赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 ドーモ、ファブニルです。

 反応や感想が少なく凹んでましたが、三連休挟んで一話書き切りました。もっと投稿ペース上げられるように頑張って参ります。

 今回はアルトリアVSアーサー戦となりますが、とある事情でアーサーには弱体化してもらいます。じゃないとアーサー戦がきつい事になりますから。彼の本気とやり合えるとすれば、多分覚醒後でしょうかね。
 それと今回もfateから新キャラを呼んできました。円卓の闇描くならこの人は欠かせないよな。

 よろしければ今回も、お気に入り登録や高評価、感想をお願いします。

 それでは第四十九話、どうぞ!


招かれざる者たち

 小猫を追ったエレベーターは一階まで降りた。外に出て、近くにいた悪魔に小猫の特徴を伝えて、此処を通ったか尋ねる。何人目かで、外に出た事が判明した。ホテルの外に出ると、リアスは使い魔のコウモリに探索させ、アルトリアは意識を集中させ、魔力反応を追った。

 

 

「やはり小猫の様子はおかしいわね」

「はい。でも、小猫ちゃんがあそこまで追う者って何でしょうか?」

 

 

 イッセーの問いにリアスは深く考え込むが、何も答えてくれない。リアスには心当たりがあるようだ。

 

 

「!見つけました。小猫はあちらの森にいます」

「こっちも見つけたわ。一人で森を進んでるわね」

 

 

 三人はコウモリの後を追って走り出す。明るい場所を抜け出て、闇夜の森を走り抜く。煌びやかなホテルから少し離れれば、そこは冥界の原生林。獣道のような走れなくはない道を進むこと数分。

 

 

『!ここは隠れるんだ、マイロード』

「?分かりました」

 

 

 小猫の姿を捉えたところで、リアスはイッセーの手を引き、エムリスの忠告を受けたアルトリアと共に木の陰に隠れた。木から僅かに顔を少し覗かせると、小猫の姿が見える。

 小猫は何かを探し求めるように森の真ん中でキョロキョロと首を動かしていた。そして、何かに気付いて視線をそこへ。三人も小猫の視線の先に目を向けた。

 

 

「久しぶりじゃない?」

 

 

 聞き覚えのない声が聞こえた。音も立てずに現れたのは着崩した黒い着物に身を包んだ女性だった。小猫にどこか似た、それでいて妖艶な雰囲気を漂わせるその姿はまるで花魁のよう。そんな女性の頭部には猫耳が生えている。

 彼女の正体に気が付いたイッセーにリアスは「しーっ」と様子を静観するように指示してくる。

 

 

「っ!……あなたは」

 

 

 小猫は酷く驚いた様で全身を震わせていた。

 

 

「ハロー、白音。お姉ちゃんよ」

 

 

 白音。それは小猫の本名。今は小猫で通している彼女の真の名を知る者が居るとすれば……

 

 

「黒歌姉さま……!」

 

 

 絞りだすような声の小猫。やはり小猫の姉!小猫が自身の力を忌避するきっかけとなった主殺しの危険な「はぐれ悪魔」だ。黒歌の足元に黒い猫がすり寄る。

 

 

「会場に紛れ込ませたこの黒猫一匹でここまで来てくれるなんてお姉ちゃん感動しちゃうにゃ!」

 

 

 小猫はあの黒猫を会場で見かけてここまで来たということか。あれは恐らく黒歌の使い魔なのだろう。

 

 

「…姉さま。これはどういうことですか?」

 

 

 小猫の声には怒気が含まれていた。しかし、相手は笑うだけだ。

 

 

「怖い顔しないで。ちょっと野暮用なの。悪魔さん達がここで大きな催ししているっていうじゃない?だからぁ、ちょっと気になっちゃって。にゃん♪」

 

 

 手を猫みたいにしてかわいくウインクする黒歌。

 

 

「なぁ、黒歌。後ろの奴らずっと無視する気かぃ」

「ほぅ、彼女を付けてきたという所でしょうか」

 

 

 今度は聞き覚えのある声がする。さらに姿を現したのは古代中国の鎧ようなものを着た孫悟空の美猴。それにもう一人は二本の聖剣を携えた聖剣使い、アーサー・ペンドラゴン!『禍の団』の二人が揃っているという事は彼女もまたその一員か!

