赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 ドーモ、ファブニルです。

 完全に投稿へのモチベが落ちてました。さらに増えた仕事に完全に参ってました。何とか仕上げましたので、どうかご覧ください。

それと完全に私事ですが、遂に、遂にSwitch2を購入出来ました!!マジで長かった。ニンテンドー公式の制限に引っかかって中々購入できず、抽選も外れまくってましたが、Amazonは私を見捨てていなかった!ありがとう!
 まぁ、ゲームもやる気が起きてないんだが。

 よろしければ今回も、お気に入り登録や高評価、感想をお願いします。

 それでは第四十七話、どうぞ!


黒狗との邂逅、特訓の終わり

 小猫の状態を確認し、一言言葉を残したアルトリアはその後修行へと戻った。日々ゴーレムに魔力による攻撃を当て、アンチマジック鉄球を防ぎ、基礎能力を向上させて、アザゼルと組み手を行う。

 

 2週間目にはアザゼルにかなり肉薄出来るようになってきており、遂に彼に『堕天龍の鎧』を使わせることに成功した。

 

 

「ん?」

「やぁ、待っていたよ。君が『現代の騎士王』アルトリア・ペンドラゴンさんだね」

 

 

 トレーニングメニュー四のための部屋に、見慣れない男性が一人立っていた。黒髪に黒いアンダースーツ、そして黒いコートと全身を黒で覆った若い男性。その側には同じく黒い狗が口に刃を加えて控えている。

 感じるのは鋭く、禍々しい闘気。邪な物ではないが、目の前に立つものを全てを切り裂いてやると言わんばかりの圧を感じる。

 

 

「失礼。お初にお目にかかりますが、貴方は……」

「俺は幾瀬鳶雄。『神の子を見張る者』の特殊部隊を率いらせてもらってる者だ。こっちは『(ジン)』、俺の神器だ。よろしく」

 

 

 初めて聞く名だった。少なくとも三大勢力の表舞台に立つ人間ではない。いや、そもそも彼は自分と同じ人間だ。彼は何者なのだろうか……

 

 

『そいつはウチの特殊部隊、『刃狗(スラッシュ・ドッグ)』のリーダーだ。側にいるのは神滅具『黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)』、独立具現型の神器だ』

「先生!」

 

 

 部屋に響く声、先日まで彼女を鍛えていたアザゼルの声だ。

 

 

『悪いな、そろそろ俺も総督としての仕事が忙しくなってきてこっちに構ってられなくなってきた。なんでもリアスとソーナのゲーム前にオーディンの爺が協定を結びに来るんだと。流石に俺も出張らなきゃならんくなった。すまないが残りの期間はそいつを含めた『刃狗(スラッシュ・ドッグ)』チームと過ごしてもらう。安心しろ、そいつを含め禁手に至った奴らを揃えた精鋭チームだ。じゃ、頑張れよ』

 

 

 そういってアナウンスが切れる。なるほど。禁手(バランス・ブレイカー)に至った逸材、という訳ですか。

 

 

「それほどの実力者に指導を頂けるのはありがたいこと。どうかよろしくお願いいたします」

「あんまり畏まらなくていいよ。俺たちも丁度手が空いてただけだからさ。じゃあ、さっそく始めようか」

 

 

 アルトリアはエムリスを槍形態へと変える。槍を持ち、姿勢を低くして攻撃に備える。

 

 

「……へぇ、それがエクスカリバー。いや正確には剣を覆ってる外装の力か。じゃあ、まずはこれからだ」

 

 

 鳶雄が手を振ると、彼の影が伸び、無数の刃が迫りくる!

 

 

「フッ!」

 

 

 すかさずアルトリアは後方へ下がる。まずは様子見、アザゼル先生とは違った戦い方をする彼の動きを知らなければならない。

 

 

「ふむ、反応速度は中々。こっちの攻撃に突っ込まず、まずは相手の出方を伺うか。悪くないな」

 

 

 なにやらこちらに裁定を下しているが、そろそろ仕掛けてみるか。刃を避けながら走っていたが、キュっと踏み込み鳶雄へと舵を切る。手に持つ槍に魔力とオーラを込め、鳶雄へと突っ込む。鳶雄との軸線上には何本もの黒い刃が乱立しているが関係ない、全てなぎ倒す。

