赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 ドーモ、ファブニルです。

 今回はロキ戦の後処理と、若手悪魔のレーティングゲームとなります。といってもライザー戦同様アルトリアはゲームに参加できないので、サーゼクス達と共にゲーム観戦という事になりますが。

 それと先日、登録者が600人に到達しました。これだけの人たちにお気に入り登録されるとなると益々気が引き締まります。UA数も11万に届きそうなので、これからも頑張って参ります。

 よろしければ今回もお気に入り登録や高評価、感想をお願いします。

 それでは第五十三話、どうぞ!


『グレモリー』VS『シトリー』前編

 ロキは封印された。ロキの子達も既に討伐されている。即ち

 

 

「勝った、のか」

「えぇ、イッセー。我々の勝利です」

 

 

 歓声は、無かった。皆が神と神獣を相手に、全てを出し切った。大声も出せない状況だが皆の心には確かな達成感があった。

 

 

「よう、イッセー」

「匙……」

「勝ったんだな、俺たち。どっと疲れたぜ」

「あぁ、でもこれで北欧との協定も上手くいくはずだ」

「そうなったら次は、俺たちとそっちのゲームだな。神器の合体はゲームまで隠しときたかったんだがな」

「こっちも『禁手』とかは隠しときたかったが、遠慮なく対策させてもらうぜ?」

「ハッ!会長の目指すレーティングゲームは一度二度見られたくらいで負けるようなもんじゃねぇよ。覚悟しやがれ」

 

 

 そう言いながら、二人はどちらからとなく拳を合わせた。そこへリアス達がやってくる。

 

 

「みんな、無事の様ね」

「部長!」

「リアス」

「イッセー、本当に無事でよかった。貴方が乳神さまなんて言い出したときは、もうだめかと思っていたけど……」

「そうだぜ兵藤!なんだあの声!乳神さまの加護だとかなんとか、おまえ一体どんな珍妙な世界と接続したんだよ!」

「いやマジなんだって、異世界の神さまみたいなんだけどさ」

「正直あれは私も驚きました。しかしこの世界の外の神ですか、もしかすると……」

 

 

 聖剣エクスカリバー。その真髄はこの星、世界の外からの脅威に対抗するための最終兵器である。つまりはその乳神とやらもまたエクスカリバーで祓うべき敵なのだろうか。だとしたら、その加護をうけたイッセーは乳神の使徒ということに……

 

 

「それより、ヴァーリチームが気になります」

「会長!」

「フェンリルを何処へ連れ去ったのか。あの神殺しの牙がテロリストに渡るのは厄介です」

 

 

 更にソーナ達もやってくる。彼女の指摘は最もだ。そもロキがここまで強気に出れた要因の一つがあの神喰狼である。あの狼と強化した防御魔法の存在があったからこそロキはオーディンたち相手にも負けないと考えたのだろう。現時点でヴァーリ自身がどこかの勢力に侵攻したという話は聞いていないが、今後あの牙がテロなどで振るわれるとしたら厄介この上ない。

 

 

「兎に角、今はロキを封じれた事を喜びましょう」

「ロキ様は既にアスガルドに移送済みです。逃げ出さないよう、トール様、バルドル様を始めとした主だった神々が直々に見張っています」

「それなら安心ね。それじゃあ、みんな戻りましょうか」

「「「ハイ!」」」

 

 

 

 

 

 現世の、何処かの山の中。そこに『禍の団』の一派、ヴァーリチームの面々が集まっていた。岩場に腰掛けるヴァーリと、その側に立つパートナーのロウィーナはフェンリル確保に向かったアーサー達からの報告を受けていた。

 

 

「なるほど。兵藤一誠は着々と『禁手』を使いこなしているな」

「そしてアルトリア・ペンドラゴンもまたエクスカリバーの封印を更に外せる様になり、肉体精神共に近づきつつあるか……」

 

 

 前者は嬉しそうに、後者はやや憮然として報告を受けていた。

 

 

「それでアーサー。フェンリルの方はどうだ?」

「支配を司るこのエクスカリバーの力でなんとかできそうですよ。無論、支配による制限付きなのでフェンリルの力はだいぶ下がってしまいますが……」

『フェンリルほどの神獣であれば、少しずつでも力を取り戻していくでしょう。ヴァーリ・ルシファー。飼い犬、いえ飼い狼に噛まれるなどという無様を晒す事のないように』

「分かっているさ、モルガン殿」

 

