赤龍帝と騎士王の現し身   作:ファブニル

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 ドーモ、ファブニルです。

 今回からのお話が私が一番書きたかったお話になります。ここまで長かった……

 よろしければ、今回もお気に入り登録や高評価、感想、それと『ここすき』をお願いします。

 それでは第六十三話、どうぞ!


赤き『覇』の目覚め 青き妄執の目覚め

 一瞬何が起こったかわからなかった。ディオドラ・アスタロトの打倒と結界装置の破壊をイッセーが成し遂げ、アーシアの救出も無事完了し、後は退避するだけ。その瞬間、眩い光の中にアーシアが消えた。

 何が起きた?いや、原因は分かる。何者かがアーシアを狙って高高度から魔術による狙撃を行ったのだ。それによってアーシアは……

 

 

「遊びは終わりだ、ディオドラ」

 

 

 魔法陣から何者かが転移してくる。片目を覆うほどの長髪、軽鎧(ライト・アーマー)を身に着け、マントを羽織り此方を見下ろすその顔にアルトリアは見覚えがあった。

 

 

「…誰?」

「お初にお目にかかる、忌々しき偽りの魔王の妹よ。私の名前はシャルバ・ベルゼブブ。偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正統なる後継者だ。ディオドラ・アスタロト。この私が力を貸したというのにこのザマとは。先日のアガレスとの試合でも無断でオーフィスの蛇を使い、勝手に商人と取引を行い、挙句計画を敵に逆用された。貴公はあまりに愚行がすぎる」

 

 

 シャルバ・ベルゼブブ、このテロの主犯の一人!この男がアーシアを!思わぬ闖入者に、現ベルゼブブの血族ディオドラ・アスタロトが闖入者たる旧ベルゼブブの末裔シャルバ・ベルゼブブに懇願する様な顔を浮かべる。

 

 

「シャ、シャルバ!た、助けてくれ…。」

 

 

 ビッ!

 

 

 シャルバが手から放射した光の一撃がディオドラの胸を容赦なく貫いた。

 

 

「哀れな。あの娘の神器の力まで教えてやったのに、モノにもできずじまい。たかが知れているというもの」

 

 

 もはや用済みとディオドラを消し去り、嘲笑い吐き捨てる様にシャルバは言う。ディオドラは塵と化して霧散していった。あの反応は光の力によるものだ。天使、堕天使に近しい能力か?それとも『禍の団(カオス・ブリゲード)』は悪魔が天使や堕天使の力を使える研究が進んでいるのだろうか?

 となるとあの光の柱もそれによるものか……

 

 

「さて、サーゼクスの妹君。いきなりだが、貴公には死んでいただく。理由は当然。現魔王の血筋をすべて滅ぼすため」

 

 

 シャルバは冷淡な声だ。瞳も憎悪に染まっている。あの映像でも語っていたが、やはり現魔王に恨みがあるのだろう。主張と家柄、そして魔王の座を取り上げられ、冥界の端に追いやられたことを根深く恨んでいるのだ。

 

 

「グラシャラボラス、アスタロト、そして私達グレモリーを殺すというのね」

「その通りだ。不愉快極まりないのでね。私達真の血統が、貴公ら現魔王の血筋に『旧』などと言われるのが耐えられないのだよ」

 

 

 シャルバは嘆息した。

 

 

「今回の作戦はこれで終了。私達の負けだ。まさか、神滅具でも中堅クラスの『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』が神滅具の中でも上位クラスの『絶霧(ディメンション・ロスト)』に勝つとは。想定外としか言えない。まあ、今回の戦闘での敗北を含め、今後のテロの実験ケースとして有意義な成果が得られたと納得しよう。クルゼレイが死んだが問題ない。私がいればヴァーリがいなくても十分に我々は動ける。真のベルゼブブは偉大なのだからな。さて、去り際のついでだ。サーゼクスの妹よ、死んでくれたまえ」

「直接現魔王に決闘も申し込まずにその血族から殺すだなんて卑劣だわ!」

「それでいい。まずは現魔王の家族から殺す。絶望を与えなければ意味がない」

「外道ッ!何よりもアーシアを殺した罪!絶対に許さないわッ!」

 