 

 

「シッ!」

「けど甘いね」

 

 

 突き入れた槍の穂先は彼の影から生えた刃に阻まれた。影から這い出る刃を盾として扱ったのか。かなりの力を込めたが涼しい顔、これが神滅具(ロンギヌス)の禁手に至った者の余裕か。

 反撃の刃を後方に下がる事で避けつつ、アルトリアは分析を行なった。

 

 

「これが『黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)』、神滅具の力ですか」

「君もやるね。ロウィーナのライバルって話は伊達じゃなさそうだ」

 

 

 そう語る彼の顔は昔を懐かしむようだった。彼は『神の子を見張る者』の一員、彼等との面識もあったのだろう。

 と、そんなことを考えており暇もなく、再び影から刃が迫る!しかも先ほどより狙いが正確だ。ただ此方を追うだけではない。伸びた影は幾重にも枝分かれし、後ろから追う影、横合いから迫る影、そして回り込んでくる影など役割分担が成されている。

 

 

「そらそら、ギアを挙げていくぞ。切り刻まれないようにな!」

「チィッ!」

 

 

 それはまるで狼の狩りだった。迫る影は狼の群れの小グループ、這い出る刃は狼の爪や牙。ならばこちらは追い立てられる獲物か。確かあの神器に封じられているのは原初の狼男と呼ばれる存在だったか。

 

 

「くッ!?(槍では対処できない!)ならここは!」

 

 

 このままでは此方が追い立てられて終わりだ。ならば此処は敢えて逃げない!

 

 

「エムリス!第一段階応用限定解除!」

 

 

 槍形態から走りながら形状を変える。逃げるのがダメならどっしりと守る!アルトリアは槍を大楯形態へと変形させ、迫りくる大小様々な刃に盾を向けた。

 

 

「ハァァァァァァァッ!!」

 

 

 前方に巨大な城壁を展開する。未だに第二段階には至れていない。だが、『神の子を見張る者』に残されていた古の城壁の強度に関するデータを見れた事で再現度は上がっている筈!前よりも濃い色の魔力の壁に黒い刃は殺到し、容赦なく突き刺さっていく。

 

 

 ガァン!ガガガガガ!バキッ!バギャッ!ズバン!

 

 

 最初は弾けていたがすぐに城壁にはひびが入り、間もなく黒い刃は障壁を切り裂いて此方へと殺到した!何でも切れるという噂は本当だったのか、だがこの盾の防御力を甘く見て貰っては困る!

 

 

「アアァァァァァァッ!!!」

 

 

 防ぐ、防ぐ防ぐ防ぐ防ぐ!!盾の表面に伝わる衝撃を受け止め、往なし、堪える!耐えろ!そして一歩前へ!古代の英雄、中世の盾騎士、そして現代の神器使い。記録に残されていた盾使いたちは嵐のような攻撃にも耐えてきたはずだ!

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

 耐えきった。いや耐えさせられた、というところか……。息をつく間もない連続攻撃に此方の防御は崩される寸前だった。

 盾越しに鳶雄を見やる。彼はまだまだ余裕そうな顔だ。消耗させられた、ならここは一気に片を付けるしかない。

 

 

「まだまだ戦い方が甘いね。さっきの選択、剣で一気に薙ぎ払うって事も出来たんじゃないかな?」

「そうなれば薙ぎ払った後の隙に攻撃を差し込まれるでしょう。今の私では完全に薙ぎ払うことは出来ない。もしそんなことをすれば他の影から一突きされて終わりです」

 

 

 『黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)』、その能力は聞いている。あらゆる影から黒い刃を生み出して攻撃する。刃は物体だけでなく、魔術などの実体を持たない物も切り裂くことが出来る。彼を相手に影が出来るような攻撃は悪手だ。

 

 

「(どうする……大技は隙を作るし、爆風の影から攻撃される。遠距離からでは刃に防がれる。至近距離で攻撃しようにもあの技はまだ未完成、ならここは)行きます!」

 

 

 選択した形態は籠手形態。一気に距離を詰めて全力を叩きつける!剣を核とした外装を籠手へと変形させる。右手に金色の輝きを備えたアルトリアは構えを取る。一拍の呼吸の後、弾かれるように突っ込んだ!

