PERSONA:MUSIC DRAMA   作:黒猫13号

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七月
Chapter11『DONUT HOLE AND REGRET MESSAGE.』


 ダマスク模様の青い壁。

 舞台を見下ろせる空間に照明が仄暗く照らす。

「ようこそベルベットルームへ」

 しゃがれた声が山田士狼(やまだしろう)を歓迎する。

 

「プッチーニの『ロドルフォ』は、貧しい詩人でしたが彼の愛する女性の為ならば、持ち物を売ろうとしてくれた同居人達に囲まれていました」

 ダイアナは、耳元のイヤリングを光らせる。

「イフクベ様もまた、そのような友人と恵まれてよかったですね」

 くるくると青いタロットカードはダイアナの本に吸い込まれる形で、落ちてきた。

「おめでとうございます『節制』のアルカナを得ましたね」

 楽譜の繰り返しを示す二対のラッパのタロットは、消滅していく。

 

「イフクベ様は自分を身に引くことにより、調和を保とうとした」

 ダイアナは膝元に置かれた本を閉じると、微笑みかける。

「けれども、その信念は時に不和や傲慢さをもたらす。まさに『節制』に相応しい人ですね」

 イゴールはこちらを見つめている。

「……さて、お客様に長い休息の訪れを感じます」

 目を伏せてダイアナは語り始める。

 

「その中で何やら、新たな出会いと発見を感じます」

 金眼を光らせて予言めいた事を話すと、くすりと艶っぽい笑みを浮かべて言った。

「これからのお客様のご活躍に、(わたくし)は楽しみにしていますね」

「それではご機嫌よう」

 そうイゴールが別れを告げた。

 

二〇三〇年 七月三日──

 

 昼・和室。

 

 蝉が鳴き始め、陽射しが強くなり始めた頃、流石に体育館裏で食べるには辛い季節になり始める。

 ニセアンナさんの事は、なるべく内密に行いたい。

 適切な場所はどこかと、昨日皆で相談した結果。

 三善明美(みよしあけみ)が提案した茶道部が活動している和室に決まった。

 万が一、生徒や先生にバレても、茶道部の練習や復習にと三善が答えれば、誤魔化せる。

 ただし、汚さないを条件に早速、お邪魔する事となった。

 畳の匂いが士狼の鼻腔をくすぐり、土壁は落ち着いた緑でどこか安心できる。

 

 近衛由成(このえよしなり)はゴロゴロと寝転んでくつろぎ。

 瀧慈宗(たきちかむね)と三善は背筋を真っ直ぐにして正座。

 芥川幸恵(あくたがわゆきえ)芥川要(あくたがわかなめ)は、女座りで談笑。

 伊福部武(いふくべたける)はあぐらをかいて座り。

 コルサコフ・和也(かずや)は相変わらず、距離を置いて足を伸ばして座っていた。

 そして、各々の弁当を広げて食べ始めてから数十分が経過した。

 

「そういえば、吉田さんの未練の進捗はどうだい? 山田くん」

 瀧は緑茶のペッドボトルを飲みながら、聞く。

 士狼はびくんと肩を跳ね上がらせて、箸からミートボールが弁当の中に落ちる。

 

「……伊福部の事で、すっかり忘れてた」

 こちらに見向きされない程の集中力で、タウンページを見ていた相馬光希(そうまみつき)を置いて帰ったのが、最新情報であった。

 士狼は目を伏せて、しまったと肩を落す。

「そうか。どこまで分かった?」

 瀧はこちらを向く。

「分かったのは」

 士狼は今までの成果を淡々と語り始める。

「遺書がないか見つからないから、いじめによる自殺として成立できないばっかだった」

 その言葉にコルサコフは心有り顔で、ポツリと呟く。

「……いじめによる……自殺……」

 そして力なく腕を降ろしていた。

 

「……」

 瀧は思うところがあったのか、咳払いして深呼吸をすると、コルサコフが離れなさそうな位置まで寄る。

「君のシャドウは”たまたま姿が違って生まれただけで、踏まれてしまうんだ”と言った」

 コルサコフは青い目を丸めたあと、瀧から視線を反らす。

「そして、君は今までされた事をペルソナ能力として、使えると言った」

 瀧は機械的に読み上げるようにコルサコフに詰める。

 