 

 リアスは激高し、最大まで紅いオーラを全身から迸らせた!朱乃も顔を怒りに歪め、雷光を身にまとい始める。他の眷属たちも怒りと悲しみを顔に浮かべながら戦闘態勢に入る。そしてアルトリアもエクスカリバーを解放するべく力を高める。

 赦さない。アーシアはようやく過去のしがらみとケリをつけた。彼女は改めていまの幸せを噛みしめることができるようになった。それを目の前のあの悪魔が奪い去った!ただテロリストを討伐するだけではない、アーシアを奪ったシャルバへの怒りを込め、アルトリアが聖剣を振りかぶる!

 

 

「アーシア?アーシア?」

「っ!」

 

 

 イッセーがふらふらと歩きながらアーシアを呼んでいた。

 

 

「アーシア?どこに行ったんだよ?ほら帰るぞ?家に帰るんだ。父さんも母さんも待ってる。か、隠れていたら、帰れないじゃないか。ハハハ、アーシアはお茶目さんだなぁ」

 

 

 イッセーは…アーシアを探すように辺りを見渡しながら、おぼつかない足取りで歩みを進める。

 

 

「アーシア?帰ろう。もう、誰もアーシアをいじめる奴はいないんだ。ほら、帰ろう。帰って二人三脚の練習しようぜ。アーシア、なあ、どこに居るんだよ?アルトリア、お前さっきアーシアを呼んでたよな。アーシアはどこ行ったんだ?お前が魔術で帰したのか?なあ、何とか言ってくれよ」

「イッセー……アーシアは、アーシアはもう……」

 

 

 痛ましい、今のイッセーは見ていられない。アーシアが消えた事実を受け入れられず、現実逃避している。その光景を見て、小猫とギャスパーが嗚咽を漏らしていた。朱乃も顔を背け、頬に涙を伝わせている。祐斗も悲し気に瞑目している

 

 

「部長、アーシアがいないんです。やっと帰れるのに。先生が言っていた神殿の地下に隠れなきゃ。でも、アーシアがいないと…。…と、父さんと母さんがアーシアを娘だって。俺もアーシアを妹だと。アーシアも俺達の父さんと母さんを本当の親のようにって…。俺の、俺たちの大切な家族なんですよ…」

 

 

 うつろな表情でつぶやくイッセーに、リアスの怒りも冷めてしまった。

 

 

「…許さない。許さないッ!斬るっ!斬り殺してやるっ!」

「!ゼノヴィア!」

 

 

 叫びながらゼノヴィアがデュランダルとアスカロンでシャルバに斬りかかる!

 

 

「無駄だ」

 

 

 ギャンッ!

 

 

 シャルバは二振りの聖剣を光り輝く防御障壁で弾き飛ばし、ゼノヴィアの腹部へ魔力の弾を撃ち込んできた!

 

 

 ドオオンッ!

 

 

 地に落ちるゼノヴィア。剣も放り投げられ、床に突き刺さった。

 

 

「……アーシアを返せ…。…私の…友達なんだ…っ!…やさしい友達なんだ…。誰よりもやさしかったんだ…ッ!どうして…ッ!」

 

 

 ゼノヴィアは床に叩きつけられても手元から離れていった剣を求め、握ろうとする。シャルバはイッセーに向かって言った。

 

 

「下劣なる転生悪魔と汚物同然のドラゴン。まったくもって、グレモリーの姫君は趣味が悪い。そこの赤い汚物。あの娘は次元の彼方に消えていった。すでにその身も消失しているだろう」

 

「死んだ、ということだ」

 

 

 その言葉を聞いたイッセーの視線が宙に浮かぶシャルバを捉える。そのまま、じっと見つめ続ける。その姿は異様だった。無表情のまま、じっとシャルバの顔だけを見続けている。

 まるで、滅ぼすべき敵を見定めたかのように。

 

 

『リアス・グレモリー、アルトリア、いますぐこの場を離れろ。死にたくなければすぐに退去したほうがいい』

 

 

 ドライグの声。全員に聞こえるように発声したようだ。退去?どういう、いや待て。振り切れた怒り、ドラゴン、ニ天龍。まさか、まさか!

