赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 ドーモ、ファブニルです。

 新しい仕事を覚えつつ、身体を休めながら書いてたらまた二週間経ってた……本格的に疲れを取りに行った方がいいかもしれん。

 今回はあくまで次への繋ぎ、ヴァーリチーム襲撃前のパーティーでのお話となります。

 よろしければ今回も、お気に入り登録や高評価、感想をお願いします。

 それでは第四十八話、どうぞ!


レセプション会場

 オカルト研究部が集合した次の日の夕刻、イッセーは駒王学園の制服に身を包んで客間で待機していた。

 今日は北欧勢力との調印式のレセプションに参加するからだ。魔王の親族として、もうすぐレーティングゲームを控えた眷属として参加する事になる。制服なのは学生としての正装だから、これにグレモリーの紋様が入った腕章をつけるだけで公的な場にも出られるそうだ。

 

 女子は準備に時間が掛かるとのことで、全員メイド達が連れていった。因みに祐斗もギャスパーも用事があると席を外している。

 

 

「兵藤か?」

 

 

 聞き覚えのある声に振り返ればそこに立っていたのは匙だった。どうしてここにこいつが?

 

 

「匙、どうしてここに?」

「ああ、会長がリアス先輩と一緒に会場入りするってんで付いてきたんだ。で、会長は先輩に会いに行っちまったし、仕方ないんで屋敷の中をうろうろしてたら、ここに出た」

 

 

 グレモリー本邸は屋敷だけでも広大だ。それで彼は迷ったあげくここに来たのだ。イッセーから少し離れた席に座る匙が真剣な面持ちで言う。

 

 

「もうすぐゲームだな」

「ああ」

「俺は鍛えたぜ」

「俺もだ。山で毎日ドラゴンに追いかけられてた」

「そ、そうか。相変わらずハードな生き方してんな。まあ、俺も相当ハードなメニューこなしたけどさ」

 

 

 匙は頬をかきながら言う。彼もまた主の為に全力を尽くしてきたのだ。

 

 

「兵藤。先月、若手悪魔が集まった時の事覚えているか?」

「たしか、レーティングゲームの学校を作るって話か。それがどうかしたのか」

「あれ、俺達は本気だ。勿論夢がそのまま叶うとは思っちゃいないがな。それで…お、俺…。せ、先生になるのが夢なんだ!」

 

 

 突然、匙は顔を真っ赤にしてそう言う。

 

 

「先生?」

「お前も聞いてただろうけど、会長は冥界に学校を設立しようとしてる。只の学校じゃないんだ。悪魔なら上級下級貴族平民関係なしに受け入れる、誰にも自由な学校なんだ。会長に聞いたんだ。悪魔業界は少しずつ、差別やら伝統やらなんかが緩和されてきたけど、まだまだ根底の部分で受け入れがたい部分もあるって。だから、レーティングゲームの学校もいまだに上級悪魔の貴族しか受け入れていない。ゲームは誰にも平等でなければいけない。これは現魔王様達がお決めになられた事だ。平等なのに下級悪魔の平民にはゲームの道が遠いんだよ。おかしいだろ?もしかしたら、貴族以外の悪魔でもやり方しだいでは上級悪魔に昇格できるかもしれないのによ。可能性はゼロじゃないはずなんだ!」

 

 

 匙の真剣な意見にイッセーは驚いていた。匙は匙なりに将来を真面目に考えていたのだ。だがその道のりは遠い。イッセーはあの決意表明の場に現れたオーディン神の事を思い出していた

 

 

「会長はそれをなんとかしたいって言ってた。下級悪魔でもゲームができるってことを教えたいって。だから、この冥界に誰でも入れる学校を作るんだよ!そしてゲームだけじゃない、いつかは下級悪魔という存在が上級悪魔に差別されない世界を創りたいんだ。オーディン様に夢の問題点を指摘されてから会長は今まで以上に頑張っている。俺に出来る事は会長の考え方が正しいとゲームで証明する事、そして会長の夢が叶えられるだけの力を持つことだ」

 

 

 いつの間にかイッセーは匙の話に引き込まれていた。

 

 

「だからこそ、俺は上級悪魔を目指す。そして同時に教員免許も取る。会長が俺にも学校作りを手伝って欲しいってさ。免許を取れればこんな俺でも学校の先生になれるかもしれない…。お、俺、昔はバカなことばっかりやっていてさ。親にも迷惑かけたし、周りの人間にも嫌われてた。でもよ、会長となら、夢が見れるんだ!俺は生涯会長の御傍に居て会長の手助けする!会長の夢が俺の夢なんだ!」

