赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 ドーモ、ファブニルです。

 どうにか前回よりは早めに書けました。まぁそれでも3週間近いですが……。もうすぐGWなので、そこではいっぱい書きたいです。

 この辺りは原作ではなくアニメ版準拠なので、やや規模が抑えめですがこの判断にも意味がありますのでその辺りはご容赦を。ですがその分、心を込めて書かせていただきます。

 よろしければ今回もお気に入り登録や高評価、感想をお願いします。

 それでは第五十一話、どうぞ!


悪神を迎撃せよ

 会議から数日が経った。その間に対ロキに選ばれたメンバーはそれぞれに能力の調整や確認を行い、来るべき日に備えた。

 そして今、グレモリー邸の前にロキ戦へと向かうメンバーが集合していた。

 

 

「皆さん、どうかお気を付けて……」

「イッセー先輩、無事に帰ってきてくださいね」

「心配すんなよ、ギャスパー。二人とも、他の悪魔と仲良くな」

 

 

 アーシア、ギャスパーの『僧侶』二人は参加しない。人数の制限もあるが、今回のような過酷な戦場に自衛手段を持たないアーシアと、未だ能力を十全に扱えるわけではないギャスパーを連れて行くのは得策とは言えない。彼らは冥界に残り、魔王配下の防衛部隊がその身を護る事となる。

 

 

「遅くなりました、皆さん」

「やっほー、ゼノヴィア」

「!?イリナ!」

 

 

 転移魔法陣からミカエルが現れる。その後ろには誰かが立っていた。一瞬誰かと皆が思っていると、ミカエルの陰からひょっこりと顔を出す。

 なんとそれはかつて聖剣カレトヴルッフを巡って共に戦った紫藤イリナだった!あの後、教会に戻った彼女とは何の音沙汰もなかったが、まさか天界からの増援というのは彼女のことだったのか。

 

 

「どうして君が……」

「悪しき神が主のお創りになった平和な世界を乱さんと暗躍している。それを誅するのに理由が要るかしら?」

 

 

 信仰心は相変わらずらしい。しかし彼女は知っているのだろうか、信仰の対象たる『聖書』の神。それがもうこの世には存在しないという事を。知りたい、だが聞く気にはなれなかった。聞いた後に彼女がどんな反応を示すのかが怖かった。

 

 

「驚いたよ。しかし、その、こんなことを言いたくはないが、悪魔に転生した私と違って「人間の私には荷が重い、かしら?」!」

「大丈夫、こっちだって無策で来た訳じゃないわ。前はエクスカリバー、いいえカレトヴルッフを拝領していたけど、今回はこの剣を借り受けられたんだから!」

 

 

 イリナが腰に差す剣を見せる。それは一般的な両刃の剣ではなくサーベルのような剣だった。金色の装飾が施された反りの少ないサーベル、そこから漏れ出る気は聖なるものだった。

 

 

「それは、聖剣か?」

「そう!敵は悪神ロキと神喰狼フェンリルでしょ?だからこそミカエルさまとセビリア大聖堂からこの聖剣『ロベーラ』を借り受けたのよ!」

「聖剣ロベーラ、その名には『狼を狩るもの』という意味があります。そこで我々はこの剣に錬金術と天界のシステムを用いて対獣特効の加護を授けました。即席ではありますが、フェンリルに対して多少なりともダメージを与えられるでしょう」

 

 

 イリナの掲げる聖剣『ロベーラ』は13世紀のスペインの王『フェルナンド3世』が所持していた剣だ。『レコンキスタ』を成功させた彼に当時のローマ教皇は『聖王』の称号を授け、聖人の一人として列聖させた。この世界において位の高い称号にはそれ相応の力が宿る。逆説的だが、聖王の剣ならば聖剣の一つと言う事にもなるのだ。

 

 

「成程、それなら心強いな」

「そ、れ、に、まだまだ隠し玉があるんだけど、それは後のお楽しみね」

 

 

