赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 何とか週一投稿できましたが、もう少し早く投稿したかったですね。

 思った以上に残業きつかった、というか連休明けで案件めっちゃ溜まってて、マジで笑えない状況でした。また書き溜めしたいなぁ………
 感想等ありますと、大変励みになりますので、よろしくお願いします。

 という事で、第六話どうぞ!


いざ、『教会』へ

 

 パン!

 

 部室に乾いた音が木霊した。音の発生元はイッセーの頬。彼はリアスに頬を平手打ちされた。彼女の顔は険しい。

 

 

「何度言ったら分かるの?ダメなものはダメよ。あのシスターの救出は認められないわ」

 

 

 アーシアを助けられなかったイッセーは、アルトリアに連れられ学校に赴き、事の詳細をリアスへと報告した。その上でイッセーは、教会へ行くことを提案した。目的は無論アーシアを助ける事。

 しかし、リアスはその件に関して一切関わらないとした。納得できないイッセーはリアスへ無礼承知で詰め寄った。そして叩かれたわけだ。

 

 

「なら、俺だけでも行きます。あいつが言っていた。儀式ってのが気になります。堕天使が裏で何かするに決まってます。アーシアの身に危険が及ぶ可能性がありますから」

「貴方は本当にバカなの?行けば確実に殺されるわ。もう生き返ることは出来ないのよ?それがわかっているの?」

 

 

 リアスは冷静さを振る舞いながら、諭すようにイッセーへと話す。悪魔が聖なる力で死ねば、残るのは『無』。それが分からないイッセーではない。しかし、それでもイッセーは退かなかった。

 

 

「行かなければ、俺は一生後悔します!」

「貴方の行動が私や他の部員にも多大な影響を及ぼすのよ!貴方はグレモリー眷属の悪魔なの!それを自覚なさい!」

「なら、俺を眷属から外して下さい。俺個人であの教会に乗り込みます」

 

 

 眷属を外れる。それは即ち『はぐれ悪魔』となる事だ。あのバイサーやジャルダンのように討伐される可能性が高い。

 

 

「そんなことできるはずないでしょう!貴方はどうしてわかってくれないの⁉︎」

 

 

 リアスは激昂した姿を見せる。本当に迷惑ばかりかけているな、と初めて見た主の姿にイッセーは心の中で謝罪する。しかし、彼にも譲れないものがあった。

 

 

「俺はアーシア・アルジェントと友達になりました。アーシアは大切な友達です。俺は友達を見捨てられません!」

「…それはご立派ね。そういうことを面と向かって言えるのはすごい事だと思うわ。それでもこれとそれは別よ。貴方が考えている以上に悪魔と堕天使の関係は簡単じゃないの。何百年、何千年と睨み合ってきたのよ。隙を見せれば殺されるわ。彼らは敵なのだから」

「敵を消し飛ばすのがグレモリー眷属じゃなかったんですか?」

「………」

 

 

 イッセーとリアスは睨み合う。視線はずらさない。じっと正面から見つめる。他の3人も其方に集中する。その場にいた筈の人間が居なくなった事に気づかないほど。

 

 

「あの子は元々神側の者。私達とは根底から相容れない存在なの。いくら堕天使のもとへ降ったとしても、私達悪魔と敵同士であることは変わらないわ」

「アーシアは、あの子は敵じゃないです!」

 

 

 イッセーは強く否定する。あんな誰よりも優しい子が敵なわけがない、と。

 

 

「だとしても私にとっては関係のない存在だわ。イッセー、彼女の事は忘れなさい」

「……すみません部長。でも、悲しんでる女の子を見捨てたら、俺は一生ハーレム王を名乗れません。失礼します!」

「イッセー!?」

 

 

 そう言ってイッセーは部室を飛び出した。あまりの出来事に、少しの間その場の誰も動く事が出来なかった。

 

 

「あぁ、もう!こんな事、お兄様になんて報告したら……」

「部長、そのことでお話しが………」

 

 

 それまで控えていた朱乃がリアスへと耳打ちする。その内容にリアスはまず聞き入り、そして考え、冷静そうに目を瞑った。

 

