ジュニアハイスクールD×Dの新刊が出ましたね。意外と時系列が進むのが早くて、どこまで行くのか気になります。
今回はゲーム前の箸休め兼布石回となります。ファンの方々の期待に応えられるように頑張ってまいります。
よろしければ今回もお気に入り登録や高評価、感想、それと『ここすき』をお願いします。
それでは第五十八話、どうぞ!
ディオドラとのゲームが決まった次の日の夜。イッセーは深夜の悪魔稼業に繰り出していた。
イッセーが漕ぐ自転車の後ろにはアルトリアが座っている。彼女も今日は夜警当番の日で、丁度ルートが鉢合わせたので、一緒に乗せて貰っている感じだ。
「しかしまだ自転車なのですか?今の貴方なら魔法陣での転移も可能でしょうに」
「いやぁ、一度それでやってみたらウケが悪くてさ。どうにも俺=チャリの悪魔ってイメージがあるみたいから続けてんだよ」
「成程。培ったイメージを壊さないように、という訳ですかッ!?」
キキィィィ!
突然の気配にイッセーは急ブレーキを掛けて自転車を止める。アルトリアもまた気配を感じ、警戒する。前方から接近する強い気配。薄暗い闇夜、そこから姿を現した男女!
「久しぶりだな兵藤一誠、アルトリア・ペンドラゴン」
「ヴァーリ!」
「それにロウィーナ・ヴォーティガーン!」
前に会った時よりラフな格好のヴァーリとロウィーナ、およそ二ヶ月ぶりの再会だ。
「完全な禁手に至ったそうじゃないか、うれしいよ」
「そしてお前はより騎士王に近づきつつあるか、あまり良い傾向とは言えんな」
ヴァーリは相変わらずの不敵な笑みを浮かべ、ロウィーナは憮然とした様子でこちらを見る。赤と白の対決を望むヴァーリと、アルトリアの覚醒を必ずしも望まないロウィーナ。バディの二人だが、対となる存在への対応には差が有った。
「何しに来やがった?この間の続きでもするか?」
「ふっ。好戦的なのは好ましいが、それはお互いもっと強くなってからにしよう」
「ならば何の用ですか」
「今度、赤龍帝がレーティングゲームをするそうだな?相手はアスタロト家の次期当主」
!?何処からそれを、いやこれまでも此方の機密性の高い場に何度も奇襲をかけている。テロリスト独自の情報網から仕入れたか。
「それがどうした?」
「気をつけたほうがいいぞ」
怪訝に思うイッセーは警戒したまま2人に問う。
「…どういうことだ?」
「お前達、記録映像を見たのだろう?アスタロト家と大公の姫との闘いの記録を」
ロウィーナの言う通り、先日グレモリー眷属はアスタロト対アガレスの記録映像を見た。試合はディオドラの勝利だったが、その強さは圧倒的だった。
彼だけがゲームの途中から異常なほどの力を見せて、アガレス家の眷属と『王』を撃破した。ディオドラの眷属はサポートするだけで、『王』自ら孤軍奮闘、一騎当千の様相を見せた。ディオドラは魔力の類の秀でたウィザードタイプだ。映像ではリアスを超える魔力でアガレス側を蹂躙していた。
これを見たほぼ全員が訝し気に思っていた。ディオドラがあからさまに急にパワーアップしたからだ。急激なパワーアップ自体はイッセーのように例が無いわけではない。だがディオドラには『
それまではニキチッチを始めとしたアガレス眷属が追いつめていた。実力をギリギリまで隠していた?相手を油断させるために?だがあれだけの力なら最初から攻め込めば勝てた筈。劇的な逆転を演出したかったのか?