 何やら秘密をかかえていそうだが、それはこの後の戦いで分かるだろう。会議の際にもミカエルが「お披露目」という言葉を使っていたが、それとも関係がありそうだ。

 

 

「御挨拶が遅れました。主神オーディン様の御付きを勤めます、ロスヴァイセと申します」

 

 

 続いて北欧からの助っ人である戦乙女(ヴァルキリー)の一人が此方へと挨拶した。

 

 

「こちらこそ。魔王サーゼクス・ルシファー様の食客、アルトリア・ペンドラゴンと申します」

 

 

 アルトリアも彼女へと挨拶を行う。これまで何度か顔を合わせた事はあったが、こうして話す機会は無かった。今の彼女はこれまで見せていたスーツ姿とは異なり、やや露出の激しい鎧姿に身を包んでいる。これがヴァルキリーの戦闘服なのだろうか?

 

 

「!見ろよ兵藤、あの格好……」

「あぁ、前に見たときはスーツ姿だったから分かりにくかったが、すげぇスタイルだな」

「あれが北欧美人という奴k痛タタタタタ…!」

 

 

 その格好に案の定思春期男子二人が反応を示すが、すぐに主によってお仕置きされていた。確かに男子はこういう格好に興奮するだろうが、もう少しこう、緊張感を持てないのだろうか……

 

 

「悪いな、若いもんにこんな無茶なことを押し付けちまって」

「我々が表立って動くことは出来ない。だからこそ、これを餞別として受け取って欲しい。グレイフィア」

「ハイ、此方を」

 

 

 グレイフィアがなにやら革製のポーチを取り出す。蓋を開けるとそこには赤いアンプルのような物が入っていた。

 

 

「『フェニックスの涙』でございます。急な事だったので、この程度しか集められませんでしたが……」

「回復薬の『僧侶』が連れていけない今回においては生命線になるだろう」

「大切に使わせて頂きます」

 

 

 ポーチの中には『フェニックスの涙』が三つ。これの切り時が命を分けるだろう。皆に緊張感が走る中、小猫はイッセーの袖をキュッと摘まんだ。

 

 

「イッセー先輩、私この戦いで自分の力に向き合ってみようと思います…」

「小猫ちゃん、もしかして……」

「だから、先輩。私に、勇気を下さい…」

「……大丈夫。小猫ちゃんに何があっても、身体を張って俺が守ってやるよ」

 

 

 イッセーは小猫の両肩に優しく手を置き、穏やかな笑顔でそう言った。その顔に小猫は安心したように笑みを浮かべる。小猫はほぼ間違いなく、この戦いで猫妖怪としての力と仙術の力を使うだろう。それが彼女に何を齎すのか、それは彼女にも分からない。

 だが、小猫が自分の中に眠る力を忌避する事が今後ないことは明らかだろう。

 

 

「あらあら、遂に小猫ちゃんの心までゲットしちゃったのね」

「あ、朱乃さん!」

「だったら、私もイッセー君に勇気を貰いたいですわ……」

「朱乃さん……」

 

 

 そういって後ろを向く朱乃。彼女の脳裏にはレセプション会場において、父バラキエルに命を助けられた際の自分の反応への小さな後悔があった。修行において幾度も顔を合わせた。アザゼルから何故バラキエルがあの日居なかったのかも聞かされた。確実に朱乃の中においてバラキエルへの見方が変わってきている。

 しかしあと一歩が踏み出せない。イッセーの、彼が居れば自分も変われるだろうか。そんな思いが彼女の内にはあった。

 

 

「……時間だ。転送を始める」

「皆、どうか無事に帰ってきて欲しい」

「「「「ハイ!」」」」

 

 

 全員の足元に魔法陣が出現し、彼等を呑み込んでいく。光が一際輝いた次の瞬間、そこに全員の姿は無かった。転送完了、後はミョルニルの調整を終え転送するのみ。残された者たちは若き戦士達の無事を考えながらも、次のフェーズへと移行することにした。全てはよりよい未来の為に。

