前回の前書き、ミスってた。最近作業が色々と雑になってきたな。疲れてるのか?しょうもないミスの原因は脳の自動化によるものと聞いたので、面倒でもちゃんと確認しながら余裕を持って行動しないとですね……
今回はディオドラへの宣戦布告回、ちょびっとだけニキチッチも出ます。
よろしければ今回もお気に入り登録や高評価、感想をお願いします。
それでは第五十六話、どうぞ!
その日の放課後。本来なら部活の時間だが、リアスの指示により悪魔業務ではなく、部室で待機する事になった。部室にはグレモリー眷属の面々に加え、アルトリア、アザゼル、そしてイリナもいる。
「皆、集まってくれたわね」
眷属全員集まったことを確認すると、リアスが記録メディアを取りだしながらしゃべりだす。その顔はやや沈鬱とした色が見える。
「若手悪魔のレーティングゲーム戦、私たちの次の相手が決まったの」
もう来たのか。夏休み終盤、グレモリー対シトリーの一戦を皮切りに例の六家でゲームがおこなわれている。グレモリーもシトリー以外の家とも戦うことになっていた。
元々決まっていたことなので特に驚きもせずに聞いていたが、次のリアスの一言で部員全員がリアスの顔色の理由を察した。
「次の相手はディオドラ・アスタロトよ」
「っ!」
悪い冗談としか思えない対戦決定に皆言葉を失っていた。よりにもよって今アーシアと兵藤家に迷惑をかけている彼が次の対戦カードとは。
「これは若手悪魔の試合を記録したものよ。私達とシトリー眷属のものもあるわ」
戦いの記録。ということは今日は皆で試合のチェックをするために集まったのか。記録メディアのボタンを押し、部室内に空中映像を映し出す。そして映像の隣にアザゼルが立つ。
「お前ら以外にも若手たちはゲームをした。大王バアル家と魔王アスモデウスのグラシャラボラス家、大公アガレス家と魔王ベルゼブブのアスタロト家、それぞれがお前らの対決後に試合をした。それを記録した映像だ。ライバルの試合だから、よーく見ておくようにな」
「「「はい」」」
アザゼルの言葉に皆が真剣に頷いた。実際、他の若手悪魔達の戦いようは気になっていた。アルトリア自身、他の大会が行われる頃には既に帰路についており、見ることが出来なかったからだ。
他の皆も同様で、同世代の活躍を見ようとすでにモニターへ視線を向けていた。
「まずはバアル家とグラシャラボラス家の試合だ」
アザゼルが最初のデータを説明する。若手悪魔の会合で因縁のある二人の試合か。記録映像が開始された当初は自分たち以外の試合を見られるわくわく感を持っていたが、視聴していてすぐにそんな気持ちは取り払われた。部員全員の顔つきは真剣そのものになり、視線は険しいものになっている。目にしたのは圧倒的なまでの『力』だった。
ゲームの終盤、ゼファードルとサイラオーグの一騎打ち。一方的にヤンキーが追い込まれていた。眷属同士の戦いは既に終わっている。どちらも強力な眷属を有していて、それぞれの戦いは白熱したが、問題は『王』同士の戦いだ。
『くッ、差しで勝負だ!サイラオーグ!』
『いつでもいいぞ』
ゼファードルの挑発にサイラオーグはためらうことなく乗った。飛び上がったゼファードルが繰り出すあらゆる攻撃がサイラオーグに弾き返される。いくつかヒットした攻撃にもサイラオーグは微動だにしない。
自分の攻撃が通じないことで、ゼファードルは次第に焦りの色を濃くし、冷静さを欠いていた。
『こちらの番だな。オォォォォッ!!』
そこへサイラオーグの拳が放り込まれる!幾重にも張り巡らされた防御術式も紙のごとく打ち破られ、サイラオーグの一撃が相手の腹部に鋭く撃ち込まれた!その一撃は映像越しでも辺り一帯の空気を震えさせるほどの威力だと見て取れた。
拳を刺したままサイラオーグはゼファードルを振り回し、力強く放り投げた!凄まじい勢いで叩きつけられたゼファードルは白目をむき、二度と立ち上がる事は無かった。
「…凶児と呼ばれ、忌み嫌われたグラシャラボラスの新しい次期当主候補がまるで相手になっていない。ここまでのものか、サイラオーグ・バアル」
祐斗もあまりの光景に目を細めていた。その表情は険しい。騎士として、眷属のエースとしてサイラオーグの強さとスピードは最大限に警戒するべきものだ。同じ徒手空拳の戦闘スタイルのイッセーや小猫も画面をじっと見つめていた。その腕にはブルブルと震えたギャスパーがつかまっている。