アザゼルはこの試合を生で観戦していたらしいが、事前に得ていたデータでのディオドラの実力から察してもあまりに急激なパワーアップに疑問を感じたようだ。リアスも同様の意見だった。
「「ディオドラはあそこまで強い悪魔ではなかったと」」
と、二人の意見が一致していた。ディオドラの急激なパワーアップ、それには必ずカラクリがある。それも人には言えないようなカラクリが。
「まあ、俺たちからの意見では上級悪魔たちは納得しないだろうがな。君たちが知って警戒するだけでも大分違うだろう。話はそれだけだ、俺たちは帰るとしよう」
不思議だ。前に会った時には2人とも如何にも戦闘狂なテロリストといった様子だったが、今日は打って変わって冷静だ。然も伝えなくてもいい情報をわざわざ伝えに来るとは。
「待てよ。それだけを言うためにわざわざ俺に会いに来たのかよ?」
訊ねるイッセーにヴァーリは笑って見せる。
「近くを寄ったから忠告しようと思ってな。君が俺以外にやられるのは嫌なんだ。君を倒すのは俺なんだからな」
「ではな、赤龍帝、そして騎士王。生き延びることが出来るか、見届けさせてもらうぞ」
それだけ言うと二人は闇へ消えていった。
「何だったんだよ……」
「取り敢えず、リアスに報告しましょう。テロリストがこの街に侵入したのに変わりはないのですから」
◆
「そう、ヴァーリとロウィーナがね」
オカルト研究部の部室に来た二人はそれぞれの仕事終了後にリアスに先ほどの事を報告した。リアスは顎に手をやり、何かを考えている様子だった。
「…この町に寄ったのなら、感知してもいいのだけれど…。まったく彼らを察知できないわ。気配を断つ術?仙術の類の応用かしら?それとも黒歌の空間結界術で?」
リアスは小さな魔法陣を宙に展開すると、何処かに連絡を入れた。
「一応、今回の件をお兄様とアザゼルに報告するわ」
報告を終えるとリアスは苦笑する。
「ディオドラの件もよく注意しましょう。二人の言葉を信じているわけではないけれど、警戒する必要はあるわ。さて、帰りましょうか?」
「はい」
「あ、二人は先に帰っていてください。少し結界の様子を見てきます。ヴァーリ達が入ってきた痕跡があるかもしれません」
そういってアルトリアは二人を先に帰す事にした。二人とも生真面目なアルトリアのことを信頼し、無理はしないでとだけ言って帰っていった。イッセーが漕ぐ二人乗りの自転車を見送りつつ、アルトリアは街へ向かう。行き先はこの街の結界、ではなくアザゼルのセーフハウスだ。
◆
「来たか。アルトリア」
「お待たせ致しました」
アザゼルの書斎に招かれたアルトリア。そこには立体通信ではあるがサーゼクスとミカエル、三大勢力のトップが揃っていた。
「皆さま、お時間を頂きありがとうございます」
『いえ、至急伝えたいことがあると聞いています。貴方が直接伝えたいということは相当なことでしょう?』
そういってミカエルは笑顔を浮かべる。いつも通りの穏やかな微笑みを見ると、この後伝える情報を知った後の反応が怖くなる。
「はい。先日ディオドラ・アスタロト殿がリアスのもとを訪れました。要件はアーシア・アルジェントのトレードでした」
『話は聞いている。しかし惚れた女性を眷属システムを使って手に入れるとは、あまり褒められた事ではないな』
「ハイ。その際彼が提示した『僧侶』二名なのですが、その顔を見た紫藤イリナから彼女らに見覚えがあると相談を受けました」
『『「!?」』』
「一人目はダリア・ニコロディ。もう一人はルーシー・キスリンガーというそうです。この名に覚えは?」
『えぇ、どちらも敬虔な信徒であったと記憶しています。そしてどちらも数年前から行方不明に……!?まさか!』
「おいおい、まさかとは思うが。ディオドラの奴……」
『考えたくはないが、可能性が無いとも言いきれない』
三人の中に生まれた一つの仮説。即ちディオドラは敬虔な女信徒を好む性癖であり、その為に信徒を拉致しているのではないかという事だ。無論つい先日まで敵対していた以上、引き抜き自体は悪魔的には悪いことではない上に、あくまでも仮説だ。だが、三大勢力が協調していく中で彼女等の存在を放置する訳にも行かない。