「征服の騎士に使った技。あれは、対象をヤケクソにさせる『バリゾーゴン』というものだ」

 近衛は制御不能に巻き散らかす、氷の嵐を思い出したのか苦虫を噛み潰したような顔を浮かべていた。

「答えれるなら答えて欲しい。君のされた事は──」

 その問いかけにコルサコフは顔を俯き硬直すると、瀧から少しだけ距離を置いた。

 

「急にどうしたの委員長サマ、まさか鴨沢(かもざわ)……」

 近衛は思い詰めた表情で瀧を見つめると、瀧はコクリと頷いた。

 鴨沢弘務(かもざわひろむ)──去年。瀧がいじめの告発の為に、ホームルームで一緒に教壇に立って、いじめについてクラスメイトに聞いた結果。

 逆に傷ついて不登校になり、前髪で目元を隠す程人目を気にするようにさせてしまった人物。

 

「……そうなんだ。あれから勉強はしているんだけど、未だに、自分はどう接していいか分からず……」

 と再びコルサコフを切れ長の双眸(そうぼう)が捉える。

 コルサコフは体を震わせて、視線は落としたままだった。

 

「……」

 緊迫した空気が流れる。

 女子達は固唾を飲んで見守る。

 伊福部は隣に置いてあるトートバッグを目に移したあと、静かに食事を進めていた。

 

「鴨沢君と僕は、何か関係あるの?」

 恐る恐るコルサコフは訊く。

「……僕はその……いじめられていた子を助けたかったあまり、逆に傷つけて不登校にさせてね」

 空気は神妙に包まれる。

 質問したコルサコフは気を取られたかのような、反応で青い瞳を向く。

 

「謝罪しようと家まで来たけど断られて、再会したけど逃げられてしまった」

 憂いを帯びた顔で語る瀧を、コルサコフも無言で見つめていた。

「その……アドバイスが欲しいんだ。鴨沢くんにどうやって話しかけれるのか?」

 続いて真剣な顔つきで瀧は結論を出すと、正座のままお辞儀をした。

 

「……はっきり……言っていい?」

 彫りが深く目鼻立ちが整った厳顔(げんがん)をコルサコフは見せた。

 

「無理だと思う」

 重々しく暗い声は瀧の表情を曇らせた。

 

「あらら、厳しいなー」

 近衛はいつもの歯を見せておどける表情で軽口を叩く。

 慰めのつもりなのか、瀧の肩を手に置いて彼を覗き込んでいた。

 

「こうやってよしりーみたいに、忘れればいいんだけど……傷つけたとなれば、かなり時間かかりそう」

 会った当初、瀧の事を終わったと言い放ち、心裡世界では苦手意識を匂わせる構成だった。

 が、今ではすっかりと、馴れ馴れしい態度を取っている近衛由成。

 いや、体格差と風貌が生み出す、威圧的な雰囲気に怯えた次の日。

 伊福部に対してもああいう風な態度を取れたので、あれが近衛の平時なのだろう。

 幼稚園の頃からの付き合いである幸恵は、彼をそう評した。

 

「オレは注意された事よりも、鴨沢を晒し上げた事の方が勝っちゃってんの」

 近衛はじとりとした目で、幸恵を見る。

「瀧君、そんな事をしてたんだ」

 三善は重苦しい表情で黙り込んでしまった要の様子を見つつ、瀧に静々と言う。

 

「噂は聞いてたが、マジだったんだな」

 伊福部は腕を組んで、瀧の落ち込む姿を眺めていた。

 

「……そうか、無理か……君は学校に来てるから……鴨沢くんもきっと……」

 正座姿で俯き、拳を握り震わせる姿は、時代劇で侍がショックを受けているシーンを観ているようだった。

 

「……僕にはルナがいるから、まだ学校に来れる」

 コルサコフは瀧にそっと近寄り「こっちを見て」と、俯く瀧にコルサコフの顔を見るように促した。

 