 バレていては仕方がないと三人は意を決して木陰から姿を現す。

 

 

「気配を消しても無駄無駄。俺っちや黒歌みたいに仙術知ってると、気の流れの少しの変化だけでだいたいわかるんだよねぃ」

「…イッセー先輩、アルトリア先輩、部長」

「よう、クソ猿さん。ヴァーリは元気かよ?」

「ハハハハ、まあねぃ。そっちは…へぇ、多少は強くなったのかねぃ」

「お久しぶりです、アーサー・ペンドラゴン」

「こちらこそ、アルトリア・ペンドラゴン殿。随分と力を付けられたご様子で……」

 

 

 二人はそれぞれの身体を見てそう判断した。外見から分かるのかとイッセーは顔には出さずに驚く。 

 

 

「言ったろ?俺っちは仙術も嗜んでいるんでねぃ、気の流れとかである程度わかるのさ。お前さんらを覆うオーラの量が以前よりも上がっていたんでねぃ。ま、アーサーの方は聖剣使いとしての感覚か、血のせいかねぇ」

「テロリストがこんなところで何を?まさか妹に会いに来たメンバーの付き添いという訳ではないでしょう?」

 

 

 アルトリアが三人に訊ねるが、美猴は笑いながら返した。

 

 

「ま、その通りだな。ヴァーリから()()()をこの会場まで誘導してくれって頼まれてねぃ。そのついでに黒歌が妹に会いたいって言うからこうして此処にいるわけさ」

「ある男?」

「ま、妹を巻き込みたくない姉心って奴かねぃ」

「美猴、あまり作戦について喋るものではありませんよ」

「まあまあ、良いじゃねぃかい。堅い事いうなよ」

 

 

 作戦と言った。つまり今、あの会場に何者かが向かっているということだ。然も態々小猫を連れ出したという事は彼女を巻き込みたくない、傷つけたくないという事だろう。そこまで危険な男が会場に現れるのか!

 

 

「で、美猴。誰、この子達?」

 

 

 黒歌がイッセーとアルトリアを指差して美猴に訊く。

 

 

「赤龍帝と騎士王の現し身」

 

 

 それを聞いて、黒歌は目を丸くしていた。

 

 

「本当にゃん?へぇ~。こっちがヴァーリを退けたおっぱい好きの現赤龍帝と、ウチのメンバーと因縁浅からぬ騎士王ちゃんなのね?あ、アンタには感謝してるのよ、騎士王ちゃん」

「?なにを?」

「ロウィーナに一泡吹かせた事よ。ヴァーリの奴、私がどれだけ誘惑しても全く靡かない癖にロウィーナ相手にはホイホイ着いていくんだから。私にもプライドってものがあるにゃん」

 

 

 つまりは自分の代わりにロウィーナをギャフンと言わせたことに感謝しているのか?何というか下らないというか、女の嫉妬は恐ろしいというべきか……!?

 

 

「!?何ですか、このオーラは!」

「お、感じ取ったか。てことは向こうもおっぱじめたって事かねぃ」

 

 

 

 

 イッセー達が小猫を追って森へと向かった頃、残されたオカルト研究部のメンバーはサーゼクスの挨拶を聞いていた

 

 

「……であり……今ここに我らは手を取りあい、新たな脅威へと立ち向かわねばならないのです」

 

 

 サーゼクスが三大勢力の和平と、今回の北欧との和睦協定の趣旨を説明している中、アーシアたちは未だに帰らないイッセーを待ち続けていた。

 

 

