赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

61 / 64
 ドーモ、ファブニルです。

 お盆休みで時間があるので投稿です。
 やはり自宅は良いものですね。一人暮らしは気楽でいいですが、やはり自宅の安心感は違う。

 よろしければ、今回もお気に入り登録や高評価、感想、それと『ここすき』をお願いします。

 それでは第六十一話、どうぞ!


知りたくなかった真実

 ディオドラの眷属を次々と無力化していくグレモリー眷属達。残る『騎士』が待っているであろう神殿に足を踏み入れた時、彼らの視界に見覚えのある者が現れた。

 

 

「や、おひさ~」

「フリードッ!」

 

 

 フリード・セルゼン。グレモリー眷属とも因縁浅からぬはぐれ神父だ。カレトヴルッフ強奪の一件以来姿を消していたが、ここにいるという事は彼も……

 

 

「まだ生きていたんだなって、思ったっしょ、イッセー君、アルトリアちゃん?イエスイエス。僕ちんしぶといからキッチリキッカリ生きてござんすよ?」

「何故ここに?いえ、この状況で待ち構えているという事は……」

 

 

 自分以外に援軍が来るとは聞いていない。そもそもフリードがこちら側で戦うとは思えない。となれば答えは一つ。アルトリアの言葉にフリードはニタリ、と笑う。

 

 

「お察しの通り!ロウィーナのアバズレに回収されて、アザゼルのクソ野郎にリストラ喰らった俺ちゃんを『禍の団(カオス・ブリゲード)』が拾ったのさぁっ!!ヒャハハハッハハッ!!」

「悪魔を憎むはぐれ神父が悪魔の手先になるなんてね。それでここには『騎士』二人がいる筈よ」

 

 

 吐き捨てる様に問うリアスにフリードはニタニタした顔から口をモゴモゴとさせると、ぺっと何かを吐き出した。それは、細い人間の指だった!

 

 

「俺様が食ったよ」

 

 

 食っただと…?まさか文字通りの意味か!?まさかの出来事に理解が追いついていないイッセー達だが、小猫が鼻を押さえながら目元を細める。

 

 

「…その人、人間を辞めてます」

 

 

 小猫の忌むような目線に奴はにんまりと口の端を吊り上げる。その笑みはこれまでより凶々しく、とても人間とは思えない形相だった。

 

 

 ボコッ!ぐにゅりっ!

 

 

 異様な音を立てながら、フリードの体の各所が不気味に盛り上がる!神父の服を突き破り、角と思わしきものが体から生えていく。全身が隆起していき、腕も脚も何倍も膨れ上がった。

 

 

「『禍の団(カオス・ブリゲード)』の奴ら!俺に力をくれるって何事かと思えばよぉぉおおおっ!合成獣だとよっ!クソスポンサー様々だせぇ!ふははははっははははっはっ!」

 

 

 背の片側にコウモリのような翼が生え、もう片方には巨大な腕が生えている。顔も原形をとどめないほど変質し、突き出した口には凶暴な牙が生えそろう異形のドラゴンのような頭部になっていた。合成獣、キメラ、複数の動物や魔獣を組み合わせ生み出される人工のモンスター。名前だけなら知っていたが、ここまで悍ましい物だとは思わなかった。

 様々な魔獣の特徴が統一性も合理性もなく、ぐちゃぐちゃに混ざり合っている。一体どんな思考回路をすればこんなバケモノを産み出せるか、アルトリアには理解できなかった。

 

 

「ヒャハハハハハッ!ところで知ってたかい!ディオドラ・アスタロトの趣味をさ。これが素敵にイカレてて聞くだけで胸がドキドキだぜ!」

 

 

 突然、フリードはディオドラの話をし出した。

 

 

「!あぁ、アルトリアから聞かされたよ!信心深い教会のシスターや女戦士が好みの糞野郎なんだろ!」

 

 

 イッセーの言葉にフリードは哄笑を上げる。

 

