今回から第6章に移ります。ディオドラとの対決、イッセーの暴走、そしてアルトリアの秘密。書きたい内容が盛り沢山で今からどう調整しながら出すか思案の真っ最中です。
そして先日、また一人高評価を付けてくださった方が居ました。拙作を高く評価していただき嬉しく思います。これからもよろしくお願いします。
よろしければ今回もお気に入り登録や高評価、感想をお願いします。
それでは第五十五話、どうぞ!
イリナが転校してきてから数日が経過した頃、彼女は既にクラスに溶け込んでいた。
「はいはい!私、借り物レースに出まーす!」
手を挙げる元気いっぱいのイリナ。持ち前の明るさのおかげで男女問わず人気が高い。ちょうどクラスはホームルーム中だ。体育祭で誰が何の競技をするのか決めているところだった。皆が出たい競技に手を挙げている。因みにアルトリアが出るのはパン食い競争だ。何故かこれしかないと直感が囁いていた。
「兵藤。脇のところ、破れてるわよ」
「え?嘘」
と、桐生がイッセーに唐突に指摘してくる。確認しようと手を挙げたイッセーだったが、それは彼女の罠だった。制服に破れはない。
「よし、決まりね」
イッセーの名前がチョークで黒板に書き込まれる。何やら考え込んで、最後まで手を挙げていなかったイッセーを無理矢理競技に捩じ込んだ。
「おい!騙したな、桐生!」
「あんたは二人三脚よ。相方は」
チョークがとある女子を指す。そこには、アーシアが気恥ずかしそうに恐る恐る手を上げていた。
「あんたとアーシアは二人三脚で走ってもらうわ!」
こうして、イッセーとアーシアは桐生の陰謀により二人三脚のパートナーに決定したのだった。間違いなく桐生がイッセーを茶化す為の配置だが、先に決めておかなかったイッセーも悪いのである。アルトリアはリスク回避の意味も兼ねて真っ先にパン食い競争に志願していたのだから。
◆
次の日から学園全体で体育祭の練習が始まった。授業を早めに切り上げた後、どのクラスも体育着に着替えて、男女合同でグラウンドにて競技の練習をしている。
「勝負よゼノヴィア!」
「望むところだ、イリナ!」
徒競走にも出場するイリナとゼノヴィアはグラウンドで駆けっこしていた。クラスメイトもやんややんやと両者に応援を送っている。いくら人間時代から鍛えているといっても流石に速過ぎである。本番では多少セーブしてもらいたいが、あの調子ならセーブしても女子部門優勝は間違いないだろう。
ライバルになりそうなのもせいぜいシトリー眷属だけだ。
「ところでイッセー。それとマツダにモトハマ、何を鼻の下を伸ばしているのですか?」
「なぁに、フォームの観察だよ。具体的には走っている際の胸部の揺れとブルマから見える太腿の躍動について…」
「つまりは女子を視姦していたと。そんなことをしている暇があるなら練習なさい。ほら、あちらで男子障害物競争の集合が掛かっていますよ」
「松田ァ!元浜ァ!早く来い!」
「「は、ハイィィィ!」」
イリナとゼノヴィアの揺れる胸を見ていた三人を叱りつつ、松田と元浜の二人を運動の鬼と呼ばれる(種族:鬼ではない)体育教師の待つ練習場所へと追いやった。しかしなぜ今だにわが校はブルマなのか?忍者ならぬNINJAが居ると思っているリアスの誤った日本観の影響なのかと、アルトリアはどうでもいいことに思案を巡らせてしまう。
「お、イッセーにアルトリアさんか」
「おお、匙か」
そこへメジャーや釘、計測器を持った匙がやってきた。
「何やってんだ?」
「二人の競争を見てた」
「正確には二人の揺れる胸を、ですが」
「失礼な!ちゃんと走りも見てたぞ!」
「つまりはいつも通りって訳か」
先日死闘を繰り広げたライバルの相も変わらぬ様子に呆れる匙。そんな彼だがなにやら腕に包帯が巻かれている。まだ試合の怪我が治っていないのだろうか?