無論、彼女らが望んで眷属になった可能性はある。だが、ディオドラのあの粘着ぶりを考えるとそうではない可能性の方が高いと考えざるを得ない。
「サーゼクス。確かゲームに際して眷属の登録がされることになっているな?その来歴は追えるのか?」
『可能だ。だが、彼は眷属に常にローブを着せている。そこまで隠すとなると登録した情報も偽造の可能性があるが、なるべく背景を洗わせよう』
『こちらではここ数年の信徒の、特にシスターや女戦士の行方不明情報を探しましょう。ダリア・ニコロディ、ルーシー・キスリンガー、そしてアーシア・アルジェント。ディオドラ・アスタロトと関係のある女性が三人ともシスターなのは偶然とは考えにくい。だとすれば……』
ミカエルの顔が怒りに歪む。考えたくはないが、彼女等の行方不明にディオドラが関係している可能性がある。更に話を飛躍させれば彼の他の眷属も、もしかすると皆………
「ディオドラ・アスタロト、中々に後ろ暗そうじゃねぇか。これはあのゲームでのパワーアップも後ろ暗い、もしかすると『蛇』が関わってるかもしれねぇな」
『『!』』
『蛇』。夏休み前に行われた三大勢力の会談、そこを襲撃した旧魔王派の悪魔たちが使用していた強化アイテム。その出所は現在『禍の団』にて首魁を務めているらしい『
『だとすれば最悪の事態だ。至急情報を集めて対策を決定しよう。ペンドラゴン卿、報告御苦労だった』
「ハッ!」
『分かっているとは思うが、この事は他言無用だ。決してリアスたちに覚られないようにしてくれ』
「かしこまりました」
そう言ってアルトリアはアザゼル宅を辞し、帰宅の途についた。家に帰ると何故かリアスと朱乃
がイッセーを取り合って喧嘩していた。
「な、なにをやっているのですか、皆揃って……」
「お帰り、アルトリア。実は朱乃先輩がイッセーとコスプレの約束をしていたらしいんだ。面白そうだし、私たちも便乗したんだよ。似合っているかい?」
見ればアーシア、ゼノヴィア、小猫が巫女服らしき姿にコスプレしていた。といっても布地はスケスケ、丈も短い上にへそ出しと完全に欲望丸出しな衣装だったが。
「えぇ、皆よくお似合いです。私には少し恥z「朱乃には負けないわ!」!この流れは……」
上を見ればリアスは赤を基調とした小悪魔風のコス衣装、朱乃はもはや紐としか言えないような過激すぎる水着を纏っている。そしてどちらもイッセーを挟んで激しく火花を散らせている。この流れは間違いなく二人の間で争いが起こるだろう。
「仕方ありませんね、イッセー。二人を上手く宥めてください」
「へぇ!?いきなりそんなこと言われたって!?」
「ハーレム王を目指す男が女性同士の諍いを止められずして何としますか。さぁ、このティッシュで鼻血を拭いて、これを機に女心を学んできなさい!」
そう言ってイッセーの鼻血を止めると、リアスと朱乃の方へと押し出す。
「リアス!アケノ!イッセーが二人の衣装を見てくれるそうですよ!」
「「本当!?」」
「えぇ、さてイッセー。向こうの更衣室で三人だけのコスプレ大会を満喫してください」
「ちょ、ちょっと待てアルトリアあぁぁぁ~………」
二人に掴まれて引きずられていくイッセーを尻目に、残りのメンバーは室内でボードゲームをすることにした。選んだのは悪魔版の人生ゲーム。この人生ゲームは悪魔の人生を進めるゲーム
下級悪魔から始め、中級、上級、最上級と出世していって、最終的に魔王となればクリアとなる。実際の冥界はそう易々と出世は出来ないが、冥界でも人間界同様ポピュラーな遊びらしい。
「しかし、勝負は五日後か。すぐだね」
人生ゲームの駒を進めながらゼノヴィアが言う。防音用の結界を張っているので聞こえてはこないが、今頃リアスと朱乃はイッセーにもうアピールをしているだろう。こっそりかけておいた回復魔術で失血だけは防いだが果たしてイッセーの理性は何処まで持つか。
そこへノックと共に一人入室してくる。イリナだった。
