心身の体調が良くなってきたからか、改変が薄いからか、早めに仕上げる事が出来ました。修学旅行への道中と、歴代赤龍帝との対話となります。
よろしければ、今回もお気に入り登録や高評価、感想、それと『ここすき』をお願いします。
それでは第六十七話、どうぞ!
サイラオーグとの決闘から何日か後、その日が来た。駒王学園二年生が京都へ修学旅行に向かう日だ。
場所は東京駅の新幹線ホーム。その隅でできるだけ人目を避けてイッセー達オカ研二年生のメンバーは集まっていた。居残り組ではリアスだけが見送りに来ていた。朱乃や小猫、ギャスパーなどの他の眷属達も来たがっていたが、一年生と三年生は普通授業の日。学業をおろそかにしてはならないと代表してリアスのみが駅に赴いていた。
「はい、これ人数分の認証よ」
リアスが旅に出る二年生にカードの様な物を渡す。全員手に取り、確認した。
「これが噂の?」
祐斗が訊くとリアスが頷く。
「ええ、これが、悪魔が京都旅行を楽しむときに必要な、いわゆる『フリーパス券』よ」
古都京都、その名所は寺や神社が多い。さらに言うなら京都には様々なパワースポットが存在しており、通常、悪魔が歩き回るには不都合が多い。普通なら神罰の危険がある以上悪魔は寺社仏閣には近づかない方が良い。
そこでこのフリーパス券が要る。日本神話の許可の下、京都の裏事情を牛耳る存在陰陽師や妖怪が悪魔にこれを発行してくれる。むろん、正規の理由があることが大前提だが。
「私達のときもそうだったけれど、きちんとした形式のある悪魔にならこのパスを渡してくれるの。グレモリー眷属、シトリー眷属、天界関係者、貴方達は後ろ盾があって幸せ者なのよ?」
リアスがそう説明する。それに対してイッセーが歓喜の声をあげた。
「はい!グレモリーばんざいっス!じゃあ、これをもっていれば清水寺も金閣寺、銀閣寺も余裕っと?」
「そうよ。スカートか、制服の裏ポケットとかに入れておけば問題なく名所に入れるわ。バンバン見て回ってきなさい」
「「「「はい!」」」」
返事をして皆がすぐにカードをしまい込む。すると、アーシアの携帯が鳴りだした。
「もしもし。桐生さんですか?はい。ゼノヴィアさんとイリナさんも一緒です」
電話の相手は同じクラスの桐生藍華、恐らく見当たらないからと連絡したのだろう。アーシアは電話を済ませると、リアスに一礼する。
「では、リアスお姉さま。私達、行ってまいります!」
「行ってきます」
「行ってきまーす!」
「ええ、行ってらっしゃい」
アーシアたち教会トリオがリアスに分かれの挨拶を済ませ、自分達のクラスが集まっている方へ向かう。裕斗もまた挨拶を済ませて、新幹線に乗った。残ったのはイッセーとリアスの2人のみ。するとリアスがイッセーの襟に手を伸ばした。
「襟元。きちんとなさい。京都でも駒王学園の生徒であることを忘れてはダメよ?」
「は、はい!」
イッセーの襟を直すと、リアスはイッセーの肩に顔を寄せる。
「部長?」
「……強がってみたけれど、私も朱乃と同じなのよ。あなたがいない間、寂しいわ。これでも随分マシになったのよ?一学期の頃はあなたがそばにいないと本当にダメだったけれど、いまは少しだけあなたの顔が見られなくても耐えられるようになったわ」
リアスの見せた寂しげな姿、普段から可愛がっている自分と離れるのはやっぱり寂しいのかと考えるイッセー。最近はそれ以上に、それこそ本当の家族のように他人には見られない顔や行動も普通に見せてくれる彼女の存在をイッセーは改めて意識した。イッセーはリアスの手を握りながら、笑顔で言う。
「大げさですよ。俺がいなくても小猫ちゃんやギャスパーがいるんですから」
「わかっているわ。けれど……あなたは自分の魅力に気づいてないのね。でも、そこも愛しいところだわ」
そう苦笑するリアスはイッセーに顔を近づけ――お互いの唇が重なった。
「――っ」
思考が一瞬で吹き飛び、イッセーの顔面は真っ赤になる。いきなりのキスに微動だにできなかった!
