美少女堕天使を何人か紹介してやる。伝説のドラゴンが相手ならあいつらも喜んで抱かれるだろうさ」

 

 

 平然と童貞卒業式の手筈を整えようしているアザゼル。貴方仮にも教師でしょう、何を未成年淫行を勧めているんですか

 

 

「うおおおおっ!マジで!?卒業できるんですか!?俺、先生についていきます!」

「おーー、そうか。よし、じゃあ童貞卒業ツアーにでも出かけるか」

 

 

 アザゼルの話に目を輝かせているイッセーを見て、リアスが慌てふためく。

 

 

「ちょ、ちょっと、待ちなさい、アザゼル!イッセーに変な事を教え込まないでちょうだい!」

 

 

 リアスはイッセーを抱き寄せて、アザゼルに触れさせないようにしていた。

 

 

「いいじゃねぇか。このぐらいの年頃なら女の一つや二つ知っておいたほうが健全ってもんだ。それとも、リアス・グレモリーはお気に入りの下僕が女を知るのに何か不都合でもあるのか?」

「イッセーの貞操は私が管理します!イッセー、人の貞操守っておいて、貴方が他の所で貞操を散らすってどういうことなのかしら!?」

 

 

 紅髪を逆立たせる勢いで捲し立てるリアス。自分の貞操を守ったなら責任を持って貰いなさいという事か。些か自分勝手にも聞こえるが、確かにイッセーが爛れた生活をするのはバディとして見過ごせない

 

 

「イッセーさん、私を置いて遠い所行ってしまうのですか…?」

 

 

 瞳を潤わせるアーシアだが、何処かズレて捉えている。

 

 

「あらあら、イッセーくん、ツアーに参加したら寂しいですわ」

 

 

 朱乃さんが悲しそうな表情をしている。イッセーが堕天使と肉体関係になるのは気に入らないという事か。

 

 

「…先輩、最低です」

 

 

 小猫がいつも通りの台詞を吐くが、その顔に不快感は見られない。寧ろ笑っている。

 

 

「ふむ、部長が貞操を管理するとなると子作りは難しいな…むぅ」

 

 

 ゼノヴィアは真剣にどう子作りに持ち込もうか悩んでる。全員バラバラの反応だ。

 

 

「イッセー、爛れた生活を送るなら容赦なく断罪します」

 

 

 アルトリアは瞑目した後、ギン!とイッセーを睨む。イッセーが肉体関係を持つことは構わない。但しそればかりにかまけるなら容赦なく斬る覚悟だ。

 

 

「モテモテです、先輩!ひ、引きこもりの僕は憧れるばかりですぅぅ!」

「いやー、段々僕の事を悪く言えなくなってきているよね」

 

 

 男子二人もまた思い思いの反応を取る。その光景を見て、アザゼルが豪快に笑った。

 

 

「ハハハ!なんだよ!そうかそうか。そういや、ドラゴンや英雄は自然と一夫多妻を形成するんだったな。俺が教えるまでもないのか。ま、ここは三すくみ同盟の代表的な場所の一つとなる。堕天使の総督、魔王の妹、天使側のバックアップ、そして伝説のドラゴンと騎士王だ。仲良くやっていこうや。当面の目標は赤龍帝の完全なる禁手化(バランス・ブレイク)

それとお前らのパワーアップだな。それらを夏休みに修行して達成するべきだ」

 

 

 夏休み。そうか、もう一学期も終わりなのか。かなり濃密な一学期だった。しかしこの堕天使総督、あっという間にオカ研に馴染んでいる。ついこの間まで敵組織のリーダーだったとは思えない。

 

 

「私達も強くならなくてはいけないのね」

 

 

 リアスの言葉にアザゼルも応じる。

 

 

「強くて損はない。で、話では近日中に若手悪魔共の会合があるんだろう?デビューが近くて有望な若い悪魔がリアス・グレモリーを含め数名いると聞いたが」

「ええ、名門、旧家、その手の若手悪魔何名かで顔合わせ。習わしみたいなものよ」

「テロがあった時期にゲームのこと考えていいですか?」

 

 

 イッセーの質問だ。確かに一見すると呑気に見える。しかし、こんな状況だからこそ政権の安定感と悪魔社会の未来が明るい事をアピールする必要がある。イッセーの疑問にアザゼルが答える。

 

 