「わー、家に帰ってきたらリアスさんと朱乃さんが大喧嘩しているんだもん。驚いちゃったわ。あ!人生ゲーム?私も参加させて~」
修復が成されたあの教会に用事を済ませに行っていたイリナはすぐに人生ゲームに飛びついていた。
「悪魔式?わー、興味あるわ!転生天使たる私が悪魔の人生を疑似体験なんて複雑怪奇で楽しめそう!」
彼女の世界は常に新鮮な驚きに満ちているらしい。そんな楽し気なイリナの雰囲気を見ていると、くすりとアーシアが小さく笑う。
「ん?どうかしましたか、アーシア?」
「はい。楽しいなって思って」
アルトリアの問いにアーシアが答える。
「そうですね。しかしどうして急に?」
「アルトリアさん、私、今の生活大好きです。皆さんのことも大好きです」
「そう言ってもらえると私も嬉しいです、アーシア。改めてにはなりますが、ディオドラ・アスタロトとのレーティングゲーム、何も心配はありません。彼が如何なる秘策を用意しようと、イッセーは必ず勝ちます。それに私も全力でグレモリー眷属をサポートしましょう」
アルトリアが励ますとゼノヴィアもうなずく。
「そうだぞ、アーシア。それに私とアーシアは友達だ。アーシアへ危害を加える者はお前の剣となって倒してあげよう」
ゼノヴィアからも頼もしい激励が送られる。
「はい。私も全力で皆さんを癒します。そして体育祭に出て、イッセーさんと二人三脚で優勝します!」
かわいらしい両手ガッツポーズを決め、満面の笑みのアーシア。そう、彼女の幸せは間違いなくココにある。ディオドラのような黒い噂の尽きない男の所ではない。
もし奴がゲームで悪事の尻尾を見せるようなことをすればすぐに駆け付けよう。ライザー戦では出来なかったが、ほぼ間違いなくクロのディオドラ相手であれば大手を振ってエクスカリバーを振るえるだろう。
人生ゲームが中盤に突入した頃、部屋の扉が開かれ、リアスたちが入室してくる。イッセーは何やら満足げな様子なので上手く場を治めつつ、役得も得たようだ。
「みんな、突然で悪いけれど」
「「「?」」」
皆を見渡すリアスにオカルト研究部一同は怪訝な面持ちだった。
「取材が入ったわ。冥界のテレビ番組に私たちが出るの。若手悪魔特集で出演よ」
「「「「……テレビ番組ィィィッッ⁉」」」」
リアスからのカミングアウトに、アルトリアを含めた驚きの叫びが兵藤家に響き渡った!
◆
私、アーシア・アルジェントはとてもびっくりしました。テレビ出演だそうです。イッセーさんとの毎日は驚きの連続です。イッセーさんのお家に住むようになって、もう数か月が過ぎました。学校にも通えるようになって、桐生さんを始め、松田さん、元浜さん、クラスの皆さんとも仲良くできました。
部長さんも朱乃さんも、アルトリアさんも木場さんも、小猫ちゃんもギャスパーくんも私にとても良くしてくれます。ゼノヴィアさんは同い年のお友達です。イリナさんともお友達になれました。イッセーさんのお父さまもお母さまもお優しくて、日本での生活は新鮮で楽しいことばかりです。夏休みには冥界にも行きました。
教会にいた頃にはできなかったことが今の生活を彩ってくれます。ディオドラさんからの求婚……とても驚きました。男性にそのようなことをされたのは初めてだったので、どうしていいか分かりませんでした。でも、イッセーさんは「そばにいていい」と言ってくれました。私にはそれだけで十分です。イッセーさんのおそばにいられるなら、もうそれだけで十分。私はあの人と笑って過ごせるだけで幸せだから。
主よ、どうか、ずっとイッセーさんと一緒にいさせてください。イッセーさんの隣にずっといさせてください。そ、それと、もうひとつだけお願いをお聞きください。も、もし、望めるのなら、次の求婚はあの人から。わがままだと思っています。でも、大好きだから少しだけ夢を見てしまいます。この夢を抱いていけるだけで、私は本当に幸せです。
主よ、どうかこれからも大好きなあの人との生活を見守ってください。
◆