「ぶ、ぶ、部長っ」
しどろもどろなイッセーにリアスはかわいい笑顔で舌をペロリと出した。
「いってらっしゃいのキスよ。もう何を驚いているの。私とのキスなんて今更でしょう?むしろ、あなたのほうからキスしてくれてもいいのに」
「そ、そんなこと言われましても……!やっぱり、ビックリしますって!」
イッセーがそう言うと、少しだけ残念そうな笑みを残して、部長は言う。
「私はこれで十分。あなたが京都に行っても寂しさに耐えられるわ。いってらっしゃい、イッセー」
「はい!行ってきます!」
出発を前に幸せいっぱいの気持ちになりながら、新幹線へと向かうイッセー。こうして駒王学園の修学旅行は始まりを迎えたのだった。
「 (あぁ、アルトリアも居ればな。アイツも一緒に修学旅行いけたら……) 」
◆
新幹線が東京駅を出発してから十分ほど経った頃、車内はワクワク気分に満ちていた。イリナやアーシアたちは初めて乗る新幹線からの景色の興奮を隠しきれない。同じ列車でもグレモリー家所有の高級感漂うあの列車とは違う、高速鉄道という乗り物は彼女たちにとっても新鮮な体験であった。
すると、ゼノヴィアがこちらに近づき、空いている席に座った。開口一番に言う。
「イッセー、先に言っておきたいことがあるんだ」
「なんだよ、ゼノヴィアあらたまって」
「今、私はデュランダルを持っていない――丸腰だ」
まさかの告白に、イッセーはゼノヴィアへ向き直る。
「まさかの戦力ダウンか。でもなんで?」
「うん。なんでも正教会に属している錬金術師がデュランダルの攻撃的なオーラを抑える術を見つけたらしくてね。天界経由であちらに送ったんだ」
正教会。カトリック、プロテスタントに並ぶキリスト教会の派閥の一つである。カレトヴルッフ強奪事件の際は他二つとは違い、あまり協力らしいものは無かった。それが分かっているのか、ゼノヴィアは皮肉気に微笑む。
「あの正教会が協力的になってくれたとはね。おそらくミカエル様を始めセラフの方々の口添えがあったのだとは思うが、それでもあそこの錬金術師に鍛え直してもらえるのならば、これほどの機会もないと感じたんだ」
三大勢力による協力態勢の影響か、キリスト教内の派閥の溝にも変化があったようだ。ゼノヴィアは続ける。
「聖剣の能力を下げずに攻撃的なオーラだけを抑える術。実に興味深い所だからね。…まあ、持ち主である私がいまだに抑えられないという不甲斐なさが際立ったわけだが…。アルトリアと比べてこれとは、『騎士』としてなんとも情けない…。私は死んだ方がマシか…?ああ、主よ」
そう言って落ち込みだすゼノヴィア。普段は元気なの彼女だが、落ち込んだ時はすぐ自虐的思考に陥るのが難点だ。
「了解、何かあったらアスカロンを貸すよ」
「うん、すまない。またアスカロンを借りるかもしれない」
「いいよ、場合によってはお前の方が扱えるだろうしさ」
「…こういっては何だが、イッセーも剣術も鍛えておいた方がいい。折角聖剣を持ってるんだ、宝の持ち腐れは良くない」
「だよなぁ、剣術もお前か木場に相手してもらって鍛えてもらおうか」
「うん」
それだけやり取りすると、ゼノヴィアは元の席に戻っていった。それからしばらく外を眺めていると、前の席から軽く黄色い声が上がった。イッセーが視線を送ると、祐斗が前の車両から来ていた。イッセーの姿を確認するなり、歩を進めてくる。
「隣、座るよ?」
そして、隣の空席に座った。
「…どうした?」
窓枠に頬杖を突きながら、急にやってきた祐斗にイッセーは問う。
「あちらに着いた時の行動を聞きたくてね。いちおう有事の際を想定してさ」
「なるほど、別クラスだしな。お前は明日どこから行くんだ?」
「三十三間堂から行くつもり。そちらは?」
「まあ、有名な清水寺からだな。そのあと、銀閣寺と金閣寺は外せない。で、二日目は有名な名所を一気に巡って、三日目は天龍寺だな」
「天龍寺か。僕の班も三日目にそこへ行くよ。時間があえば渡月橋あたりで会えるかもね。最終日は?」
「イリナが京都タワーに登りたいって言ってたから京都駅周辺を探索しながら土産探しかな」