「俺はむしろ推奨するね。戦闘経験の無い現若手悪魔にゲームでの戦いは良い経験になる。現在の悪魔には、人間、堕天使、魔獣から転生した転生悪魔がひしめきあっているからな。相手の種類には困らない。豊富なバトルフィールドも設置、戦い方もそれに応じて千差万別ときた。これほど好条件の若手育成環境はない。案外、サーゼクス達は今の状況を将来的に見据えてこのゲームを創り出したのかもしれねぇな。悪魔同士で競わせて、力の質を高めていく。欲深い連中だからこそハマったんだろうさ。食えない奴等だ」

 

 

 確かにその通りだ。レーティングゲームのルールは実際の戦場に則した状況もある。実戦経験を積むには最適と言える。

 

 

「なーに、俺が直接力の使い方と神器の使い方を叩きこんでやるよ。それと、合宿中に試合もセッティングする予定だ。レーティングゲーム形式で一つやろうと思う。すでにサーゼクスに打診済みだ」

 

 

 手が早い。流石に優秀だ。一見自由人で無遠慮に見えて、その辺りの根回しはしっかりしているようだ。

 

 

「ククク、未知の進化を始めたブーステッド・ギアに最強の聖剣エクスカリバー。それに聖魔剣。さらに『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』だ。俺の研究成果を叩きこんで独自の進化形態を模索してやる」

 

 

 アザゼルが危険な笑いと考えを発している。まるでマッドサイエンティストだ。ならこちらは実験動物という事か?冗談ではない!

 

 

「なんでしょう。結果は出そうですが、先行きが不安過ぎます……」

「俺もだ、どうなっちゃうんだよオカ研……」

 

 

 イッセーとアルトリアは顔を見合わせ、ため息を吐く。するとアザゼルが思い出したかのように、「あ」と声を挙げた。

 

 

「そういえばサーゼクスから二つ命令を預かってたんだ。一つ『魔王サーゼクス・ルシファーの名において名ずる。アルトリア・ペンドラゴンは夏休み開始と同時にオカルト研究部所属とする』ま、これから忙しくなるからな。これからは裏の世界一本でやってもらうぞ」

 

 

 アザゼルの口から言い渡されたサーゼクスからの命令。些か強引だが、これから『禍の団』に対峙していく以上、各部への助っ人に行く時間は無いか。お世話になった部のメンバーへの挨拶回りをしなくては。

 

 

「アルトリアがオカ研に……!」

「わぁ…!アルトリアさん、改めてよろしくお願いします!」

「えぇ、よろしくお願いしますアーシア」

「これで名実ともに仲間だな、よろしく頼むよ」

 

 

 アーシアとゼノヴィアが喜色を露わに歓迎する。他の全員もアルトリアを歓迎するように笑顔を浮かべる。

 

 

「ん?二つって事はあと一つあるんだよな?」

「あぁ、さっきのはアルトリアに向けてのメッセージだな。もう一つはイッセー、お前宛だ」

 

 

 アザゼルの口から発せられるもう一つの命令を聞いた次の瞬間、部室内は驚きの声に満ちた。

 

 

 

 

 

「こんにちは」

「や、どうも。今日からお邪魔するよ」

 

 

 次の日、まず朱乃とゼノヴィアが大荷物を持って兵藤家を訪れていた。朱乃はイッセーを確認するなり、抱きついた。

 

 

「イッセーくん。朱乃、ただいま貴方の元へ到着しました!」

 

 

 朱乃が潤んだ瞳でイッセーを見つめている。まるで長年会えなかった恋人が再会したかのような絡み具合だ。イッセーにべったり抱き着いて離れない。イッセーは嬉しそうだが、リアスがギロリと睨んでいる。朱乃はこの状況を楽しんでいるようだが。

 

 なぜこんなことになったのか。それはサーゼクスからのもう一つの命令にある。授業参観前に兵藤家に泊まったサーゼクスだが、そこで眷属のスキンシップの重要性を知ったそうだ。そこで魔王の名の下、オカルト研究部女子部員は兵藤一誠と生活を共にするようにという命令が下されたのだ。

 

 

「イッセーくん♪私、今夜は一緒に寝ますわ。うふふ♪一度、ベッドの中でイッセーくんと一夜を共にしたかったの」

「マジですか!?うおおおおっ!は、鼻血が!」

「アーシア、私の部屋はアーシアと同じでいいのかな?」

「はい、これからよろしくお願いします」

 