 

 モルガンからの小言にヴァーリはそう返す。彼としてもライバルが更に力を付けた今、尚更胡座をかいてはいられない事は分かっている。『覇龍』の力で満足していては、最強どころかフェンリルに下剋上されかねない。

 

 

「しかし騎士王と敵対していたとはいえ、貴方が私達『白い龍』側に付くとはな。ブリテン島の魔女殿」

『私は子孫であり弟子でもあるルフェイの側にいるだけです、『奈落の魔竜』。但し、あの愚妹の模造品は気に入りませんね。あり方もそうですが、あそこまで我を忘れるとは』

「仮にも赤龍帝の奴を男一人って言ってのけるアンタも流石は残虐と淫蕩で名をはせた魔女サマだねぃ……」

 

 

 そんな会話を背に聞きながら、黒歌は一人夜空に浮かぶ月を眺めていた。

 

 

「 (白音、今は良い夢を見ていなさい。でもね、私達の力は……) 」

 

 

 

 

 

 冥界首都リリス。その政庁の一室に聖書三大勢力の長と北欧の神が集まっていた。先ほど結界を見張っていたアジュカ・ベルゼブブから全員が無事帰還したという報告を受け、今後の対応を話し合う事にしたのだ。

 

 

「やれやれ、どうにかなったな」

「えぇ、ですがオーディン殿。本当に良かったのですか、ロキ神は北欧の重要な神。それを……」

「構わん。今の時代、我々も変わらねばならん。いつまでも『神々の黄昏』に怯え、それまでの道筋をなぞるだけというのも嫌になったのでな。今後は他神話体系とも交流を持っていかねばならんの」

「もし交流を持たれるのでしたら我々も手を貸しましょう」

「それは助かるわい」

 

 

 オーディンは脳内で試算を続けていた。ロキによる妨害は予想出来ていた。それを凌げた以上、これから北欧神話は多神話勢力の重鎮としての地位を確立していくことになるだろう。

 まずはサーゼクス・ルシファーの妹と縁深い日本の神々との会談の場を整えて貰うとするか、とオーディンは今後の方針を定めた。

 

 

「しかし、まさか異世界の神、乳神とはね。流石のアンタでも想定できなかっただろ」

「当たり前じゃ。美や愛、性の神になら覚えがあるが、乳そのものとはの。然も異世界ときた」

「異世界、主からも特段聞かされた事はありませんでしたが……」

「我々も知らない世界との交流か。イッセー君、これから益々面白い運命を引き寄せてきそうだ」

 

 

 そのまま彼らは話し合いを続ける。議題はロキに邪魔された調印のやり直しの日取りなどから、オーディンからの日本神話への取次など多岐に渡った。

 そしてその話の中には、リアスとソーナ、他若手悪魔たちのゲームの日程についてもあった。

 

 

 

 

 ロキ襲撃から数日後。改めて北欧神話との調印式が執り行われ、それを祝うのも兼ねての若手悪魔同士のレーティングゲームが開催された。最初の対戦カードはリアス率いるグレモリー眷属VSソーナ率いるシトリー眷属。事前の評価ではグレモリー眷属優勢と目されている。

 アルトリアはサーゼクスの護衛として、貴賓室にて観戦する。室内にはサーゼクスを始めとする四大魔王、堕天使総督アザゼル、天使長ミカエル、そして北欧の主神オーディンと御付きのロスヴァイセ、その他魔王派の冥界重鎮たちが揃っていた。

 ゲームスタートを前に貴賓席ではゲームに関する意見交換が盛んに行われている。

 

 

「アルトリア、君の意見も聞きたい。君ならリアスを如何倒す?細かな想定は抜きにしても構わない」

「ハッ。私ならイッセー、赤龍帝を先に倒します」

「その心は?」

「赤龍帝の持つ『倍加』『譲渡』は高いサポート能力であり、高い応用力があります。そして『禁手』を使えば生半可な攻撃を無視して蹂躙も可能です。禁手を使われて手が付けられなくなる前に一気に潰す必要があります」