 

「ヒャハハハッ!なーんだ、もう知ってんのかよ。じゃあ答え合わせタイムといきましょうかねぇ!」

 

 

 そういってフリードは両手を広げ、まるで演劇の一シーンかのように声高々に語りだした。

 

 

「ある日、シスターとセッ〇スするのが大好きなとある悪魔の坊ちゃんは、チョー好みの美少女聖女様を見つけました。会ったその日あらエッチしたくてたまりません。でも、教会から連れ出すにはちょいと骨が折れそうと判断して、他の方法で彼女を自分のものにする作戦にしました」

 

「聖女様はとてもとてもおやさしい娘さんです。神器に詳しい者から『あの聖女さまは悪魔をも治す神器を持っているぞ』というアドバイスをもらいました。そこに目を付けた坊ちゃんは作戦を立てました。『ケガした僕を治すところを他の聖職者に見つかれば聖女様は教会あら追放されるかも☆』と!傷痕が多少残ってもエッチできりゃバッチリOK!それがお坊ちゃんの生きる道!」

 

 

―あのとき、彼を救った事、後悔してません―

 

 

 イッセーの脳内で、笑顔でそう言ったアーシアが思い出される。アルトリアも、リアスも、全員の脳内で同じように幸せそうに日々を謳歌するアーシアの姿が浮かぶ。彼らは分かっているつもりで分かっていなかった。ディオドラの悪辣さ、下劣さを。

 

 

「なんだよ。それ。なんなんだよ、それはよ…」

 

 

 そんなイッセーのつぶやきを嘲笑うかのようにフリードはトドメとばかりに言い放つ。

 

 

「信じていた教会から追放され、神を信じられなくなって人生を狂わせられたら、簡単に僕の元に来るだろうと!ヒャハハハハ!聖女様の苦しみも坊ちゃんにとってみれば最高のスパイスなのさ!最底辺まで堕ちた所を掬いあげて、犯す!心身共に犯す!それが坊ちゃんの最高最大のお楽しみなのでした!今までもそうして教会の女を犯して自分のものにしたのです!それはこれからも変わりません!坊ちゃんの、ディオドラ・アスタロト君は教会信者の女の子を抱くのが大好きな悪魔さんなのでした!ヒャハハハッ!」

 

 

 明かされたディオドラの真実にアルトリアは眉をひそめた。予めディオドラの性癖を知っていた彼女でも、いざ聞かされたアーシア追放の真実は不愉快なものだった。

 そして、予想を超える下劣極まりない本性にグレモリー眷属の皆は黒い怒りを覚えた。イッセーなど握りしめる拳から血が垂れている。イッセーがフリードを激しく睨み、一歩前に出ようとした

その時。その肩を祐斗が掴む。

 

 

「イッセー君。気持ちはわかる。だが、君のその想いをぶつけるのはディオドラまで取っておいた方がいい」

「お前、黙ってろって言う……」

 

 

 そこまで言って、祐斗の顔を見て気づく。その瞳は怒りと憎悪に満ちてた。

 

 

「ここは僕が行く。あの汚い口を止めてこよう」

 

 

 迫力のある歩みで祐斗はイッセーの横を通り過ぎていく。イッセーの怒りが一瞬冷めてしまいそうなほど、木場の全身から放たれるオーラは攻撃的な殺意に包まれていた。

 

 

「アルトリアさん、彼をディオドラの『騎士』として扱っても構わないね」

「……いいでしょう。フリード・セルゼンを代理として認めます」

 

 

 アルトリアからの許可を得た祐斗は異形の存在と化したフリードの前に立ち、手元に一振りの聖魔剣を創り出す。

 

 