 

「祐斗、小猫。私と朱乃は用事が出来たわ。しばらく外に出るから、貴方達も自由になさい」

「「はい、部長」」

「それと祐斗、『プロモーションの許可を出すわ。兵士として、敵のキングを取ってらっしゃい』と伝えてあげて」

「分かりました、部長」

 

 

 

 

 

 

 時間は少し巻き戻る。

 部室を飛び出し、旧校舎から出たイッセー。そのまま教会に走り出そうとしたが、目の前にアルトリアが仁王立ちで立ち塞がる。あの青いバトルドレスに身を包み、剣を杖のように地面に突き立てながら。

 

 

「アルトリア……」

「行くのですね、主の下を離れても」

「あぁ」

「何故ですか?あの子にそれだけの価値があると?」

「聞いてただろ?友達だ、絶対に助け出す。例えお前に止められても、俺は行く」

「……分かりました」

 

 

 そう言ってアルトリアはガツン!と剣を再び地面に突き立てる。

 

 

「これより我が剣は汝と共にあり、 貴方の運命は私と共にある」

「?、!てことは!」

「私も共に参りましょう。彼女が己の居場所を捨てるほど追い詰められているというのなら、それを助けないのは組織人しての規範を超えて、騎士の誇りが許しません。それに彼女の境遇には私にも共感できる点がありますから」

「ありがとうアルトリア!でも、良いのか。俺について行ったらお前も……」

「私はあくまで食客。それなりの権限こそ頂いていますが、真に主従の契りを交わした訳ではありません。貴方がはぐれになるなら、アーシア・アルジェントと3人、何処かに逃避行でもしましょう」

「へっ、とんだ不良騎士だな」

 

 

 それでも今のイッセーには心強い味方だった。今の自分は弱過ぎる、彼は今日までに痛いほど思い知らされた。彼女が居てくれるなら、助けられる可能性はグッと上がるだろう。

 

 

「時間がありません、急ぎましょう。私達に転移魔法は使えませんが、足なら用意できます」

 

 

 そう言ってアルトリアは一枚の紙を取り出す。そこには白い馬が描かれていた。それを地面に置くと、アルトリアは呪文を唱え始める。

 

 

「古の大地に(うず)もれし白馬よ。深き眠りより目覚め、その威容を示せ。其は王の朋友、我が道を切り開く旋風なれば!来れ『白亜に眠りし、王の馬(ヒルフィギュア・スタリオン)』!」

 

 

 絵に描かれた白馬が地面に転写されると、そこから雄々しい駿馬がのっそりと這い出てきた。白い体躯、風に靡く鬣、流麗な印象を抱かせるその姿は正に御伽噺に出てくる白馬であった。

 

 

「すっげぇ……アルトリア、この馬は?」

「妖精馬、ヒルフィギュア・スタリオンのグイントです。本体はイギリスの地上絵に眠っていますが、分身をこうして使い魔として呼び出しています」

 

 

 そう言ってアルトリアは馬の背に魔術で鞍と馬鎧を付けると、颯爽と跨る。

 

 

「では参りましょうか、『聖女』を救いに」

「…あぁ!」

 

 

 余りにも絵になる姿に少しだけ嫉妬しながらも、アルトリアの手を取り、イッセーは背に跨った。アルトリアが促すと、グイントは嗎を挙げ走り出す。その足は次第に地面から離れ出し、すぐに何もない空中に足場を作りながら天を駆けた。

 

 

「空飛ぶ馬かぁ、益々ファンタジーだな………」

「本来なら、悪魔も翼で空が飛べるのですよ?」

「え、マジで?」

「……これが終わったら練習しましょうか」

「おう……と、見えてきた!」

 

 

 空に上がってすぐ、教会が視認できるまでに近づいた。しかし、その周辺にはなにやら透明な膜が張られている。

 

 

「あれって……」

「おそらく結界でしょう、よほど儀式を邪魔されたくないのでしょう。突破します!エムリス!」

『出番だね』

「第一段階、応用限定解除!」

 

 