「その包帯どうしたんだ?」
「ん?ああ、これな」
少しだけ包帯を外すとそこには黒い蛇のような痣が幾重にも腕に現れていた。
「…なんだこれ」
「アザゼル先生に訊いたら、ロキとの戦いとこの間のゲームでイッセーとやりあったのが原因とか言われたぜ。どうにも禁手に至った赤龍帝の神器とラインを繋いだのと、イッセーの血を吸ったのが俺の体と神器にも影響を与えたらしい。手元から離れたラインが得た赤龍帝の情報も俺に反映されたみたいだ」
「マジかよ凄いな。もしかしてやばかったり?」
「いや、これ自体に悪影響ということはないようだぜ。ただ、ちょっと体に出てきているだけだってさ。これよりもっとヤバいことが「見つけたぞ、サジ」…来たか」
何かを言いかけた匙へ、後ろから声が掛かる。振り返る匙と共に見れば、そこには一人の少女が立っていた。長い金髪に褐色の肌、金色の眼には不満気な色が見え、へそ出しに着崩した体操服などから見える肌には蛇の鱗のような模様が浮かんでいる。なにより目を引くのは彼女の頭に生える角らしきものと、ギザギザの歯だろう。
余りにも印象的な要素が目立つが、二人は初めて見た。
「ん?だれだその子?」
「この学校では見たことが……」
「あぁ~。実はな、コイツ、ヴリトラなんだ」
「「………え?」」
ヴリトラ、匙はそう言った。ヴリトラといえば匙の神器に宿る龍王の名だが、同姓同名だろうか?いや、違う。よくよく見れば彼女から漏れ出るオーラはドラゴンのそれだった。
「おい、ちょっと待て匙。この黒ギャルがお前の神器に宿ってるヴリトラだってのか?」
「あぁ、まぁ、ウン」
「てことは、この子とひとつ屋根の下で暮らしている、と!?」
オカルト研究部女子部員全員と同棲しているイッセーを前に言えることではないが、まさか真面目な匙が神器に宿る存在とはいえ女性と同棲しているとは……
「アザゼル先生とヴリトラが言うには、ロキとの戦いとあのゲームでそれぞれ高位の神と赤龍帝の力を吸ったのと、バラバラだったヴリトラ系神器を一つに合体させたことで、眠ってたヴリトラの意識が完全に目覚めたみたいなんだ。で、イレギュラーな事態に神器も変化して独立具現型の神器としての性質も持ったらしい」
「わえは邪龍にして永遠不滅の魔。肉体を揃え、眠る精神を呼び起こすだけの力があれば復活など容易いことじゃ」
『オイ、ヴリトラ。貴様が復活したのは分かった。だがなぜ女の姿をしている?貴様、性別は雄ではなかったか?』
そこまで交流が無かったとはいえ、記憶と違う性別をしている古馴染みの変化にドライグもまたツッコミを入れてしまう。
「久しいのう、赤龍帝ドライグ。なに簡単なことじゃ。わえにとって性別など些細なこと。まつろわぬ化生たるわえにとっては男も女も、それこそ龍の姿とて頓着はせぬ。わえは龍王である前に、アスラじゃからな」
「それよりも、じゃ!サジよ。お主らが準備しておる『体育祭』とやら、拍子抜けにも程があるぞ。仮にもわえの分身たるお主がただ走って、パンを咥えてまた走るだけとはどういう事じゃ!これでは何の試練にもならん!つまらんぞ!」
ヴリトラは不満気に匙に向かって抗議する。どうやら匙もパン食い競争にでるようだが、彼女はそれに不満があるようだ。
「いやな、それがパン食い競争って種目だからさ…」