「イッセーさん達、一体何方へ行かれたのでしょう。挨拶が始まってしまったのに……」

「あぁ、流石に戻りが遅いな……」

「会場にも居ないみたいですし、先輩たちどこへ行っちゃったんでしょう……」

 

 

 アーシア、ゼノヴィア、ギャスパーは会場を見渡しているがイッセー、リアス、アルトリアの三人の姿が何処にもない。

 

 

「では、オーディン殿。条文に異議なき場合はサインを」

「ウム、では「異議あり!」……やはり来おったか、愚か者め」

 

 

 若い男性の声が会場に響き渡る。参加者の多くが何処から聞こえたのか辺りを見回していると、突如、空中に北欧式の魔法陣が出現する。青い魔法陣がまるで戸を開けるように開くと、そこには白いローブを纏う白髪の若い男性が浮いていた。

 

 

「我が名はロキ。北欧の悪神、ロキである!」

 

 

 ロキ、それは北欧の古い神の一柱である。元は巨人と女神との間に生まれた存在だったが、オーディンに気に入られ、アース神族の仲間入りを果たしたという異色の経歴の持ち主。北欧神話においてはトリックスターとして場を掻き乱し、また多くの怪物、神獣を産み出した存在だ。

 

 

「これは珍客だな。北欧のトリックスターとは」

「ロキ殿。北欧の神であれど、この場を荒らす権利は貴方には無い」

「いや権利ならある。そこ裏切者を成敗する権利がな。我らが主神オーディンよ、何故他神話と手を組み、平和への道を歩むのか。それでは我らが迎えるべき『神々の黄昏(ラグナロク)』が成就出来ないではないか」

 

 

 そう言い放つロキ。彼にとって自分たちの神話こそ絶対であり頂点、そして『神々の黄昏(ラグナロク)』こそ目指すべき至高の目標。それを妨げる者、神話体系の純粋さを穢すものは許されないことなのだ。

 

 

「自身の神話への優位性と純潔性か……どっかで聞いたような話だな。てめぇ、まさか『禍の団(カオス・ブリゲード)』と繋がってるのか?」

「協力関係にあるのは認めよう、堕天使の長。しかしそれはあくまで我らの神話をあるべき形へ戻すための事。なによりこれは私自身の意志だ!」

「ロキよ。お主が固執する気持ちも分からんでもないが、儂はあんな結末は気に入らんのでな。今引けば許してやろう」

「フン。老い耄れめ、さては命が惜しくなったか?ならば定め通り、我が子に呑まれるがいい!来たれ、我が愛しき息子よ!!」

 

 

 これ以上話す事は無いとばかりに手を振り上げるロキ。すると彼と同じ、しかし数倍は大きな魔法陣が出現する。開かれたそれからのっそりと現れたのは一匹の、いや一頭の巨狼だった。灰色の毛並みを揃えた、10メートルはあろうかという狼が遠吠えを挙げる!

 

 

 アオオォォォォォォォンッ!!

 

 

神喰狼(フェンリル)だと!野郎とんでもない奴を出してきやがった!」

「チッ、ロキめ。グレイプニルを勝手に解きおったか」

「我が息子よ、とことん喰らいつくせ!」

 

 

 

 

 

「北欧のロキがね、今回の協定にケチつけたいんだって」

「三人共!急いで戻るわよ!」

 

 

 急いで戻ろうとするリアスだったが、黒歌から殺気が発せられた。

 

 

「行かせると思ってるの?あ、白音をくれるなら返してやってもいいにゃん。あのとき連れて行ってあげられなかったからね♪」

「勝手に連れ帰れば、ヴァーリが嫌がるのでは?」

「つーか、戦力になるのかぃ」

「ええ、この子にも私と同じ力が流れていると知れば、オーフィスもヴァーリも納得するでしょ?」

「そりゃそうかもしれんけどさ。今は只の雑魚だろ。即戦力にはなりそうにないが?」

「そこは私が手取り足取り、鍛えてあげるにゃん。すぐに一線級に育ててみせるにゃん」

 