 いつもの剣を展開するものとは違う掛け声と共に、ネックレスが変形する。無数のパーツが展開されるが、いつもよりも持ち手が長く伸び、刀身も長く幅広に変わる。出来上がったのはアルトリアの身長を越える『馬上槍』、アルトリアはそれを脇に抱え込む。

 

 

風よ、刺し穿て(スパイラル・エア)!!」

 

 

 アルトリアは周囲の風を巻き込みながら魔力を集める。集めた魔力を槍を中心に螺旋状に形成すると、それを纏いながら結界へ向けてランスチャージを繰り出す。一瞬の均衡ののち、結界はバリン!と音を立てて崩れ去った。そのまま2人は何ごともなく、教会近くの木立に降り立った。

 

 

「ここが、教会……」

 

 

 イッセーが体を震わせる。10年前に打ち捨てられても尚、悪魔に対する防御機構が生きているのかと思ったが、先程の結界と合わせて、気付かない内に防御機構を形成していたのだろう。街を護る騎士として、アルトリアは己の甘さを痛感した。

 

 

「どうすんだ、アルトリア」

「敵が何処に居るか分からない以上、当たりをつけるか、虱潰しに調べるしかありませんね」

「その必要はないよ」

 

 

 後ろから掛かる声、振り向くとそこには祐斗と小猫の2人がいた。

 

 

「木場!小猫ちゃん!」

「兵藤くん、アルトリアさん、加勢にきたよ。はいこれ、図面」

「助かります。ですが、どうして?」

「部長からの言外の指示さ。アーシアの事を抜きにしても、堕天使が街に蔓延り力をつける事を部長は良しとはしないみたいだね」

「…一人じゃ不安、だった」

「あ、ありがとう小猫ちゃぁぁぁん!!」

「それと伝言だよ『プロモーションの許可を出すわ。兵士として、敵のキングを取ってらっしゃい』って部長から」

「?」

 

 

 頭に?を浮かべているイッセー

 

 

「リアスがこの教会を敵として認識したという事でしょう。前に話した『兵士』の特性、他の駒へのプロモーションが可能になったという事です」

「じゃあ、部長も!」

「堕天使と事を構えるって事だね。大丈夫、僕たちは仲間だ」

 

 

 どうやら堕天使の専横に耐えかねているのは同じ様だった。早速アルトリアは地面に建物の見取り図を広げた。それは教会の図面だった。

 

 

「まあ、相手陣地に攻め込む時のセオリーだよね」

 

 

 にこやかに笑う祐斗。やはりというか、おそらくこの件のはるか前から入手していたのだろう。現にその紙質は古い物だった。

 

 

「聖堂のほかに、宿舎ですか」

「怪しいのは聖堂だろうね」

 

 

 と祐斗は、図の聖堂を指さす。

 

 

「宿舎は無視していいってことか?」

 

 

 イッセーが彼の推測を不思議に思う。

 

 

「おそらくね。この手の『はぐれ悪魔祓い』の組織は決まって聖堂に細工を施しているんだ。聖堂の地下で怪しげな儀式を行うものなんだよ」

「どうしてだ?」

 

 

 イッセーは疑問を口にする。すると祐斗は苦笑している。

 

 

「今まで敬っていた聖なる場所、そこで神を否定する行為をすることで、自己満足、神への冒涜に酔いしれるのさ。愛していたからこそ、捨てられたからこそ、憎悪の意味を込めてわざと聖堂の地下で邪悪な呪いをするんだよ」

 

 

 愛していたからこそ、信じていたからこそ、裏切り裏切られ、その感情が反転した時、人は信じていたモノに尋常ならざる憎悪を向ける。かつてのブリテンの人々や円卓の騎士たちもそのような暗い感情を持ち合わせていたのだろうか、そんな考えがアルトリアの心をよぎる。

 

 

「入口から聖堂までは目と鼻の位置。一気に行けると思う。問題は聖堂の中へ入り、地下への入口を探すことと、待ち受けているであろう刺客を倒せるかどうか」

 

 