「これだけは忘れないで欲しい」

 瀧の普段は凛々しい顔つきから想像できない程の、(なび)き顔を見せつける。

 

「傷つけられた事は、いつまでも忘れない……」

 瀧は力が抜けて、真っ直ぐとした姿勢が歪む。

 

「……はは……」

 不安(シャドウ)として現れた事だけあって、渇いた笑いを瀧は零した。

「それと……これは僕の話だけど」

 そう言い切った途端、コルサコフの大きく青い宝石のような瞳から、大粒の涙が溢れ出てきた。

 

「君みたいな人に、会いたかったよ」

 シャドウが明かしたとはいえ、コルサコフや瀧の心中は、断片的にしか知らなかったんだと。

 山田士狼はその様子を淡々と見守っていた。

 

「えーあー、ごほん。話題を変えても、よろしいどす?」

 近衛は伊福部のトートバッグを見ながら、重々とした空気に切り込んできた。

 さながらしっとりした音楽を聞いていたら、いつの間にか、明るい曲になっていた現象である。

 

「……もう話す事はないから、近衛くんにバトンを任せよう」

 歪んだ姿勢を戻すと、げんなりとした表情で瀧は眼鏡を上げる。

 

「……よしりー、なんで京都弁になってんの?」

 幸恵は小声でツッコむ。

「じゃあ遠慮なく、伊福部……()()()()持ってきたか?」

 伊福部は頷いて、幸恵は「無視された」と呟く中、伊福部はトートバッグを輪の中心に置いた。

 

「持ってきたが、お前な……夏場にこんなモンを大量に注文すんな」

 士狼は思い出した、そういえば昨日の昼間、近衛が伊福部に例のアレを注文していた事を──

 察しがいい芥川姉妹は、その品物に対して、そわそわしだしている。

 

「そのかわり……分かってんだろうな?」

「ヘイヘイ、約束通りオレっちのオススメの店教えてやるから、楽しんでこいよ」

 伊福部は無愛想に、近衛は軽やかにやり取りする。

 クリーム色のトートバッグの存在に気づいたのか、瀧、三善、コルサコフは輪の中心に視線を向ける。

 

「何かしら?」

 三善は忘れているのか見下ろしている。

 

「……まさかな」

 瀧は何故か、しかめ面で何かを思い浮かべている様子。

 

「……?」

 コルサコフは涙をティッシュで拭くと、不思議そうにトートバッグを見ていた。

 

「出すぞ」

 伊福部の大きく武骨な手は、トートバッグの中身を取り出す。

 青い蓋の大きなパックが、お披露目された。

 それを見た瀧はまたしても崩れ落ちた。

 

 パックの中身は──

 

「ドーナツじゃないか!!」

 瀧はビシッとパックを見て叫ぶ。

 

「昨日、近衛が言ってただろ。ドーナツを作れるのかって……」

 士狼は弁当を持ちながら、大仰な反応する瀧に説明する。

「本当に作って来て学校に持ってくるとは、思わなかったよ……しかも、大量に……」

 態勢を直しながら気が抜けた表情で、瀧はパックを見続けた。

 

「俺らと家族の分で十人分だな……夏場に揚げ物は、流石の俺も熱かった」

 腕を組み、伊福部は仏頂面でコメントする中。

 女性陣と近衛は目を輝かせて、青い蓋を開けたパックを見つめる。

 

「それはそうだけど、店というのは?」

 呆気に取られてスマートフォンを向けて、パシャパシャという音を立ててはしゃいでいる、四人組を瀧は眺めて伊福部に訊く。

 

「ケーキ屋、ひばりに食わせてやりたくて」

 瀧は力なく笑うと近衛はスマートフォンを横に持ちながら、ストラップを揺らす。

 

「オレ。甘いモン好きだから、そういうの詳しいの♡」

 得意顔で近衛は返してきた。

 

「たまに、一緒にホテルのスイーツバイキングに行くよね」

 要はふわふわと柔らかい雰囲気で、話してくる。

「そうそう、だから福ちゃん……いや、これをお出しになった伊福部サマは、神ってるワケ!」

 テンションが高いのか、ウェーイの擬音が聞こえてくる近衛を、無表情で相槌を適当に打つ士狼。

 

