PERSONA:MUSIC DRAMA   作:黒猫13号

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えっとですね
8月にP3Rクリアしちゃいまして(DLCはまだ)、映画も完走しましてですね……
その……ロスが酷くて、そっち方面ばっかり考えていた結果、更新遅れました!!

あと、アクナイコラボ楽しみですね


おまけ:最新話まで読むことをお勧めします
Chapter21『I trust in God and hope for a pure life in a peaceful land.』 ActⅢ


二〇三〇年 九月十日

 

 和室 昼休み。

 

 

 

 三善明美(みよしあけみ)が、何故『白鳥』に襲われる前から、偽アンナさんが弾くピアノの曲が聞こえたか。

 

 当時の心境を語ってくれた。

 

「茶道家の夢を諦めたらいいのかなって、迷い始めた時に聞こえたの」

 そう三善は切なそうに明かす。

 

「……なるほど、じゃあ聞こえなかった人はどうなんだい?」

 瀧慈宗(たきちかむね)は真剣な表情で問いかけてみる。

 

「僕は近衛くんが鴨沢(かもざわ)くんの話をした時、猛烈に不安が襲った」

 まずはと一番初めに瀧は俯いて話す。

「また失敗するんじゃないかって」

 真っ直ぐとみんなを見て話終えると、次は近衛由成(このえよしなり)が言う。

 

「オレっちはアレだホラーな感じ、不安に思ったら負けだってやってたら、見事にグサリってヤツ」

 相変わらずの軽口で申告する姿を山田士狼(やまだしろう)はぼんやりと見つめる。

 

 コルサコフ・和也(かずや)は横に首を振る。

 コルサコフはそもそも『白鳥』に無視された人間なので、対象外である。

 

「俺はそもそも、自分で決めた事だからな」

 伊福部武(いふくべたける)は腕を組んで話す。

「福ちゃんつえーなマジで……」

 引きつり顔で軽口を叩く近衛。

「だが山田とコルサコフの言葉に、おふくろが死ぬかも知れねえが重なったところを狙われた」

 瀧も士狼に言っていた。

 

 ”もし、急変した患者さんが伊福部くんのお母さんだったら”

 

 ”君が介入しなくても、狙われるのは不思議じゃないよ”

 

 近衛のようにまた自分の言葉で狙われたと思っていたものが、今ここで晴れやかに消えていく。

 最後は士狼の番になったので、全ての始まりをここにいる全員に語る時が来た。

 

「……俺は、白鳥に襲われた瀧に庇われて……」

 

 

 ”お前は逃げろ!! 山田くん!!”

 

 山田の手を除けた瀧が記憶に過る。

「助けなきゃと思って、大人を呼ぼうとした」

 転校して三日目、突然の怪奇現象に士狼はパニックになった。

 助けを呼ぶにも、消えてしまった生徒をどう対処していいのか分からなかったところを、白鳥はやってきた。

 これで全員分、狙われた理由が共有された。

 

「……」

 辺りを見渡すと、伊福部が腕を組んでムッと瀧を見ている様子に気づいた。

「伊福部君? どうしたの?」

 思い詰めた様子だったのか、三善が不思議そうに訊く。

「つまり、二回も『劇場』に来てる」

 

 眼鏡をあげて瀧はきょとんとした顔で返す。

「助けなきゃと思ったら、体が動いた結果だよ」

 さも当然と爽やかに瀧は主張すると、伊福部の顔がますます険しくなる。

 

「山田もお人好しだが、お前もそれ以上にドお人好しだな……」

 ぐるるるると、唸っていそうな態度を見た、士狼は思わず。

 

「どういう意味だ?」

 伊福部は大きなため息を吐く。

 

「一回目は仕方がねえ」

 突然の怪奇現象に襲われたのだ、士狼は助けようと頭がいっぱいだったが、巻き込まれないように瀧は助けを拒んだ。

「二回目はあそこがどんなのか、充分分かってるだろ?」

 ドスを利かせた声色に、ギロリと鋭い三白眼を瀧に向けるその姿は迫力満点であり。

 それを見た、近衛と幸恵が顔を引きつり。

 三善と要は気圧されて。

 コルサコフは太い眉毛を八の字に寄せて、震えていた。

 

「お前らこの先、長生きしねえな……よくくたばんなかったな」

 頭を抑えて伊福部はやれやれという雰囲気を作る。

 どうやらそれは士狼も瀧もよくわかっていなかった。

 