 

 

「正面からか!」

 

 

 鳶雄は影を刃へと変え、アルトリアへと向かわせる。しかしアルトリアは高めた魔力を拳に乗せて、手刀によって迫りくる黒刃を斬り、砕く。迫りくる障害を乗り越え、ただ一直線に前へ、前へと突き進む。

 

 

「さっきもそうだけど『夜陰鉤(ナイト・ハーケン)』を平然と砕いていくな!凄まじいポテンシャルだよ!」

 

 

 鳶雄もただ刃を砕かれていく訳ではない。すかさず刃を作り直し、アルトリアへと襲い掛からせる。しかし、覆い被さる様に迫る刃をすり抜け、アルトリアは鳶雄を射程圏内に捕らえた。

 

 

「ッ!」

「ここだ!『我が腕に宿れ、勝利の剣(スイッチオン・エクスカリバー)』!」

 

 

 掌を尖らせ、魔力を込める。籠手の中に宿った聖剣のオーラを(かいな)に乗せて、貫手(ぬきて)の要領で突き出した!腕と言う限定的な範囲に推しとどめられたオーラは必然的に圧縮され、突き出した腕から爆発的に放出される。相手一点のみ狙う為余計な破壊を起こさない。剣とは違い、振った後の遠心力で隙を晒す事もない。これが今アルトリアに出来る幾瀬鳶雄への、『黒刃の狗神』への解答だ。

 

 

「くッ!」

 

 

 彼を狙った攻撃は、しかし外れた。展開してからずっと動かなかった黒狗、『刃』が彼を突き飛ばしたのだ。彼女の貫手は『刃』の背を僅かに霞め、彼の後ろに着弾して終わった。

 

 

「仕留められませんでしたか「そこまでなのです」!」

「!」

 

 

 出入り口に複数の人影が見える。皆若い男女であり、凄腕の気配を漂わせている。その中でも一際強いオーラを発する魔女の格好をした女性が戦いの終わりを宣言した。

 

 

「トビー、油断し過ぎですよ。相手はローちゃんのライバルなんですから」

 

 

 トビー、鳶雄の事だろうか。そしてローちゃんとはまさか、ロウィーナ・ヴォーティガーンか?

 

 

「悪い、ラヴィニア。流石に舐め過ぎてた。初戦でいきなり殺されかかるなんてな」

「今の私では貴方を殺す気でなければ届かない。そう判断しました」

「うひゃー、おっかねぇ」

「そういう戦いに振り切れてるところ、ロウィーナちゃんに似てるかも?」

 

 

 ぷんすこ、と効果音が出そうな怒り方をするラヴィニアと呼ばれた魔女と、その後ろの男女がワイワイと騒ぎ出す。この中の良さから察するに、彼らが『刃狗(スラッシュ・ドッグ)』チームのメンバーだろうか。

 

 

「初めましてなのです。私はラヴィニア・レーニ、『灰色の魔術師(グラウ・ツァオベラー)』所属の魔術師なのです」

 

 

 金髪碧眼の、ほわほわとした印象を受ける魔女に少々毒気を抜かれたような感覚を覚えるアルトリア。しかし彼女からは言い知れぬオーラを、『神滅具』持ちと同じオーラを感じる。

 

 

「この感じ、まさか『神滅具(ロンギヌス)』?」

「おっ、気づけるのか。そう、ラヴィニアさんは『神滅具』持ちだぜ」

「『神滅具』の一つ、『永遠の氷姫(アブソリュート・ディマイズ)』の持ち主。それがラヴィニアさんよ」

 

 

 『永遠の氷姫(アブソリュート・ディマイズ)』!小国すら凍てつかせるという氷系最強の神器。『黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)』といい今日は二人も『神滅具(ロンギヌス)』持ちに会っている。

 

 

「よろしくお願いします。改めて、私はアルトリア・ペンドラゴン、短い間ですがお世話になります」

「うんうん、礼儀正しい良い子なのです。よろしくお願いしますね」

「こっちも自己紹介しねぇとな、俺は鮫島綱生。こっちは『白砂』だ」

「私は皆川夏梅。この子は『グリフォン』よ」

「私は七滝詩求子(ななだるシグネ)。この子達はポッくん、ポォくん、ポンくん」

 

 