 

 

 

 

 

 

 転送用の魔法陣に飲み込まれた一行が向かった先は緑色の空が覆う岩山の荒れ地だった。植物などは一つもない。ただ岩山や崖のみが存在する不毛の地。そこにひときわ目立つ物体があった。立体構造として最も強度が高いとされる三角錐の結界。あの中にロキとフェンリルが封じられている。

 

 

「あれが……」

「悪神ロキを封じた術式……」

「ったく、修行一発目の相手が北欧の神とはな。きついぜ」

「なんだ?ビビってんのか匙?」

「バーカ。今更ビビってる暇なんてねぇよ」

 

 

 まるで己を奮い立たせるように軽口を言い合うイッセーと匙に、アルトリアもまたエムリスをカチャリと握る。

 

 

「……来るわよ」

 

 

 リアスが声を掛ける。次の瞬間、結界が激しく明滅したかと思うと飴細工のように砕け散った!皆が身構える中、ゆっくりと浮かび上がりながらロキが現れる。

 

 

「……ベルゼブブめ、神を封じるとは……」

「ロキ様!公式の場において主人に叛旗を翻すなど言語道断!然るべき公的な場にて意見を述べられるべきです!」

「オーディンの御付きヴァルキリーか。優秀とは聞いているが、神の相手には程遠い」

 

 

 ロキがパチリ、と指を鳴らす。するとロキと共に封じられていたフェンリルが現れ、更に新たな北欧式魔法陣が展開される。そこから二つの影が躍り出た。大きさはフェンリルの半分程度、だがその姿はフェンリルと瓜二つだ。

 

 

「!アレはフェンリルの子、スコルとハティ。フェンリルには劣りますが、彼らも神殺しの力を持っています!」

「まだいるぞ?」

 

 

 更に魔法陣が輝くと、雷と共に巨大な龍が現れた。その巨躯は尻尾の先が見えない程に長く、大きい。

 

 

「あれは五大龍王の一角、ミドガルズオルム!」

「龍王!?」

『いや、あれはコピーだな。奴からはアイツほど強力な魂は感じられん。本物は今頃ぐーすかと寝ているだろうよ』

「それでも、伝説の魔物が勢揃いですね……」

「臆せば負けるわ。みんな気をしっかり」

 

 

 ミドガルズオルムのコピーがゆっくりと周囲を囲む。巨体そのものを壁として、まるでここから逃がさんと言わんばかりだ。

 

 

「身の程知らずにも神を相手にした事、後悔するがいい!」

 

 

 その言葉を合図に一斉に襲い掛かる!しかし悪魔たちも負けてはいない。すかさずリアスとソーナが自身の『兵士』に合図を送る

 

 

「イッセー!」「サジ!」

「「ハイ!プロモーション!『女王(クイーン)』!」」

「エムリス!第一段階、限定解除!」

 

 

 イッセーと匙が『女王』へと昇格し、能力を引き上げる。アルトリアもエムリスを剣形態に変え、戦闘態勢に入る。他の皆もそれぞれの武器を手にした。

 

 

「行くぜドライグ!禁手化( バランス・ブレイク)!!」

Welsh Dragon(ウェルシュ・ドラゴン)Balance Breaker(・バランス・ブレイカー)!!!!!!!』

「古の大地に(うず)もれし白馬よ。深き眠りより目覚め、その威容を示せ。其は王の朋友、我が道を切り開く旋風なれば!来れ『白亜に眠りし、王の馬(ヒルフィギュア・スタリオン)』!」

 

 

 更にイッセーは禁手を解放し、『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイル・メイル)』を纏う。魔力噴射口を噴き出し、翼をはためかせながら空へと上がる。アルトリアもまた愛馬グィントを呼び出し、その背に跨る。

 

 

「ほう、ニ天龍の片割れか。これとない巡り合わせだな」

 

 

 ロキが魔法陣を複数展開し、そこから雷のような攻撃を繰り出す!一撃一撃が神の攻撃に相応しい威力を孕んでいるが、イッセーは難なくそれを打ち払った。

 

 

「へっ、龍王の吐く炎に耐えてきたんだ!この程度効くかよ!」

「ふむ。生半可な攻撃は効かんか。ならばフェンリルよ!」

 

 

 ロキが合図を出すと、フェンリルがイッセーへと飛び掛かる。神殺しの牙の恐ろしさを散々聞かされていたイッセーは紙一重で攻撃を躱すが、避けきれずに翼の被膜を喰いちぎられてしまった!