 刺客、その言葉を聞きイッセーとアルトリアはあの男、フリード・セルゼンを思い出した。この中には彼と同じはぐれ悪魔祓いがうごめいているのだろうか。しかしこの場にそれを恐れている者はいなかった。入口を潜り、一気に聖堂まで走りぬく。この時点で堕天使は乗り込んできたことを察知するという。もはや、後戻りはできない。先に進むしかない。

 4人は勢い良く両開きの扉を開け放ち、聖堂の中へ足を踏み入れた。長椅子と祭壇。一見すると普通の聖堂だ。ロウソクの灯りと電気の灯りが内部を照らしている。周りを見渡すとその中で、普通では無い部分もあった。十字架に磔となっている聖人の彫刻。その彫刻の頭部が破壊されている。なんとも不気味な雰囲気が漂っていた。

 

 パチパチパチパチ。

 

 

 突然、聖堂内に鳴り響く拍手。柱の物陰から神父らしき人影が現れる。

 

 

「ご対面!再会だねぇ!感動だねぇ!だが無意味!」

 

 

 フリード・セルゼンは相変わらずのふざけた態度でイッセーたちをもてなす。

 

 

「俺としては二度会う悪魔は居ないってことになってんだけどさ!ほら、俺、メチャクチャ強いんで悪魔なんて初見でチョンパなわけですよ!一度会ったらその場で解体!死体にキスしてグッドバイ!それが俺の生きる道でした!でも、お前らが邪魔したから俺のスタンスがハチャメチャ街道まっしぐら!ダメだよねぇ~。俺の人生設計を邪魔しちゃダメだよねぇ~!だからさ!ムカつくわけで!死ねと思うわけよ!つーか、死ねよ!このクソ悪魔どもがよぉぉぉぉぉッッ!」

 

 

 喜怒哀楽をいっぺんに表した後、フリードは一気に激昂する。懐から以前見た拳銃と柄だけの剣を取り出した。あの後、装備を補充したのだろう。

 ブィィン、と音を立てての光刃を出現させる。

 

 

「てめぇら、アーシアたんを助けにきたんだろう?ハハハ!あんな悪魔も助けちゃうビッチな子を救うなんて悪魔さまはなんて心が広いんでしょうか!てか、悪魔に魅入られている時点であのクソシスターは死んだ方がいいよね!」

「死ぬ?どういう意味だ!アーシアはどこだ!」

「ん~、それは言えないでござんすなぁ。知りたきゃ俺を倒してから地面でも這いずり回って探しな。その方がクソ悪魔らしくてイイってもんでしょ!」

「そう易々とは話しませんか、ならば」

「力尽くで聞いてやらぁ!セイクリッド・ギアァ!」

 

 

 イッセーの叫びに呼応して、左腕に赤い籠手が装着される。アルトリアも剣を展開し、祐斗も鞘から剣を抜き放つ。みな気合十分なのを確認する為にイッセーが小猫の方へ視線を向けると驚きの光景が飛び込んできた。

 

 

 ゴゴゴ…

 

 

 小猫が、自身の何倍もあるであろう長椅子を持ち上げている。

 

 

「…潰れて」ブゥン!

 

 

 小猫はフリードへ向けて長椅子を投擲する。『戦車』らしい、なんとも豪快なパワープレイである。

 

 

「わーお!しゃらくせぇ!」

 

 

 フリードは小躍りしながら、投げ飛ばされた長椅子を光の剣で一刀両断した。両断された長椅子がガシャ!と音を立てて床へ叩き付けられる。

 

 

「そこだ」ダッ!