 

 

『そこの悪魔よ。シャルバといったか?』

 

『お前は』

 

 

 死人のようなおぼつかない足取りで、イッセーはシャルバの方へ向かっていく。そして、シャルバの真下に来た時、ドライグの声音はイッセーの口元から発せられた!それは心身を底冷えさせるほど、無感情の一声だった。

 

 

「『選択を間違えた』」

「!!リアス!!全員を逃がして!早く!」 

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!

 

 

 神殿が大きく揺れ、イッセーが血の様に赤いオーラを発していく!そのオーラは次第に高まり、あふれ出し、一瞬で鎧が纏われ、神殿内全域を赤い輝きで照らし始める。この肌に伝わるこのオーラの質、記憶の底から湧き上がる知識が教えてくれる。あのオーラは…『覇龍』のものだ!

 イッセーの口から呪詛のごとき呪文が発せられる。その声はイッセーだけではなく、老若男女、複数入り交じった不気味なものだった。同時に緑色の光球が辺りを漂う。

 

 

『我、目覚めるは―』

〈始まったよ〉〈始まってしまうね〉

 

 

『覇の理を神より奪いし二天龍なり―』

〈いつだって、そうでした〉〈そうじゃな、いつだってそうだった〉

 

 

『無限を嗤い、夢幻を憂う―』

〈世界が求めるのは―〉〈世界が否定するのは―〉

 

 

『我、赤き龍の覇王と成りて―』

〈いつだって、力でした〉〈いつだって、愛だった〉

 

 

《何度でもお前達は滅びを選択するのだなっ!》

 

 

 イッセーの身体が赤く輝き、変質していく。いつもの鎧よりも生物的に、さらに鋭角なフォルムが増していき、巨大な翼まで生えていった。両手両足から爪のようなものが伸び、兜からは角のようなものがいくつも形作られていく。

 

―その姿はドラゴンそのものだった。

 

 

 そして、全身の宝玉各部から、絶叫に近い声が老若男女入り乱れて発声される!

 

 

「「「「「「『汝を紅蓮の煉獄に沈めよう―』」」」」」」

 

 

juggernaut Drive(ジャガーノート・ドライブ)!!!!!!』

 

 

 ゴオオオオオオオオオオオオオッ!!!

 

 

 イッセーの周囲が弾け飛ぶ!床が、壁が、柱が、天上が、その全てが破壊されていく!赤龍の鎧が放つ、血のように赤いオーラによって!

 

 

「ぐぎゅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!《アーシアァァァッァァァァッァァァァァァァァッッ!》」

「くッ!リアス!このままでは危険です、急いで退避を!」

「イッセー……」

「リアス!!」

「部長、失礼します!」

 

 

 祐斗がリアスを抱え、他のグレモリー眷属と共にアルトリアもこの場を離れる。

 残ったイッセーは獣にも似た叫びを挙げ、その中にアーシアを呼ぶイッセーの声が混じる。その場で四つん這いになり、翼を羽ばたかせる。

 

 

 ビュッ!

 

 

 空を切る音!速い!目で捉えきれなかった!

 

 

「むん!」

 

 

 小型ドラゴンと化したイッセーがシャルバに襲い掛かる!シャルバが右腕で光を作り出し、イッセーに放とうとする。が、イッセーがシャルバの肩に食らいついて止めた。兜が変形して口蓋となり、そこに生えそろった牙で噛みついているのだ。ぶちぶちぶち、と音を立て肉が引き千切られていく。

 

 

「ぐおおおっ!」

 

 

 激痛に苦悶の表情を見せるシャルバ!鮮血が砕けた神殿の床に散っていく!ぶちんっ!と気味の悪い音を立てて、イッセーはシャルバの肩から先の肉を食いちぎって、床に降下していった。着地すると、ペッとシャルバの腕を床に吐きだした。赤い鎧は鮮血と混ざり合い、不気味な光沢を放っている。

 

 

「げごぎゅがぁぁ、ぎゅはごはぁッ!ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 

 最早人の言葉を発していない……。いままで力と勝利の証であったあの赤い鎧、それが変形したあの姿は人であったことを忘れそうになるほどの異形さを見せてきていた。

 

 

「ふざけるなっ!」

 

 

 地に降り立ち、激高したシャルバが残った片腕で光の一撃を放つ!その帯状の一撃は極大といえるほどの規模だった。

 対する赤龍帝の翼が、青く光り輝く。さながら白龍皇の翼の如く!