 次々と自己紹介をする『刃狗』のメンバーには一つ共通点があった。それは全員が独立具現型の神器を保有している点だ。

 

 

「あぁ、何人かは留守にしてるんだが、ここにいる俺たちはみんな独立具現型の所有者だ。昔、と言っても数年前に色々あってな。それがきっかけで俺たちのチームは出来たんだ」

「数年前、そういえば風の噂ですが日本の五大宗家と堕天使間で何やらいざこざがあったと聞いています」

 

 

 その事件は駒王町までは被害を受けていなかったため忘れていたが、何やら騒がしかったのを憶えている。

 

 

「それそれ。あの事件から俺たちは総督直下のエージェントとして色々動いてるんだ。で、最近調査がひと段落したって事で君の特訓に回された訳だ」

「まぁ、じきに次の任務が入るだろうけど、それまではよろしくね」

 

 

 そこからは互いの関係を温める事となった。彼等が経験して来たこと、ヴァーリとロウィーナの過去の話。『刃』を始めとした独立具現型の神器の説明や、彼等から見た先程の戦いのフィードバックなど。

 

 アルトリア以上の濃密かつ多彩な経験を積んできた猛者の言う事をアルトリアは吸収していった。全てを力に変え、多くの人を守る為に。

 こうして彼女の特訓の日々は過ぎていく。アルトリアの力は日を追うごとに増していった。そして

 

 

 ドガァァァァァァァァァン!

 

 

「おのれェ、この『グリゴーレム21号』が破れるとはぁ……だが、このまままでは済まさんぞ。いつか見ているがいい、騎士王アルトリア・ペンドラゴン!」

 

 

 アルマロスの前にはパックリと裂けた、或いは横一文字に切られ焦げついたグリゴーレムの残骸の姿があった。

 

 

「相変わらずすげぇ、また止めたぜあの人」

「あぁ、最初の頃から吹っ飛ばされては無かったけど、途中から障壁を破られる事も無くなったしな」

 

 

 そう語る彼等の目の前には、大きな防御障壁に阻まれて止まるアンチマジック仕様の鉄球クレーンの姿があった。

 

 

「ウォッ、と!」

「ちょっと、今のは危なかったんじゃない?槍使いのアンタが槍勝負で負けたら肩なしよ?」

「う、うるせぇ!」

 

 

 軽く吹き飛ばされた鮫島の先には槍を片手に持ち、愛馬グイントと共に此方に向き直るアルトリアの姿があった。

 

 

「もう俺たちとやり合えるまでになったのか。コレなら心配要らないな」

「えぇ、今日までありがとうございます。『刃狗』の皆さん」

「アルトリアさん。どうか、ヴァーくんとローちゃんをお願いしますです」

「お任せを」

 

 

 こうしてアルトリアの特訓生活は終わりを告げた。他の皆も特訓から戻ってきているだろう。みんながどれだけ成長したか楽しみにしつつ、アルトリアはグレモリー本邸へと向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレモリー本邸前に一つの人影が立っている。元龍王タンニーンとの地獄のような特訓を生き延びたイッセーだ。ボロボロのジャージから見える傷塗れの引き締まった身体から、彼がどれだけきつい日々を送ってきたのかが伺い見れる。

 

 

「やあ、イッセーくん」

 

 

 そんな彼の耳に聞き覚えのある男の声がした。振り返るとそこには祐斗がいた。イッセーほどではないが彼のジャージも所々がボロボロだった。自慢の甘いマスクはどこか引き締まった印象を受ける。

 

 

「……良い体になったね」

 

 

 祐斗が上半身裸のイッセーを見てそう言う。イッセーは身を隠すように自分を抱きしめる。

 

 

「や、やめろ、なんだ、その目は……そういう目で俺の体を見るな!」

 

 

 祐斗は時々こういった発言をする。腐女子が聞けば興奮するような祐斗の言動にイッセーはビクビクしっぱなしだった。

 

 

「ひ、酷いな。僕は筋肉がついたねって言いたかっただけなのに」

「おまえは……変わらないな」

「まあ、僕は肉がつきにくい体だからね。うらやましいよ」

「おー、イッセーと木場か」

 

 

 次に現れたのはゼノヴィアだった。女子の登場に喜び振り向くイッセーの眼に映ったのは、全身包帯だらけでボロボロなゼノヴィアだった。

 