「それならこの様な狭い競技場の中ではなく、この町を駆けずり回るとか、魔獣やら怪鳥に追い回されるとか、毒入りのパンを見極めつつ取るとか。とにかくもっと困難な試練が欲しい!そしてそれを苦しみながら乗り越えて欲しいのじゃ!」
とんでもない無理難題を匙に押し付けている。いくら悪魔の通う学園の体育祭とはいえ、一般人も参加するのにそんな危険な種目を行う訳にはいかないだろうに……
「他の種目もそうじゃ。せめて昨日テレビでやっておった『S〇SUKE』とやら位の試練でなければわえは満足せんぞ!」
「おい、ヴリトラちゃんとんでもない事言ってるんだけど」
「あぁ。俺が困難な試練に挑戦して、それをクリアする姿が見たいんだと。この前もとんでもない鬼畜ゲーをやらせようとしたりしてさ……」
「ヴリトラという名は障害を意味するそうですし、貴方に障害を与えてその様子をたのしみたいのでしょうか……」
龍王でありながら邪龍とも呼ばれるヴリトラの思わぬ側面に、三人はひそひそと話し合う。
「サジ、何をしているのです。テント設営箇所のチェックをするのですから、早く来なさい」
「は、はい、会長!」
そこへ生徒会長のソーナと副会長の椿姫が眼鏡をキラリとさせながら匙を呼びつける。どうやらまだ仕事が終わっていないようだ。
「ヴリトラ殿も、貴方も今はわが校の生徒の一人です。勝手なことはなさらず、競技に向けて練習をしてください」
「ふむ、あの程度の競技などぶっつけ本番でも出来るが仕方ない。わえの分身たるサジの主であるならば、わえにとっても主になろう。ここは大人しく従ってやるかのう」
ヴリトラもまた渋々と引き下がり、自身が出場する競技の練習場所へと向かっていった。イッセーもまた練習を始めるべく、少し離れた場所にいるアーシアを呼ぶ。
「アーシアー!練習しよう!」
「は、はい!」
話していたクラスメイトにぺこりと頭を下げた後、アーシアはすぐにイッセーの元へ駆け寄ってきた。
「それでは私も練習に戻ります。頑張ってください、イッセー、アーシア」
「おう」
「アルトリアさんも頑張ってください」
そうしてアルトリアもまた練習に向かう。といってもアルトリアの出るパン食い競争は至って普通の競技だ。グラウンドに引かれたコースを走り、途中にある竹竿に吊るされたパンを手を使わず、ジャンプのみでパンを咥えて取り、そのままゴールまで走り、最も早くゴールする。それだけだ。
高い身体能力を有するアルトリアにしてみればこの程度の事は造作もない。練習においても常にトップの成績で本番においては万に一つのミスも無いだろう。必然的に周りには教えを乞うクラスメイトが増え、アルトリアもまたコツを教えたり、練習に付き合う様になった。
そうして一通りの練習を終え、移動することになったのだが、そこで何かを探すイリナの姿が眼に止まった。
「イリナ、何を探しているのですか?」
「あ、アルトリアさん。実はイッセーくんたちが何処かに行っちゃって…」
「ふむ、少し待ってください。イッセーの気配を探ってみます」
そうしてアルトリアは意識を集中させ、周囲を探る。練習が終わり、片づけをしている同級生たちの気配をかき分け、イッセーの気配を察知した。
「見つけました。どうやら体育倉庫にいるようですが、アーシアとゼノヴィアも一緒のようですね」