 

 獲物を狙うかのように黒歌が目を細める。小猫はそれを見て小さな体をビクつかせ、恐怖で震えていた。そこへイッセーが両者の間に入り、真正面から宣言する。

 

 

「この子は俺達リアス・グレモリー眷属の、オカルト研究部の大事な仲間だ。連れて行かせるわけにはいかない」

「えぇ、コネコは私の友。騎士として、友を悪の道に堕とさせはしません」

 

 

 続く形でイッセーの隣に立ち、三人に向けて吼える。その行動を見て、美猴と黒歌が笑う。

 

 

「いやいや、勇ましいと思うけどねぃ。流石に俺達相手には無理でしょ?今回はその娘もらえればソッコーで立ち去るんで、それで良しとしようやな?」

 

 

 そういう美猴は手に持つ棍で肩を叩きながら、こちらを舐めた態度を取る。その態度にリアスは激昂した。

 

 

「この子は私の眷属よ。指一本でも触れさせないわ」

「あらあらあらあら、何を言っているのかにゃ?それは私の妹。私にはかわいがる権利があるわ。上級悪魔様にはあげないわよ」

 

 

 ピリッ…

 

 

 空気が変わる。小猫を巡ってリアスと黒歌が睨み合い、一触即発の様相を帯びてきた。先に睨みを止めたのは黒歌だった。ニッコリ笑うと言う。

 

 

「めんどいから殺すにゃん♪」

 

 

 その瞬間、言い知れない感覚が襲ってきた。まるで急に別の場所に飛ばされた感覚。空を見上げれば美しい夜空が曇りがかっている。

 

 

「結界。それもかなり高度なものですね」 

「…黒歌、あなた、仙術、妖術、魔力だけじゃなく、空間を操る術まで覚えていたのね?」

 

 

 リアスが苦虫を噛んだ表情で言う。

 

 

「時間を操る術までは覚えられないけどねん。空間はそこそこ覚えたわ。結界術の要領があれば割かし楽だったり。この森一帯の空間を結界で覆って外界から遮断したにゃん。だから、ここでド派手なことをしても外には漏れないし、外から悪魔が入ってくることもない。貴方達は私達にここで殺されてグッバイにゃ♪」

 

 

 黒歌の話が本当なら増援は望めない。此処にいるメンバーだけでこの場を何とかしないといけない。エクスカリバーで薙ぎ払う事も可能ではありそうだが、彼らほどの複数の実力者相手となると第三段階まで引き上げなければならないが、そんな隙はない。その時だった。空中高くから声が聞こえてくる。

 

 

「もうすぐレセプションが始まるというのにリアス嬢とアルトリア卿、そして兵藤一誠の魔力がこの森に行ったから何事かと急いで来てみれば、結界で封じられるとはな…」

 

 

 上空から聞き覚えのある声!見上げるとそこには巨大なドラゴンの姿があった。

 

 

「タンニーンのおっさん!」

「タンニーン卿!」

 

 

 元龍王の最上級悪魔タンニーン!心強い援軍が来てくれた!

 

 

「ドス黒いオーラだ。このパーティには相応しくない来客だな」

 

 

 『禍の団』の三人を睨み付けるタンニーン。しかし美猴が雄々しいドラゴンを見て歓喜する。

 

 

「おうおうおう!ありゃ、元龍王の『魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』タンニーンじゃないかぃ!まいったね!こりゃ、もう大問題だぜ、黒歌!アーサー!やるしかねぇって!」

「うれしそうね、お猿さん。いいわ。龍王クラス以上の首を持っていけば、オーフィスも黙るでしょうね」

「全く、まぁ強敵を前に燃える気持ちは分かりますが……」

 

 

 黒歌は獰猛な笑みを浮かべ、アーサーはやれやれといった様子で剣に手を掛ける

 

 

「来い!筋斗雲ッッ!」

 

 

 叫ぶ美猴の足元に金色の雲が出現し、そのままタンニーンのいる空へ飛び出していく!