「リアスとサイラオーグ、おまえらは『王』なのにタイマン張りすぎだ。基本、『王』ってのは動かなくても駒を進軍させて敵を撃破していきゃいいんだからよ。ゲームでは『王』が取られたら終りなんだぞ。全く、バアル家の血筋は血気盛んなのかね」
先生は嘆息しながら言う。リアスは恥ずかしそうに顔を赤くしていた。確かに彼女はよく前に出てくる。アルトリア個人としては王が配下と共に戦う姿勢は敬意を表するが、戦争や政治的にはアウトな選択肢だろう。
「そういや、あのヤンキー悪魔って、どのぐらい強いんですか?」
イッセーの問いにリアスが答える。
「今回の六家限定にいなければ決して弱くないわ。といっても、前次期当主が事故で亡くなっているから、彼は代理ということで参加しているわけだけれど…」
そこに朱乃が続く。
「若手同士の対決前にゲーム運営委員会が出したランキングでは、一位がバアル、二位がアガレス、三位がグレモリー、四位がアスタロト、五位がシトリー、六位がグラシャラボラスでしたわ。『王』と眷属を含み平均で比べた強さランクです。それぞれ、一度手合わせして、一部結果が覆ってしまいましたけれど」
「ですが、その中においてもサイラオーグ・バアル殿は抜きん出ています。他の『王』や眷属たちよりも………」
アルトリアの言葉にリアスがうなずく。
「ええ、彼は怪物よ。純粋な強さにおいては100年近いベテランと言えるアガレス家のドブルイニャ・ニキチッチよりも上。『ゲームに本格参戦すれば短期間で上がってくるのでは?』と言われているわ。逆を言えば彼を倒せば、私達の名は一気に上がる」
なるほど、一位と目され、実力もその通りの相手を倒せば評価はうなぎ登りだろう
「もしかして、ライザーより強い?」
イッセーが深刻そうにリアスに尋ねる。あのゲーム、確かにイッセーは勝利した。が、それは相手の慢心とイッセーの想定外の強さに動揺したのも勝因の一つだ。力を付ける度にイッセーは、今の自分は正面切ってライザーに勝てるのかとたまに考えてしまう。
「両者がやってみないとわからないけれど、私の贔屓目で見てもサイラオーグの方が強い気がするわ。彼なら私たちがやろうとしたライザーの心が折れるまで再生させる作戦も使えそうね」
確かにあの映像を見た後なら納得できる。馬乗りになってタコ殴りにしそうだ。
「ま、グラフを見せてやるよ。各勢力に配られているものだ」
アザゼルが指をクルリと回して術を発動すると、宙に立体映像のグラフが展開された。
そこにはリアスやソーナ、サイラオーグ等、六名の若手悪魔の顔が載っており、その下に各パラメータらしきものが表示されている。グラフにはパワー、テクニック、サポート、ウィザードと、ゲームにおけるタイプを示すステータスが表示されており、あと一つは『キング』と表示されている。おそらくは『王』としての資質だろう。
リアス、ソーナ、シークヴァイラの三名はそこそこ高めだが、ソーナの方が現時点ではリアスよりも上。前回ゲームでの評価だろうか。そしてサイラオーグが最も高く、ゼファードルが一番低い。
リアスとサイラオーグの値を比較してみる。リアスのパラメータはウィザード、魔力が一番伸びており、パワーもそこそこの値。テクニック、サポートは真ん中よりも少し上の平均的な位置だった。
対するサイラオーグは、サポートとウィザードは若手の中で最も低いが、その分パワーに振り切れている。その値はグラフすらも貫通し、正確な値が計測できない。目算ではあるが、パワーにおいてはそこそこあるゼファードルの約5倍だ。おそらくは先ほどのような徒手空拳の格闘戦に特化しているのだろう。
「さっきのゼファードルとのタイマンでもサイラオーグは本気を出しやしなかった」
それはそうだろう。既にあの控室の一件で格の差は分かっている。それに戦った後、彼は息切れ一つしていなかった。本気を出せば、それこそ禁手使いすら倒しかねない。文字通りのバランス・ブレイカーになり得る。
「やはり、天才なんですか。サイラオーグさんは」
畏れを抱いたイッセーの言葉にアザゼルは首を振る。
