PERSONA:MUSIC DRAMA   作:黒猫13号

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Chapter8『My art's now a masterful act for profit, charming high society.』 ActⅥ

「三善と同じ風景だ」

 と山田士狼は、切り絵の学校廊下の風景を眺めて、呟く。

 士狼はどこか落ち着きがない表情で、廊下の風景を見ていた。

「そうなの? けど、近衛君の心の中の世界だったら……」

 三善は、天井を見上げながらこう言ってきた。

 

「ミラーボールぐらいは、ありそうだと私も思った」

 と三善は誇らしげな表情で士狼達を見ていると、瀧慈宗(たきちかむね)は部活用眼鏡を上げて呆れていた。

 

「二人とも近衛くんの事、なんだと思っているんだ……」

 士狼は近衛と過ごしてきた、日々を思い返してみる。

 

 出会いは女子だと期待されて、わざわざ会いに来たが瀧を見て逃げた事から始まる。

 たまたま玄関で出会って、芥川幸恵の平手打ちで、赤く顔を染めていた。

 

 振る舞いの印象から、危険度が低そうだから誘う。

 そこから、駅広場で案内してもらい、自分にもう少し素直になりと言われた。

 

 事件を楽天的に構えてたせいで、ホルダーの用意とペルソナ使いになりたいの件は、流石に呑気過ぎると、一時期好感が下がったこともある。

 

「……祭り男?」

 これが士狼が出した答えだった。

 

「え?」

 瀧は思わず苦い顔をされた。

 

「会ったばっかりだから、まだよく分からないけど……賑やかな感じ、カラオケと一緒に行くと楽しそう」

 三善明美(みよしあけみ)は品よく笑うと、瀧は深刻そうな表情を作る。

 

「……賑やか以外で他はないのか? 例えば、聞き分けがよくて、良くも悪くも正直者とか……」

 士狼は三善と見合わせて、その視点は無かったという反応を示した。

 

「……だから、近衛くんの不安として狙われたのか」

 三善と一緒に瀧の方を不思議そうに見る。

 

「君達は、()()()()()()()()()()しか見ていないからだ」

 士狼はその指摘に答えた。

 

「あ、でも俺……怒られた事はある」

 林間学習で、事実を知った近衛と睨み合いした事があると、士狼は説明する。

 

「それだよ。君は適材適所な人材でしか、見ていなかった」

 瀧はこちらに鋭い視線を送ってきた。

「色々言いたいところはあるけど、僕らに期待されていたと思ってたんじゃないかな」

 と語り終えた時に、後ろから弓を持った天使達が瀧を囲んできた。

 

「ヴァルター!」

 士狼は指揮棒を振るい、弓を放つ前に斬りつけた。

「……いきなり!?」

 瀧がジャケットのテール部分をそよがせて、後ろを向く。

 それが引き金だったのか、一斉に天使と男女一組のダンサーが、大量に襲いかかる。

 

「いっぱい来た!」

 三善が顔をしかめると、指揮棒を抜く。

 指揮棒を構え、足元に青い炎と五線の輪が湧き上がると、指揮者のように構える。

 

「来て!」

 そして、オーケストラの開演を告げる指揮者のように振り下ろした。

「コチョウフジン!」

 ガラスが割る音をさせると、鳥の翼を彷彿させる長い振り袖の白無垢を纏った、女性型のパーピー風のペルソナが出現する。

 コチョウフジンは和傘を掲げ、舞うように回ると風を生む。

 その風で三善の黒髪を激しく揺らした。

 風は男女の団体を一掃したが、天使はあまり効いていないようだ。

 

「天使は風はあまり効果はないみたいだ、第二の攻撃来るぞ!」

 矢は天から降り注ぐと、瀧は指揮棒を振りかざすと、氷で盾を作る。

「……山田くん、氷の技を打ってくれ!」

 山田はコクリと頷くと指揮棒を回して転調(チェンジ)する。

 