 

 

 匙は照れながら言う。匙は明確な夢を見つけていた。

 

 

「 (それが匙の夢か。誰かの夢を叶えるのが夢かこういう夢の形もあるのか…。)応援してるぜ、匙。いい先生になれよ」

「ああ、そのためにも今度お前を倒さなきゃいけないんだけどな」

「あー、なるほど。なら、ダメだ。俺達が勝つさ!」

「いや、俺達が勝つさ。上にバカにされた以上、俺達は結果で見せなきゃいけない。そのために色々と肉体改造してきたんだからな」

 

 

 肉体改造、という事は身体を相当鍛えたのか、と考えながらイッセーと匙はお互い笑いあう。しかし瞳は真剣そのものだ。

 

 

「イッセー、お待たせ。あら、匙くんと一緒だったのね」

 

 

 そこへリアス達がやってくる。イッセーが振り向くと、女性陣達はみなドレスアップした姿だった。赤いドレスのリアス、青いドレスのアルトリア、淡いグリーンのアーシアに白いドレスの小猫、深い青のゼノヴィアに、朱乃だけは黒い着物姿だった。全員化粧をして、髪を結った普段と違う衣装でイッセーは新鮮な気持ちになった。だが一人だけ問題な奴がいた。

 

 

「なんでお前までドレス姿なんだよ!」

 

 

 イッセーに突っ込まれたのはギャスパーだった。小猫に似たドレスを着ている。用事があると言っていなくなったと思ったらこの為だったのか。似合っているから余計におかしく思える。女装癖もここまで来たら敬服してしまう。

 

 

「サジ。待たせましたね」

「!会長、お綺麗です!」

 

 

 皆と同じくドレスアップしたソーナ会長に、匙は鼻息荒くし褒め称えた。その後ろには生徒会メンバーも揃っている。祐斗も礼服姿で登場して、オカルト研究部と駒王学園生徒会メンバーが勢揃いしたところで庭の方から地響きと共に何かが着地したような重い音が響いた。しばらくして執事が来て言う。

 

 

「タンニーン様とそのご眷属の方々がいらっしゃいました」

 

 

 

 

 

 庭に出てみると圧巻の光景が広がっていた。庭に居たのは元龍王のタンニーン、そして彼と同じサイズのドラゴンが九体もいる。彼らは皆タンニーンの眷属だ。彼の眷属は全員が大型のドラゴンで構成されている。正に龍の王に相応しい様相だ。

 

 

「約束通り来たぞ、兵藤一誠」

「うん!ありがとう、おっさん!」

「まさかタンニーン卿に会場まで運んでもらえるとは……」

「何、この程度問題ない。お前達が背に乗っている間、特殊な結界を背中に発生させる。それで空中でも髪や衣装やらが乱れないだろう。女はその辺大事だからな」

 

 

 女性にとって化粧の崩れは途轍もない恥だ。その辺りの気遣いも完璧な辺りドラゴンながら紳士という言葉を使わずには居られない。確か彼にも家族がいるはずなので、そういった機微に聡いのだろう。

 

 

「ありがとう、タンニーン。会場まで頼むわ。シトリーの者もいるのだけれど、大丈夫かしら?」

「おおっ、リアス嬢。美しい限りだ。問題ない。人数が倍に増えたぐらいで俺の眷属は揺るがんよ」

 

 

 かくしてグレモリー、シトリー眷属はドラゴンの背に乗り、冥界の大空に飛び出した。イッセーとアルトリアはタンニーンに乗る事にした。

 

 

「これがドラゴンから見る景色、初めて見ました……」

『ドラゴンの上からこの風景を見るとは。なんとも言えん体験だ』

 

 

 アルトリアは初めての経験に珍しく目を輝かせ、神器に宿るドライグは苦笑していた。確かにドラゴンがドラゴンの背に乗るというのは奇妙な体験だろう。

 

 

「ハハハ、それは面白い体験だろう、ドライグ。しかし、力のある強大なドラゴンで現役なのは俺を含めても三匹か。いや、俺は悪魔に転生しているし、ティアマトの方は龍王になったのが分たれた後だから、完全な龍はオーフィスただ一体だけか。残りはやられて封印されたか、隠居したか。玉龍もミドガルズオルムも二度と表に出てこないだろう。そして、ドライグ、アルビオン、ファヴニール、ヴリトラは神器に封じられてしまった。──いつの時代も強いドラゴンは退治される。強いドラゴンは怖い存在だものな」