 

 ゼノヴィアはアーシアと同じ部屋を使う事となるようだ。続いて小猫がやってくる。

 

 

「どうも」

 

 

 簡素な挨拶だが、ドライな小猫らしいともいえる。すると朱乃に抱き着かれるイッセーの前まで来て、ちらりと彼を見る。

 

 

「イッセー先輩。部屋を覗いたり、下着を盗んだりしたら、許しません」

 

 

 そのまますたすたと歩いて行った。イッセーはそんなことしないよ、とでも言いたげな微妙な顔をしている。何だかんだで最近はイッセーも忙しいのか覗きをすることも少なくなったため杞憂だとは思うが。

 

 

「イッセー、これからお世話になりますね」

 

 

 最後に来たのはアルトリアだが、キャリーケースの他に合宿で使った大容量リュックも背負っている。他の皆よりも大荷物だが、中身は衣服ではない。その中には魔術礼装や魔術書が詰まっている。彼女は暮らしていた部屋と一緒に工房も引き払ってきたのだ。

 

 

「流石にそんな荷物置くスペースうちにはねぇぞ……」

「安心してください。庭先を借りれればそこにテントを張りますので」

「いや流石にダメだろ!」

 

 

 幾ら狭くなると言ってもこれから一緒に暮らす、しかも幼馴染であるアルトリアを家の外で暮らさせるほど、イッセーは鬼畜ではない。

 

 

「確かに私達全員がクラスにはこのお家では狭いわね……決めたわ。夏休み中に改築しましょう。お兄様に連絡を取ってみるわ」

 

 

 物凄く軽いノリで改築すると言い出したリアス。これからこの家は一体どうなるのだろうか……

 

 様々な波乱を巻き起こしつつ、こうして兵藤一誠、アルトリア・ペンドラゴンの一学期は終わったのだった。

 

 

 

駒王学園 一学期 終業

 

駒王学園高等部 オカルト研究部

 

顧問教諭/アザゼル(堕天使総督)

部長/リアス・グレモリー(王)三年生  残る駒 『戦車』一個 

副部長/姫島朱乃(女王) 三年生 

部員/塔城小猫(戦車) 一年生 

   木場祐斗(騎士) 二年生

   ゼノヴィア(騎士) 二年生

   アーシア・アルジェント(僧侶) 二年生

   ギャスパー・ヴラディ(僧侶) 一年生

   兵藤一誠(兵士) 二年生

   アルトリア・ペンドラゴン(名誉騎士侯) 二年生





「──以上が、ミカエル殿からの報告です、オーディン様」
「若造どもが、跳ねっ返りよってからに。神の見真似とは大胆なことをする、ミカエルめ」


 そこは北の地。大いなる神が治めるヴァルハラ。そこで二柱の神が話し合っていた。


「いかが致しましょう?『聖書』に記されし神が崩御されていたのは予想外でしたが、オーディン様には『視』えていたのでは?」
「まぁの。しかし若造ミカエルを始め、ルシファーの偽者、悪戯小僧のアザゼル、まったくもって小童どものお遊戯会じゃな」
「では、その小童どもに我らアース神族の、本当の『神々』を知らしめますか?」
「フレイ、今更世界を巻き込んだ戦争なぞ、この年老いた身には応えるわい。それにそんな事をして人理に影響を及ぼしてみろ、世界の敵として聖剣に滅ぼされるわ」


 ため息をつくオーディンの頭の中には、かつての情景が思い浮かんでいた。この星を襲った白き遊星と、それを撃破した星の光。今よりも若かったオーディンの脳裏に、その光は激しく焼きついていた。そして今再びあの光が世に出た。


「エクスカリバー……まさかあの騎士王が甦るとは」
「アレはそんなチャチなものでは無いわ。全く、業が深いとはこの事よ……だがアレがもう一度見られるならば組む価値はあるかの」
「という事は……」
「うむ、此処は真っ先に手を組むが我らの益になると『視』えた。急ぎミカエルに遣いをやれ」
「ハッ!」


 玉座からフレイに指示を出す。未来を予測し、手を打つのは得意だ。その経験と眼が真っ先に講和すべきと判断した。


「楽しそうですね」
「楽しいわい。父なる存在を失った小僧どもの足搔き、星の光の行末。さあさあ、これからどうする」
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