「サラスヴァティ!」

 光るシャープとフラットの記号とガラスの音と共に、現れたのは、シタールを持った天女を繰り出すと、瀧は指揮棒を振り下ろした。

 天使達は一斉に消え失せ、瀧は眼鏡を光らす。

 

「ソウルダンサーは風が弱点、狂愛のクビドは氷が弱点」

 メモを取りながら瀧は言う。

 

「そっちのペルソナは治療にも優れている」

 瀧の分析は本当に助かるなと思いつつも、士狼は言う。

「瀧に負担かけないようにした。二人とも、チェンジはできないだろうし」

 淡々と士狼は語ると、瀧は頷いていると、三善が右手の指揮棒を振るい、左手を上げるとコチョウフジンは飛び上がって、行進してくる敵に風を浴びせた。

 

「……なんか数が」

 天井からも地面からも、狂愛のクビドと手袋とソウルダンサー達が大勢出現し、士狼達は囲まれた。

「多いな」

 瀧は頷く。

 

「えっそうなの?」

 初めての任務に三善はきょとんとこちらを見て、瀧を見る。

 

「ああ、ここのシャドウは、近衛くんの心の中が、生み出した防衛システム。それが三善さんの時は少なかった」

 

 士狼はなんとなく理解する。

「つまり、私達の事来て欲しくないって事?」

 瀧と三善の言葉を聞いたダイアナの声が脳内に響いた。

「正解です。ここは、コノエ様の心裡(しんり)世界。あなた達を強く拒んでいます、相当()が強いか、運命に反抗的なお方ですね」

 

 士狼は内心呆れながらダイアナに物申した。

(本当に頼む、もう少し分かりやすくできないか!?)

 敵に囲まれ二人と一緒に警戒する士狼は簡単な説明を求めた。

 

「かしこまりました。つまり──あなた方の事をとても嫌っているか、誰かの発言をとても拒絶している状態です」

 ダイアナは詩吟するかのように語り終えると、士狼は真っ先に林間学習の事を思い出した。

 

(だとしたら、俺だ!!)

 三人同時に指揮棒でペルソナに合図し、風と氷と時々仕込み刀と杖で蹴散らしていく。

 

 ダンサー達は氷が効かず、レイピアで攻撃を繰り出し、それをコチョウフジンが防ぎ、刀で薙ぐ。

 クピド達の矢は弱点が突ける瀧に集中しているので、右手でスキルを、挙手した左手で回避強化の合図を送る。

 

 瀧は剣道をやっているので、士狼よりは反射神経はいい。

 なので、幾百の矢を素早くファウストの杖を竹刀に見立てて防ぐ、だが杖は全て防ぎきれずファウストの肩にいくつか刺さった。

 瀧の苦痛に歪み声が聞こえた。

 

 だがファウストが矢を防いでいる間、コチョウフジンは番傘の刀を抜き、クビド達に一太刀を浴びせた。

 

 ファウストとサラスヴァティの冷気で作った白い息を士狼は吐く。

 辺りを見渡すと、手袋をはめた仮面がついた手型のシャドウが一体、士狼と対面する。

 

 動きがない、だったら──

 指揮棒を横に小さく振って、瀧を回復に専念した。

 その動きを見られたのか突然、手袋型のシャドウは士狼に向かってくる。

 

 ドンッと床を叩いて、鳴らされる衝撃音。

 

 その音で、士狼はびっくりした。

 

「!?」

 不意討ちだったので、思考が一瞬停止する。

 

 攻撃に気づいたのか瀧は氷柱を飛ばしてきて、シャドウを滅しようとする。

 だが、手袋型のシャドウはあまり効いておらず、瀧の方へと向いた。

 

「……なんだろう、敵の編成、ほぼ僕と相性が悪いな……」

 確かに、氷の技が三体中二体が効かない編成である。

 瀧が不利になりがちな面子を見た士狼は呟く。

 

「……まるで、瀧に嫌がらせしているみたいだ」

 その呟きに、何か気づいたのか瀧は目を見開いてきた。

 