 

 

 タンニーンは少しだけ寂しげな口調でそう言った。

 

 

「そういや、ドラゴンのおっさんはどうして悪魔になったんだ?」

 

 

 イッセーの何気ない問いかけにタンニーンは答える。

 

 

「大きな戦もできなくなったこの時代、レーティングゲームをすれば様々な連中と戦えると思ったことがひとつ。そして、理由にはもうひとつある」

「もうひとつ?」

「……ドラゴンアップルという果物は知っているか? 龍が食べる林檎のことだ」

「うぅん、初めて聞いたよ。てか、そのまんまの名前だ」

「とあるドラゴンの種族には、ドラゴンアップルでしか生存できないものもある。ところが、人間界に実っていたそれらは環境の激変により絶滅してしまったのだ。もう、その果実が実るのは冥界しかない。しかしな、ドラゴンは冥界では嫌われ者だ。悪魔にも堕天使にも忌み嫌われている。ただで果実を与えるわけもないだろう?──だから、俺が悪魔となって、実の生っている地区を丸ごと領土にしたんだよ。上級悪魔以上になれば、魔王から冥界の一部を領土としてちょうだいできる。俺はそこに目をつけたのだ」

「じゃあ、食べ物に困っていたそのドラゴンの種族はおっさんの領土に住んでいるのか?」

「ああ、おかげさまでそいつらは絶滅を免れた。それと俺の領土内でそのドラゴンアップルを人工的に実らせる研究もおこなっている。特別な果実だ、研究には時間がかかるだろう。それでもその種族に未来があるのであれば、続けていったほうがいい」

 

 

 ドラゴンの中の一種族を助ける為に、龍王と呼ばれる存在が悪魔の幕下に降る。相当な覚悟だっただろう。アルトリアも一度聞いたことがあったが、彼の生き様もまた一つの『王』の道だと感じた。

 

 

「おっさんは良いドラゴンなんだな」

 

 

 イッセーの言葉にタンニーンは大きく笑った。

 

 

「良いドラゴン? ガハハハハハハハハッ! そんな風に言われたのは初めてだ! しかも赤龍帝からの賛辞とは痛み入る! しかしな、小僧。種族の存続をさせたいのはどの生き物とて同じこと。人間も悪魔もドラゴンも同じなのだ。俺は同じドラゴンを救おうと思ったに過ぎない。それが力を持つドラゴンが力のないドラゴンにできることだ」

「……すげぇな。俺はただ闇雲に上級悪魔になりたいってだけだ。そ、それと、ハーレムを作りたいってだけで突っ走ろうとしてた。こんな心構えじゃダメなのかな?」

「若いうちはそれでいい。雄ならば女や富が欲しくなるのは必定。度が過ぎるのはよくないが、動く原動力となるのならそれでいいではないか。だがな、兵藤一誠、ハーレムだけを最終目標にするのはもったいないぞ。強くなれば雌が寄ってくるのは当然だ。問題は女も富も得た後にある」

「得たものを以て、何を為すか。という事でしょうか?」

「そうだ、アルトリア卿。貴殿の中にもまたドライグの因子がある。貴殿もまたドラゴンだ。ドラゴンの力を以て、貴殿は何を為す?」

「無論、弱き者を守る為です」

「騎士らしい答えだな。だが俺からすると少々足りないとも、勿体無いとは思うがな。まぁ、こればかりは口出しするものでもあるまい………と、見えてきたぞ」

 

 

 イッセーは悪魔としての目標について考え込み、アルトリアはタンニーンの言葉の意味を考え始めた。そんな2人の思いを別に彼らの向かう先に光明が見え始める。レセプション会場まで、もうすぐだった。

 

 

 

 

 

 

 会場となる超高層高級ホテルは、グレモリーの端にある広大な面積の森の中にポッカリと存在していた。此処は今回のレセプションの為に急遽作られた会場だ。本来ならリリスやルシファードなどで行うべきだが、昨今の旧魔王派の蠢動を避ける為、またオーディンの決断が想像以上に早かった為に取られた苦肉の策だ。

 