「い、一緒!?まさか……」
「でしょうね。行きましょう」
◆
「おいっちにーさんしー、おいっちにーさんしー」
時間は少し遡る。練習を始めたイッセーとアーシアは互いの脚を縛り、二人三脚の練習を始めた。最初は互いの息が合わず、転んでアーシアの胸を揉みしだくこともあったが、コンビネーションを意識し、掛け声に合わせて足を動かすようになってからは競歩程度のスピードで動けるようになった。途中、ゼノヴィアも付き添いとして参加するようになり、彼女の手拍子に合わせて動くことも意識している。
「あぅ!いち、に!はぅぅ!さん、し!」
アーシアはイッセーに遅れないようにするため、必死でついてきていた。始めたばかりの頃は息が合わずに転んでばかりだったが、リズムを意識するようになってからはそう言ったこともなくなってきた。
「よし。だいぶいい感じだね。じゃあ、一度本番のように走ってみようか」
ゼノヴィアが二人のひもを直しながら言う。イッセーがふいにアーシアへ視線を移すと、彼女は少しだけ表情を陰らせていた。
「………」
その様子にイッセーは最近のディオドラからの激しいアプローチが関係していると察した。辛い過去を思い出して苦しんでいるのではないかと。
「アーシア、思っていること、言ってみな」
その提案にアーシアは当惑した表情を浮かべるが、少し考えたのち口を開いた。
「…あのとき、彼を救ったこと、後悔してません」
アーシアは教会にいたころ、傷ついた悪魔を救った。それによって異端認定を受け、居場所を失い辛い思いをした。その助けた悪魔こそディオドラだった。どういう経緯で奴がそこにいて、アーシアと出会ったか、そこまではわからない。
救ったのはアーシアが優しかったからだ。それをイッセーは決して責めない。誰にも責めさせはしない。アーシアは良い子なのだから。
ディオドラを救ったことで、アーシアの人生は百八十度変わってしまった。だが今こうして楽しく暮らしているのは確かだ。
それでもイッセーは思ってしまう。聖女としての暮らしが今でも続いていたら、アーシアは今より幸せだっただろうか?と。俺達と一緒にいるのは、聖女だった頃よりも楽しいのか?と。
そして、同時に考えてしまう。いまならミカエルさんに頼めば、アーシアは再び聖女として教会に戻れるんじゃないか?と。
「 (いや、神様の遺した『システム』とやらにアーシアの力が影響を出しそうだから、教会本部とその関連施設、天界管理区に戻れないかもしれない。けれど、昔の暮らしに近しい状態に戻れるかもしれない。もしそうなったら、アーシアはどっちを選ぶんだ?) ………」
イッセーは怖くて訊けなかった、アーシアを失いたくないから。もし戻る事を選択されても、リアスになら実行できてしまうかもしれない。ただ、今の生活からアーシアがいなくなることは想像したくなかった。
「…イッセーさん?」
アーシアがイッセーの顔を覗き込む。
「な、なんだ?」
「難しい顔をしてました。…悲しい表情にも見えて…」
「…なあ、アーシア。もし、元の生活に戻れるとしたらどうする?」
「っ」
目を見開いて驚くアーシア。考えていても仕方がない。アーシアの幸せを願った以上彼女の意思を確認しなければ、と心中ドキドキしながらイッセーは覚悟を決めた。
握りしめる手が激しく汗ばむ。アーシアの答えは?