 

 

「伸びろォォォォッ!如意棒ッッ!」ギュゥゥゥゥゥゥンッ!

 

 

 手に持つ棍、かの有名な如意棒が伸びてタンニーンを襲おうとするが、タンニーンはその巨体に似つかわしくない速度で回避する。速い!体の大きさに対して、動きは俊敏なものだ!

 

 

「もう一丁!」

 

 

 美猴はそのまま長く伸びた棍を横薙ぎに振るい、回避したタンニーンに追撃する。しかし、タンニーンは翼をはためかせ宙で回転し、さらに回避。回転した状態のままタンニーンが口を大きく開く!

 

 

 ゴバァアアアアアアアアアンッ!

 

 

 タンニーンの口腔から大質量の火炎が空一面を覆い尽くした!余りの熱に地上にまで強い熱波が届く!

 

 

「くッ!これが龍王クラスのブレス!」

「おいおい、俺の修行の時より火力高ぇじゃねぇか!あれで手加減してたのかよおっさん!」

 

 

 大質量の炎が消え去った後、爆煙の中から全身から煙を立てる美猴の姿が飛び出してくる。

 

 

「アハハ!やるねぃ!元龍王!」

 

 

 笑っている。やや鎧や衣服は焦げているだけで、身体の方は無事だった。あの威力の炎を食らって生きているとは、孫悟空の名は伊達ではないという事か。

 

 

「ふん!何者かと思えば孫悟空か!このタンニーンの一撃を受けきるとはなんとも楽しませてくれるわ!」

「美猴ってんだ!よろしくな、ドラゴンの大将!」

「クククク。猿如きが言ってくれる。お前ら、いったい何を相手にしているのかわかっているのか?」

「俺っちも伝説の妖怪の血を引いてるんでねぃ。そうそうやられるわけにもいかないさ」

「フン、威勢はいいな。この猿は俺が相手をする。リアス嬢と兵藤一誠はその間にその猫を倒してみせろ。赤龍帝とその主なんだろう!」

 

 

 ドンッ!ドゴンッ!

 

 

 タンニーンと美猴が空中で激闘を繰り広げ始めた。元龍王ならあの孫悟空を足止めないし倒してくれるだろう。問題は…。

 

 

「にゃん♪」

「……」

 

 

 黒歌とアーサーだ。アーサーの方はそこまで乗り気な様子は無いが、黒歌の方は妖艶な笑みを浮かべながらも、ドス黒いオーラを放っている。悪意と殺意の篭もった邪悪と言うべきオーラだ。

 

 

「…姉さま。私はそちらへ行きます。だから、三人を見逃してあげてください」

 

 

 ッ!突然小猫がそんなことを口走った!

 

 

「小猫ちゃん!?」

「コネコ、何を言って」

 

 

 二人が彼女の真意を問おうと言い掛けようとするが、それを遮る者がいる。

 

 

「何を言っているの!?小猫!貴方は私の下僕で眷属なのよ!勝手は許さないわ!」

 

 

 リアスだ。リアスが間髪入れずに小猫を抱きしめる。しかし、小猫は首を横に振る。

 

 

「…駄目です。姉さまの力を私が一番よく知っています。姉さまの力は最上級悪魔に匹敵する者。部長とイッセー先輩、アルトリア先輩であっても…。元龍王の力があっても幻術と仙術に長けている姉さまを捉えきれるとは思えません…」

「いえ、それでも絶対に貴方はあちら側に渡すわけにはいかないわ!あんなに泣いていた小猫を目の前の猫又は助けようともしなかったのよ!」

 

 

 リアスの激昂に黒歌は笑う。

 

 