「ふむ」

「なにより、彼はグレモリー眷属の精神的柱です。私自身、先のロキ戦で彼が瀕死の重傷を負った際、ショックでどこかおかしくなっていました。また他のグレモリー眷属も冷静さを欠いていました。その点を考えればハード、ソフト両面から優位を取る為に赤龍帝を狙うのが優先かと」

「やっぱお前もそう思うか、その点は俺も危惧しているところだ」

 

 

 二人の会話にアザゼルも加わる。

 

 

「昨日ゲーム前最後のミーティングしてきたが、その点はアイツらも反省してた。さて、今回のゲームでそこが改善されてるかどうかだな」

「セラフォルー。グレモリー眷属は赤龍帝を始めかなりパワー型の構成でしたが、シトリー眷属の方はどのような構成になっているのですか?」

 

 

 今度はミカエルがセラフォルーに尋ねる。

 

 

「ソーナちゃんとこの子達は、基本的にテクニックタイプやカウンター型が多いわね。『女王』はカウンター系の神器『追憶の鏡(ミラー・アリス)』、『兵士』の一人はテクニックタイプのヴリトラ系神器、その他の子達もパワー寄りって訳じゃないわね。でも、リアスちゃんたちに負けるつもりはないわよ☆」

「成程、ロキ戦の際の報告書は見せて貰いましたが、中々に手強いと見ました」

「でしょでしょ♪」

 

 

 妹が褒められ、セラフォルーも機嫌が良さそうだ。そしてオーディン、アジュカも会話に加わる。

 

 

「ふむ。レーティングゲームをこうして見るのは儂も初めてじゃが、確かいくつかルールがあった筈じゃの?」

「えぇ、ダイスの出目で試合に出せる手持ちを決める「ダイス・フィギュア」や、フィールド上の旗を奪い合う「スクランブル・フラッグ」、チェスボードのように区切られたフィールド上で破壊した対象物の数を競う「オブジェクト・ブレイク」、フィールド上にランダムで出現するゴールにボールを入れ駒価値に応じた点数を得る「ランペイジ・ボール」といった特殊ルールも存在しています。他にも細かな制限がゲームごとに定められる場合がありますが……」

 

 

 そんな会話を重ねていると、壁に掛けられた大型テレビの大画面が映像を映し出す。

 

 

『皆さま、このたびグレモリー家、シトリー家の「レーティングゲーム」の審判役を担うこととなりました、ルシファー眷属『女王』のグレイフィアでございます』

 

 

 今回の審判役はかつてのライザー戦の時と同じくグレイフィアが務める。

 

 

『我が主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、ご両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞ、よろしくお願い致します。早速ですが、今回のバトルフィールドはリアス様とソーナ様の通われる学舎「駒王学園」の近隣に存在するデパートをゲームのフィールドとして異空間にご用意いたしました』

 

 

 映像にはアルトリアにとっても馴染みの深いデパートの内装が映し出された。舞台となっているこのデパートは二階建てであり、高さはそこまででもない。しかし、一階二階をつなぐ吹き抜けの長い構造となっており、横面積がかなり大きい。屋上には駐車場もあり、その他にも立体駐車場も存在している。

 全体的に「見通しは確保できるが、隠れることも出来る」という構造をしている。

 

 

『両陣営、転移された先が「本陣」でございます。リアス様の本陣が二階の東側、ソーナ様の「本陣」は一階西側でございます。『兵士』の方は「プロモーション」をする際、相手の「本陣」まで赴いて下さい』

 

 

 画面に地図が映し出される。双方の本陣はデパートの端に位置しており、グレモリーは二階の一番東側、シトリーは一階の一番西側にある。グレモリー陣地の周りには、ペットショップ、ゲームセンター、飲食フロア、本屋、ドラッグストアが存在している。本陣下の一階には大手古本屋の支店とスポーツ用品店がある。

 シトリー陣地にあるのは食品売り場と、電気屋、各種ジャンクフード店、雑貨品売り場。戦いが始まれば、お互いデパートの端を目指すことになるだろうがそう簡単には行かないだろう。

 

 

『回復品である「フェニックスの涙」は今回両チームにひとつずつ支給されます。また今回は特別ルールとして、「フィールドの建造物を破壊し尽くさない事」が勝利条件となります。なお、作戦を練る時間は三十分です。この時間内での相手との接触は禁じられております。ゲーム開始は三十分後に予定しております。それでは、作戦時間です』