「戻りません」
笑顔だった。迷いがないほどの。
「覚えていますか?私が前に訊いた事を。『イッセーさんのそばにずっと一緒にいていいですか?』って。イッセーさんは『いいよ』って言ってくれました」
それはまだアーシアが眷属入りしたばかりの頃の話だ。まだ日本の生活に慣れていないアーシアは、励ますイッセーに対してそんなことを訊いた。それはアーシアにとって大きな救いとなった。
「私、ここが好きです。この駒王学園も、オカルト研究部も好きです。リアス先輩も。朱乃さんも、先生も、アルトリアさんも、木場さんも、ゼノヴィアさんも、小猫ちゃんも、ギャスパーくんも、イリナさんも好きです。そしてイッセーさんもイッセーさんのご両親も大好きです」
「ここで始めた新しい生活は私にとって、本当に大切で大事で、大好きなことばかりでとっても素敵なんです。毎日楽しくて。皆と暮らせるのが凄く幸せなんです」
「ッ!アーシア…」
イッセーは自分を恥じた。彼女が今の生活を楽しんでいるのは分かっていた。なのに、彼女の心からの笑顔を忘れて下らない事を聞いた自分を、イッセーは思い切り殴りたくなった。しかし拳を抑えて、アーシアの肩を抱き、言う。
「そうさ、俺とアーシアはずっと一緒だ!嫁にも出しません!アーシア、ディオドラのことも深く考えるな。経緯はどうあれ、嫌なら嫌と言えばいいんだぞ?」
イッセーの言葉にアーシアはしばしきょとんとするが、すぐに笑みを見せる。
「はい!」
すると、今度はゼノヴィアが思い詰めた表情で言う。
「…アーシア、改めてだけど、もう一度謝りたい。初めて会った時、アーシアに暴言を吐いてしまった。いまでも後悔しているんだ。…アーシアは私と仲良くしてくれると、と、友達だと…」
あのゼノヴィアが珍しく顔を紅潮させている。アーシアはゼノヴィアの手を取り、満面の笑みで言う。
「はい。私とゼノヴィアさんはお友達です」
真正面からの屈託のない一言。ゼノヴィアは少し涙ぐんでいた。
「ありがとう。ありがとう、アーシア」
何度見ても、敵対していた二人が仲良くなる姿には感動してしまう。
「よし、練習再開だ」
「はい!」「あぁ」
その後も三人は二人三脚の練習を続けた。が、流石に走り過ぎたのか、アーシアがばて始めてしまう。
「ふぅー。ちょっと、つ、疲れましたねぇ」
アーシアが体操着をパタパタさせながらを吐いていた。そろそろ部室に向かう為にシャワーを浴びるなど準備しなければならない。汗臭い格好で主に会うわけにはいかなかった。
グラウンドの隅にある体育倉庫。そこに練習で使ったライン引き等を片付けるため、三人は入る。ライン引きを置き場に置いて、さて更衣室に向かおうと思った時。
ガラガラ。ピシャッ。
扉が閉まる音!見ればゼノヴィアが後ろ手に倉庫の扉を閉めていた。何が起きたか分からず、イッセーもアーシアもゼノヴィアの行動に首をかしげていた。
「どうしたんですか?ゼノヴィアさん」
訊ねるアーシア。するとゼノヴィアは真剣な表情で語りだす。
「アーシア、私は聞いたんだ。私達と同い年の女の子はだいたい今ぐらいの時期に乳繰り合うらしいぞ」
………?ゼノヴィアの突然の発言にイッセーは耳を疑った。
「ち、ちちくりあう?」
アーシアが怪訝そうに聞き返す。ゼノヴィアはハッキリとした口調で言う。
「男に胸を弄ばれることだ」
ッ!?ゼノヴィアの突然の発言にイッセーは戸惑ってしまう。鍵をかけてまで言い出した事がこれか!?そもそも乳繰り合うの意味も間違っているのだが。
「む、む、む、胸を…っ!」
アーシアが顔を最大までに赤く染め上げて、声も上ずっていた。
「ゼノヴィア!こんな所でいきなりそんな話を始めるな!」
「イッセー、少し黙っていてくれ。まずはアーシアと話す。君の出番はそれからだ。すまないが、倉庫の隅でウォーミングアップしておいてくれ。これから激闘になる」
出番や激闘など意味不明な言葉を口にされ、イッセーの困惑は収まらない。謎に手を開いて閉じてを繰り返すイッセーをよそにゼノヴィアのトークは止まらない。
「クラス女子の中には彼氏に毎日の様にバストを揉まれている者もいる。カタセ達の成長がその証拠だ。私はいろいろと調べたんだ」
間違えている。彼女は明らかに頑張るところを間違えている。確かにそういった関係の女子も居るには居るが、全員がそうしなければならないという訳ではないのだ。
「アーシア。私達もそろそろ体験してもいいではないかな?」