 イッセーを乗せたドラゴン達は、地上から照らされるスポットライトに沿いながら降り立つ。

 

 

「じゃあ、俺達は大型の悪魔専用の待機スペースに行く」

「ありがとう、タンニーン」

「貴重な体験でした、タンニーン卿」

「おっさん!ありがとう!」

 

 

 イッセーとリアス、アルトリアがタンニーンにお礼を告げる。タンニーン達はそれぞれ会釈や手を挙げるなどで返すと再び羽ばたき、この敷地のどこかに移動していった。

 その後、着陸場にいた係の者の案内に従って一行はリムジンの乗車し、ホテルへと向かっていた。最近周りの生活レベルが高くなっていると感じるイッセーは周りを見る。高級そうな内装と美しいドレス。自分の向かいにはリアスが座り、その横には朱乃とアルトリア。自分の隣にはアーシアが座り、更にその隣にゼノヴィア達も座っている。これが今後何回もあるのだろうとイッセーは襟元を正しながら、リアスからの説明を聞く。

 

 

「ホテル周囲に各施設も存在してて、軍も待機しているわ。下手な都市部よりもよっぽど厳重なのよ?」

 

 

 大型ショッピングモール、遊技場、軍の詰める官舎等々。全てこの会議の為に造られたものだが、あくまでも移設しているだけなので、事が済めば全て元の場所に戻す。 

 

 

「部長、アザゼル先生はどうしたんですか?」

「あの人は他のルートでお兄様達と合流してから向かうそうよ。すっかり仲よしこよしなのだから…」

 

 

 堕天使総督と兄が仲良くするのは複雑な心境だろうが、仲が悪いよりはいいと思う。苦笑いする一同にリアスはすぐに真剣な面持ちになる。

 

 

「さっきタンニーンの眷属の背でソーナに戦線布告をされたわ。『私達は夢の為に貴方達を倒します』と」

 

 

 リアスはタンニーンの『女王』の背に乗っていた。二人きりのときにそんなことが起きていたのか。

 

 

「学校、レーティングゲームを始めとした様々な事を学ぶ学舎。ソーナはそれを建てるために人間界で学生をしながら、人間界の学校システムを学んでいた。誰でも入れる土壌のある人間界の学校はソーナにとって重要なものだったのよ」

 

 

 イッセーは匙の発言を思い出していた、会長は夢の為に学園にいるのだ、と。

 

 

「部長、匙も言っていました。『先生になる』って。すっげぇ眼を輝かして語ってて、でも真剣な目標で…」

「それでも勝つわ。レーティングゲームを勝ち進むのは私達の夢と目標であるのだもの」

 

 

 リアスの決意は固かった。相手が親友でも手は抜かないだろう。いや、親友だからこそ全力で挑むのだろう。

 

 

「応援しています。私も共に戦えれば良かったのですが……」

「安心して。お兄様とアジュカ様から聞いた話だけど、将来的には悪魔以外の種族もレーティングゲームに参加できるようにするそうよ。まだ構想段階らしいけど、そうなれば貴女も一緒に戦えるわ」

「その日を心待ちにしています、リアス」

 

 

 そんな会話をしている内にリムジンはホテルに到着。出ていくと、大勢の従業員に迎え入れられる。そのまま中に入り、フロントで朱乃が確認を取って、エレベーターへ入る。

 

 

「最上階にある大フロアがパーティ会場みたいね。イッセー、各御家の方に声を掛けられたら、ちゃんと挨拶するのよ?」

「は、はい。それはそうと部長。今日のパーティには確かオーディン様が来るんでしたよね」

「えぇ、学園での協定で私達『聖書陣営』は形式上一つとなった。そこでこれまでの諍いの清算と『禍の団』に対する協力体制の構築の為に様々な神話体系に働きかけているの。北欧神話は真っ先に乗ってきたわね」

 

 

 あの時、あの場にオーディンが居たのはそういう事かとイッセーが納得しているとエレベーターも到着し、一歩出ると会場入り口も開かれる。そこではきらびやかな広間が一同を向かい入れてくれた。フロアいっぱいに大勢の悪魔と美味しそうな食事の数々が目に映る。

 

 

「「「おおっ」」」

 

 

 リアスの登場にフロア内の誰もが注目し、感嘆の息を漏らしていた。

 

 

「リアス姫。ますますお美しくなられて…」

「サーゼクス様もご自慢でしょうな」

 

 