 

 

Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)Divid(ディバイド)!!!!

 

 

 その音声が鳴り響き光の波動が半分、さらに半分に消えていく。光の縮小は留まることを知らず、最後シャルバの攻撃はペンライトの光ほどの弱弱しいものとなり、イッセーを傷つけることは無かった。

 これは、かつてイッセーがヴァーリから奪い取った白龍皇の力!あの後滅多に使われることの無かった力をこれほどまでに使いこなすとは………

 

 

「ヴァーリの力か!おのれ!どこまでもお前は私の前に立ちふさがるというのだなッ!ヴァーリィィィィィィッ!」

 

 

 吼えるシャルバが次に放ったのは光ではなく、魔力の波動だった!大きい!絶大なオーラの波がイッセーに襲い掛かる!

 

 

 バジイィィィィィィッ!

 

 

 それをイッセーは翼の羽ばたきだけで軌道をずらして弾いた。あれほどの攻撃をたったあれだけの挙動で!しかしあのシャルバの口ぶり、ヴァーリに相当の恨みを抱いているのだろう。無理もない、あの手の至上主義者は血統の高貴さと純粋さを重視する。人間の血の入ったヴァーリもまた嫌悪の対象なのだろう。

 そんなことを考えていると、赤龍帝の兜に生まれた口が大きく開いた!口腔の中にオーラが集まっていく。刹那!

 

 

 ビィィィィィィッ!

 

 

 一瞬の選考の後、放たれた赤いレーザーが一直線に伸び、シャルバの左腕を吹き飛ばしていく!その威力は留まることを知らず、残されていた神殿の床、壁、天井に一直線の細い痕を残していった。

 

 

 ドオオオオオオオオオオオンッ!

 

 

 着弾点から爆発が巻き起こった!爆煙が上がり、粉塵を周囲に散らしていく。

 

「ぬあああああがああああああっ!」

 

 

 イッセーが咆吼をあげ、全身に莫大なオーラを漂わせると床が大きく抉れ、巨大なクレーターが生まれていった。オーラを漂わせるだけで周囲が消し飛びそうになるとは……欲しい………!?今の気持ちは?

 

 

「ば、化け物め!こ、これが『覇龍』だというのか!?冗談ではない!わ、私の力はオーフィスによって前魔王クラスにまで引き上げられているのだぞ!? データ上のブーステッド・ギアのスペックを逸脱しているではないか!」

 

 

 シャルバの顔がついに恐怖に包まれた。その瞳には怯えの色が強く、イッセーを恐怖の対象として捉えている。オカルト研究部は遠くから、呆然と見ているしかなかった。

 リアスは目を見開き、全身を震わせていた。朱乃もゼノヴィアも祐斗も小猫もギャスパーもイッセーを恐れるように見ている。アルトリアもまた震えていた。

 

 

 ──あれは、怪物だ。もう、イッセーではない………そう、躊躇う理由はない………

 

 

 イッセー、否赤龍帝は体勢を変えていく。両翼を大きく横に広げ、顔をシャルバに真っ直ぐと向けた。

 

 

 ガシャッ

 

 

 何かがスライドしていく音。見れば鎧の胸元と腹部が開き、何かの発射口が姿を現していた。

 

 

 ドゥゥゥゥゥ……

 

 

 静かな鳴動のあと、赤いオーラがその発射口に集まっていく。それはしだいに大きくなり、寒気がするほどの圧縮されたオーラがあの発射口に溜まっていっている……っ!横に広がった両翼も赤く輝き、不気味な赤い光が辺り一帯に広がっていく。

 

 

「くっ!私はこんなところで死ぬわけには!」

 

 

 シャルバが残った足で転移用魔法陣を描こうとするが──その足が動きを停める。

 

 

「……と、停めたのか!私の足を!」

 

 

 鎧の眼が赤くきらめいていた。何故、ギャスパーの神器と同じ能力が!?まさか、血を与えたときに神器の力が僅かに流れ込んでいた!?赤龍帝にはいったいどこまでの力が隠されているのか!だからこそ、王が振るうにふさわしい………

 

 

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 神殿内に幾重にも鳴り響く、赤龍帝の神器が発する音声。そして、チャージされた発射口から、膨大な量の赤いオーラが照射されていく!まずい!