「やあやあやあ!てめぇはあのとき俺をぶった斬りやがった腐れナイトさんじゃあーりませんかぁぁぁっっ!てめぇのおかげで俺はこんな素敵で無敵なモデルチェンジをしちゃいましたよ!でもよ!だいぶ強くもなったんだぜぇぇ?ディオドラの『騎士』二人をペロリと平らげましてね!そいつらの特性も得たんですよぉぉぉぉっ!無敵超絶モンスターのフリードくんをよろしくお願いしますぜぇ、色男さんよぉぉぉぉっ!」

 

 

 木場は剣を構えると冷淡な声で一言だけ言う。

 

 

「君はもういない方がいい」

「調子くれてんじゃねぇぇぇぞぉぉぉぉっ!」

 

 

 憤怒の形相となったフリードは全身から生物的なフォルムの刃を幾重にも生やし、祐斗へ襲い掛かる。

 

 

フッ!

 

 

 祐斗が視界から消え。

 

 

バッ!

 

 

 刹那、アルトリアたちの眼前にいたモンスターのフリードは無数の肉片に切り刻まれて四散した!

 

 

「んだ、それ。強すぎんだろ…」

 

 

 頭部だけになったフリードは床に転がり、大きな目をひくつかせていた。今の一合、フリードが攻撃の姿勢を見せた途端に勝負は一瞬で決した。神速で踏み込んだ祐斗は真っ先に首を断ち、そのまま流れるようにフリードの肉体を切り刻んだのだ。

 

 

「…ひひひ。ま、お前らじゃ、ディオドラの計画も裏にいる奴らも倒せないさ。何よりも神滅具所持者の恐ろしさをまだ知らねぇんだからよ…。ひゃはは」ズンッ!

 

 

 頭部だけで笑っていたフリードに祐斗は容赦なく剣を突き立て、絶命させた。そのまま炎の聖魔剣で首を焼き尽くすと、飛び散ったフリードのカソックで剣の汚れを拭きとった。

 

 

「続きは地獄の死神相手に吼えるといい」

 

 

 これまで幾度もグレモリー眷属とアルトリアの前に立ちはだかったはぐれ神父フリード、その最期がここまであっけないとは。一瞬だったせいか、そこまで胸がすくような爽快さは感じなかった。同様にフリードへの憎しみも不自然なほど感じなかったが。あそこまでアーシアの優しさを侮辱されたというのに………

 

 

「行こう、皆!」

 

 

 振り返った祐斗の言葉に一同はうなずき合い、ディオドラの待つ神殿の奥へ走り出した。

 

 

「(待っていてください、アーシア)」

 

 

 

 

 イッセーたちがディオドラの仕掛けたゲームを攻略している頃、アザゼルはレーティングゲームのバトルフィールドで旧魔王派の悪魔を片付けていた。既に敵の陣容は崩れている。残りは部下達だけで対処できると判断したアザゼルは、とある場所へ向かっていた。

 普段から懐に入れているファヴニールを宿した宝玉、それが何処かへと反応を示している。オーディンの力で部下と共にこちらへ転送してきてから、ずっと輝き続けているそれに従って向かうと、岩肌に腰かける一つの人影の前に降り立った。

 腰まである黒髪の小柄な少女。黒いワンピースを身に着け、細い四肢を覗かせている。少女は端整な顔付きだが、目線をフィールド中央に並ぶいくつもの神殿の方へ向けている。

 

 

「お前自身が出張ってくるとはな」

 

 

 少女はアザゼルの声に反応し、そちらへ顔を向けて薄く笑う。

 

 

「アザゼル。久しい」

「以前は老人の姿だったか?今度は美少女様の姿とは恐れ入るぜ。何を考えている?オーフィス」

 

 

 そう、彼女こそが『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィス。『禍の団(カオス・ブリゲード)』のトップ!