「そうか……! 近衛くんの 苦手意識は、簡単に消えないわけか!」

 瀧は活を入れるように叫ぶ。

 沸いてくるシャドウ達を一緒に睨んで、三人は連帯しながら、連戦をくぐり抜けていった。

 

 

 オレはほとんどは、一人で家を過ごしていた。

 幼稚園の頃に幸恵と(かなめ)ちゃんに会って、学童で預けられて、似た境遇のヤツらと遊んでいた。

 

 そこで覚えたのは自分が行かなきゃ、誰も覚えて貰えないし、誰とも遊べないという事だった。

 

 幸いにもオレは馴染める才能があったらしく、親も学童も好かれる様に努力をして、居場所を勝ち取った。

 

 その努力を()()()()()になるだの、()()()()()()()()()()()だの、言いやがって。

 

 うるせえよ、オレはオレなりに楽しくやってんだ。

 なのに──

 オレは……オレは……

 なんであの時──泣いたんだ? 

 

 

「……」

 由成は意識を取り戻し、巨大な黒い靄と対面する。

「お前が……シャドウってヤツか?」

 ノイズかかり五線が書かれた帯で束縛されて、佇んでいる。

 

「おい何か喋れよ。オレの不安クン」

 黒影は何も言わないので、拗ねた口調で訊く。

 

「はあ……あいつら、ここまで来ちゃって……随分とご苦労様だな」

 ノイズ混じる気怠くアンニュイな声色を聞いた、由成は背筋を凍らせる。

 

「ほ、本当にオレの声で喋るんだな……」

 息を呑み声を震わせながら、せり上がってくる恐怖を抑え込もうとする。

 

「そうだよ。だって、おまえはおれの創造主だからサ、あんたの声で喋って、何が悪い?」

 どこか威圧的に喋ってくるので、由成は「ひいっ」と悲鳴を上げて、後退し舞台の袖に隠れる。

 

「いい加減。良い子ぶるのはやめろよ、人に話しかけるのをやめろよ」

 黒影は気怠く語ってくると、由成はぎゅっと赤いカーテンを握りしめ、体を震わせながらも反論する。

 

「だって、そうしないと、オレは誰にも覚えてくれない! つるんでくれない!」

 足が震えて歩けない。

 恐怖で肺が凍りそうだ。

 

「だからおまえは、かまちょって言われるんだよ」

 コルサコフと初めて会った時の井上が発したいじり。

 

「ウザくない! オレの優しさだ!」

 あの時と同じ様に返すと、由成をバカにするように言い放ってきた。

 

「ハハハ! そうやってふざけて誤魔化すのは、強がりなんだろ?」

「違う! オレは! 強がってない!」

 由成は首を横に振り、必死に応戦する。

 

「じゃあ幼稚園の頃、司令官だって言い聞かせてた、おれは? 一体、なんなの?」

 刹那、瀧が過去の事をよく知っているという、言葉が雷電のようにほとばしる。

 それを言われたら、否定ができない。

 由成の額から大量の汗が吹き出て、黙り込んでしまった。

 

「そう振る舞えば誰からでも嫌われない、良い子だって褒められる……けど──おれは……」

 由成は、黒影が何を言われるのかを察した。

「言うな!」

 心がひしゃげて、泣き出しそうになる。

 言わないでくれ、頼む。

 でないとオレの心が──

 

「ただの都合の良い人間なんだよ! おまえの事は誰もマジで見てくれない!!」

 シャドウの声も、泣き出しそうに叫んでいた。

 

「おまえは独りぼっちだ!」

 由成の心はここで折れて、

 床に膝と手をつくと、鼻水を垂らしながら、泣き出した。

 

「タイトルロールは決まった!」

 黒帯が外れて、解放された右腕にレイピアらしき物を出現させて握る。

 床からは騎士らしき姿をした男性の黒影と、中世のシャツとベストを纏った女性の黒影が出現した。

 

「さあ、おれとおまえで、人生(しゅじんこう)の席を賭けた決闘を初めようか!!」

 

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