「いや、サイラオーグはバアル家始まって以来の無才能な純血悪魔だ。バアル家に伝わる特色のひとつ、滅びの力を得られなかった。滅びの力を手に入れたのは従兄弟のグレモリー兄妹だったのさ」
これは冥界社交界や冥界の貴族に通じていれば必ず聞く話だ。
《バアル家の長男、サイラオーグは滅びの魔力を持たない出来損ないである。》
血統やそれに付随する能力を重視する貴族悪魔にとってサイラオーグの存在は侮蔑の対象となる。それによって彼は大王家に生まれたにも拘わらず、長く差別されていたという。
「でも若手最強なんですよね?」
「家の才能を引き継ぐ純血悪魔が本来しないものをしてな、天才どもを追い抜いたのさ」
「本来しないもの?」
「凄まじいまでの修行だよ。サイラオーグは、尋常じゃない修練の果てに力を得た稀有な純血悪魔だ。あいつには己の体しかなかった。それを愚直なまでに鍛え上げたのさ」
アザゼルの話はイッセーに衝撃を齎した。上級悪魔、特に純血の悪魔は皆才能に溢れている者達だと思っていたからだ。
リアスは才能に恵まれていた。サイラオーグは才能に恵まれなかった。そのことで比較されるリアスの姿をアルトリアも幾度か見てきた。そのたびに彼女の顔色は沈み、先ほどの映像を見る彼女の顔も複雑な物だった。
「才能の無い者が次期当主に選出される。それがどれほどの偉業か。敗北の屈辱と勝利の喜び、地の底と天上の差を知っている者は例外なく本物だ。ま、サイラオーグの場合、それ以外にも強さの秘密はあるんだがな」
皆、映像内のゼファードルの情けない姿を笑い飛ばすことは出来なかった。映像越しでも伝わる圧倒的な迫力に全員が気圧されていたからだ。
勝つための執念を感じた。サイラオーグのあの表情は何事にも妥協せず向かっていく男のそれだった。あの姿に、最近夢で見るようになった景色に出てくる戦士や騎士たちの姿がかぶった…。何かに向かってひたすらなまでに突き進む覚悟のようなものを感じた。映像が終わり、しんと静まり返る室内でアザゼルは言う。
「先に言っておくがお前ら、ディオドラと戦ったら、その次はサイラオーグだぞ」
「っ!それは本当ですか!」
「少し早いのではなくて?グラシャラボラスのゼファードルと先にやるものだと思っていたわ」
リアスの指摘にアザゼルは首を振る。
「アイツはもうだめだ。ゼファードルはサイラオーグとの戦いで心身に恐怖を刻み込まれたんだよ。もう戦えん。サイラオーグはゼファードルの心、精神まで断ってしまったのさ。だから、残りのメンバーで戦うことになる。『王』が折れた以上、グラシャラボラス家はここまでだ」
っ!精神を断つ…、戦う意志すらもへし折る程の強さか……。確かに彼ならライザーにも勝ちうるだろう。
「おまえらも十分に気を付けておけ。あいつは対戦者の精神も断つほどの気迫で向かってくるぞ。あいつは本気で魔王になろうとしているからな。そこに一切の妥協も躊躇もない」
グレモリー眷属の中に緊張が走る。その面持ちはまるで戦場を前にしたように厳しくなっている。リアスは深呼吸を一つした後、改めて言う。
「まずは目先の試合ね。今度戦うアスタロトの映像も研究の為に見るわよ。対戦相手の大公家の次期当主シーグヴァイラ・アガレスを倒したって話だもの」
「大公が負けた⁉」
「ニキチッチ殿を有するアガレス家が……?」
信じられなかった。ニキチッチはあの場で見た限りでも相当な実力者。その経歴も大公アガレス家に100年仕える歴戦の勇士であり、その主シークヴァイラもリアスに近しい実力者だ。対するディオドラは良くも悪くも平均的。眷属にも目立つところはなく、勝つのは難しい筈だ。
「私達を苦しめたソーナ達は金星、先ほど朱乃が話したランクで二位のアガレスを打ち破ったアスタロトは大金星という結果ね。悔しいけれど、所詮対決前のランキングはデータから算出した予想にすぎないわ。いざ、ゲームが始まれば何が起こるかわからない。それがレーティングゲーム」
と、リアスは言う。確かに戦場では何が起きるか分からない。少しの油断や読み違いが致命的な隙を生む。リアスとソーナの対決もまたその一つだ。
「けれど、アガレスが負けるなんてね」
「ゲームでは何が起こるか分からない。そこが面白いところだが、兎に角見てみんことには始まらないぞ」
