PERSONA:MUSIC DRAMA   作:黒猫13号

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ペルソナ6とペルソナ4リバイバル楽しみじゃー!!

よかった、テーマ被ってなさそうで





Chapter21『I trust in God and hope for a pure life in a peaceful land.』 ActⅠ

二〇三〇年 九月四日

 

 通学路。

 

 山田士狼(やまだしろう)はスマートフォンの振動に気づき、立ち止まってボストンバックから取り出す。

 

>対アンナさん対策部


 

近衛由成(このえよしなり)▶[おい、大変だみんな聞いてくれ]

 

芥川幸恵(あくたがわゆきえ)▶[よしりーどうしたの?]


 

 近衛のシルバーアクセサリーのアイコンと幸恵の香水のアイコンが交差する。

 


 

近衛由成▶[って、今日は水曜日か、こんな時に限って瀧は部活じゃねえか]

 

[急用か?]◀山田士狼

 

近衛由成▶[急用じゃねえけど、ちょっとしたハプニング起きたんだよ]

 


 

 ハプニングとは一体と、士狼は画面を見ながら疑問に思っていた。

 


 

近衛由成▶[実はさ、オレ。舞台発表で、バンドやる事になったわけ]

 

芥川幸恵▶[だと思った]

 

[むしろ、やらない方が意外]◀山田士狼

 

近衛由成▶[そこは驚いて欲しかったぜお前ら]

 


 

 文面から伝わる近衛の肩の落としよう。

 


 

近衛由成▶[で、オレはエレキギター初心者だから、島崎に教えてもらったのよ]

 

近衛由成▶[見本にヘビメタとデスボラップの曲弾いてさ、テクがヤバかった止まらなかったけど]


 

 とここで、ピアノのアイコン。芥川要(あくたがわかなめ)が入室する。

 


 

芥川要▶[のめり込んでたよね、止められない気持ちは分かるけど]

 

芥川幸恵▶[えっ、ちょっと待って、要なんで知っているの!?]

 

芥川要▶[実は、由成くんの推薦でキーボードを私がやる事になって]

 

芥川幸恵▶[用事ってこれだったの!?]

 


 

(要、こういうの引き受けてくれるのか)

 士狼はいつもおっとりして、周りの人間の和を乱さないように振る舞う要が、バンドをやるタイプなのかと思った。

 


 

近衛由成▶[そこで終わって欲しかったけど、ここで本題]

 


 

 長い前置きだなと士狼は液晶画面を眺めて、メッセージを待つ。

 


 

近衛由成▶[軽音部のヤツら島崎の音を聞いて、対バンやろうってなって、オレらがノリで引き受けちゃった]

 


 

(対バン?)

 士狼は頭上に疑問符を大量生産しだす。

 それはどうやら幸恵も同じだったらしい。

 


 

芥川幸恵▶[対バンって何?]

 

近衛由成▶[まー、よーはオレらが弾いたあと、軽音部が弾くって事だな]

 

芥川幸恵▶[ちょっと待って、残りのメンバーは楽器弾けるの]

 

近衛由成▶[女子以外オレら全滅]

 

芥川幸恵▶[うわー、バカじゃないのアンタ達。文化祭まで二週間しかないんだよ!]

 

近衛由成▶[お前もかよ。対バンやろうってなった時、島崎にキレられた]

 

芥川要▶[ロックはよく分からないけど……本当に大丈夫? 解子ちゃん、私と一緒に地獄を見せてやるって脅してたけど……]

 

近衛由成▶[なんとかなるって! オレを誰だと思ってんだ]

 


 

 その時、士狼は思った。

 この後の展開が読めてしまう事に……

 

 

二〇三〇年 九月五日

 

 天音(あまね)高校 放課後 廊下。

 

 今日はオカルト部の文化祭の手伝い。

 マット紙を抱えて士狼は狭い部室に向かっていると、多目的室の扉前。

 おしゃれな格好をした生徒達が覗き込むように屈んでいた。

「ここむずいな!」

 第一声、近衛の叫び声。

「ムズくてもきちっと覚えろよ、リズム感は悪くねえんだからよ」

 第二声、低めの女子の声。

(やっぱりか)

 士狼は多目的室の扉に寄った。

 先客達はひそひそと話している。

 

「アイツ、マジでガラ悪いな……」

 黒髪がとても嫌そうに喋る。

「ス、スパルタだな」

 金髪は少し怯えている。

「師匠、もう一回弾いてくれね?」

 近衛はおねだりしているみたいだ。

(……師匠)

 また独特なあだ名をつけてと、士狼は豆鉄砲を食らった鳩のような表情で思っていると。

 次の瞬間、エレキギターの貫く音色が鳴り響く。

 ゆったりとした速さで、巧みにギターを弾いているのがわかる。

「全部パワーコード*1構成の曲を選んでるだけ、マシだよアイツ」

 赤いメッシュが入った長い黒髪が顔を引きつっている。

 