「だって、妖怪が他の妖怪を助けるわけないじゃない。ただ、今回は手駒が欲しいから白音が欲しくなっただけ。そんな紅い髪のお姉さんより私の方が白音の力を理解してあげられるわよ?」

 

 

 黒歌の言葉に小猫ちゃんは首を横に振る。

 

 

「…イヤ…あんな力いらない…黒い力なんていらない…人を不幸にする力なんていらない…」

 

 

 ふるふると震え、涙をポロポロこぼし始めた。リアスはいっそう強く抱きしめる。

 

 

「黒歌…。力におぼれたあなたはこの子に一生消えない心の傷を残したわ。貴方が主を殺して去ったあと、この子は地獄を見た。私が出会った時、この子に感情なんてものはなかったわ。小猫にとって唯一の肉親であった貴方に裏切られ、頼る先を無くし、他の悪魔に蔑まれ、罵られ、処分までされかけて…。この子は辛い物を沢山見てきたわ」

「リアス、部長……」

だから、私はたくさん楽しい物を見せてあげるの!この子はリアス・グレモリー眷属の『戦車』塔城小猫!私の大切な眷属悪魔よっ!貴方に指一本だって触れさせやしないわっ!」

 

 

 眷属を、家族を決して見捨てないリアスの覚悟。それを聞いて、小猫は涙を溢れさせていた。

 

 

「……行きたく、ない…。私は塔城小猫。黒歌姉さま、貴方と一緒に行きたくない!私はリアス部長と一緒に生きる!生きるの!」

 

 

 小猫の叫び。リアスの言葉と覚悟は小猫の中にあった恐怖を薄れさせた。自分を身代わりにしようとした、黒歌に怯える彼女はもういない。それは姉との絶縁とも言える宣言だった。

 

 

「そういう訳です。はぐれ悪魔黒歌、覚悟ッ!」

 

 

 小猫の叫びに応えるように、アルトリアはエクスカリバーを構え、黒歌に斬りかかった!そこにアーサーがコールブランドを手に割って入る。

 

 

「彼女の相手は私がしましょう。いいですね、黒歌」

「別にいいにゃん♪私はそこの二人を相手にするにゃん♪」

「ではアルトリア殿、此方へ!」

 

 

 アーサーは思い切り剣を振り抜き、連続して攻め掛かる。受ける事も出来たが、一触即発のこの場から離れた方がいいと考え、アーサーの攻撃をバックステップで避ける。凄まじい剣閃の嵐を、何とか避けながら、イッセーたちの邪魔にならない場所へと向かう。

 

 そしてイッセー達から離れた地点、周りの木を斬り倒しながら出来た即席のフィールドに二人のペンドラゴンが向かい合っていた。

 

 

「アーサー・ペンドラゴン、貴方は黒歌や美猴とは違いこちらへ殺意を向けていなかった。何故です?」

「簡単な事、貴方が居たからです。私とて恥を知る身、貴方を前に嬉々として刃を振るうことは出来ません」

「……なるほど、であれば私に免じてこの場は退いてはもらえませんか?」

「それは出来ません。貴方に負い目は感じていますが、今の私にとってそれは剣を抜かない理由にはならない。貴方には少々下品に感じるでしょうがアレでも仲間です。彼らを置いていく事は出来ない」

 

 

 コールブランドを構えなおすアーサーの眼には戦う事への迷いと、この場を退く事は出来ないという意志らしきものがあった。ならばこれ以上の問答は不用だ。

 

 

「良いでしょう。貴方には聞きたいことが山ほどありますが、それはこの仕合の後にたっぷりと聞かせて貰いましょう!」

 

 

 対するアルトリアもまたエクスカリバーを構えなおし、アーサーに向き直る。じりじりを互いの間合いを測り合う二人。

 

 

「「フッ!」」

 

 

 二人はほぼ同時に飛び出した!