 アザゼルには分かる。以前会った時は長い髭を生やした老人の姿だったが、この少女から漂う不気味で言いようのないオーラはオーフィスのものだと。彼、彼女はいくらでも姿を変えられる。神出鬼没、滅多に人前に姿を現さないオーフィスが現れたという事実にアザゼルは今回の作戦が彼等にとって重要な意味を持つのではないかと、警戒レベルを引き上げた。

 

 

「 (…イッセー、リアス、アルトリア、あいつらを向かわせたのはマズかったかもな)」

「見学。ただ、それだけ」

「高みの見物ね…。それにしてもボスがひょっこり現れるなんてな。ここでお前を倒せば世界は平和か?」

 

 

 アザゼルは苦笑しながら光の槍の矛先を突き付けるが、オーフィスは首を横に振った。

 

 

「無理。アザゼルでは我を倒せない」

 

 

 ハッキリとした物言い。しかしアザゼルには分かっていた。自分ではコイツには勝てない。それでも、倒せば『禍の団(カオス・ブリゲード)』に大打撃をあたえられるのになぁ、と考えずにはいられないアザゼルだった。

 

 

「では、我らでならどうだろうか?」

 

 

ヒュン。

バサッ。

 

 

 空から舞い降りてきたのは巨大なドラゴンとチャイナ服を着た少女。

 

 

「タンニーン!哪吒太子!」

 

 

 やって来たのは元龍王の最上級悪魔タンニーンと須弥山の切札哪吒太子だ。彼らもまたゲームフィールドの旧魔王派一掃作戦に参加していたのだが、一仕事終えてこちらに向かってきたようだ。哪吒太子が火尖鎗をオーフィスへ向け、タンニーンが大きな眼でオーフィスを激しく睨む。

 

 

「対象 確認。『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィス。警戒レベル 最大」

「せっかく若手悪魔が未来をかけて戦場に赴いているというのにな。貴様が茶々を入れるというのが気に入らん!あれほど、世界に興味を示さなかった貴様が今頃テロリストの親玉だと!?何が貴様をそうさせたというのだ!」

 

 

 そう、オーフィスは世界最強の力を持つにも拘わらず、それを振るう事無く表舞台に姿を出す事も滅多になかった。アザゼルもタンニーンの意見にうなずき、さらに問いだす。

 

 

「暇つぶしなんて今時流行らない理由は止めてくれよな。お前の行為ですでに被害が各地で出てるんだ」

 

 

 そう、オーフィスがトップに立ち、その力を様々な危険分子に貸し与えた結果、各勢力に被害をもたらしている。死傷者も日に増え、無視できないレベルまで上がっている。何が彼女を突き動かし、テロリストの集団の上に立たせたのか、アザゼルにはそれだけがわからなかった。今まで世界の動きを静観していた最強の存在が何故今になって動き出したのか?そのオーフィスの答えは予想外の物だった。

 

 

「静寂な世界」

 

 

 

 ………一瞬、何を言ったか理解できなかった。

 

 

「は?」

 

 

 再び問い返す。するとオーフィスは真っ直ぐとこちらを見つめて言った。

 

 

「故郷である次元の狭間に戻り、静寂を得たい。ただそれだけ」

「「「っ!」」」

 

 

 次元の狭間。それは人間界と冥界、天界などに存在する次元の壁のことを指す。世界と世界を分け隔てる境界。そこは何も無い「無の世界」と言われており、オーフィスはそこから生まれたらしい。

 

 

「困惑 ホームシック?」

「…普通なら笑ってやるところだが、次元の狭間ときたか。あそこには確か」

 

 

 アザゼルの言葉にオーフィスはうなずいた。

 

 

「そう、グレートレッドがいる」

 

 

 次元の狭間は現在、あの龍神が支配している。オーフィスはそこから追い出された身だ。つまりオーフィスはグレートレッドを追い出すという条件で『禍の団』と取引をしたのだろう。そこまで考えたアザゼルの脳裏にひとつの可能性が過ぎる。

 

 

「(そうか、ヴァーリ。お前の目的は!) 」

 

 

 アザゼルの思考回路が結論を弾き出そうとしたとき、オーフィスの横に魔方陣が出現し、何者かが転移してくる。そこに現れたのは貴族服を着た一人の男、あの映像に出てきた男だ。それが一礼し、不敵に笑った。