互いのスケジュール情報を交換し、そのあと話題は別の事柄になった。
「イッセーくんは魔王さま方のお相手をしたんだっけ?」
「ああ、冥界へのイメージが塗り替えられたイベントだったよ」
先日、イッセーはリアスと共に四大魔王の仕掛けた儀式という名のとんちきに巻き込まれた。各魔王からの試練を見事クリアしたその後、パーティーにおいてイッセーはリアスの両親からとても褒められたのだ。
因みにパーティーの飾りの垂れ幕には『お嬢さま、若さま、おめでとうございます!』と書かれていた。イッセーの外堀は完全に埋まっている。
「実は全部終わったあと、ベルゼブブさまに個人的なアドバイスをいただいたんだよ」
と、イッセーは話題を変えて祐斗に話す。
「アドバイス?」
「ああ、『兵士』の特性と赤龍帝の力、俺が使った場合の相性だな。どうにも赤龍帝の力を使うとき、俺は『女王』を扱いきれてないんだ」
『
「要するにいきなりやることが増えたんで、力の流れをうまく調整できていないと苦言を突きつけられたんだ。サイラオーグさんも少し手を合わせただけで俺の事情を知ったみたいだし。でも、確かにその通りだった。『女王』になれば力が大きく増して、速度も上がって、ドラゴンショットの威力も上がる。けれど、それらすべてをきちんと使いこなせているかというとそうでもないんだよな」
赤龍帝の力を最大限活用するには、まず『騎士』や『戦車』を使いこなせ。それがアジュカからのアドバイスの内容だった。パワー、スピード、それらの特化型に赤龍帝の力を注ぎ込む事で力の流れとやるべきことが分かり易くなる。
「そうか、それでサイラオーグさんとの戦いで『戦車』に?」
「ああ、『女王』になったときよりもわかりやすかった。力の流れが攻撃と防御のみに伝わっていくのが強く認識できた。俺、まずは各種の駒の特性で赤龍帝の力を使いこなしてみようと思う」
その言葉を聞いて祐斗は微笑む。
「サイラオーグさんとの手合わせでいきなり試すのがキミらしいね。またイッセーくんは強くなりそうだ。本当、自分の力についてよく探求しているよ」
「強大なパワーを持っていても使いこなさないとサイラオーグさんやヴァーリに勝てそうにないからさ。で、俺とサイラオーグさんの試合を見ておまえの感想は?」
イッセーの問いに祐斗はあごに手をやりながら言う。
「率直な感想としては、部長と同世代の悪魔でキミとまともなパワー勝負をやって、圧倒してくるなんて脅威としか思えなかったね。しかも素手だ。素手でキミの鎧を壊せるのは若手、いや上級悪魔のなかでもあの人だけだろうね。正直、僕の防御力はあの人の攻撃力にとってみれば紙も同然。足も速い。あれがトップスピードじゃないのはすぐにわかる。正面から打ち合って直撃をもらったら、僕だけじゃなく眷属のほぼ全員が致命傷を受けるよ」
なんの飾り気もない正直な感想、だからこそイッセーは彼に信頼を置いている。
「旅行から帰ったら対サイラオーグさんのトレーニングを改めて再開だな」
「そうだね。さて、お土産を買うときになったら連絡をくれないかな」
「どうして?」
「中身が被ったらおもしろくないと思うからね」
「あ、なるほど。わかった、最終日に連絡する」
その確認を済ませると祐斗は席を立ち、自分のクラスの車両へ戻っていった。祐斗とゼノヴィアとは話を終えた。アーシアたちは景色に夢中。松田と元浜の二人は完全に寝入っている。周りが自分に用がなさそうなのを確認すると、グッと背伸びし、瞑目した。
ここ最近、イッセーが日課にしている事がある。それが、神器の中に眠る歴代赤龍帝との対話だ。此方はアザゼルからのアドバイスであり、『
それを聞いた後、イッセーは何度も神器の中へと潜っていた。悪魔稼業を終えて、風呂に入ったあと、寝る前に必ず一度は潜り、土日も潜っていた。すべきことはただひとつ。歴代の諸先輩と話すこと。目を閉じて、ドライグに意識を任せることで神器のなかに入り込んでいく。
◆
…………。
……暗い場所を抜けていくとそこには白い空間が出現する。広くて、ただ白い空間だ。テーブル席が置かれ、そこには歴代の赤龍帝達が座り、うつろな表情でうなだれている。