ゼノヴィアはアーシアの肩に手を置き、真剣な面持ちで言う。話題は下世話なのに深刻な話になようになっているのは、戦士としての覇気か。
「あ、あぅぅぅぅっ!そ、そんな、きゅ、急に言われても…」
アーシアも困惑していた。これが普通のリアクションである。ゼノヴィアがぶっ飛んでいるだけだ。
「大丈夫だ。初めは多少くすぐったいらしいが、慣れてくればとても良いものらしいぞ。きっと乳繰り合えば自然と二人三脚も上手にこなせる」
まさか二人三脚の上達と不純異性交遊との繋がりをそこに持ってくるとは。確かに心身ともに繋がることでより息の合った関係には進めるだろうが、それは今ではないだろう。
「…コ、コンビネーションはそこから生まれるのでしょうか…」
アーシアが説得されてかけている。それでいいのか、アーシア・アルジェント。迷うアーシアにゼノヴィアは笑顔で答える。
「アーシア、私達は友達だ」
「はい」
「乳繰り合いも一緒にしよう。二人なら怖くない」
「…は、はい?そ、そうなのですか…?」
段々と話がまとまっていく。アーシアをそんな話で懐柔しないでくれと思うイッセーだが、そんなことは知らないゼノヴィアがこちらに顔を向ける。
「では、しようか。私のほうは子作りも兼ねるよ」
「ちょっと待て!いきなり、こんな場所でおかしいだろ」
狼狽するイッセーをよそにゼノヴィアは体操着の上を脱ぎ捨てる。ぷるん、という擬音が聞こえるかのようにブラに包まれても確かな存在を見せるゼノヴィアのおっぱいがイッセーの目の前に映る。恥じらいのない、いっそ見事ともいえる脱ぎっぷりに驚いているとゼノヴィアはさらにブラのホックを外した。
ぶるっ!と、抑えるものが無くなった為か、見事なものが勢いよく現れる。元浜いわく、ゼノヴィアのおっぱいはオカルト研究部第4位のバストサイズとのことだ。
「誰にも触らせたことのない胸だ。よく覚えておくといい」
かつてプールの更衣室でも子作りしようと誘ってきたゼノヴィアだが、悪魔になった事で欲へのタガが外れたのか、度々暴走することがある。
「ほら、アーシアも」
ゼノヴィアがアーシアへ迫る。戸惑うアーシアの身体を動かして、体操服を脱がそうとしている。
「で、でも…やっぱり、まだ心の準備が…」
ゼノヴィアはもじもじするアーシアから強引に体操着を取り払い、可愛らしい下着姿にしてしまう。
「大丈夫だよ、アーシア。不安なら、先に私がイッセーとしようか?私とイッセーの行為を見ていればどういうものか理解できて、勇気と準備が整うはずだ」
「え!…え、えっと」
「ふふふ、冗談だよ。やっぱり、あとから来た者に先を越されるのは嫌だと思っていた」
「そ、そういう意味ではなくて…」
「今がチャンスだよ。部長とアルトリアの目がない今が、イッセーと乳繰り合えるチャンスは今しかないかもしれないんだ」
「っ」
その一言にアーシアの中の可愛らしい独占欲が刺激される。それを自覚したのかしていないのか、アーシアは黙り込んでしまった。リアスも、アルトリアも、アーシアにとっては大切な人だ。だが、それでも……
パチン、とその隙を見逃さずゼノヴィアの手が静かに伸びて、アーシアのブラのホックを外した。
「あっ」
露わになった胸元をアーシアは顔を真っ赤にして手で隠す。ゼノヴィアと違う、恥じらいのある普通の女の子の反応にイッセーはこれだよ!と内心でガッツポーズを決めた。
そしてゼノヴィアがイッセーの手を引き、トンと体を押した。
「おわっ!」
倒されるイッセー。舞うホコリの中、上半身だけ起こした彼は自分が体育用マットの上に倒されたことに気づく。
状況を理解しきる前にゼノヴィアが上に覆い被さってきた。目の前でブルブルと揺れるおっぱいにイッセーの目線は激しく動く。ゼノヴィアがイッセーの左手を取り、自身の胸に押し当てる。
「イッセーさん…部長さんやアルトリアさんには負けたくないから…」
隣に座ったアーシアがもう片方の手を取って、自分の胸元へ。ゼノヴィアほどは無いが、
確かな存在感のあるアーシアのおっぱいの感触にイッセーは興奮と困惑で頭がいっぱいになった。
「…ぅん…、やはり、自分で触るのと、男が触ってくるのとでは違うね、さてイッセー、私とアーシア、どちらも準備OKだ。もみしだくといい」
ゼノヴィアの甘い声に頭が麻痺しそうになるが、アーシアは性欲をぶつける相手ではないと必死に脳内で抵抗する。だが二人の美少女から用意された据え膳を無駄にしたくないという欲望が頭の中でせめぎ合い続けている。イッセーの選択は!?