「本番はリズムギターやってやるから、フォローはできねェぞ」

 もしかしてこの低く気だるそうな声が、島崎解子(しまざきときこ)なのか。

 そう士狼は聞き耳を立てる。

「リズムギター?」

 きょとんと近衛は聞き返す。

「ワザで支えるギターの事だよ」

 ざっくりと島崎は答えた。

「チャラ男のテメエは、曲の出だしを弾いて、キャーキャー言われてェタイプだろ?」

 息を吹く音ともに、島崎は近衛の祭り男気質を見抜いていた。

「そうだけど、なんか文句あるか」

 それを恥ずかしげもなくおっぴろげに認める、二年B組近衛由成である。

「潔すぎんだろテメエ」

 島崎は呆れ返った声で感想を言う。

「オレはいつだって、モテたいんだよ♡」

 近衛のウインクかしたり顔が浮かぶこの言葉を受けた、島崎の反応は。

「……ふわふわなのは髪だけにしろ」

 バッサリと冷たくあしらわれてしまった。

「えー、福ちゃんと同じ事言うなよー」

「福ちゃんって誰だよ!? 急にテメエの友達の話すんなよ!」

 完全に漫才と化している二人だなと、士狼は思っていた。

 

「おーノッチ大変だね、おれ歌うだけだからラクチン、ラクチン」

 気の抜けた知らない男子の声が聞こえてきた。

「譲介くん、歌うのは簡単じゃないよ」

 要の穏やかな注意喚起が耳に届いた。

「みんなときちんと合わせないと、一番目立つからね」

 めっという単語が似合いそうな、注意のしかたであった。

「そーだ! そーだ! お前一番目立つヤツだぞ!」

 便乗する近衛。

「テメエは、まず弾けるようになってから大口叩け」

 厳しい口調で島崎は言った。

 

「……コイツ、キッチいな」

「俺、教わるならキーボードの子がいい」

 島崎と要の評価が割れ始めて来た。

(確かにガラが悪い)

 士狼は島崎について頷くと聞き耳を立て続けた。

 

「ほら由成くん、一小節のDコードからズレてる! ズレは全体のズレだよ」

 変わらずのほんわかとした要の口調なのだが、何か内容が……

「イッショウセツってなんだよ! オレ、タブ譜*2見るので精一杯なんだよー!」

 清々しい程の悲鳴、よく響かせる近衛だった。

 

 

二〇三〇年 九月六日

 

 和室、昼休み。

 

「……うす」

 近衛がコルサコフと一緒に入室した。

 いつもよりテンションが低いのは、昨日やっていた特訓のせいなのだろうか。

「由成くん、どう? 少しは弾けるようになった?」

 要はとても嬉しそうに笑っている。

 柔らかそうな雰囲気は空気を明るく変えていく。

「とりあえず、指はな。これ、覚えられるかー?」

 あぐらを組んだ近衛は金髪頭をかきながら、要に報告する。

 

「ピアノと違って、演奏中は楽譜見れないのね」

 きょとんとした表情で、要は近衛を見てくる。

「それがいっちゃん、不安なわけよ要ちゃん」

 近衛は弁当を取り出して、畳の上に置いた。

「楽譜を見て弾くのか?」

 士狼は不思議そうに要を見ると頷いてきた。

「うん。楽譜を見る人もいれば、暗譜(あんぷ)って言ってね、楽譜を全部暗記して弾く人もいるよ」

 要の講義を軽く受け止めると、士狼は弁当の蓋を開ける。

 

「オレは暗譜で挑むわけだ」

 ナポリタンをすすって食べ終わった近衛は、そう答えると要に視線を向けてかったるそうに話す。

「島崎さーなんつーか、キツいとこあるから、要ちゃんに教えて欲しかった」

 近衛が熱烈な視線でおねだりしていると、要は笑った。

 ただし眉毛は八の字になっている。

「アハハハ……私は弾き方は分からないよ」

 その様子をコルサコフ以外のみんなは、静かに見守っている。

「昨日の練習で、どのタイミングで、コードが変わったなって分かったぐらいだよ」

 すると三善明美(みよしあけみ)が会話に入ってくる。

 

「流石は要ちゃん、聞くだけで分かるんだね」

 三善がにこやかに微笑んで褒めると、要が顔を赤く染めて三善に寄りかかって来た。

「明美ちゃん、恥ずかしいよー!」

「私はそういうのできないから、普通にうらやましいよ」

 なんだろう親友コンビの空気がすごくやわらかくて、こっちまで顔を緩めてしまう。

 