アザゼルにそう言いながらリアスが次の記録映像を再生させる。映像が切り替わり、アガレス家とアスタロト家のゲームが映し出された。序盤はアガレス家側が有利にゲームを運んでいる。
アガレス側は『戦車』のニキチッチを前線指揮官に据えた前衛と、『女王』や『僧侶』などが控える後衛で構成されており、白いドラゴンに騎乗したニキチッチがディオドラとその眷属たちを蹴散らしながら攻勢をかけていた。既にアスタロトの眷属も数名がリタイヤしている。
『ディオドラ・アスタロト様の『兵士』一名、リタイヤ』
『ふむ、他愛ないな。征くぞ、バフィール!』
『ハイ!』
潰走していくディオドラたちの追撃にニキチッチとバフィールと呼ばれた『騎士』の女性が飛び出す。ドラゴンと馬に跨った女騎兵二人が潰走する相手を追い立てていく。そのまま二人は、アスタロト側本陣近くの広場にまでやってくる。そこで戦況が急変した。
『『!?』』
突如、彼女らを魔法陣から飛び出した鎖が襲う!二人は騎兵の機動力で避けるが、鎖は意志を持つかのようにニキチッチへと殺到し、彼女とドラゴンを絡めとる。ニキチッチもすかさず自身を縛り上げる鎖を『戦車』のパワーで引きちぎらんとする、が
『ムッ!?これは…』
『マズイぜ、御主人!こいつは龍殺しの……!』
『戦車』の
『!すまぬ、シークヴァイラ……』
ディオドラの放った攻撃に呑まれ、ニキチッチはリタイアしてしまった。
『そんな、ニキチッチッ!』
信頼する眷属の敗北に動揺するシークヴァイラだったが、戦局は待ってはくれない。ニキチッチを倒したディオドラはそのままアガレス眷属を蹂躙していき、遂にはアガレス側の本陣にまでやってきた。
『ここまでです、シークヴァイラさん』
『くッ。まだです、まだ終わりません!』
シークヴァイラとその眷属たちは最後まで抵抗するも、全てディオドラ一人に敗れ去り、『女王』もあの鎖によって縛られリタイヤ。最後に残ったシークヴァイラも手の内を晒す前にディオドラに倒され、ゲームはアスタロト家の勝利で幕を閉じた。
「つ、強ぇ……」
「えぇ、ですがこのゲーム運びはどこか……」
パァァァァァァ
アルトリアが何かを言いかけた直後、部屋の片隅で人一人分の転移用魔法陣が展開した。その色は緑。
「アスタロト」
朱乃がぽそりと呟いた。そして、一瞬の閃光の後、部屋の片隅に現れたのは爽やかな笑顔を浮かべる優男だった。
「ごきげんよう、ディオドラ・アスタロトです。アーシアに会いに来ました」
◆
部室のテーブルにはリアスとディオドラ、顧問としてアザゼルも座っていた。朱乃がディオドラにお茶を淹れ、アルトリアと共にリアスの傍らに待機する。他の眷属はリアスの後ろに控え、イリナのみ部室の片隅にて状況を見守っていた。
何処かリアスの婚約騒動の時もこんな感じだった。上級悪魔と下級悪魔の差が如実に現れている。あの時と違うのは、相手の狙いがリアスではなくアーシアな点だが。当のアーシアはイッセーの隣で困惑した表情をしていた。不安げなアーシアの手をイッセーは無言で握り、僅かに安心したアーシアも握り返す。
そんなイッセーの覚悟など知らないディオドラは、一瞬だけ目を開いた後、元の優し気な笑みを浮かべリアスに言う。
「リアスさん。単刀直入に言います。『僧侶』のトレードをお願いしたいのです」
『トレード』、『王』同士で駒となる眷属を交換できるレーティングゲームのシステム。同じ駒同士なら可能となるこのシステムで『僧侶』つまり、アーシアかギャスパーを寄越せと言っているのだ。
「いやん!僕のことですか!?」
「なわけないだろ」
ギャスパーが身を守るように構えるが、イッセーがすぐに頭をはたく。まぁ、これまでの行動からしてあり得ないが。
しかし、ギャスパーもずいぶん逞しくなった。少し前なら「ヒィィィィッ!ぼ、僕のことですかぁぁ⁉」と悲鳴を上げて、段ボール箱の中に逃げていたかもしれない。それが少々ビクつく程度で済んでいる。
「僕が望むリアスさんの眷属は『僧侶』アーシア・アルジェント」
ディオドラは躊躇いなく言い放ち、アーシアの方へ視線を向けた。その笑みは一見すると爽やかなものだ。だが行動は情けないものだ。これまでのアプローチで断られ続けたからといって、眷属のトレードでアーシアを手に入れるとは。求婚する女性への対応とは思えない。