 と、リアスに皆が見惚れてる。何人かの悪魔は挨拶しようとこちらに向かってきていた。

 

 

「うぅぅ、人がいっぱい…」

 

 

 またもイッセーの背中にドレス姿のギャスパーがピッタリと引っ付いていた。すぐ逃げる事は無くなったが、人見知りは相変わらずらしい。

 

 

「イッセー、あいさつ回りするわよ」

「へ?」

 

 

 間の抜けた声で返事したイッセーだが、彼は赤龍帝だ。伝説のドラゴンが悪魔になったことは悪魔社会でも有名であり、挨拶したい上級悪魔は大勢いる。

 そんなわけでイッセーはリアスに連れられてフロアを一周する事になった。残されたメンバーもそれぞれに関係ある人達に挨拶したり、食事に手をつけるなどして時間を潰す事にした。

 

 さてアルトリアはというと、挨拶をしては軽く流されるされるというのを繰り返していた。低位かつ悪魔ではない彼女は貴族の中では異端中の異端である為に社交界での繋がりが薄く、これまで幾人の反体制悪魔を手に掛けた事から、恐れて繋がりを作ろうという悪魔もそこまでいない。

 結果、アガレス眷属のニキチッチを始めとした数人と会話しただけで終わってしまった。

 

 話が終わり、アルトリアはイッセー達と合流しようと会場を見回す。キョロキョロと周りを見渡していると、会場の端にイッセー達の姿が見えた。

 どうやら皆慣れないパーティーに疲れている様子だったので、ドリンクと軽めな食事をトレイに乗せ、会場端のソファーへ向かう。

 

 

「皆さん、お疲れ様です。慣れない場で疲れたでしょう。どうぞ」

「おぉ、アルトリア。サンキューな」

 

 

 イッセーは相当連れ回されたのかソファーにややだらしない格好を晒している。やれやれしょうがないと、軽く襟元などを整えてやっていると、ツカツカと此方に誰かが近づいてくる。

 振り返ると、ドレスを着た見覚えのある少女が真っ直ぐイッセーを睨んでいた。

 

 

「あ、おまえは」

「お、お久しぶりですわね、赤龍帝」

「焼き鳥野郎の妹か」

 

 

 そう、イッセーに近づいてきたのはリアス先輩の元婚約者、ライザー・フェニックスの妹、レイヴェル・フェニックスだった。

 

 

「レイヴェル・フェニックスです!まったく、これだから下級悪魔は頭が悪くて嫌になりますわ」

 

 

 彼女はイッセーの態度にぷんすかという擬音が出ているかのように怒っていた。

 

 

「悪かったな。で、兄貴は元気か?」

 

 

 そういえばあのゲーム以降、ライザーの話を全く聞いていない。するとレイヴェルはため息を吐く。

 

 

「…貴方のおかげで塞ぎ込んでしまいましたわ。よほど敗北とリアス様を貴方に取られた事がショックだったようです。ま、才能に頼って、調子に乗っていたところもありますから、良い薬になったはずですわ」

 

 

 仮にも兄だというのに、随分と手厳しい。

 

 

「ハハハ…容赦ないな。一応お前も兄貴の眷属だろう?」

「それなら、現在トレードを済ませて、今はお母さまの眷属ということになってますわ。お母さまが、自分の持っていた未使用の駒と交換してくださったの。お母さまは眷属になりたい方を見つけたら、トレードしてくれるとおっしゃってくださいましたから、実質フリーの『僧侶』ですわ。お母さまはゲームしませんし」

「トレード?」

「レーティングゲームのルールの一つです、イッセー。『王』である悪魔の間で同じ種類の駒同士を交換する事が出来るのです。フェニックス侯爵夫人がどれだけ眷属をお持ちかは存じませんが、恐らく殆どの眷属が移籍しているのでは?」

「えぇ、その通りです。と、ところで赤龍帝」

「その赤龍帝ってのはやめてくれ。俺は兵藤一誠って名前があるしさ。お前、俺と同い年ぐらいだろ?なら、普通でいいて。皆、『イッセー』って呼んでるぞ?」

 

 

 そういうイッセーだが、悪魔は見た目を弄れるので外見年齢、特に女性のソレは当てにならない。が、称号で呼ばれるよりは親しみやすいだろう。

 

 

「お、お名前で呼んでもよろしいのですか!?」

 

 