 

 

『コールブランドには空間を操る力がある。何処からでも攻撃は来ると思っておいてくれ!』

「無論、承知の上です!」

 

 

 エクスカリバーとコールブランドがカチ合う!こうしてアーサー王に関係する聖剣と戦うのは2回目だが、やはり強い。分たれたカレトヴルッフ、邪剣と化したクラレントと違い、真っ当な聖剣だ。オーラがひしひしと伝わってくる。

 

 

「流石は聖剣エクスカリバー、封印を施してコレとは」

「そちらこそ、聖王剣の名は伊達ではありませんね」

 

 

 エクスカリバーの代打の一振り?冗談ではない。コレはアーサー王が振るうに値する立派な聖剣だ。だが今の使い手には迷いが見えた。

 

 

「ハァッ!」

 

 

 アルトリアの連続打ち込み、様々な向きから振るわれるエクスカリバーをアーサーは全て剣で受け切っていた。第一段階では分が悪い。

 

 

「フンッ!」

「くッ!」

 

 

 再び鍔迫り合いになるが、それを無理やり押し出し弓形態で空気の刃を飛ばす。それをアーサーは剣を連続して振るう事で受け切っていた。おかしい、今の攻撃はコールブランドの能力で空間ごと切れば、防御は一太刀で済んだはず。

 こちらとの実力差から空間を捻じ曲げての攻撃を使うまでもないというなら分かる。だが、今の攻撃を空間操作で防御しなかったのはおかしい。

 

 

「(空間操作を使って来ない?)迷っているのですか、私を斬る事に。私を家族でもなんでもないと言った貴方が」

「ッ!えぇ、貴方と私は血こそ遠く繋がっていますが、家族ではありません。我々は他人です」

「ならば、このやる気のない剣はなんですか!」

 

 

 アルトリアは怒っていた。相手がテロリストな事も、イッセーがピンチな事も分かっているが、それ以上に舐めた態度をした目の前の男にガラにもなくイラついていた。

 

 

「申し訳ないと思い戦う事に躊躇する良心でもなく、剣士として全力で仕合いたいという闘争心があるわけでもなく、無益な殺生はしないという慈悲があるわけでもなく、ハンデ付きで戦ってやろうという強者の余裕があるわけでもない!まるで仕方なく戦っていると言わんばかり!」

『ま、マイロード?急にどうしたんだい?いつもの君ならこの状況で説教なんて……』

「エムリスは黙って下さい!私は目の前の腑抜けに話があります!」

 

 

 敵だと割り切って戦ってくれた方が良かった。だが今の彼にはそんな割り切りはみえない。剣を交える今、この瞬間になって今更罪悪感や情に惑わされるような態度を取られるなど、腑が煮え繰り返りそうになる。

 

 

「貴方がその剣を持ちながら、テロリストに属しているという事は正しい事とは言えない。それだけの事をしでかしておいてまだ躊躇うというのですか!」

「貴方は我々の罪の証、千数百年の妄執が生んだ存在。これから起こり得ることを考えればペンドラゴン家の人間として貴方を斬るべきでしょう。ですが、同時にあなたは紛れもなく王の現し身であり、その意思は宿命に無縁の少女でもある。そんな貴方に、その身に宿る宿命を伝えるのが、私は怖い……」

 

 

 

 

 

「……良いでしょう。ならばその迷い事、叩き切って差し上げます!エムリス!第二段階、応用限定解除!」

『全く、君はお人好しなのか情け容赦ないのか。いいだろう』

『擬似人格停止。魔力供給量、規定値を突破。第二段階応用限定解除を開始』

 

 

 エムリスの形状が変化していく。剣の形状が変化していき、柄には鎖が巻き付いていく。それはアルトリアが修行で得た新たな形態。礼装と聖剣に刻まれた在りし日の英雄たちを模倣する技。

 今回選ばれたのは円卓最強の騎士の技。聖剣の光を放出するのではなく内に留め、爆発的に開放する、決して毀れぬ星の聖剣だからこそ出来る絶技。

 

 