 

 

 画面に残り時間を示すカウントダウンが表示された。

 

 

「今のがお主の言っておった細かな制限か」

「はい。この特別ルールは市街戦や閉所戦闘などを想定したものです。大火力で建物そのもの、或いは一角を崩壊させた瞬間にその眷属はゲームオーバー。即退場となります」

 

 

 これはグレモリー眷属に不利なルールだ。グレモリー眷属は『王』たるリアスの滅びの魔力を始め、赤龍帝のドラゴンショット、デュランダル、雷及び雷光など高い火力が揃っている。しかしこのルールではそれらで広範囲を建物ごと一掃するという手段が取れない。

 

 

「これはグレモリー眷属側に不利ですね。まさかセラフォルー、貴方が裏から手を……」

「愛するソーナちゃんに誓ってそれは無いわ。そもそもレーティングゲームの運営に魔王は関われない。あくまで偶然か、或いは運営側のおじ様達が勝手にやった事ね」

 

 

 ミカエルからの指摘にセラフォルーはキッパリと否定を述べた。確かにセラフォルーは自他ともに認めるほど妹ソーナを溺愛しているし、彼女の夢も応援している。しかし、そんな不正に手を染めるほど彼女は腐ってはいなかった。

 

 

「ならば好都合じゃ。ソーナ・シトリーの掲げるゲームメイクの一端、お披露目願おうかの」

 

 

 彼女の夢に共感するオーディンは豊かな顎髭を弄りながら、画面内で眷属達に指示を出すソーナを見つめた。

 

 

『開始のお時間となりました。それでは、ゲームスタートです』

 

 

 三十分間の作戦会議が終わり、遂にゲームがスタートした。グレモリー側はイッセーと小猫がモール中央を進み、『騎士』2人が駐車場を迂回して敵陣へと進む。ギャスパーはコウモリに変化してフィールド全体を偵察する様だ。

 対するシトリー側は匙と生徒会メンバーの『兵士』仁村留流子がモール中央へ向かう様だ。

 

 

「リアスの狙いは一誠君を『女王』へとプロモーションさせての総攻撃か。二方向から攻めつつ片方はフェイクの攻撃。敵陣に素早く侵入し、赤龍帝のコンディションを整えた後に全員で攻めかかる。考えられているが……」

「ソーナちゃんにはお見通しみたいね」

 

 

 先に動いたのはシトリー眷属。モール中央まで来たイッセーを突如、黒い結界が襲った!

 

 

『!なんだ!?』

『相棒!これはヴリトラの…』

 

 

 ドライグが言い終わるよりも早く、立方体状の結界内を黒炎が満たした!

 

 

『イッセー先輩!』

「あの手口、ヴリトラの得意技じゃな。結界で相手を閉じ込め、中で邪炎を爆発させる。炎が周りに逃げず相手のみを焼き尽くす事が出来る攻撃じゃ」

「匙の奴、ヴリトラ系神器をうまく使いこなしているみたいだな」

 

 

 結界が消えると、中から焦げついたイッセーがフラフラと出てくる。すかさず小猫がフェニックスの涙をイッセーに振りかけた。リアスもイッセーが最優先で狙われる事を想定して小猫に涙の小瓶を持たせていた様だが、早速使わされてしまった。

 すかさず、ラインをターザンの様に使いながら匙本人が奇襲を掛ける。背中に仁村を乗せた重量のある一撃をイッセーは籠手の装甲で防ぐ。そのまま匙は複数のラインをイッセーに付け、戦闘へと突入した。

 

 

『やっぱりこっちに来たか兵藤!』

『チッ!早速デカいの貰っちまった!』

『リアス・グレモリー様の『僧侶』一名、リタイヤ』

 

 

 !早速リタイヤが発生した。画面がリタイヤ時のハイライトを映し出す。コウモリに変身して偵察を行っていたギャスパーだったが、シトリー眷属の一人が食品売り場で不審な動きを見せる。それを追ったギャスパーだったが、よく観察する為に散らばっていたコウモリたちを呼び寄せたところで隠れていた他のシトリー眷属の面々からのニンニク攻撃を受けて行動不能になってしまう。そこを撃破(テイク)されてしまったようだ。

 

 