 

「ゼノヴィア、どうしたんだよ。その恰好…?」

 

 

 イッセーが訊ねると、ゼノヴィアは改めて自分の格好を見て言う。

 

 

「うん。修行してケガして包帯巻いて修行してケガして包帯巻いていたら、こうなった」

「ほとんどミイラ女じゃねぇか!」

「失敬な。私は永久保存されるつもりはないぞ?」

「そういう意味じゃねぇって!」

 

 

 彼女の奇行は相変わらずだった。しかしイッセーの眼にはゼノヴィアの身に纏うオーラは以前よりも静かで厚みがあるように見える。そういえば、木場もオーラが濃くなっていたな、と考えたところでいつの間にか自分が魔力やオーラを見るのが得意になったと気づいた。

 次の瞬間、自分達の後ろから大きなオーラが迫っているのを感じた。

 

 

「おや、三人ともお久しぶりです」

 

 

 振り返ると、そこには堕天使領から帰還したアルトリアが居た。そのオーラは大きく、強く、厚みのあるものだった。そのオーラにイッセーはブルっと身震いしてしまう。まるで彼女を畏れているような気持ちがイッセーにはあった。

 

 

「やぁ、アルトリア。君も随分と鍛えたようだね」

「オーラがより強くなっているね。また離されたかな?」

 

 

 そんなイッセーとは対称的に『騎士』二人は和やかに話しかける。ここにオカルト研究部三騎士が揃った。

 

 

「イッセーさん!アルトリアさん!木場さん、ゼノヴィアさんも!」

 

 

 屋敷から出てきたのはシスター服姿のアーシアだった。

 

 

「アーシア、久しぶりだな」

「イ、イッセーさん!ふ、服を着てください!」

 

 

 イッセーの半裸にアーシアが慌てている。これは男の裸を見て恥ずかしいというよりもイッセーの行いが恥ずかしいから上に何か着ろという意味だろう。アーシアは風呂場などで意外とイッセーの裸は見慣れている。

 

 

「あら、外出組は皆帰ってきたみたいね」

 

 

 次に現れたのはリアスだった。

 

 

「部長ォォォォォォッ!会いたかったっス!」

「イッセー…随分たくましくなったわね。胸板が厚くなったかしら」

 

 

 イッセーは凄まじい速度でリアスに駆け寄り、彼女に抱き着く。それをリアスは優しく抱き返した。

 

 

「さて、皆。入ってちょうだい。シャワーを浴びて着替えたら、修行の報告会をしましょう」

 

 

 さて、アザゼル先生から言い渡された目標は達成できたが、他のみんなはどうだっただろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 グレモリー家の一室にオカルト研究部が揃った。こうして全員が揃うのは実に三週間ぶりになる。外で修行していたイッセー、アルトリア、祐斗、ゼノヴィアはシャワーを浴びて着替えた後、広間の部屋に集まっていた。

 そして皆が修行の内容を話していた。アルトリアが堕天使の施設での話を。祐斗は剣の師匠(一番隊隊長)との修行顛末。ゼノヴィアも修行の内容を。イッセーはタンニーンのサバイバル生活を話した。

 

 

 一番驚いたのは、皆が衣食住を保障された中で一人だけサバイバルというか、ハンターのような生活を送っていた事だ。

 

 

「あの先生、なんか、俺だけ酷い生活送ってませんか…?」

「俺もお前が山で生活できていたから驚いたよ。途中で逃げ帰ると思っていたからな。まさか、普通に山で暮らし始めていたとは俺も想定外だった」

 

 

 なるほど…、逃げ帰った後で修行のメニューを教えるはずだったのがサバイバル生活に順応したという事か……

 

 

「ええええええええっ!?何それ…?お、俺、冥界産のウサギっぽい奴とかイノシシっぽい奴を狩ってさばいて焼いて食べてたんですよ…?水だって、山で拾った鉄鍋で一度沸騰殺菌してから水筒に入れてたし…」

「だから驚いているんだよ。おまえ、たくましすぎるぞ。ある意味、悪魔を超えてる」 

「酷い!こちとらあのお山でドラゴンに一日中追いかけ回されて生活してたのにぃぃぃっ!何度死にかけたことか!うええええええんっ!」

 

 

 アザゼル先生の話にイッセーは泣き出してしまう。

 