「真名、再演。『最果てに至れ、限界を越えよ。彼方の王よ、この光を御覧あれ』」

「!あの技は!」

 

 

 アーサーは咄嗟に防御しようと、剣を振るった。その軌跡に沿って空間に歪みが生まれる。この土壇場に来てアーサーはコールブランドの能力を発動した。しかしそれも意味を成さないだろう。

 

 

「『模・縛鎖(イミテーション・)全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)』」

 

 

 一閃。振るわれた青い剣閃はコールブランドの展開した空間のひずみに阻まれたが、僅かにアーサーの身体に切り傷を付けた。

 普通の攻撃なら防がれたと言える小さな切り傷、しかしそこから青い光が漏れだした次の瞬間。

 

 

 ズバシャアァッ!!

 

 

 切り傷から流し込まれた大量の魔力が放出され、アーサーの身体を大きく切り裂いた!彼女の攻撃は確かにアーサーを捕らえていたのだ!

 

 

「ガフッ、残された資料から知ってはいましたが、これが聖剣の、威力……」

 

 

 血を吐きながら、アーサーの身体が崩れ落ちる。

 

 

「骨は斬りましたが心臓や肺には到達していないはずです。運が良ければ助かるでしょう……!!」

 

 

 倒れ伏すアーサーに向けていた視線をイッセー達の居る方へと向ける。そこからは赤と緑に彩られた光の柱が生まれていた!瞬間、自分の中にあふれ出す凄まじいまでの魔力。この感覚、これまで以上の圧倒的な量。

 

 

「イッセー、遂に至ったのですね。今そちらへと向かいます」

 

 

 アルトリアはエムリスをネックレスに戻し、イッセーたちの居る方向へと向かう。此方は片が付いた。イッセーの方も直ぐに片が付くだろう。幼馴染の勝利を確信しつつ、アルトリアは仲間たちの居る方向へと走りだした。

 先程まで斬り合っていた相手を忘れるほどに……




 

 アルトリアが去った森の一角。そこに何者かが転移してきた。ふわふわとした金髪。水色を基調としたまさしく魔女っ子のような、可愛らしくも魔女らしさを損なわない衣装に身を包んでいる。その手には青黒い、何処か機械的な箒のような杖が握られていた。


「!お兄さま!」
『落ち着きなさい、ルフェイ。この者はまだ死んでいません。貴方の腕なら回復が間に合います』
「は、ハイ!師匠!」


 倒れ伏すアーサーに少女が駆け寄り、手当を施していく。手に持つ杖からの指示に従い、彼の傷を治療していく。


「グッ……ルフェイ、ですか。助かりました」
「まさかお兄さまが後れを取るなんて……」
『全く、コールブランドに仕込まれていた『王権勅令(キングス・コマンド)』用の術式の影響を受けていましたね。然も無意識に発動していたものを。お前もあの『入れ物』もまだまだ未熟』
「お恥ずかしい限りです。まさか能力を封印するだけでなく、使用者の精神にまで影響を及ぼすとは……」
「お兄さま、彼女の様子は……」
「えぇ、既に封印礼装の力を使いこなしつつある。そして精神もまた……これで赤龍帝に万が一の事態が起きればそのまま……」
「そんな……」


 兄妹の中で不安は着実に高まっていた。自分たちの先祖が遺した負の遺産、それが今結実しようとしている。星の聖剣を振るう、完璧にして絶対なる独裁者。真の意味で神秘を駆逐する王。それが成されれば今の世界は崩壊するだろう。


『……更に悪い知らせよ。どうやら赤龍帝の方も禁手(バランス・ブレイカー)に至ったようね』


 杖に宿る存在からの言葉に返す必要もなく、二人は強大な魔力の高まりを感じた。どうやら赤龍帝が禁手に至ったようである。こうなれば幾ら黒歌でも勝ち目はない。アーサーは妹ルフェイ・ペンドラゴンの肩を借りながら、黒歌の元へと向かう事にした。
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