翌日、グレモリー眷属にアルトリアとイリナを加えたオカルト研究部の一同は専用の魔方陣で冥界へと飛ぶ。まさかこんなに早く冥界に再びやってくるとは思いもしなかった。到着したのは都市部にある大きなビルの地下。転移用魔方陣のスペースが設けられた場所で、到着するなり待機していたスタッフたちから温かく迎え入れてもらった。
「お待ちしておりました。リアス・グレモリー様。そして、眷属の皆さま。お連れのお二方もさあ、こちらへどうぞ」
プロデューサーに連れられて、エレベーターに乗って上層階へ向かう。ビル内は人間界とあまり変わらないが魔力で動く装置や小道具があったりなど細かい差異がある。すると、廊下の先から見知った人が十人ぐらい引き連れて歩いてくる。
「サイラオーグ。貴方も来ていたのね」
やってきたのはバアル家の次期当主サイラオーグだ。貴族服を肩に大胆に羽織り、見た目に違わぬワイルドな空気を纏っている。ビル内だというのに一切隙が見当たらない。常に臨戦態勢ということだろうか?常に戦いに備えることで鍛えているのか、そうせざるを得なかったのか……
すぐ後ろに控えている金髪ポニーテールの女性はサイラオーグの『
「リアスか。そっちもインタビュー収録か」
「ええ。サイラオーグはもう終わったの?」
「これからだ。おそらくリアス達とは別のスタジオだろう。試合、見たぞ」
サイラオーグさんの一言にリアス先輩は顔を多少しかめた。圧倒的な力の差を見せつけたサイラオーグと、ソーナに下馬評を覆されたリアス。両者ともに勝ちを収めたがその差はリアスにとって苦い物だった。
「お互い、新人丸出し、素人臭さが抜けないものだな」
そういってサイラオーグは苦笑する。彼なりにリアスを励ましてくれたのか?その視線がイッセーへと向けられる。
「どんなに強大な駒があってもカタにはまれば負ける。相手は一瞬の隙を狙って全力で来るわけだからな。とりわけ神器は未知の部分が多い。何が起こり、何を起こされるかわからない。ゲームは相性も大事だ。お前らとソーナ・シトリーの戦いは俺も改めて学ばせてもらた。だが」
ポンポンっとサイラオーグがイッセーの肩を叩く。
「お前とは理屈無しのパワー勝負をしたいものだよ」
サイラオーグはそれだけ言って再び歩き出す。軽く肩を叩かれただけだったが、イッセーの顔は緊張で強張っていた。重みを、彼からの期待を感じたのだろう。果たして対決の日までにイッセーは期待に応えられるだろうか。
と、サイラオーグ達の一団が通り過ぎようとしたとき、ふと不思議な気配をアルトリアは感じた。雄々しい、それでいて何処か懐かしい雰囲気。振り返ってみるとサイラオーグの一団の最後尾、
「?どうかしたのか、アルトリア」
「いえ、何かあの少年から不思議な感覚を感じまして………」
「あれは確か、サイラオーグの『
「いえ、彼とは初対面の筈ですが……」
そんな疑問を抱えつつ、リアスたちに着いていく。リアスたちは楽屋に通され、アルトリアとイリナは先にスタジオで待つ。今回二人はあくまでも付き添いだ。兵藤家で留守番する選択肢もあったが、流石に寂しいのでついてきたのだ。幸いリアスの取り計らいで二人も見学することが出来るようにしてくれた。
スタジオで関係者と二、三言交わしていると、準備を終えたリアスたちが入ってくる。既にスタジオの席にはアナウンサーが待っていた。
「お初にお目にかかります。冥界第一放送の局アナをしているものです」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
リアスも笑顔で握手に応じた。
「早速ですが、打ち合わせを」
と、リアスとスタッフ、局アナ交えて番組の打ち合わせを始めた。スタジオには観客用の椅子も大量に用意されていた。幼馴染達の姿が観客ありのスタジオで放送されると思うと何処かおもばゆいものを感じる。
「…ぼ、ぼ、ぼ、ぼぼぼぼ、僕、帰りたいですぅぅぅぅ…!」
イッセーの背中でぷるぷると震えているギャスパー。引きこもりにテレビ出演は酷なものだ。だがギャスパーには我慢してもらわなければならない。既に試合に出ている以上、彼も立派なグレモリー眷属の一員なのだ。