『どーも。俺でーす。また来ましたー』
などと明るく挨拶したが返事はない。取り敢えずイッセーは自分と年齢や体型が似ている先輩に話しかけるが……反応なし。そこへドライグの声が上から聞こえてくる。
『そいつは歴代のなかでおまえと同い年ぐらいの赤龍帝だった。才能に恵まれていてな。「覇龍」に目覚めるのも早かった。──が、力に溺れ、油断したところを他の神滅具所有者に屠られた』
『白龍皇じゃなくてか?』
『ああ、力に溺れれば相手が白龍皇でなくとも暴れる。あちらにも同様の所有者が過去にいただろう。「覇」の力はその者を一時の間、覇王にするが……。いつの時代も覇王は栄えない。長く続かないものだ。それが世の常だな』
ドライグの声音はまるで自分自身を語るような言い方だった。こいつも過去に力に溺れきったんだろうとイッセーは考えた。
『それでも大切なものはあったんだよな?』
彼は何も言わない。が、きっとあったとイッセーは考えた。それでも力に流された。大切なものを失ったと感じたとき、力を求めた。そして『覇龍』を発動させた。あの時の自分のような経験を歴代の先輩たちも経験したんだろうとイッセーは思った。
『……我、目覚めるは覇の理を神より奪いし二天龍なり、か』
『相棒』
『全部唱えないよ。怖いし。ただ、わからないことがあるんだよな。無限ってなんだ? 夢幻もわからん。なんで嗤って、憂うんだろうか』
一節だけ唱えた覇龍発動の呪文に関して疑問を口にしていたときだった。
『無限はオーフィス。夢幻はグレートレッドを意味するの。オーフィスを嗤い、同じ赤いドラゴンであるグレートレッドを憂いたって感じかしら。この呪文、誰が作ったかまでは謎なのよね。やっぱり、神さまかしら?』
『ッ!』
第三者の声!そちらへ顔を向ければ──若い女性が立っていた。ウェーブのかかった長い金髪。スレンダーな体。スリットの入ったドレスを着た美女がそこにいた!穏やかな笑み、表情がある。他の歴代赤龍帝とは明らかに違っていた。
『エルシャか』
『はーい、ドライグ。久しぶりね』
エルシャと呼ばれた先輩赤龍帝は嘗ての相棒に随分と軽いあいさつを交わす。
『相棒、彼女はエルシャ。歴代のなかでも一、二を争うほど強かった赤龍帝だ。女性の赤龍帝では最強だな』
女性最強の赤龍帝!? そのような先輩もいらっしゃったのですか! てか、いままで見たことないぞ!どこにいたんだ?
『不思議そうな顔ね、ボク?所有者の残留思念のなかでも例外が二人いるのよ。私はその一人。ま、神器のなかでも奥に引っ込んでるから普段はここまで出てこないんだけどね』
『……ベルザードと共にもう二度と出てこないと思っていたのだが』
『そんなこと言わないでよ、ドライグ。私とベルザードは奥でひっそりあなたのことを応援していたんだから。かつての相棒同士じゃない?ま、彼はもう意識を失いつつあるけどさ……』
そう言った彼女の顔は少しだけ寂しげな表情を浮かべていた。
『ベルザードがね、いまの赤龍帝くんに興味を持ったらしくて、私を寄越したのよ』
『ちなみにベルザードさんとは?』
イッセーが訊くとドライグが答える。
『そこのエルシャと共に歴代最強の赤龍帝だ。男のな。本当に強かった。白龍皇を二度も倒した男だからな』
『二度も!?そりゃすげぇぇぇっ!』
今まで一人の赤龍帝に一人の白龍皇が対応してるとばかり考えていたイッセーだが、そんな赤龍帝も居たのかと驚く。
『それでね、彼がこれを渡してくれって』
そう言ってエルシャが取りだしたのは、鍵穴のついた箱だった。
『あなた、現ベルゼブブに「鍵」をもらったんでしょ?』
『ええ』パァ……
突然手元が光り、小さな鍵が現れた。意識したわけではなく、自然に鍵が出てきたのだ。先日の儀式の際、アジュカはイッセーの駒に細工を施していた。イッセーの成長を扉を開けることに例え、その扉を開けるための「鍵」を彼は用意していた。
『「鍵」ってそのもののことをさしていたわけじゃないけれど、手っ取り早く「鍵」も箱もそれらしいもので表現できたみたいね。この箱は赤龍帝のデリケートで、可能性に満ちた部分が入っているのよ。本来開けちゃいけないイタズラできない部分。けれどベルザードがね、あなたなら案外やれるんじゃないかって言うのよ。もちろん、『悪魔の駒』を得たあなただからこそできることだと思うけどね』