「……あれ? 要ちゃんって、こんな可愛かったけ?」

 近衛が緩くなった表情で呟くと、要の耳元まで赤く染まっていくのを見る。

「……」

 要が沈没。

 そして、同時に幸恵がどこか含みがありそうな表情で無言で、三善と要のやりとりを見ていた。

 

「……お前、よく女子の前でさらっと言いやがるな、そういう事」

 伊福部武(いふくべたける)は、片手に焼きそばパンを持ちながら肩を落として、呆れ返った表情で近衛を見る。

「んーどういう意味?」

 近衛が伊福部を見て異議申し立てる。

「勘違いさせるぞって意味だよ、あと……」

 伊福部が顔をそらして、どこか気まずそうな表情を見せる。

 

「恥ずかしくねえのかよ、そんな台詞」

 伊福部の言葉に不服そうに見上げる近衛は、こちらに視線を向けて来た。

 

「一か八かで聞くケド……お前ら、勘違いさせるの意味分かるか?」

 

 まずは眼鏡を上げる瀧慈宗(たきちかむね)

「分からない」

 

 続いてコルサコフ。

 

「……何を勘違いさせるんだろ」

 

 で、最後に士狼の番だが真面目に考えてみる。

 男子が女子に可愛いと言うと、どうして勘違いになるのか。

 

 どうしてなんだろうか。

 どうして、勘違いに発展するんだ。

 意味がわからない、わからな過ぎる。

 そもそも自分は女子に対してそのような発言もした事はない。

 人間関係を諦め続けた結果、女子を可愛いと思った事もない。

 

 そもそもそんな情を抱くシステムが、麻痺しているのを強く感じるのだ。

 だからこそ、自分の言動で誰かを勘違いさせるという現象は───

 

「うわ!? ろうちんが、読み込みが超遅いサイトみたいになってる!?」

 幸恵のツッコミで長考から我に返る士狼。

「……?」

 思考をかき乱されて言葉が出ず、なんとも言い難い表情を作る士狼。

 

「最早、知らねえ通り越して、通信エラーみてえになってる」

 そう言ってきた近衛は、苦笑いを浮かべてた。

「なんだよ、勘違いって」

 刈り上げ部分をしょりしょりとかきながら、近衛の口は止まらなかった。

 

「要ちゃんのさっきの反応が、普段よりも可愛かったって意味で言ったけど?」

 なんとか弁明する近衛の言葉。

 そうなのかと士狼はじっと要を見つめると、顔を俯いてしまった。

「……近衛君、普段よりもって……」

 今度は、三善が引きつった表情を作っている。

「ちょっと、褒め言葉を考え直そうか」

 引いてる、三善が近衛の発言にすごく引いている。

 

「ナンデ!? カワイイ子には可愛いって言うのは当然だろ!?」

 なぜか顔を青ざめて、三善も圧に負けている近衛。

 

「……当然だがな、お前の場合は言葉選びがマズイ」

 額に手を抑え頭痛が来たような表情で、伊福部はこう答える。

「……あ、要は普段も可愛いって意味だからな!」

 士狼は近衛の弁明を軽く受け止めると、要はすっかりと茹で上がっている。

「大丈夫か? 要」

 心配になったので思わず士狼は声をかけると、要は右手を突き出して首を激しく振っていた。

「……っ!」

 

 どうし抵抗しているんだろうと士狼は怪訝(けげん)な表情で、要を見つめると三善が仕方がないなと口を開いてきた。

 

「山田君、これ以上聞くのはやめてあげて、要ちゃんは困ってるから」

「……はあ」

 士狼が理解不能だなと思っていると、伊福部と近衛が呆れ返った表情で見ている。

「お前、どんだけニブチンなんだよ、要ちゃんがなんか照れてるぐらいは察しろよ」

 最初は近衛、引きつり笑顔だ。

「照れさせた原因が分からねえ、お前もニブチンだろうが」

 ますます眉間のシワを寄せてる伊福部は、焼きそばパンのラップをぐしゃりと、厚く大きな掌で握り潰した。

 

「なんだよ……いつもよりもこえーよ……」

 近衛は威圧感が増している、伊福部に震え上がっていた。

「感情の機敏が読めない近衛くんと山田くんって言いたいのは、伝わってくるな……」

 困惑した表情で瀧は呟き。

 幸恵は、瀧の発言を聞いて今頃と訴えかけているような表情を作っていた。

 

 

 

二〇三〇年 九月九日

 放課後、多目的教室。

 

 文化祭練習のあと、由成くん達がいなくなった頃合いに。

 芥川要(あくたがわかなめ)は、赤毛ツンツンヘアーの島崎解子(しまざきときこ)を見る。

 夕陽に照らされてギターを握る彼女は、要にとって別世界の人間に見える。

 