 

 

 祐斗が一瞬消えるほどのスピードで距離を詰める。次の瞬間、目では追えない程のスピードで二人の剣が火花を散らす。光とはいえ硬度があるのか、彼の剣で正面から斬りつけても金属音と火花が散っている。

 

 

「んー! んー!邪魔くせぇ!しゃらくせぇ!てめぇら、なんでそんなにウザイのよ!もうチョベリバ!死語でゴメンね!死後に許してちょ!」

 

 

 音もなく発射される銃弾を自慢の足で避けながら、祐斗相手への攻撃の手を休めない。攻撃をすべて避ける祐斗のスピードも凄まじいが、悪魔とまともにやり合えるフリードも相当な腕の持ち主だ。何度も祐斗の斬撃を受け止めている。

 イッセーの眼では彼の動きを捉えきれないが、フリードは捉える事が出来る様だ。改めて双方の実力の高さを実感する。遂に鍔迫り合いとなり、両者が睨み合う。

 

 

「やるね。かなりキミ強いよ」

「アハハ!あんたもやるねぇ!『騎士』か!無駄のない動きだぜ!もう最高!そうそう、これこれ。最近、こんなにいいバトルをしてなくてさぁ!ちょいと泣きが入ってたところなんですわ!んー!んー!ぶっ殺す!」

「じゃあ、僕も少しだけ本気を出そうかな」

 

 

 刹那、祐斗の剣から黒いモヤが出現する。それは剣全体を覆いだした。形容するならそれは闇、

闇の剣が現れた。闇の剣は鍔迫り合っている神父の光の剣を浸食しだした。

 

 

「喰らえ」

「な、なんだよ、こりゃ!」

 

 

 フリードも驚いている。前回の様に発生装置そのものが破壊されているのではなく、光刃そのものが侵食されているのだ。

 

 

「『光喰剣(ホーリーイレイザー)』光を食らう闇の剣さ」

「て、てめぇも神器(セイクリッド・ギア)持ちか⁉」

 

 

 祐斗もまた神器持ち(セイクリッド・ギア・ホルダー)だ。彼の神器『魔剣創造(ソード・バース)』は様々な性質を持った魔剣を自由に生成できる。それによって光を吸収する性質を持つ魔剣を生み出したのだ。

 結果フリードの光の剣は完全に食われて、光を失い、刃を形成できないほどとなった。好機とばかりにイッセーが駆け出す。

 

 

「セイクリッド・ギア!動けぇぇぇ!」

Boost!!

 

 

 イッセーの籠手の宝玉から音声が発生される。

 

 

「だからぁぁ!しゃらくさいんだってばぁ!」

 

 

 光の弾丸が込められた銃口がイッセーへ向けられる。そして音もなく光の弾丸が連射されるが、

 

 

「プロモーションッ!『戦車』ッ!」バシィン!バシィン!

 

 

 光の弾丸はイッセーの体を撃ち抜く事は叶わず、弾丸は無に還った。

 

 

「!プロモーション!てめぇ「兵士』か!?」

 

 

 酷く驚いた様子のフリード。前回は貫けた弾丸が通じない事に動揺を隠せない。

 

 

「『戦車』の特性!有り得ない防御力!」

 

 

 しかしフリードも馬鹿ではない。即座にイッセーの右拳を回避すると、拳銃に施されツマミを捻る。

 

 

「ひゃあ!ちょっくら面食らったが、おニューのピストルで逝っちまいなぁ!!喰らえ!高出力弾!!」バギュン!!

 

 

 刹那、音を立てて先程よりも眩しく、巨大な光の弾丸が発射される。これこそ堕天使陣営が最近開発した、『戦車』の防御力すら抜く高出力弾を発射できる光弾銃『シャイニング・イーグル』。この弾丸相手では強力な防御魔法も併用しない限り『戦車』でも防ぎきれないだろう。が、ここにはそんな強力な魔法が使える存在が居た。

 

 

「させません!!」

 

 

 弾丸が命中する前にアルトリアはイッセーに、防御力を上げる魔術を施す。瞬間、弾丸は強化された『戦車』の展開するパッシブ型の防御魔法陣と競り合い、次の瞬間腕を振るったイッセーに弾き飛ばされた。

 

 

「は?マジですか」

「『戦車』の特性その二!バカげた攻撃力!」

 

 

 新作すら通じないという事実に茫然自失となったフリード。その隙をイッセーは見逃さず、今度こそ『戦車』で強化された左拳を顔面に叩きこむ。相手の骨が砕ける感触に嫌なものを感じながら、イッセーは拳を振り抜いた。

 

 

「あの時はよくもアーシア殴ってくれたな。これはそのお返しだ」

 