ガラララ……
「やはり、ですか……」
「な、な、な、な、なんてことを!」
突然開かれた扉。そこから入ってきたのはアルトリアとイリナだった!半裸の女子二人と男一人、それが寝転がって絡んでいる。言い逃れは不可能だ
「ベ、ベットでしなさい!ここは不潔で衛生的によくないわ!」
「そこですか、イリナ…。取り敢えず三人とも、さっさと着替えて来て下さい。部活動に遅れますよ」
予想はしていたアルトリアは至って平然として三人を引きはがす。
「むぅ、バレてしまったか。仕方ない、乳繰り合うのはまた別の機会にしよう」
「イリナと同じことを言いますが、そういうのは家でやってください」
「あ、あのアルトリアさん……」
「安心してください、アーシア。私は貴方を責めるつもりはありません。貴方がイッセーを好ましく思っているのは知っています。ですがイッセーはハーレム王を目指す男、こんなことをしなくともいずれそういう機会は訪れます」
余裕綽々としているアルトリアにアーシアは尊敬の念を覚えた。が、アルトリアからすれば前提が違う。彼女はイッセーの掲げるハーレム王の夢は女性を悲しませることはないと考えている。彼の優しさは間違いなく愛する者すべてに向けられるだろう。リアスも、朱乃も、アーシアも、小猫も、ゼノヴィアも、彼は全てを分け隔てなく大切にしている。
そう、イッセーならそんなことはしない。彼は愛に序列をつけ、誰かを蔑ろにするような器の小さい男ではない。その全幅の信頼こそが彼女の余裕を生み出しているのだ。
《短編 転校生は堰界竜》
夏休みが終わり、二学期が始まった直後。レーティングゲームでの傷も癒えた匙は久しぶりの自宅を満喫しつつ、眠りについていた。
「ん、んがぁ……」
が、その眠りは穏やかとは言えなかった。明らかに魘されている。何故なら今、彼は夢の中で大きな黒大蛇に巻き付かれているからだ。ギチギチと締め付けられる匙はなんとか絞め殺される前に脱出しようともがき続けている。夢の中で身体が不自由にも関わらず必死にもがき続けていると、少しづつ身体が動かせるようになっていく。
そして眠っている匙の身体も、少しずつ手足をばたつかせられるようになり、眠りも浅くなっていく。
「んがぁ!?ハァッ、ハァッ……」
そして遂に目が覚め、布団を飛ばしながら匙は飛び起きた。身体は寝汗でびっしょりと濡れており、張り付くシャツが不快感を与えている。
「今の、夢は………」
「おう、起きたかサジよ。先ずは悪夢の試練を超えたか、上々上々♪キヒヒヒ」
聞きなれない、いや正確にはつい最近聞いたばかりの声がする。首を振ってみると、そこには自分のベットに寝転がり、此方を弄ぶような笑みを浮かべる褐色金髪の美女がいた!