 

 

「お初にお目にかかる。俺は真のアスモデウスの血を引く者。クルゼレイ・アスモデウス。『禍の団(カオス・ブリゲード)』真なる魔王派として、堕天使の総督である貴殿に決闘を申し込む」

 

 

 まさかこのテロの首謀者の一人が態々やってくるとは。アザゼルは頭をポリポリとかきながら、つぶやく。

 

 

「…ハハハ、こいつはまた。旧魔王派のアスモデウスが出てきたか」

 

 

 その言葉にクルゼレイは全身から魔のオーラを迸らせた。色がどす黒い、オーフィスの力の影響を受けているのは明らかだ。

 

 

「旧ではない!真なる魔王の血族だ!カテレア・レヴィアタンの敵討ちをさせてもらうッ!」

 

 

 その口ぶりからカテレアと男女の仲であった事を察したアザゼル。やれやれ、と思いつつ首謀者の一人を処理できるこの状況を逃す手はないとこの申し出を受けることにした。

 

 

「いいぜ。タンニーン、哪吒太子、お前らはどうする?」

「サシの勝負に手を出すほど無粋ではない。オーフィスの監視でもさせてもらおうか」

「同じく。アザゼル総督、貴方なら勝てる」

「頼む。さて、混沌としてきたが、俺の教え子共は無事にディオドラのもとにたどり着いている頃かな」

 

 

 俺がふいに口にしたことだが、オーフィスはそれを聞き、首を横に振る。

 

 

「ディオドラ・アスタロトにも我の蛇を渡した。あれを飲めば力が増大する。倒すのは容易ではない」

「ハハハハハハハハハハハハッ!」

 

 

 アザゼルはオーフィスの言葉に爆笑した。分かっていない、このご長寿ドラゴンは物事が分かっていない。

 

 

「なぜ、笑う?」

 

 

 怪訝に首をかしげるオーフィスにアザゼルは告げた。

 

 

「蛇か。そりゃ、けっこうだ。だが、残念なことにそれじゃ無理だな」

「なぜ?我が蛇、飲めばたちまち強大な力を得られる」

「それでも無理だ。先日のゲームじゃ、ルール上、力を完全に発揮できなかったがな」

 

 

 何せ堕天使のトップがプログラムを組み、元龍王を始めとした強者たちが鍛え上げたのだ。イッセーに至っては元とはいえ龍王が追いかけまわしたのだ。普通は死ぬ、にも拘わらずイッセーは禁手に至った。それがどれだけ凄いことか分かっていないと、アザゼルは内心胸を張っていた。

 アザゼルはファヴニールの宝玉を取り出し、人工神器の短剣にセットした。

 

 

「さて、ファヴニール。付き合ってもらうぜ。相手はクルゼレイ・アスモデウス!いくぜ、禁手化ッッ!」

 

 

 次の瞬間、アザゼルは黄金の全身鎧に身を包み、二又の光の槍を構える。

 

 

「(イッセー、お前たちを制限するものはどこにも無い。暴れて見せろッ!) 」

 

 

 と、アザゼルが飛び掛かろうとした瞬間、乱入するように転移用魔法陣が現れる。その色は紅。この魔法陣を使うのは冥界を支配する紅髪の魔王。

 

 

「サーゼクス、どうして出てきた?」

 

 

 魔法陣から現れた魔王サーゼクス・ルシファーはアザゼルの問いに目を細める。

 

 

「今回結果的に妹を我々大人の政治に巻き込んでしまった。私も前へ出てこなければな。いつもアザゼルばかりに任せては悪いと感じていた。クルゼレイを説得したい。これぐらいしなければ妹に顔向けできそうにないんでね」

「…お人好しめ。無駄になるぞ?」

「それでも現悪魔の王として直接訊きたかった」

 

 

 アザゼルは構えていた槍を一度引く。サーゼクスを視認した途端、クルゼレイの表情が憤怒と化す。

 