「ヴァンパイアの能力と生態を利用したか。流石にその辺りまでは鍛えられなかったからなぁ……」

「今回のルールで『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』が使用禁止だったのも大きいけど、先ずはソーナちゃんが一歩リードね♪」

 

 

 アザゼルはやれやれといった様子で頭を搔く。ハイライトが終わると再びイッセーと匙の戦闘に場面は映る。匙はラインと結界で動きを制限させながら、モール内の設備を使い果敢に攻め続ける。対するイッセーは『禁手』になる隙を作れず、かと言って『倍加』を使って一緒に相手を強化することも出来ず、やや翻弄されている様子だ。

 

 

「『黒い龍脈(アブソーブション・ライン)』のラインと『漆黒の領域(デリート・フィールド)』の結界、そしてフィールド上の物体。地の利を上手く使っているな。ラインでイッセーの力を吸いつつ、加えてラインを自分に打ち込んで生命力まで糧にしてやがる」

「彼からすれば、イッセーくんは間違いなく格上。格上に勝つ方法は昔から一つ、命を削ってでも力を高めることだ」

 

 

 そういうサーゼクスの眼は何処か遠い物を見ていた。かつての大戦でそういった場面に出くわす機会が多かったのだろう。

 

 

『本当に死ぬ気か…ッ!』

 

 

 画面内では匙の覚悟に驚愕するイッセーの問いに真剣な眼差しで微笑む匙が映っていた。

 

 

『ああ、死ぬ気だよ。死ぬ気でお前達を倒すつもりだ。お前に夢をバカにされた俺達の悔しさがわかるか?夢を信じる俺達の必死さが分かるか?この戦いは冥界全土に放送されてる。俺達をバカにしてた奴らの前でシトリー眷属の本気を見せなきゃいけない!』

「サジ……貴方という人はどこまで」

 

 

 この食らいついていく姿にアルトリアはいつかのイッセーを想起していた。普段は憎まれ口をたたき合う彼等だが、二人はよく似ている。真っ直ぐなところも、スケベなところも、仲間や主を大切している所も。他人から見てそうなのだ、本人たちはより強く感じているだろう。

 

 

『ニャッ!』パン

『ガハッ……』

 

 

 戦況が動いた。小猫の一撃が『兵士』仁村 留流子に突き刺さる。ロキ戦によって猫又の力への抵抗を消した小猫は仙術と格闘を織り交ぜた戦い方を会得した。今のもその一つ、気を纏った攻撃で相手の体内の気脈を乱す技だ。体内を鍛えられる人はそうそういない。今ので内蔵にもかなりのダメージがいっているだろう。

 

 

『…匙先輩、ゴメンなさい』

 

 

 涙ながらにそう漏らし、彼女の身体が光り輝きながらこの場から退場した。

 

 

『ソーナ・シトリー様の『兵士』一名、リタイヤ』

『仁村!』

『…私は冥界猫になるんです。負けません!』

 

 

 残心を決める小猫はそうつぶやいた。確かイッセーの好きな漫画にそんなキャラがいた気がする。ゲーム前にそう励ましてもらったのだろうか。

 仲間がリタイヤした事で匙にも少なからず隙が生まれる。その隙をイッセーは見逃さなかった。

 

 

『『禁手化(バランス・ブレイク)』!』

Welsh Dragon(ウェルシュドラゴン)Balance Breaker(バランスブレイカー)!!!!!!』

 

 

 イッセーが『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイル・メイル)』を纏う。赤く輝く、圧倒的なドラゴンのオーラは周囲を囲っていた黒い結界と、繋がれたラインの何本かを消し飛ばした!

 

 

『クソッ!』

 

 

 そこからは予想された通りの逆転だった。邪魔な結界とラインが消えたイッセーはすかさず距離を詰めて拳を叩きこむ。匙もまた反撃しつつ束ねた神器のラインや黒い炎を盾として防ぐが、強化され続けるイッセーの力を前に防御も破られ、次第に追い詰められていく。

 何度も何度も殴られる匙だったが、しかし一向に倒れる気配を見せない。何度殴り倒されようと、すぐに立ち上がってくる。既に拳は砕け、傷口からはダラダラと血が流れている。にも拘らず、彼は一向に折れる気配を見せない。

 

 