 

 吹き飛ばされ最奥の講壇に叩き付けられるフリード。しかしすぐに、口から血をペッと床へ吐き出し、瓦礫の中からよろよろ立ち上り始めた。

 『戦車』で強化されたとはいえ、イッセーは未熟。まだまだ一撃必殺の拳を放てるほどではない。アルトリアも防御魔術との干渉を嫌って攻撃力強化を施せなかった。

 

 

「んー。…あらら、クズ悪魔に殴られたうえ、わけわからんこと言われてますよ、俺ちゃんってば……っけんな」

 

 

 神父は怒声を張り上げた。

 

 

「ふざけんなよッ‼クソがぁぁぁぁっ!何、悪魔の分際でチョーシくれてんだよぉぉぉぉぉっ!殺す!絶対にだ!ぶっ殺す!徹底的に切り刻みまくってやるよ、クソがぁぁぁ!」

 

 

 フリードは懐から別の柄だけの剣を取り出す。やはり予備分も補充していたようだ。しかし、彼の周囲を囲うように四人が立っていた。それに気づき、目で周りを見渡すフリードは苦笑いしだす。

 

 

「おーおー。これはもしかしてピンチってやつですかね?んー、俺的に悪魔に殺されるのは勘弁と思う心情なので、退散したいねぇ。悪霊退散できないのが心残りだけどよぉ、でも死ぬのは嫌だよね!」

 

 

 フリードは懐から丸い物体を取り出し、それを床に叩きつけた。刹那、眩い光が俺達の目を襲う。閃光弾だ!

 視力が回復した頃には、フリードの姿は何処にも見当たらなかった。すると、どこからか神父の声だけが聞こえてくる。

 

 

「おい。そこの雑魚悪魔……イッセーくんだっけ?俺、おまえにフォーリンラブ。絶対に殺すから。絶対だよ?雑魚悪魔くんLOVEなアルトリアちゃんも同じく。んじゃ、ばいちゃ」

 

 

 そう捨て台詞を吐き、フリードの気配は無くなった。

 

 

「逃げやがったか。変な捨て台詞まで吐きやがって」

「……とにかく、アーシアが囚われている場所を探しましょう。ユウトの推測が正しければ、講壇裏から出てきたあの隠し階段が怪しいですが」

 

 

 そう、イッセーがフリードを殴り飛ばした時、破壊された講壇の裏から隠し階段が発見されたのだ。恐らくこの先がアーシアに儀式が施されるという場所だろう。四人は互いに頷き合い、隠し階段へ足を向けた。

 

 タイムリミットまで後僅か。




設定
白亜に眠りし、王の馬(ヒルフィギュア・スタリオン)』 名:グイント

 アルトリアが所有する「使い魔(サーヴァント)」。その正体は、イギリスのアフィントン村に存在する地上絵『ヒルフィギュア』の中に眠る太古の妖精馬『アフィントンの白馬』の分霊。いつから存在していたか分からず、彼女がエムリスと出会った時には既に契約が成されていた。
 美しい白馬であり性格は基本温厚だが、無礼な者は容赦なく蹴り上げるなど「スタリオン」らしい荒々しさも備えている。

 妖精馬であるためか本能的に魔法が使える。主に空中に足場を作ったり、アルトリアの魔術を補助したりなどアルトリアの魔術の適性に則した連携を行う。その存在は、まさにアルトリアの為に用意されたと言えるだろう。

インスピレーション元はパーシヴァルの愛馬クントリーと、遊戯王の地縛神


『シャイニング・イーグル』

 堕天使陣営が近年開発した対『戦車』、対防御魔法用の光弾銃。これまでのような通常運用の他、出力を上げてより高威力の光の弾丸を発射できるようになっている。生半可な魔法的な防御を貫きうるため、天使側の真っ当な悪魔祓いも鹵獲して使うほどだが、今回の様に強力な魔術と『戦車』の合わせ技を受けると貫けない場合もある為、改良の余地があるとされる。

 因みに命名は堕天使の総督である。

 モデルは大型拳銃のデザートイーグル
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