「眷属悪魔の皆さまにもいくつかインタビューがいくと思いますが、あまり緊張せずに」
スタッフの方が声をかけてくれる。
「えーと、木場祐斗さんと姫島朱乃さんはいらっしゃいますか?」
「あ、僕です。僕が木場祐斗」
「私が姫島朱乃ですわ」
祐斗と朱乃が呼ばれ、二人とも手を上げる。
「お二人には質問がそこそこいくと思います。お二人とも、人気上昇中ですから」
「マジっすか!」
「ええ、木場さんは女性ファンが、姫島さんには男性ファンが増えてきているのですよ」
イッセーの驚きの声にスタッフが頷く。美男美女はいつの時代も注目の的だ。駒王学園の中でさえそうなのだから、此方でも人気が出るのは自明の理だろう。
「えっと、もう一方、兵藤一誠さんは?」
「あ、俺です」
あの二人に続いて、イッセーにも声がかかる。やはりニ天龍のネームバリューは偉大だ。しかし、スタッフは首をかしげる。
「…えっと、貴方は…」
イッセーの顔に覚えがないのか?確かにまだイッセーは悪魔になって日が浅いが、あのゲームでも顔を出していた筈。
「えっと、俺が『
イッセーがおそるおそる言うと、スタッフが手をポンとした。
「あっ!貴方が!いやー、変身した姿が印象的で素の兵藤さんがわかりませんでした」
成程。確かにあの姿と強さは印象的に映るだろう。イッセー自身もメディアに乗るのは初めてな上、ニュースなどもカッコイイ鎧姿の方を採用していたから『兵藤一誠』としてはまだまだ印象が薄いのだろう。
「お二人には別のスタジオで収録もあります。何せ、『乳龍帝』として有名になってますから」
「ち!?」
「乳龍帝ぇぇぇぇぇっ!?」
アルトリアは自分の耳を疑った。乳龍帝?なんだそのふざけた称号は!?いや確かにイッセーの乳への愛と執着は異世界の神を呼び出すほどのものだが、だが『赤龍帝』のイッセーにそんな名を付けるとは!そんなアルトリアの動揺など知らず、スタッフは喜々として続ける。
「子供に凄く人気になっているんですよ。一誠さんは子供達からは「おっぱいドラゴン」と呼ばれているそうですよ。シトリー戦でおっぱいおっぱい叫んでいたでしょう?あれが冥界の全お茶の間に流れまして。それを見た子供たちに大ヒットしているんです」
確かに子供はかっこいいドラゴンも、下ネタも大好きだからヒットするのはあり得ない事ではない。だが、だが………
「ち、乳、龍帝、ウーン……」グラッ
「ちょ、ちょっとアルトリアさん!?すみません、一旦失礼します!」
余りのショックに意識が飛びかけたアルトリアを隣にいたイリナが支える。このままではマズいと思ったイリナはスタッフに一声かけ、スタジオからアルトリアを連れて出ていった。
「大丈夫?アルトリアさん」
「え、えぇ。少しばかり衝撃を受けただけです……」
イリナに背中をさすられながら、アルトリアは飛びかけた意識を戻す。まさか、まさか、乳龍帝などという称号を得ようとは。今までもおっぱいの力で困難を打開してきたことを考えれば分からなくもないが、これは受け入れるのにかなりの時間がかかりそうだ。
「乳龍帝かぁ。私たちの幼馴染、なんだか凄いことになっちゃったわね」
「そうですねッ!アレは……」
顔を上げたアルトリアの目線の先に、見覚えのある一団が映る。格調高い貴族服を纏い、後ろの眷属たちにローブを被せ顔を隠す、糸目の優男。
「ディオドラ・アスタロト殿!」
「おや、これはペンドラゴン卿。何故この場所へ?それにそちらはあの時の転生天使さんですか。名前は確か……」
「紫藤イリナです。ディオドラさんも取材ですか?」
「えぇ、若手悪魔の特集を組むという事で。お二人はもしかするとリアスさんの付き添いですか?」
「えぇ、まぁ」
覚られない程度に警戒を見せる。ディオドラはほぼ間違いなく『禍の団』と通じている。流石に今仕掛けてくることはないだろうが、此処で下手に警戒されてはディオドラの身辺を洗っていることを感づかれてしまうだろう。
「あ、あの!」
「ん?どうかしましたか?」