『…勝つんだっ。…今日、俺はお前を倒して…夢の第一歩を踏む…ッ!』

 

 

 以前複数の実力者たちから聞き、アルトリア自身も認識している事がある。戦いにおいて一番怖いのは圧倒的力でも緻密な策略でもなく、「こもった一撃」だと。想いや欲、夢や魂など目に見えない強い力を込められた攻撃は防御すら貫き、芯に届く。そしてそれは戦況すら変え得る。

 今、二人の拳にはそれぞれの想いが、夢が「こもって」いた。

 

 

『兵藤ォォォォッ!』

『来いよ、匙ィィィィィッ!』

『なんで俺達は笑われなきゃいけない!?俺達の夢は笑われるために掲げたわけじゃないんだ…ッ!』

『俺は笑わねぇよッ!命かけてるお前を笑える訳ねぇだろうがよッ!』

 

 

 二人の裂帛した気合に、貴賓室の皆が声を出せずに黙っていた。ここにいる誰もが、匙 元士郎の覚悟を想いを、夢を感じ入っていた。誰もが固唾を吞んで白熱した戦いを見守る中、遂に決着が付く。

 

 

『匙、俺はお前を倒す』

 

 

 生命力を糧にしている以上、先にバテたのは匙だった。半ばフラフラの一撃。それをイッセーは最小の動きで避け、カウンターの一撃を交えた。

 

 

ダガンッ!

 

 

 イッセーの一撃は匙の顔面を完全に捉えていた。完璧に意識を絶つ一撃だった。それでも、それでも匙はイッセーの右腕を両手でつかんでいた。力強く、放すまいと。匙は意識を失っていた。だが、イッセーの右腕から手が離れる事はない。そして右腕から手を離さないまま、匙の体は光に包まれていた。

 

 

『ソーナ・シトリー様の「兵士」一名、リタイヤ』

「見事でした、サジ……」

「ほっほっほっ、おもしろい一戦じゃったな」

 

 

 オーディンがサーゼクスに話しかける。

 

 

「サーゼクス」

「はい」

「あのドラゴンの神器を持つ小僧じゃが」

「兵藤一誠君ですか?赤龍帝の」

 

 

 ドラゴン、という呼び方にサーゼクスは馴染み深いイッセーの方を想起する。しかしオーディンの反応は違っていた。

 

 

「ああすまん。ドラゴンじゃとどちらか分からんな。シトリー家の『兵士』のほうじゃよ、ヴリトラの。いい悪魔じゃな。大切にするがいいぞ。ああいうのが強くなる。それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。いやはや悪魔どものレーティングゲーム観戦は楽しいわい。弱者が一戦の間に化ける。これぞ、真の試合というものじゃよ」

「そうでしょうそうでしょう!オーディンおじいちゃんったら話が分かるんだから☆」

 

 

 オーディンからの賛辞にセラフォルーはテンションを跳ね上げ、オーディンに抱き着く。オーディンもまたセラフォルーの身体と密着し、下品な笑みを浮かべていた。まさかこれ目当てではあるまいな……いや違うか。あの目はおべっかを言っているようには見えなかった。

 再び画面を見る。匙が消えた後もイッセーの顔は険しいままだった。匙の気迫に気圧されたのか、まるでまだそこに匙がいるかのような様子をイッセーは見せていた。

 

 しかし、匙が消えたにも拘わらず未だに一本だけラインが残っている。イッセーには先程まで複数本のラインが付けられており、全て匙の神器の手甲と繋がっているとばかり思っていたが、あのラインだけは()()()()()()()()()()()()()()

 アルトリアも、画面の中のイッセーもそれを不気味に思いながらゲームは進んでいく。次の場面は祐斗とゼノヴィアの向かった立体駐車場だった。





『良い、良いぞ。良い闘いぶりじゃ。明らかに格上の相手に手を変え品を変え、知恵と力を振り絞ってボロボロになりながら挑んでいく』

『実に()()好みじゃ。負けたのは残念じゃが何、わえが力を貸せば良かろう』

『運よくわえの分たれた肉体もかき集めておるし、これはもしかすると復活イケるかもしれんのう』

『何やら()()()()の奴も舐め腐っておるようじゃし、ここは一つギャフンと言わせてやるかのう。き、ひ、ひ』
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