「こちらが用意するのは」
ディオドラの机の上に二人の少女の立体映像が浮かぶ。ディオドラの『僧侶』だろう。どちらもアーシアに負けず劣らずの美少女だ。
「………(あれ?確かあの子って)」
「だと思ったわ。けれど、ごめんなさい。私はトレードをする気はないの。それはあなたの『僧侶』と釣り合わないとかそういうことではなくて、単純にアーシアを手放したくないから。私の大事な眷属悪魔だもの」
ディオドラの交渉には応じないと、真正面からリアスが切り捨てる。
「それは能力?それとも彼女自身が魅力だから?」
「両方よ。私は、彼女を妹の様に思っているわ」
「部長さんっ!」
アーシアは口元に手をやり、グリーンの瞳を潤ませていた。敬愛する主が『妹』と言ってくれたことが心底嬉しかったのだろう。
「一緒に生活している仲だもの。情が深くなって、手放したくないって理由はダメなのかしら?私は十分だと思うのだけれど。それに求婚した女性をトレードで手に入れようというのもどうなのかしらね。そういう風に私を介してアーシアを手に入れようとするのは解せないわ、ディオドラ。貴方、求婚の意味を理解しているのかしら?」
迫力のある笑顔で問い返すリアス。最大限配慮しての言動だったが、女性をモノ扱いするディオドラにキレてるのは傍から見ても理解できる。が、ディオドラは笑みを浮かべたまま。その様子はかなり不気味に映る。
「分かりました。今日はこれで帰りますけれど、僕は諦めません」
ディオドラは立ち上がり、アーシアの元へ近寄ってくる。当惑しているアーシアの前に立つと、その場で跪き、手を取ろうとした。
「アーシア。僕は君を愛しているよ。大丈夫、運命は僕たちを裏切らない。この世の全てが僕達の間を否定しても僕はそれを乗り越えてみせるよ」
身勝手な運命論を振りかざし、ディオドラはアーシアの手の甲にキスをしようとする。
がしっ!
が、それをイッセーが肩を掴んで止める。ディオドラの対応に耐えかねたのだ。そんなイッセーをディオドラは振り払い、不愉快そうに口元を抑える。
「話してくれないか?薄汚いドラゴンに触られるのはちょっとね?」
そう言って汚い物を見るようにイッセーを見る。遂に本性を現したか!
パチッ!
突如、アーシアのビンタがディオドラの頬に炸裂していた。アーシアは顔に僅かな怒りと涙を浮かべ、叫ぶように言った。
「そんなことを言わないでください!」
…驚いた。アーシアがビンタを放つとは思わなかった。が、正直なところディオドラの態度にはアルトリアも不快感を持っていたので溜飲が下がってすっきりした。ディオドラの頬はビンタで赤くなっている。一瞬面食らっていたが、すぐに張り付けたような笑みを浮かべる。
「なるほど、わかったよ。では、こうしようかな。赤龍帝、兵藤一誠。次のゲームで君を倒そう。そうしたら、アーシアは僕の愛に応えて欲しい」
「お前なんかに負けるわけねぇだろッ!倒せなかったらアーシアは諦めて貰うぞ!」
イッセーは面と向かって言い放った。ディオドラの強さは先ほど見ている。だが、これでいい。これでディオドラを倒せば丸く収まる。
「いいや、倒す。次のゲームで僕は君に勝利する」
「ディオドラ・アスタロト、お前が薄汚いといったドラゴンの力、存分に見せてやるぜ!」
睨み合うイッセーとディオドラ。あの時と同じだ。アーシアの幸せのためにも今度の戦いも決して負けられない。
睨み合う両者の間にひりついた空気が流れるなか、アザゼルのケータイが鳴った。いくつかの応答のあと、アザゼルは此方に告げる。
「リアス、ディオドラ、ちょうどいい。ゲームの日取りが決まったぞ。五日後だ」
その日はそれで終わり、ディオドラは帰っていった。五日で出来る事は限られるだろう。それでもアーシアをあのような男に渡さないために、アルトリアはリアスたちへ惜しみない協力をすることを誓った。
その日の夜。
「ねぇ、アルトリアさん。ちょっといい?」
「?どうしましたか、イリナ?」
兵藤家の廊下でアルトリアはイリナから声を掛けられる。
「実はちょっと気になる事があって、ディオドラ・アスタロトの眷属なんだけど」
「あぁ、あの『僧侶』二人ですね。それが何か?」
「実は私、見た事があるの。昔教会で」
「!?」