「……士狼くんも慈宗くんも、無茶は良くないよ」

 芥川要(あくたがわかなめ)は困ったように微笑んでそう言ってくる。

「安居院(あごいん)くんの時は無茶も承知だった」

 眼鏡を上げて瀧は真剣な顔で返すが、伊福部は片眉を上げる。

「ふくっち、顔ヤバくない?」

 その様子を芥川幸恵(あくたがわゆきえ)は何事かと、ざわつく。

「福ちゃんどったの?」

 その恐怖は近衛にも伝播する。

「俺らが来なかったら、お前死んでいたんだぞ」

 安居院のプリマシャドウの攻撃を受けたのか、血だらけになって瀧を思い出す。

「……ごめん、どうしても見過ごせなかったんだ」

 その言葉を聞いた三善が凛々しい表情を作り、重く口を開く。

 

「ダメだよそんな事」

 

 優しく瀧に諭す。

「私達を信じてくれるのはいい、けど……一人で突っ込むのはやめて……」

 泣き出しそうな顔で三善は瀧に言うと、瀧は顔を俯いて静かに返す。

 

「三善の言うとおりだ、おふくろみてえに取り返しのつかねえ事になったら、どうすんだよ」

 伊福部も三善の言葉に同調する。

 

「……あの時は、迷惑をかけてごめん」

 完全にしぼんでいる瀧を見たのは久しぶりだなと、士狼は無言で見守っている最中に、なぜか似た反応をしている要を見かける。

「要?」

 そちらを見ると要は我に返った表情を作り、うろたえている。

 

「な、何かな士狼くん」

 いつものように要は接すると、士狼は問いかける。

「なんで、お前も瀧と同じ顔しているんだと思って」

 すると要はぎこちない態度を作ってきた。

「え、あ……その……」

 と視線を反らして弁当箱を見ていた。

「?」

 変だなと士狼は顔をしかめると、瀧が咳払いをして仕切り直す。

 

「……違いか」

 ここでみんなと考えて見る。

 結論から言うと違いが分からない。

 皆、取り返しのつかなくなるかもばかりで、大差ないように見えるが。

「オレや三善は前々から悩んでたもんなー」

 とかつて、幸恵と要と一緒に三善の護衛をしていた近衛は呟く。

「そーいや、福ちゃんはいきなりだったの?」

 そうここで、自分がやらねばの精神で生きていた、伊福部に話を振る近衛。

 

「ああ。近衛と同じだ、俺も意地張ってた」

 あっさりとした態度で伊福部は返答する。

「そん時、オヤジと喧嘩して妹に迷惑かけたって、思った瞬間」

 喧嘩してたのかと士狼は初めて聞いたと思っていた。

「ピアノが聞こえて、刺された」

 さぞ鮮やかな手ほどきだったのだろうと、士狼は想像してみる。

 

「……共通している事」

 瀧が眉毛を寄せて考え始める。

「あけみっちはどうしようかって、ずっと悩んだままだったんじゃん」

 幸恵は視線を落としてぽつりと呟く。

「他のみんなは一気に来たじゃん」

 幸恵の表情はどこか不安そうに見えていた。

「……つまり、猶予がある人間には前日から聞こえるようになって」

 ここで瀧がみんなに分かりやすいようにと、眼鏡を上げて言葉にしていく。

 

「追い詰められた人間はすぐにくる」

 瀧の視線は伊福部、近衛、士狼に変えていき、それが終わると眼鏡をあげる。

「……ただでさえ、芥川んとこまずいって時に……」

 右目を隠した前髪を揺らして、ため息をつくと伊福部は幸恵に視線を向ける。

「あんまり要の事、刺激すんなよ……」

 ぎゅっと唇を噛みしめて視線を落とす幸恵と、それをどこか不安そうに見つめる要。

 

(また……こんな空気になるのか……)

 と士狼は箸を強く握りしめ、安居院平助(あごいんへいすけ)が亡くなった後日の偽アンナさん対策部を思い出していた。

 

 

 

 

 

二〇三〇年 九月十二日

 

 放課後。

 

 バンドの練習は終わってみんなが解散すると、部活がない明美ちゃんが待っててくれた。

 

「待ったよ、お疲れ様」

 笑ってポニーテールを揺らす明美ちゃんを見ると、少しだけほっとする。

 白鳥さんに狙われないように、ここ最近ゆきねえと帰っていない。

 とても寂しそうな顔をしていたけど、明美ちゃんならきっと大丈夫だと、慈宗くんが言っていた。

 

「急いで帰らないとね」

 十六時四十五分に終わった筈だから、明美ちゃんと早足で歩いていた。

 けど、なんだろう。

 解子ちゃんの言葉を聞いてからずっと、心がモヤモヤする。

 本当は、士狼くんや慈宗くんみたいに、無茶をするつもりだった。

 だけど、武くんが怒ってよくない事だと分かって。

 明美ちゃんの言葉で、私はこのモヤモヤは、晴れないままだった。

 

 本当にいいのかな。

 この気持ちを抱えたまま、自分のやりたい事を押し込んじゃうままで──

 