 

 

「全員私の後ろへ!エムリス!第二段階応用限定解除!!」

 

 

 すかさず全員の前に立ち、エムリスを盾形態に変形させる!せめて余波だけでも避けなければ!

 

 

「真名再演!『模・いまは(イミテーション・)遙か理想の城(ロード・キャメロット)』!!」

Longinus Smasher(ロンギヌス・スマッシャー)!!!!!!!

「バ、バカな…ッ!真なる魔王の血筋である私が!ヴァーリに一泡も吹かせていないのだぞ!?ベルゼブブは半端なルシファーなぞより偉大なのだ!おのれドラゴンごときが!赤い龍め!白い龍めぇぇぇぇっ!」

 

 

 ズバァァアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!

 

 

 放射された赤い閃光にシャルバは包まれ、神殿と共に光の中へ消え去っていった。その余波は周囲にも及び、アルトリアの展開した城塞型の防御結界をも吹き飛ばさんとする!

 

 

 

 

「っ…」

 

 

 砲撃が収まった。後ろでは無傷のグレモリー眷属が辺りを見渡している。良かった、無事だ。そこで結界を解除し、外の様子に目を配らせる。離れたところに立っていた神殿は完全に崩れ去っていた。

 

 

「おおおおおおおおおおおん…」

 

 

 イッセーは瓦礫と化した神殿の上に立ち、天に向かって悲哀に包まれた咆哮を挙げている。我を失ってもアーシアを失った悲しみだけは残っている。既にシャルバ・ベルゼブブもディオドラ・アスタロトもいない。戦いは終わった、にも拘わらず基に戻る気配がない……どうすればいい。どうすればイッセーは元に戻る?そもそも戻れるのか………?

 

 

「困っているようだな?」

 

 

 第三者の声。そのとき、空間に裂け目が生まれる!人が潜れるだけの裂け目から現れたのは白龍皇のヴァーリ・ルシファー。続いて『奈落の魔竜』ロウィーナ・ヴォーティガーン、孫悟空の末裔美猴。そしてアーサー・ペンドラゴン、ルフェイ・ペンドラゴン、モルガン・ル・フェイのペンドラゴン家関係者たち。

 

 

「ヴァーリ……」

「ロウィーナ・ヴォーティガーン……」

 

 

 リアスはヴァーリの登場に驚いていた。が、すぐに攻撃の姿勢を作り出す。アルトリアも因縁浅からぬ面々の登場に警戒する。が、彼らから敵意は感じられない。

 

 

「やるつもりはない。兵藤一誠の異変を察知し、見に来ただけだ。しかし、あの姿を見るに中途半端に『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』と化したようだ。『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』がこの強固な作りのバトルフィールドで起こったのは幸いだったな。人間界でこれになっていたら、都市部とその周辺が丸ごと消える騒ぎになっていたかもしれん」

「ドラゴンの力が不安定な状態になっている。すぐにまた力の赴くままに暴れ出すぞ」

 

 

 ロウィーナの補足を聞き、リアスはヴァーリに訊く。

 

 

「…この状態、戻れるの?」

「不完全な『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』だからな。戻る場合もあれば、このまま元に戻れず命を削り続けて死に至る場合もある。どちらにしてもこの状態が長く続くのは兵藤一誠の生命を危険にさらすことになるな」

 

 

 やはり危険な状態か…。と、何かを抱えた美猴が此方へやってくる。その腕には見知った少女が抱きかかえられていた。

 

 

「ほらよ、お前らの眷属だろ、この癒しの姉ちゃん」

 

 

 美猴から渡された少女はアーシアだった!

 

 

「アーシア!」

「アーシアちゃん!」

 

 

 リアス、朱乃、皆がアーシアの元に集まる。見たところ、外傷はない。気絶しているが、息はしている!