「うぉぉおぉぉッ!?」
余りの出来事に匙はベッドから転げ落ちる。匙は眼を疑った。この美女は自分が連れ込んだのか?まさか、兵藤じゃあるまいし。だがだとしたらこの人は何処から入ってきたんだ!?
「落ち着け。よくオーラを感じてみよ」
「お、オーラ?何言って……え、まさか、ヴリトラ?」
匙は少し意識を集中させ、目の前の女性を見てみる。すると、自分と彼女の間に繋がりがあることが感じられた。それこそ魂レベルの繋がりを。
「正解じゃ。これからはこうして表に出てこようと思う。せいぜい現世にてわえを楽しませよ、サジ」
「え、えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
◆
生徒会室に集まったシトリー眷属の面々。本来ならば、もうすぐ開催される体育祭に関する会議を執り行うべきだが、そうも言っていられなくなった。
「それで、サジ。彼女がヴリトラだと?」
「はい、会長。そうです……」
眼鏡をキラリとさせ、匙を見つめるソーナ。申し訳なさそうな彼から視線を移すと、そこには黒い衣装を纏い爪を弄っている褐色金髪の美女がだらしなく座っている。
生徒会メンバーが基本真面目な少女で構成されているせいか、ヴリトラの存在が余計に浮いており、メンバーもまた彼女を警戒している。
「ヴリトラ殿、でよろしいでしょうか。なぜその様な姿に?」
「ん?簡単じゃ、我が分身たるサジがあの悪神と赤龍帝とやり合った時にその力を吸ったろう?それがわえを目覚めさせる呼び水になったんじゃ。この格好は、まぁ気まぐれじゃの」
あっけらかんとした様子で語る姿にソーナは頭痛を覚えた。まさか匙の神器にこんなイレギュラーなことが起こるとは。然もヴリトラは五大龍王の一角であると同時に、インド神話の邪龍の一体でもある。そんな存在が自我を確立し、こうして自由に動けるというのは余りにも危険だ。
「外に出てきたのは何が目的ですか。もしこの学園に危害を加えるつもりであれば「つもりなら、なんじゃ?」ッ!」
重い殺気。神器に封印され、目覚めたてで本来の力が出せないはずなのに、その場にいる誰もが動けなかった。これが龍王、これがアスラの王の覇気か……と、ソーナは冷や汗をかいた。
「フン、安心せよ。わえはただ学園生活、というものを楽しんでみたいだけじゃ。という訳でわえもこの学園に通うぞ、学籍とやらをよこせ」
「……はぁ、分かりました。取り敢えずはインドからの留学生ということで対応します。近日中に学籍を用意しますので、匙のクラスに転校生として通ってください」
「き、ひひひ。話が分かるではないか。話す事はもう無いからの、わえはこの街を楽しんでくる。今の世は娯楽が中々に多そうじゃ」
そう言ってヴリトラは席を立ち、生徒会室から出ていこうとする。霧散した殺気に生徒会メンバーは息を吐いた。が、ヴリトラが扉に手を掛けた時、その手がピタリと止まった。
「一つ言っておく。わえは自らの欲で動くだけの魔よ。手懐けられるとは思わぬほうがよいぞ?もし望まぬ結末を齎したくないというなら、わえを楽しませるべく精進せよ」
「……無論です。ですが生徒と言うならば生徒会の決定には従って貰います。そして貴方もまた匙の分身だというならば、最低限匙の主人である私の決定には従ってください」
「ふむ、まぁよかろう。ではな」
そう言ってヴリトラは街へと繰り出していった。ひとまずの脅威は去ったと皆が安堵するが、それは間違いである。彼女は気に入った者に困難な試練を与えて、それを乗り越えるさまを何より好む『堰界竜』と呼ばれる邪龍。
この後、シトリー眷属を様々な試練が襲うのだが、それはまた別のお話。