 

 

「グァッ!?(クソっ!忘れてた、今は翼もあるんだった!) 」

「イッセー!(いけない!今までなかった翼の分を計算に入れて避けなければジリ貧です!) 」

 

 

 片翼に傷が入った事でバランスを失い、イッセーは落ちていく。その隙を見逃さず、フェンリルは大きな顎を広げ、イッセーを噛み殺さんとする。がそうは問屋が卸さない。

 

 

「イッセー!」

「「させない!」」

 

 

 すかさずアルトリアがグィントを駆り、イッセーを掬い上げる。更に祐斗、ゼノヴィアの二人がフェンリルへと切りかかり、後退させた。

 

 

「グッ、助かったぜ」

「僕たち『騎士』を忘れて貰っては困るね」

「そういう事だ。切り裂け、デュランダル!」

 

 

 デュランダルのオーラを乗せた斬撃がフェンリルに襲い掛かる!流石のフェンリルでもデュランダルの斬撃を無傷とはいかない。すかさず避けようとするが、

 

 

「ソード・バースッ!!」

 

 

 祐斗が聖魔剣を突き立て、地面から剣山を生やす。ただ生やすのではない。フェンリルの四肢が接する地面、そして今フェンリルが立つ峡谷の左右からフェンリルを縫い付けるように聖魔剣を生やした。一瞬身動きが取れなくなったフェンリルはデュランダルの一撃をもろに受けてしまう。

 

 

「ギャウンッ!?」

「すげぇ。二人とも、格段に力を付けてやがる」

「私達も負けてはいられませんね」

「あぁ!食らえ!ドラゴンショットッ!!」

「切り裂け、エクスカリバー!」

 

 

 二人に触発されたイッセーもまた、魔力を大きな玉へと変えドラゴンショットを放つ。アルトリアもまたエクスカリバーに魔力を溜め、光の刀身を作り出しフェンリルへと刃を振り抜いた。手傷を負わせた『騎士』二人を威嚇していたフェンリルは二つの攻撃に気付かず、横っ面に攻撃を受けた。

 

 

「えいっ…!」

 

 

 小猫はスコルを相手に一人奮戦。スコルの振り抜いた爪を避けながら、猫の如き素早さでスコルの首を掴むとスリングブレイドの如く、スコルの首と頭を地面に叩きつけた。

 

 

「彼女、やる気が違いますね」

「私の眷属だもの。さて、私たちの相手は此方と言うわけね」

 

 

 一方リアスとソーナ、そしてそれぞれの『女王』たちは模造されたミドガルズオルムの前に立っていた。模造ミドガルズオルムはその長大な躯体をくねらせ、『世界蛇』の二つ名の如く蛇のように威嚇する。

 

 

「ハァァァッ!」ビガッ!!

 

 

 朱乃が雷を発生させ、模造ミドガルズオルムの頭部に叩きこむ。頭部に電光が走り一瞬怯んだ模造ミドガルズオルムだが、すぐになんともなかったように口から火炎を放つ。

 

 

「くッ! (やはりただの雷では……) 」

「厄介な炎ですね。ならば、跳ね返しましょう!『追憶の鏡(ミラー・アリス)』!」

 

 

 ガシャアァァァンッ!!