「……練習終わったね」

 教室まで聞こえる男子達の声が聞こえて、要はしとやかに微笑む。

「そうだな」

 解子ちゃんはどこか疲れた顔で窓を見つめていた。

 鼻筋が通っているのが分かる横顔を、要は静かに見つめていた。

 派手な子で口が悪いけど、由成くんに付き合ってくれる人なんだなと、要は思っていた。

 

「土日になんとか仕上げてきたのは上出来だ、あとは細けエとこだな」

 ふうと、右手をチョキの形にして口元に持って、息を吹いていた。

 

「えっと、何をしてるの?」

 右手首を曲げたまま解子ちゃんは、ほんのり笑う。

「吸ってんの」

「何を?」

「タバコ」

 要は理解不能に陥った。

 なんでそんな事をするのか、不思議でたまらなかった。

 要は何も答えられずきょとんとしていると、解子ちゃんは肩をくすめている。

「わかんねエだろうな、キレーなトコで育ったオマエは」

 またよくわからない事をされたので、要はじっと解子ちゃんを見た。

「きれいなところ?」

 要は眉を寄せる。

「育ちがいいって意味」

 使い古したギターケースを手に取って、解子ちゃんはギターをしまってそう返される。

 

「よく言われるよ、あの大きな家の子って」

 ようするに、解子ちゃんは地主の双子姉妹扱いしているんだなと理解する。

「そんなに有名なのか、オマエんち」

「うん。ひいお祖父ちゃんがね地主で」

 明美ちゃんを初めて家に入れた時も、びっくりしていたなと要は思っていると、解子ちゃんはどこか遠くを見るような目つきをした。

 

「へえ……そう、恵まれてンな」

 そして気だるげにこちらを見てきた。

「……恵まれてるのかな?」

 解子ちゃんはまたよく分からない事を言ってくる。

 自分が恵まれているなんて一度も思った事はなかった。

「金もある、親もちゃんとしている……マジでホンモンだなと」

 

 親もちゃんとしている。

 その言葉に要は悲しげに返した。

 

「……お父さんとお母さんは何もしてくれてない。いつも早苗さんとゆきねえと由成くんだよ……」

 発表会も誕生日もクリスマスも、名前を挙げた三人で祝ってくれたから。

 親がちゃんとしていると言われたら、否定的な気持ちになってしまう。

 暗い口調で要は答えると、解子ちゃんは口をへの字に曲げる。

 

「……」

 そして何も言わなくなってしまった。

 息が詰まっているように見えたので、要は心配になってしまった。

 

「解子ちゃんは幸せ?」

 何かが引っかかる態度を要は見守りながら訊くと、またタバコを吸う仕草を見せた。

「ああ。今のワタシは自由だからな、解放されて幸せ」

 

 自由と解放──その言葉が要の何かに触れる。

 

 浮かぶ顔は姉の顔。

 林間学習のバーベキューにパイナップル投下未遂は、みんなが困りそうだったからまだしも。

 髪を同じ色に染めたり、水着だってそうだった。

 本当に着たい物を選ばされてくれなかった。

 由成くんが言ったとおり、もう少し──

 

「そんなに幸せなの?」

 要は唇を震わせて訊く。

「幸せだよ、気持ち悪いもモンから逃げられたんだぞ、楽園だ」

 そう勝ち気に解子ちゃんは笑うと、じいっと青みを帯びた灰色の鋭い目に映る。

 

「さては、なんか抱えてンな」

 図星。

 ただし解子ちゃんが思うほど深刻じゃない。

 少しだけモヤモヤする、そんな感情。

 

「親も放置に加えて、あのゴリ押しギャルとチャラ男だろ?」

 由成くん、本当にゆきねえに会わせたみたいだ。

「押しが弱そーな、オマエと色々と合わなソーだよな……」

 解子ちゃんがやれやれという表情でそう言ってくる。

 

「……」

 気を持たないと、白鳥さんに狙われる。

 だってこれを言ったら、何か壊れそうな気がする。

 要は顔を俯いて無言で返す。

 

「悪りぃ、意地悪したな」

 色んなバンドのロゴステッカーが貼られたギターケースを、解子ちゃんは担ぐ。

 

「結果はどうなろうと、ちゃんと自分の気持ちぐらいは言わねエと潰れるぞ」

 ゴツゴツと厚底靴の音を立てながら、そう言ってくれた。

「……潰れてこのサマなワタシが、エラソーに言う立場じゃねエけどな」

 そう、多目的室から出て行った。

「自分の……気持ち……」

 要は胸をぎゅうっと握りしめて俯く事しかできなかった。

*1
指二本で抑えるギターコードの事。初心者にオススメ

*2
ギター専用の楽譜記号。抑える弦が描かれている

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