 

「サーゼクス!忌々しき偽りの存在ッ!直接現れてくれるとはッ!貴様が、貴様らさえいなければ、我々は…ッ!」

 

 

 サーゼクスの想いとは裏腹にクルゼレイは憎しみと忌みの目線を向ける。彼等にとってサーゼクス達現魔王は自分たちの座るべき椅子を奪った怨敵でしかない。

 

 

「クルゼレイ。あのような返事をした後で言うのも難だが、矛を下げてはくれないだろうか?今なら話し合いの道も用意できる。前魔王の血筋を表舞台から遠ざけ、冥界の辺境に追いやったこと、いまだに私は『他の道もあったのでは?』と思ってならない。前魔王子孫の幹部たちと会談の席を設けたい。何よりも貴殿とは現魔王のアスモデウスであるファルビウムとも話してほしいと考えている」

 

 

 サーゼクスの言葉は真摯だ。それゆえ、クルゼレイの感情を逆撫でる。

 

 

「ふざけないでもらおう!堕天使どころか、天使、神仏とも通じ、汚れ切った貴様に悪魔を語る資格などないのだ!それどころか、俺に偽物と話せというのか!?大概にしろッ!」

 

 

 その言葉に哪吒太子が疑問を見せる。

 

 

「不可解 『禍の団』は多勢力の集まり。人の事 言えない」

 

 

 その言葉にクルゼレイは口の端を吊り上げる。

 

 

「手を取り合っているわけではない。利用しているのだ。忌まわしい天使と堕天使は我々悪魔が利用するだけの存在でしかない。相互理解?和平?悪魔以外の存在はいずれ滅ぼすべきなのだ!それをなぜわからない!?悪魔こそが!否!我々、魔王こそが全世界の王であるべきなのだよ!オーフィスの力を利用することで俺達は世界を滅ぼし、新たな世界を創り出す!そのためには貴様ら偽りの魔王共が邪魔なのだ!」

 

 

 その言葉にタンニーンも哪吒太子も嘆息する。典型的な至上主義者の発想だ。既に種として悪魔の存在自体が危ういにも拘わらず、現実を直視しないままに栄光だけを求め続けている。

 

 

「サーゼクス殿。外野から申し訳ないが、こやつを説得するのは不可能だ。思想の根本が違いすぎる」

 

 

 タンニーンの言葉にサーゼクスは寂し気な目でつぶやいた。

 

 

「クルゼレイ。私は悪魔という種を守りたいだけだ。民を守らなければ、種を繁栄しない。甘いと言われてもいい。私は未来ある子供たちを導く。今の冥界に戦争は必要ないのだ」

「甘いッ!何よりも稚拙な理由だッ!それが悪魔の本懐だと思っているのか!?悪魔は人間の魂を奪い、地獄へ誘い、そして天使と神を滅ぼす為の存在だッ!もはや、話し合いは不要!サーゼクスよ!偽りと偽善の王よッ!ルシファーとは!魔王とは!全てを滅する存在だっ!滅びの力を持っていながら、何故横の堕天使に振る舞わない!?何故後ろの仏に振るわない!?やはり、貴様は魔王を名乗る資格などないッ!この真なる魔王であるクルゼレイ・アスモデウスがお前を滅ぼしてくれるッ!」

 

 

 それが現魔王と旧魔王の子孫、両者の最後の話し合いだった。サーゼクスはオーフィスにも語り掛ける。

 

 

「…オーフィス。貴殿との交渉も無駄なのだろうか?」

「我の蛇を飲み、誓いを立てるなら。もうひとつ、冥界周囲に存在する次元の狭間の所有権、それ、すべてもらう」

 

 

 即ち服従と冥界の閉鎖。冥界を背負う魔王がそれに安易に応じるわけにはいかないだろう。サーゼクスは空を仰ぎ瞑目する。次に目を開けた時、その瞳には背筋が凍るほど冷たいものが映りこんでいた。