 

 

 生徒会副会長である真羅椿姫が自身の前方に四角い光の壁を作り出す。丁度姿見サイズのそれは模造ミドガルズオルムの炎を防ぎ、砕け散った。しかし砕ける瞬間、先程より強力な火炎を模造ミドガルズオルムに向かって跳ね返した!

 

 

「ゴォォォォォッ!?」

神器(セイクリッド・ギア)追憶の鏡(ミラー・アリス)』、椿姫の鏡は受けた衝撃を倍にして返します」

 

 

 自身の火炎を倍にして返された模造ミドガルズオルムは、未だ消えない炎に身を震わせている。

 

 

「厄介な神器ね。パワータイプのウチとは相性悪そう」

「ゲームの際は手加減しませんよ。尤もこの局面を乗り越えなければゲームも何もありませんが」

 

 

 この戦いを無事に斬り抜けることが出来れば、次はリアスとソーナのゲームが待っている。ロキの乱入で中止になってしまっているが、この戦いが終われば若手同士のレーティングゲームが開催されるだろう。

 互いに手の内が分かってしまっているが、それでも彼女たちには油断もない。互いを信頼し、ライバル視するからこそ、この程度の手札が分かったところで勝てると思っていないのだ。

 

 

「なら私も修行の成果を見せましょうか。ハアァッ!」ゴオォォン!

「ならば私も、ハッ!」バシャアァン!

 

 

 炎を消した模造ミドガルズオルムに、今度はリアスの滅びの魔力が叩きつけられる。更にはソーナが自ら生み出した大蛇が絡みつき、模造ミドガルズオルムにダメージを与えていく。ここまでやられっぱなしだがミドガルズオルムも黙っていない。全身からオーラを放ち、水の大蛇を消し飛ばす。模造品でも元は龍王、そのスペックは伊達ではない。

 リアスたちはその場から飛び立ち、模造ミドガルズオルムに攻撃を加え続ける。

 

 

 更にこちらは紫藤イリナとロスヴァイセの非悪魔の二人。彼女らもまたフェンリルの子ハティを前にしていた。

 

 

「なりは小さくともフェンリルの子。爪と牙にはご注意を」

「分かっているわ」

 

 

 北欧出身のロスヴァイセの忠告にもイリナはひるまない。そんな彼女にかつての相棒が声を掛ける。

 

 

「イリナ!余り無茶はするな。幾ら聖剣を持っていても人間の君では……」

「フフフ。ゼノヴィア、見ててね。これがもう一つの隠し玉よ!」

 

 

 胸の前で手を組み、祈りを捧げる。次の瞬間、彼女の手の甲に『A(エース)』の文字が現れ、輝きを放つ。光の力が彼女の身体からあふれ出し。その背から純白の翼が生えた。

 

 

「イリナ!?」

「その姿、まるで天使じゃねぇか!」

「詳しい話はまた今度!今は目の前の敵を倒すのが先よ!」

 

 

 そう言いながらイリナは飛翔する。手に光力を集めるとチャクラムのように光の輪を投げつけた。すかさず避けるハティだが、そこにイリナが先回りする。

 

 

「ロベーラよ、悪しき狼を打ち滅ぼせ!アーメン!」

「ギャウゥゥン!?」

 

 

 聖剣ロベーラに聖剣使いの因子と光力を集め、強力な斬撃を放つ。即席とはいえ天界の粋を集め、対獣特効の聖剣として生まれ変わったロベーラ。その効力は絶大であり、切り裂かれたハティは血を吐きながら地面をのたうち回る。

 

 

「お見事です。私も負けていられませんね、ハアァッ!」

 

 

 イリナに触発され、ロスヴァイセも攻撃を仕掛ける。自身の周りに複数の魔法陣を展開させ、そこから攻撃魔法を一斉に投射した。態勢を立て直し切れていないハティは魔法の爆風によって包み隠されてしまう。

 

 

「フェンリルほどの防御力は無いようです!押し切れば我々でも!」

「イッセー君、アルトリアさん、フェンリルは僕たちで抑える!」

「君たちは小猫とロキの方へ!」

「分かった!」

「心得ました」

 