 

 

「息がある。生きています!」

 

 

 その一声に皆、涙ぐんだ。アルトリアにもこみ上げてくるものがあった。良かった、本当に良かった……

 

 

「でも、どうして…」

 

 

 裕斗が疑問を口にすると、ルフェイが答える。

 

 

「私達がちょうどこの辺りの次元の狭間を探索していたら、その子が次元の狭間に飛んできたんです。ヴァーリさんが見覚えあるといいまして、ここまで連れてきました」

『運が良かったな。私達が偶然その場に居合わせなかったら、この少女は次元の狭間の『無』に当てられて、消失していただろう』

  

 

 なるほど、そういう理由か。何をしていたか気になるところだが、アーシアさんが無事なら一先ずは良しとしよう。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁあんっ!」

 

 

ゼノヴィアがアーシアの無事を確認し、安堵のためか、その場に座り込んでなきじゃくってしまった。ゼノヴィアの元にアーシアを降ろす。彼女はアーシアを大事そうに抱きかかえ、笑顔でうれし涙を流していた。

 

 

「あとはイッセーだけれど」

 

 

 リアスがイッセーに視線を送る。未だに『覇龍』は解除されず、哀叫を流し続けていた。

 

 

「イッセーはアーシアが死んだと思ってるからあんなことになってる。だったらアーシアの無事を伝えればあの状態を解除できるはず」

 

 

 リアスの案にヴァーリは首を横に振る。

 

 

「危険だ。死ぬぞ。ま、俺は止めはしないが」

「であれば私が行きます。彼を止めるのは私が適任でしょう」

『逆だ、愚妹の現し身。貴様が行けば赤い龍の因子がさらに活性化するぞ』

 

 

 すると、ヴァーリとロウィーナに朱乃と小猫が詰め寄る。

 

 

「頼める間柄ではないけれど、それでもお願い。彼を助けるのに手を貸して。白龍皇と呼ばれるの貴方とそのバディである貴方なら、彼の意識を取り戻す役割を担えるのではなくて?」

「…お願いです。私達も全力を尽くしますから、先輩を救うために力を…」

 

 

 二人ともイッセーのことを強く想っている。すぐに否定するかのように思えたヴァーリだったがあごに手をやり考える。

 

 

「生かしてとなると骨が折れるな。ロウィーナ、手伝ってくれ」

「あぁ、私が抑えよう。その隙に『半減』で力を抑え込めば……」

 

 

 ロウィーナにうなずくと、二人は翼を広げて空へ飛び立つ。

 

 

禁手化(バランス・ブレイク)!!」

Vanishing Dragon Balance Breaker(バニシングドラゴンバランスブレイカー)!!!!!!!

「『限定幻想転身(リミテッド・トランスファンタズム)』!!」

 

 

 瞬時に禁手に至り、白い鎧を纏うヴァーリと、身体の各所をドラゴンのような姿に変化させるロウィーナ。二人は互いに並びながらイッセーへと接敵する。

 白龍皇、奈落の魔竜、二人の助けがあるなら助かる可能性も上がるだろう。だが、それでも心の中に焦燥感が残っている。

 

 

「!やはり私も」

「いいえ、ここはヴァーリ達に任せてもらいましょう」

 

 

 イッセーの元へと向かおうとするアルトリアを、アーサーがコールブランドで遮る。

 

 

「お願いです。行かせてください!私は、私が行かなければならない。今のイッセーを救い出せるのは私だけです!そう感じるのです!」

 

 

 アルトリアは自分でも得も言われぬ衝動に突き動かされていた。心の奥底から湧き上がる気持ちが、イッセーの元へ向かえと逸らせている。

 

 

『そうか。だとすれば猶更貴様を行かせるわけにはいかん』

 

 

 そうモルガンが言い放つと、アルトリアの周りを青黒い槍が取り囲み檻を作り出した。

 

 

「!?何を!」

「ごめんなさい、アルトリアさん。でもイッセーさんを助けたいなら、どうか何もしないでください」




 ここからお盆での書き溜め内容となりますので、安定して供給できるかと思います。お楽しみにお待ちください。
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