「テトラが乗ってるのかわいいー!」

 幸恵はとても嬉しそうな感想。

 

「色んな種類があるね」

 士狼も気になってパックを覗き込むと、三善の言う通りであった。

 

 何もかけていないもの。

 粉砂糖。

 茶がかった粉が、かかっているもの。

 ナッツが砕いたのが乗ったチョコレート。

 いちごチョコの上に、ピンク色の三角錐の粒チョコレート、テトラが乗っているもの。

 チョコレートの上に、SNSでよく見かけるカラフルな粉がかかったもの。

 合わせて六種類、その数はなんと十四個だった。

 

「よくたくさん揚げたね」

 要は尊敬の眼差しで伊福部を見ると、伊福部は照れ臭そうにそっぽを向いた。

 

「……お前らに助けられたと考えたら、手が進んでな」

 伊福部を助け、昔の熱量を取り戻した礼も兼ねているのであろうと、伺える程の品物だった。

 

「うう……人助けってマジでいい事だよな……」

 近衛はもうチョコレート味を手にとって、感涙していた。

 

「そういえば、アンタは最初、情報通として入ったんだっけ……」

 幸恵はテトラが乗ったいちご味を取ると、近衛が『ニセアンナさん事件』に関わった話をしだす。

 士狼は何もかかっていないドーナツを選ぶと、近衛は最初は阻止する為じゃなかったなと、ドーナツをかじった。

 

 

 ドーナツは美味しかった。

 士狼はシナモンシュガーと言われた物を口にしたが、自分好みの味した。

 程よい甘さが好みだと頷きながら食べると、要は考えていた。

 一人二個当たるように作ったと、伊福部が言ったので、要は弁当箱とドーナツを見て呟いた。

 

「全部は……」

 と大変羨ましそうに見つめていると、ピンクのチョコにテトラを乗せた一欠片ちぎって渡す幸恵がいた。

「これなら大丈夫!」

 幸恵は満面の笑みを浮かべると、シナモンシュガーの一欠片を三善は渡した。

 

「私も……もう一つは持ち帰るつもりだけど、お昼食べ終わったばかりだから、食べ切れる自信なくて」

 要は目を輝かせて喜びの波を放つと、続けて近衛からチョコレートの一欠片。

 

 瀧からは何もかかっていないのを一欠片。

 

 和也からは粉砂糖の一欠片。

 

 そして、士狼は何もかかっていない一欠片を渡した。

 

 ティッシュで拭かれ空になった要の弁当箱には、六種類の小さなドーナツが並べられた。

 

「ありがとう!」

 要はお礼を言うと、各々らしい反応をした。

 伊福部は昨日家族と食べたそうなので、頷きながら空になったパックを片付けていた。

 

「いや、本当にはじめて人助けして、モノとして返ってきたの……」

 近衛はとろけ顔で、うっとりと天井を見つめていた。

 

「私はあんな危ない目、他の子が遭わせるのは嫌だからここにいるけど、五人はどうなの?」

 槍を持った翼を持った白い異形に追いかけられた三善は、士狼と、近衛と、コルサコフと、芥川姉妹を見て、訊く。

 

「アタシも、あんな目に遭

 遭わせて、殺しに来るんでしょ? あんなの、ほっとくワケないでしょ!?」

 幸恵は、キツイ睨みの顔で語る。

 

「……ゆきねえがやり過ぎないようにと、ニセアンナさんが弾く曲について、何かお手伝いできるならと……」

 要は、目を伏せて体を微かに震わせながら答える。

 

「……僕も……ほっとけない」

 コルサコフは一言、答えて頷く。

 

「オレは……そーだな、友達が怖い目に遭わせたくないのもあるけど、お前らと一緒にいたいのもある」

 近衛は非常に真面目な顔で、答える。

 

「俺は……」

 山田士狼は考えた。

 

 そもそもペルソナ能力を求めたのは、瀧を襲った得体の知らない異形から助けたいと思って、勝ち取った物である。

 