特に話す事は無いとこの場を去ろうとしたディオドラをイリナが引き留める。しかしそこから先の言葉が出てこない。
「か、肩にゴミが付いてます、よ」
「?おや、これは失礼。では」
肩をポンポンと払い、そのままディオドラは眷属たちと共に去っていった。
「イリナ………」
「……分かってるわ。何年も前に行方不明になって信徒が悪魔になってるなんて起きた事は一つだって。アーシアみたいなことは稀だって分かってる。でもッ!」
「分かっています、分かっていますとも。ですが今は堪えてください。いずれ話す機会は訪れます。私からサーゼクス様とアジュカ様に伝えておきましょう」
「ッ、ありがとう。アルトリアさん……」
先ほどとは逆にイリナの背中をアルトリアが擦る。彼女も辛いだろう、今度一緒にイッセーのアルバムを見ながら思い出話をしよう。そう考えながら過ごしていると撮影を終わらせたらしいリアスたちがやってくる。
「終わったわ。アルトリア、イリナさん」
「お疲れ様です。すみません、途中で抜け出してしまい……」
「いいのよ。赤龍帝にあんな異名が付いていたなんて、真面目な貴方からすれば気絶しかねないのは分かってるわ。ね?イッセー?」
「は、ハイ……」
今までの行動に後悔はないとはいえ、幼馴染が気絶しかけたとあっては流石にイッセーも気まずそうだ。そこで思い出したようにアーシアが尋ねる。
「そういえばイッセーさん、途中で別のスタジオに移動してましたけど、何を取っていたのですか?」
「内緒だよ。スタッフの人にも本放送まではできるだけ身内にも教えないでくれっていわれたからな」
「なら、放送を楽しみにしています」
「あ、アハハハ…… (アルトリアがまた気絶しそう………) 」
こうして多少のトラブルはあったものの、テレビ撮影は無事終了した。余談だが、後日テレビ局から別撮りした映像がイッセーの下に届いたが、中身を確認したイッセーはリアスやアルトリアたちにどう切り出すか悩むことになったのであった。
◆
「通信で悪いな、サーゼクス、ミカエル。例のグラシャラボラス家次期当主の不審死とディオドラ・アスタロトの魔力増大についてだが…」
『やはり、繋がったか。悪魔は未だ問題を抱えるばかりだ。こちらもディオドラ・アスタロトの眷属周りを洗ったが、やはり偽造の可能性が高いな』
『こちらも行方不明者を調べました。サーゼクスから頂いた情報と合わせて、何人か時期が一致する者が居ました。どうやら教会内に協力者がいるようで、近く捕らえるつもりです』
ゲームを間近に控えた夜。三大勢力の長は魔法によるホットラインを繋いでいた。
「ここまで来ると確定だな。ヴァーリと東城の忠告を信じるならば、ディオドラは………例の案、やるしかないかもな。…ったく、身内のイベントでただでさえテンション低いのによ」
『聞いているよ。グリゴリの幹部がまた一人婚姻したようだな』
『らしいですね。此方からも祝いの品を送りましょうか?』
アザゼルのぼやきに二人が茶々を入れる。
「勝手にやっとけ!どいつもこいつも焦りやがって。何よりも俺に黙って裏で他勢力の女とよろしくやっていたなんてな……。クソ、そろそろ独り身は俺だけか!」
『ふふふ、アザゼルも身を固めたらどうだ?』
「嫌だね。俺は趣味に生きる男だ。…お、女なんていくらでもいる!」
『そう言って、最近は神器に熱中して愛想を付かされかけているのでは?』
「んなわけあるか!そこまで女心を忘れてる訳ねぇだろ!」
『そうだな。そういうことにしておこう。さて、例の案、そちらを信じるぞ。アルトリアも動かそう』
『こちらも紫藤イリナを任せます』
「ああ、任せてくれ。あいつらには少々悪いことをするがな」
今回出したディオドラの『僧侶』の名前はオリジナルです。一人目は女優アーシア・アルジェントの母親、2人目は同じく女優アーシア・アルジェントの演じたキャラの名前からとりました。
因みにヴァーリ達が駒王町に来たのは、忠告の為+駒王町に住むとある妖怪が出している屋台のラーメンを食べるためです。最近TLで妖怪が出す夜鳴きそばの話が出たのでちょびっと加えて見ました。