 

 聖魔剣で動きを止め、デュランダルで牽制する。祐斗とゼノヴィアのコンビに後を任せ、イッセーは小猫の下へ、アルトリアはロキの対処へと向かう。

 

 

「小猫ちゃん!助太刀に来たぜ」

「イッセー先輩!」

 

 

 イッセーの到着に小猫は力強い笑みを浮かべる。そのまま二人でスコルに果敢に殴り掛かる。小猫相手に翻弄されていたスコルは苛立ちを募らせながら、更なる獲物に向かって噛みつく。しかし、先ほどの攻撃で間合いを把握したイッセーには当たらず、逆に彼の拳を受けて吹き飛んでいく。

 

 

「イッセー先輩、見てください。これが貴方に貰った勇気の証です」

 

 

 小猫の頭から何かが立ち上がり、腰のあたりが盛り上がる。普段から名前の通り、小猫のようだと言われる彼女に現れたのはあの時と同じ、猫耳と尻尾だった。

 

 

「私はもうこの力を恐れない。イッセー先輩と、みんなと一緒なら…!」

「小猫ちゃん……」

 

 

 スコルへと吶喊する小猫。起き上がって頭を振るうスコルの首元を掴み、その眼の下に強烈な膝蹴りを食らわせる。キャウン!と悲鳴をあげるスコルに掌底を食らわせると、更にその拳から青白い炎を放ち、スコルの身体を焼き焦がしていく。

 

 

「今のが仙術、猫又としての小猫ちゃんの力か!」

「今の私ではまだ複雑な術は使えません。それでも相手の気を乱したり、火の玉ぐらいなら!」

「よっしゃあ!ならこっちも負けてらんねぇ!」

「……小猫ちゃん、貴方は自分の力を受け入れたのね」

 

 

 猫又としての力を扱う小猫を見て、朱乃も覚悟を決めた。この夏休みの間、彼女もまた修行に励んだ。雷と光を合わせることで生み出される雷光の力、それを使いこなすために憎む父の下で教えを受けた。

 自分と母を見捨てた堕天使の力、幾度も敵対した堕天使の力、それを扱うことを今まで忌み嫌ってきた。でも世界はそんな気持ちとは正反対に変化していく。後輩たちは着実に力を伸ばしていき、相対する敵も次第に強くなっていく。最早『雷』だけではどうしようもなくなった。

 

 

「…私は姫島朱璃とバラキエルの娘、姫島朱乃。そしてリアス・グレモリーの『女王(クイーン)』!」

 

 

 覚悟を決め、名乗りを挙げた朱乃。その背には悪魔の翼と堕天使の翼、二つの異なる翼が広がる。天に掲げた右手に雷を纏い、横に振るった左手に光を集める。二つの力を一つにまとめ、練り上げて放つ!

 

 

「雷光よッ!」ビガシャアァァァァン!!

 

 

 朱乃の両手から放たれた雷光は模造ミドガルズオルムを打ち据え、その全身に行き渡る。雷と光、異なる二つの属性の力を合わせて相乗させる事で威力は跳ね上がり模造ミドガルズオルムに大きなダメージを与えることに成功した。

 地面に倒れ伏す模造ミドガルズオルムと天に浮かぶ朱乃を見て、リアスは思わず涙を浮かべてしまった。幼いころから信頼する眷属たちが過去を乗り越えて成長する姿に、彼女もまた感極まっていた。

 

 戦況はやや悪魔側が有利。ロキの子達は目の前の小癪なコウモリ達の素早い連携と思わぬ火力に振り回されていた。

 

 

「雑魚だと思っていたが、見積りが甘かったか。ん?」

 

 

 自身の子達が苦戦する姿に、悪魔たちへの評価を改めるロキ。そんな彼に青白いラインが迫る。すかさず避け、地上に目をやるとロキの元へ現れたのはシトリー眷属『兵士』の匙だった。

 

 