「最初は、ニセアンナさんから瀧を助ける為にだったけど……流れでなんとなく」

 

 士狼は弁当を片付けながら淡白に答えると、近衛が近寄ってほっぺを掴まんで、引っ張られた。

「こんの天然塩クンがー! 一人だけ、かっこつけかー!?」

 いつものおどけた口調なので、近衛は戯れのつもりなんだろう。

 

「……痛い」

 口角を無理矢理上げさせられた気分だと、士狼は近衛の手を払う。

 

「おい、つまり。俺に探り入れてたのはなんとなくか?」

 伊福部の鋭い眼光が士狼に向けられて、萎縮すると。

 首を横に振った。

 

「違う、伊福部の事が心配で……」

 

 その瞬間、思い出した。

 近衛と林間学校で揉めた事を──

 士狼は一旦口を閉ざして、脳内を整理し、口を再び開く。

 

「悪い、言い方は悪かった……」

 白銀の鍵のような指揮棒と吉田杏奈が、脳裏に過ぎる。

 

「伊福部と瀧は俺が助けたいと思って、他のヤツらは頼まれたから……あっちに行っている」

 

 士狼は丁寧に訂正し、胸の内を明かした。

 素っ気ない言い方になるのは、人とあまり交流できていないのだろうか。

 人とぎくしゃくになりがちな、自分の発言に胸が痛む。

 

「……ならいいけどよ。お前、やっぱりお人好しだろ、しかもドがつく程の……」

 伊福部は何故か、引き気味で見下されながらそう言われた。

 

「……そうなのか? むしろ、近衛と幸恵の方が……」

 転校してきて数日。

 街案内の立案者二名の名前を出して、首を傾げて二人を見る。

 

「うわあ!? 急に褒めんな!? 恥ずい!」

 近衛は顔を赤らめ、両腕を掲げて忙しなく両手を動かしていた。

 

「アタシも要と友達の為なら、動けるけど……話を聞くと、直ぐに動けるかと言われれば……ムリ!」

 顎には派手なネイルを顎に置いて幸恵は、困ったような表情で答える。

 

「なんだっけなー、コルサコフのシャドウの時”俺達にしか倒せない”とか、涼しい顔で言ってたよな、お前」

 近衛は金髪の内巻きマッシュルームヘアーの刈り上げ部分を、ジョリジョリと掻きながら言う。

 

「言った」

 士狼はストレートに答えると、近衛に指を差された。

 

「そーいうとこだぞー、おーまーえー」

 指した人差し指をぐるぐると回しながら指を近寄らせて、間延びした口調でクレームを言われてしまったらしい。

 

「この天然塩クンが!」

 また出た謎の罵りワード。

 一体どういう意味なんだろうと、士狼はぼんやりと考えつつ近衛の指を見つめる。

 

「瀧とか福ちゃんみたいな、強いヤツらは置いといて、オレみたいなヤツは、言うどころか何もできねえと思う」

 先日の打たれ弱さ然り、とても説得力あるなと、士狼は異論無かったのだが。

 

「でも……白鳥さんから私と明美ちゃんを助けたの、由成くんだよね」

 要は士狼が知らない情報を口に挟むが、近衛は要に向かって「アレは、初めから分かってたから、できたの!」と叫ぶ。

 

「お前は予習なしでも助ける相手に対して、覚悟ガンギマリなところが、ドがつくほどのお人好しだっつーの!」

 近衛は立ち上がって、力説する。

 幸恵は感心した表情で、瀧三善は納得、要は「成る程」と呟き、コルサコフは小さく頷いた。

 

「要するに、()()》で世話になったから、直ぐに動けるのは、君ぐらいって言いたいんだよ」

 瀧は淡々に要約すると、士狼は、とても納得のいかない表情を作る。

 

(それを言うなら、瀧の方だろ?)

 これを言ったらみんなから集中砲火されると思い、内心だけで済ました。

 

「……お前、また自分を下げて見てねえか? まあ、イキらんだけマシだけどよ」

 と呆れた伊福部の言葉で昼休み終了まで、十分となった。

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