 レイヴェルの態度が露骨に軟化する。さっきまで見下した言い方だったが、今では嬉しそうにしている。かなり高慢な性格で普段通しているようなので、友人がいないのか。それとも……

 

 

「コ、コホン。で、では、遠慮なく、イッセー様と呼んで差し上げてよ」

「様?いやいや、だからそういうのはいいて」

「いいえ、これは大事な事です!そ、それと此方をお近づきの印に……」

 

 

 レイヴェルが何かを手渡す。それはフェニックス家の紋章の入った物だった。万年筆かなにかだろうか?そこへ別の女性がやってきた。確かライザーの『騎士』カーラマインだったか。

 

 

「レイヴェル。旦那様のご友人がお呼びだ」

「分かりましたわ。イッセー様、今度、お会い出来たら、お茶でもいかがかしら?わ、わ、わ、私でよろしければ、手製のケーキをご、ご、ご用意してあげてもよろしくてよ?」

 

 

 かなり緊張しながらそう言うと、レイヴェルはドレスの裾をひょいと上げ、一礼して去っていた。

 

 

「やあ、兵藤一誠」

 

 

 今度は『戦車』のイザベラがイッセーに話しかけてきた。

 

 

「あんたはフェニックス家のイザベラさんだよね?」

「ああ、あの時はいい一撃をもらった。まだ覚えているよ。また強くなったそうじゃないか。君が強くなればなるだけ私の話しも自慢話になるのかな」

「えーと、あいつ…レイヴェルの付き添いですか?」

「まあ、そんなとこ。あの子もあの子で我が主ライザー様と同じぐらい掴めない所があるものだから…。あのゲームでの一戦以来、レイヴェルは君の話ばかりをしているよ。ライザー様と君の戦いがとても印象的だったようだ」

「どうせ文句でしょう?兄貴の婚約邪魔したし、あいつにも暴言吐いたし」

「…いや、逆なわけだが。まあいい。いずれ、わかるだろう」

「?とりあえず、お茶はOKだと言っておいてください」

「本当か?それはありがたい。レイヴェルも喜ぶだろう。さて、私はこれにて失礼する。良い宴を」

 

 

 そのままイザベラは手を振って去っていった。

 

 

「…イッセー先輩って、意外に悪魔の交友が多いんですね…」

 

 

 ギャスパーは尊敬の眼差しでイッセーを見つめていた。赤龍帝だからか色んな人の注目を引く上に、彼の素の性格の良さが人を惹きつけるのだろう。

 そんな事を考えていると視界の端に小さな影が映る。小猫だ。何やら急いでパーティ会場を出ようとしている。その表情と様子は何処か驚きと焦りを孕んだものだった。突如、言いしれぬ不安がアルトリアを襲う。修行で鍛えた直感が「小猫を追え」と囁いている。そしてイッセーも同様の予感を感じ取ったようだ。

 

 

「では私はこれで。サーゼクス様に護衛を任されていますので」

 

 

 まずアルトリアがサーゼクスからの任務と嘘をつき、会場を抜けようとする。続いてイッセーが動き出す。

 

 

「三人共、ここで待っていてくれ」

「イッセーさん、どうしたんですか?もうすぐ魔王様の挨拶が始まりますよ」

「いや、ちょっと挨拶を出来なかった知り合いが見えたから会ってくるよ。魔王様の挨拶までには戻ってくるよ」

「わかった。私達はここにいるぞ」

「ああ!」

 

 

 会場を後にした2人は合流し、小猫の後を追った。彼女はエレベーター乗っていく。下に向かったのか?隣のエレベーターにイッセーが乗り込んでいたのでアルトリアもそれに続く。すると、さらに誰かが乗ってくる。振り返ればそれはリアスだった。

 

 

「どうしたの二人共?血相をかえて」

「小猫ちゃんを見たんです」

「何かを追うように飛び出して行きました、嫌な予感がします」

「なるほど、二人共その姿が気になったのね。わかったわ、私も行く」

「わかりました」

「はい!けど、良く俺がエレベーターに乗り込むの分かりましたね?」

 

 

 怪訝に思うイッセーにリアス先輩はニッコリしながら答える。

 

 

「私は常に貴方の事を見ているんだから」

「(その言い方は少し怖いですよ、リアス)」




 今章はアニメ版と原作のミックス展開。よって、奴がきます。

 北欧の悪神、トリックスター、魔狼たちの父が。
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