「我の相手は雑魚も雑魚か。随分と侮られたものだ」

「ハッ!雑魚だと思ってると痛い目見るぜ、カミサマ!」

「その通り!」

 

 

 天翔ける妖精馬に跨ったアルトリアがロキに斬りかかる。例え神であろうとエクスカリバーの一撃は警戒せざるを得ない。連続して斬りかかるアルトリアからロキは逃げ続ける。

 

 

「『風王鉄槌(ストライク・エアッ)』!」

「チッ、やはり来たか聖剣使い!ムッ?」

「捕まえた!」

 

 

 アルトリアに気を取られている隙に、再び伸ばされたラインがロキの腕に巻き付く。

 

 

「フン、この程度魔法一つでッ!?外れん?」

「アザゼル先生に頼んで改造して貰ってな。ヴリトラ系神器四種、全部ぶち込まれたのさ!」

 

 

 ヴリトラ系神器。その起源はインド神話の邪龍にしてアスラの王『ヴリトラ』であり、彼の宿敵でインド神話の神々の王『インドラ』が肉体と魂をバラバラにした際、復活防止のため『聖書』の神によって封印された結果生まれた神器である。そんな神器の合体など本来ならばインド神話とインドラから抗議が起きるはずだが、アザゼルの交渉と合体後の試算をインドラが鼻で笑い飛ばしたことで特別に許可が下りている。

 

 両腕に装着した手甲に加え、更に匙の手足と目にも変化が生じる。ヴリトラ系神器が埋め込まれた事で彼の戦闘形態も進化したのだ。手甲に施された蜥蜴の目が輝くと、ラインを通じて黒い炎がロキに燃え移る。

 

 

「ヴリトラの邪炎か……!」

「ヴリトラの呪いは神であっても手を焼く代物。それをここまで強化したんだ。例え北欧神話のカミサマでも簡単に払えるもんじゃないぜ」

「見事です、サジ」

「やるじゃねぇか匙!それでこそ、俺のライバルだ!」

 

 

 戦局がさらに傾く。ロベーラによって切り裂かれたハティに続き、スコルもまたイッセーの振るうアスカロンによって地面に倒れ伏した。フェンリルに嚙み千切られた翼も既に元通りである。

 二頭の親であるフェンリルは未だに聖魔剣の山から抜け出せず、模造ミドガルズオルムもまた魔法の波状攻撃と椿姫のカウンターに苦しめられている。

 

 

「えぇい!賢しい悪魔どもが!!」

 

 

 不利な戦況にロキの怒りが爆発し、魔力と神気が迸る!その余波によってラインが千切れ飛び、匙もまた大きく吹き飛ばされてしまう。更にロキから放たれた波動は空に波紋を齎し、空間全体に影響を与え始めた!

 

 

「ロキ様なりません!そのように神気を荒ぶらせてはこの空間どころか冥界、下手をすれば他神話にも甚大な影響が!」

「もとより承知よ!結局のところ我らは『神々の黄昏(ラグナロク)』にて滅びる定め。それが多少早まるだけだ!」

 

 

 ロスヴァイセの制止を意に介さず、ロキは力を更に昂らせる。放たれた力は空間を軋ませ、周囲に天災を引き起こし始めた。突風が吹き荒れ、雷が空を裂き、ラグビーボール大の氷塊が降り注ぐ。正しく神の怒りがイッセー達に襲い掛かる!