すると突然エルシャがフフフフ、と笑い出す。
『おっぱいドラゴン!乳龍帝!ベルザードと一緒に見てたわ。ここに来て、初めて私も彼も大笑いしたわよ』
と、カラカラと笑っていた。まさかの展開だ。あの番組を神器から見れるという事実にイッセーの羞恥心は一気に高まった。ドライグも上の方でオンオンと泣いている。
『恥ずかしがらないで。ドライグも落ち込んでないで、楽しみなさいよ。こんなにおもしろい赤龍帝は初めてだわ。──『覇龍』の不気味で呪われた呪文。あれを吹き飛ばすぐらい、「おっぱいドラゴンの歌」は私とベルザードの心を楽しませてくれた。私も彼もまともな最期じゃなかったから……』
やや俯いてエルシャが箱をこちらへ差しだしてくる。
『だからこそ、私も彼も決心がついた。あなたを信じてみるわ』
箱を受け取ったイッセーは鍵を鍵穴に近づけてみた。ちょうどのサイズ、ピッタリである。
『あなたと今回の白龍皇はいままでと別物ね。お互いを求めているわりに、目標が別にある。なんだろうなぁ。私たちがガチってたのが馬鹿らしくなるわ。──お開けなさい。ただし、開けたら最後まで責任を持つこと。半端はダメ。何が起こってもそれを受け止めて一歩を踏み込むの』
エルシャにそう言われながら、イッセーは鍵穴に鍵を入れ──カチリと箱を開けた。その瞬間、まばゆい光に包まれ──。
◆
……目を開けると、新幹線の中だった。今のは夢だったのかと辺りを見回す。夢でないならエルシャから貰った箱の中身が何かあるはずだと探す。
『いや、確かにおまえはエルシャから箱を受け取り、開けたぞ』
「そっか。じゃあ、箱の中身は?」
『わからん』
「おいおいおい!う、うーん!特別変わったことは体に起きてないな。神器のほうはどうだ?」
『そちらのほうも変化なしだ。……ただ、箱の中身は外に飛びだしていった気がするのだが……』
その言葉にイッセーは急いで辺りをキョロキョロと見渡すが、何も見つからない。まさか消えてしまったのかと焦りだすイッセー。あの箱の中身にたどり着く為にエルシャやまだ見ぬベルザード、アザゼルやアジュカなどに協力してもらってきた。このままでは彼らに会わせる顔がなくなってしまう。
『慌てるな。あれはおまえのものだ。必ずおまえのもとに帰ってくる。そういう因果を持っているのだからな』
ドライグの言葉に不承不承で席に着く。すると前の席から
「う、うおおおおっ!おっぱい!」
「うわっ!松田!何をする!俺の!男の乳をもんで何が楽しい!」
松田と元浜がじゃれていた。まさかの野郎の乳繰りあいに、こっちはそれどころじゃないと苛立ちを隠せないイッセー。
「はっ!俺はいったい何を……急に乳を求めだして……それで……」
「松田、おまえ、そこまでおっぱい欠乏症にかかって……。よし、今夜ホテルの部屋でエロDVD観賞会をしよう!機材はすべて荷物に積んである!」
「マジか!」
ついつイッセーもそれを聞いて前の席に身を乗り出してしまう!ホテルでエロエロDVDが見られるという展開にはイッセーも興奮を隠しきれない。
「おおっ、イッセー!それでこそだ!よーし!この日のために入手した『
「「「おおっ!」」」
イッセー、松田は元浜の言葉に大いに返事をした。消えた中身が戻ってくるなら問題ない。今はそれより目の前のDVDに熱中してしまう、そんな男の
「死ねエロ三人組!」
「新幹線のなかでまでキモい!」
「あぁ!アルトリアさんが居ればこんな奴ら直ぐ黙らせられるのに!」
その盛り上がりに車内の他の女子たちは口々に非難の声を浴びせる。こんな時のストッパーなアルトリアは急に重い病を患って参加できないとクラスメイトは先生から聞かされている。彼女等も同級生の病を憂いていたが、今はそれ以上に彼女の不在を嘆くばかりだった。
エルシャ、ベルザード。この二人が『赤龍帝』としては現時点で最強。なお約一名、あの空間に来れる番外の存在がいるのだが、それはまた後のお話。