 それを確認したクルゼレイは距離を取り、両手に巨大な魔力の塊を創り出していく。

 

 

「そうだ!それでいい!そのほうがわかりやすいのだよ、サーゼクスッ!」

 

 

 クルゼレイは最初からこうなることを望んでいた。現魔王との対決を。そしてそれはサーゼクスにも分かっていた。仕方ないと、サーゼクスは右手を突き出し、手のひらを上にかざした。

 

 そこに魔力が圧縮していく。サーゼクスの魔力が徐々に異様なオーラを放ち始める。それは滅びの魔力、リアスとは質も量も比べ物にならないほどの。サーゼクスは強い口調で言う。

 

 

「クルゼレイ、私は魔王として今の冥界に敵対する者を排除する」

「貴様が!魔王を語るなッ!」

 

 

 クルゼレイが巨大な魔力を両手から掃射する。サーゼクスは動じず、手のひらに生まれた魔力を無数の小さな球体に変えて、前方に撃ちだした。

 

 

ギュパ!ギュゥゥゥンッ!

 

 

 クルゼレイの攻撃はサーゼクスの魔力に触れた途端、削りとられたように消滅していく。サーゼクスの撃ちだした小さな魔力の球体は意思をもつかのように宙を縦横無尽に動き回り、クルゼレイの攻撃を打ち消していった。逆にサーゼクスの攻撃を防ぎきれないクルゼレイ。その口内へ滅びの球体がひとつだけ入り込む。

 

 

ドウッ!

 

 

 クルゼレイの腹部が一度だけ膨れ上がった。それが収まると同時にクルゼレイの魔力が減少していく。今の攻撃、サーゼクスはクルゼレイの体内にある『蛇』のみを消し去ったのだ。サーゼクスがぼそりと呟く。

 

 

「『滅殺の魔弾(ルイン・ザ・エクステインクト)』。腹に入っていたオーフィスの『蛇』を消滅させてもらった。これで絶大な力を振るえないだろう」

 

 

 パワーアップの源である蛇を消されたことで、先ほどまで余裕の表情を見せていたクルゼレイに明らかな焦りの色が見えてくる。

 サーゼクスが魔王に選ばれた理由の一つ、それは圧倒的なまでの滅びの魔力にある。触れたものを全て消す、塵芥すら残さない絶対的な滅び。それを溢れさせず、巨大にもさせず、最小のサイズでとどめ、それを複数同時に手足のように操る。緻密なコントロールと並外れた才覚が必要な技術、それをサーゼクスは有している。

 

 

「おのれ!貴様といい!ヴァーリといい、なぜこうも『ルシファー』を名乗る者は恵まれた力持っていながら、我々と相容れないッ!?」

 

 

 クルゼレイは毒づきながらも再び両手に魔力を放出しようとした。

 

 

 ギュパンッ!

 

 

 が、球体のひとつがクルゼレイはの腹部に触れ、そこを丸ごと削り取った。滅びの魔力は小さくとも威力は十分だった。触れた瞬間、周囲のものを根こそぎ消していく。

 

 

「…な、なぜ…本物が偽物に負けねばならない…?」

 

 

 口から血を吐き出しながら、クルゼレイは無念の血涙を流す。サーゼクスは瞑目し、手を横にゆっくりと薙ぐ。その瞬間、クルゼレイは宙を無数に飛び回る滅びの球体にその体を全て打ち消されていった。

 

 

「クルゼレイ………」

「驚愕。これが魔王 サーゼクス・ルシファー」

「奴の実力は分かっていたつもりだが、ここまでとはな」

 

 

 その様子を見届けていたタンニーンと哪吒太子は感嘆の声を挙げる。オーフィスはもはや興味はないとばかりに神殿の方へと視線を戻していた。




 この辺りは原作通り、生かしておく価値が自分には感じられなかった。フリード戦期待してた人は本当に申し訳ない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。