 

 

「ここまでの力、ロキは何をするつもりなの!」

「神の力を解放し、時空を破断するつもりです!このままではテクスチャが、世界が崩壊しかねません!」

「クッ!」

「グアッ!?」

「キャァッ!?」

 

 

 魔法の才がある者たちは防御魔法で降り注ぐ天災を防ぎ、それ以外の者は岩陰や自身のスピードで避けようとするが、避けきれずに被弾してしまう。ロキの波動をマトモに受けた匙は降り注ぐ天災に晒され、イッセーもまた主を護らんとその身を盾とする。

 

 

「ガッ!?」

「ッ!サジ!」

「部長!!」

「イッセー!」

「グウゥゥッ!!」

 

 

 永遠に続くかに思えたが、暫くして天災が収まる。しかし降り注いだ暴威の爪跡は大きく、空間内の地形は崩れ、天災を防ぎきれなかった者たちが地面に横たわっている。

 

 

「悪魔ども、見事な戦いぶりであった。その健闘を讃え、『神々の黄昏(ラグナロク)』最初の戦死者として名を遺す栄誉を与えよう」

「チッ!何が栄誉だ偉そうに!」

「ソーナ。ロキは私達に任せてこれを使ってちょうだい」

 

 

 リアスは取り出したポーチをソーナへと転送する。三つしかない『フェニックスの涙』を使うなら今と判断したのだ。受け取ったソーナは共にいる椿姫にも一つ持たせ、重症者の下へ急ぐ。先ずは最もロキの近くにいた匙だ。

 

 

「くッ……会長?」

「『フェニックスの涙』です。倒れるにはまだ早いですよ、サジ」

「ハイ、会長の夢を叶えるまで死ぬわけにはいきませんから…」

「……ありがとう

「へ?会長、いまありがとうって……」

 

 

 確認する間もなく、ソーナは転移してしまう。次に向かったのはゼノヴィア。機動力に優れた『騎士』だが、あのような飽和攻撃には弱い。すかさずアンプル状の小瓶の中身を振りかける。

 

 

「くッ!木場くんがやられたからフェンリルも自由の身って訳ね!」

「イリナ!」

 

 

 天災を防いだことで一人フェンリルと戦うイリナ。天使の翼で空を舞うイリナに嚙みつかんとしたフェンリルだったが、突如額にデュランダルが振り下ろされる。

 

 

「ゼノヴィア!無事だったのね!」

「あぁ、久しぶりにコンビで行くぞ!」

「えぇ。天使と悪魔、夢のコラボレーションよ!」

 

 

 聖剣デュランダルと聖剣ロベーラ。悪魔と天使の二人は二本の聖剣を重ね、聖なる一撃を叩きこむ。

 

 

「木場くん、これを」

「グッ。助かりました、副会長」

「礼は不要です。それよりも」

「えぇ、戦局が混乱しています。急いで戦線に戻って立て直さないと」

「ならば私と一緒にミドガルズオルムの対処をお願いします」

「分かりました。シトリー家が誇る『女王』のサポートが得られるなら心強い」

「ッ//い、行きましょう」

「ハイ!」

 

 

 祐斗の笑顔にドキッとしつつ、二人はノーマーク状態の模造ミドガルズオルムの対処へと向かう。ロキの広範囲攻撃で一時は混乱した戦場だったが、それぞれが立て直し戦線へと復帰する。

 そしてエムリスを盾形態へと変形させ愛馬と自身を守っていたアルトリアもまた、すかさず戦線へと復帰する。愛馬グィントの背に跨り、ロキの対処へと回った。

 

 

「イッセー、無事ですか」

「応、見ての通りよ」

「アルトリアも無事なようね(これで回復手段はなし。もう大きな傷を負う訳にはいかない……)」

「……えぇ、はい。分かりました。皆様、来ます!」

 

 

 ロスヴァイセのヘッドギアに通信が入る。それは第一の切り札を切る時が来たという事だ。曇り空の異空間に突如として光が差し込む。清浄な光の柱の中、一振りのハンマーが降りてくる。

 

 

「アレは……」

「我が北欧神話の神造兵装、あらゆるものを打ち砕く絶対の槌!」

「『悉く打ち砕く雷神の槌(ミョルニル)』、だと!?」

 

 

 今ここに、裁きの槌が降臨した。




 ロベーラの見た目は『フューチャーカード バディファイト』に出てくる同名カードをイメージして頂ければと思います。実家にある剣が出てくるまでの繋ぎにちょうどいい剣が見つかりました。
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