 

「部長と会いたくて会いたくて!毎夜部長のぬくもりを思い出しながら葉っぱにくるまって寝てたのにぃぃぃ!辛かったよぉぉぉっ!ドラゴンのおっさん、手加減しないで寝ている時も襲ってくるんだもん!岩が吹き飛んだよぉぉぉぉ!山火事が俺を襲ってくるぅぅぅぅっ!逃げろぉぉぉぉっ!逃げなきゃ死ぬぅぅぅぅっ!」

「かわいそうなイッセー…。よく耐えたわね。ああ、イッセー。こんなにたくましくなって…。あの山は名前がなかったけれど、『イッセー山』と命名しておくわ」

「イッセー、私も『神の子を見張る者』で精神に関する魔法の説明を受けました。一応修得してきたので、よければ使いますか?」

 

 

 イッセーも今回の事がトラウマだったのか、リアスの胸元で大泣きしていた。流石にあんまりな様子なのでアルトリアも堕天使から教わった精神鎮静の魔法を唱えようとする。

 

 

「いや、それでもかなり体力が向上したようだな。これでいざ禁手(バランス・ブレイカー)に至っても鎧を着ている時間がそこそこあるだろう。しかし、禁手(バランス・ブレイカー)には至れなかったか」

 

 

 イッセーは目標を達成できなかったのか。だがそれは半分分かっていた。二人の仲に眠る赤き龍の因子、もしイッセーが禁手(バランス・ブレイカー)に至ったならば呼応してこちらにも反応が来るはず。それが無いという事はイッセーはまだ至れていないのだろうとは考えていた。

 

 

「ま、その可能性は予想していた範囲でもある。ああ、お前達がショックを受ける事はないぞ、イッセー。禁手(バランス・ブレイカー)ってのはそれほど劇的変化がないと無理という事だ。サバイバル生活と龍王クラスのドラゴンとの接触で何かが変化すると思ったんだが、時間が足りなかったな。せめて、あと一か月…」

 

 

 ここから更に一か月となると流石に間に合わない。残念だが、イッセーの進化はまた次の機会にという事になりそうだ。

 

 

「ま、いい。報告会は終了。明日は北欧との協定締結を兼ねたパーティだ。今日はもう解散するぞ」

 

 

 先生の一声に報告会は終了した。どうやらオーディン神は聖書と協定を締結するようだ。かの神話体系が味方に付くのは心強い。加えてブリテンとも関係浅からぬ神話体系、また何か得られるかもしれない。

 こうして、アルトリアの修行生活は終わりを告げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アザゼル、どうしたのです?そんな深刻な顔で資料を見て」

「シェムハザ、コレを見てくれ」

 

 

 アルトリアが去った『神の子を見張る者』の施設。その一室、アザゼル用の部屋にアザゼルとシェムハザはいた。

 アザゼルは手に持つ紙を信頼する副総督に見せる。

 

 

「コレは、アルトリア・ペンドラゴンの能力推移ですか。能力の向上値、推移、振れ幅、能力の拡張具合。全て高水準ですね、理想的と言っていい」

「あぁ、理想的だな。理想的過ぎるんだよ。普通こういうのはなかなか伸びなかったり、一気に成長したりと上がり方は不安定なもんだ。けどな、アルトリアはそんな事なく俺の出した課題を順調にクリアしたんだよ。それに、これを見てみろ」

 

 

 アザゼルが1束の紙を渡す。そこにはアルトリアの魔力に関する計測結果が記されていた。

 

 

「これは、魔力の流れが綺麗過ぎる。ここまで効率的な、精密回路の様なものは見た事がない。ヴァーリやロウィーナでさえ、流れに曲りくねりやロスがあったのに。これでは、まるで……」

「あぁ、考えたくはないがな。アルトリアは、アイツは産み出されたモノじゃない。造られたモノだ」




 設定

我が腕に宿れ、勝利の剣(スイッチオン・エクスカリバー)

 アルトリアが籠手形態で編み出した技。聖剣のオーラを籠手に宿らせ、攻撃と共に一気に放出する。貫手のほか、手刀、拳打、張り手やデコピンでも発動自体は可能である。
 今回の様な対人戦における選択肢の一つだが、まだまだ改良の余地は残されている。
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