「……明美ちゃん」

 このままだと白鳥さんがくる、だからせめて。

「どうしたの? 要ちゃん」

 明美ちゃんは振り返る。

「実はね……私……」

 

 これを言ったらきっと叱られてしまう。

 だけど、言わなきゃ狙われちゃう。

 私は深呼吸をして、明美ちゃんをまっすぐ見た。

 

「……私のプリマシャドウに会ってみたいの」

 

 足音が止んだ。

 そうよね、みんな被害を防ぐ為に頑張ってきた。

 明美ちゃんの綺麗で大きな目はびっくりして、私を見ていた。

 

「何……言ってるの……要ちゃん?」

 冗談だよねって言ってくるみたいな顔で、明美ちゃんは立ち止まっていた。

「プリマシャドウが未来の予言書なら」

 対策部のみんなの話を聞いて思ったんだ。

「ゆきねえとの未来も、教えてくれるんじゃないかなって……」

 ゆきねえと私はこのまま生きれば。

「もし、良くないなら」

 取り返しのつかない事になるなら。

 

「私は知りたいの」

 つっかえが取れた気がする。

 これで白鳥さんから狙われないといいけど。

 

「……要ちゃん」

 明美ちゃんは私に近寄ってくると、背伸びして抱きしめてきた。

「そんな事思ってたんだね、島崎さんに言われてから……」

 明美ちゃんの暖かさが伝わってくる。

 優しくていい友達を持ったなと、溜めこんだものが全部涙と一緒にこぼれ落ちていた。

「一昨日、言ったでしょ、一人で突っ込むのはやめて」

 明美ちゃんがまっすぐと私を見ている。

「要ちゃんも無茶は良くないって、言ってたじゃない」

 ごめんと私は顔を埋めた。

「わざわざ危ない事しなくてもいいのに」

 優しい声が私の耳をくすぐる。

 

「……ごめん、武くんの言葉で分かったの」

 怒らないでくれる明美ちゃんは、どこまでも優しかった。

「よく言ってくれたね」

 私は泣きじゃくる事しか出来なかった。

「まさか要ちゃんが、幸恵ちゃんの事を気にしてたなんてね」

 自分が何か口出ししちゃったら、良くしてくれるゆきねえと仲が悪くなるのが、怖かった。

 

「……うん」

 私は鼻をすすって頷く。

「あの水着着たかったんだね」

 私は頷きながらハンカチで涙を拭いて、テッシュで鼻をかんだ。

「ねえ、明美ちゃん」

 顔周りを綺麗にすると私は、明美ちゃんに打ち明かす事にした。

「私……どうしたらいいのかな?」

 

 その時だった。

 

 ピアノの低音が廊下に響き渡る──

 

「リムスキー=コルサコフの『シェヘラザード』……」

 

 私はぽつりと流れているピアノ用に編曲された曲の名前を呟く。

 

「えっ、待って要ちゃん!?」

 明美ちゃんが青ざめた顔で慌てている。

 

 ああ、そうか。

 ゆきねえの言ったとおり、一気に来ちゃったんだ。

 透き通ったような高音は、砂漠の国の音色を奏でている。

 ロマンチックなメロディから、跳ねるような曲調と共に、白い翼が夕焼け色に染まってやってきた。

 

 三角形を逆にした脚。

 焦げた白いチュチュみたいな服。

 顔を隠すように覆った白い羽飾り。

 丸い盾とそして──

 

 対策部のみんなを刺して、プリマシャドウを生み出した黄金の槍が私に向けられる。

 

「よく見ると、バレエ衣装みたいで綺麗だね」

 そういえば、ゆきねえもこの曲で踊っていたな。

 波のように唸るようなピアノの音と一緒に、一直線に向かってきた。

 

「今度は私の番だから!!」

 明美ちゃんは、両腕をぐっと私の体を押し倒した。

 私は思わず尻もちをつくと、明美ちゃんはそのまま白鳥さんに向けて鞄を投げつけた。

 少しだけ白鳥さんが引いたと思ったら、胸ポケットから携帯を取り出して、耳に当てる。

「瀧くん聞こえる!? 偽アンナさんと白鳥さんが来た!」

 明美ちゃんは私を見下ろしてこう言ってきた。

「旧校舎の扉に向かって! 今日はここでも戦える瀧くんが……」

 

 白鳥さんが盾を振り下ろして、明美ちゃんを弾き飛ばした。

「明美ちゃん!」

 私は青ざめて、助けようと立ち上がろうとしたけど。

 壁に叩きつけられたのか、体を震わせて起き上がっている。

 

「……私は……いいから……!」

 目を反らしたくなった。

 こういうのは、お話の中だけにして欲しいよ。

「ああ……」

 足の震えが止まらない。

 目の前に白鳥さんが槍を振りかざして来た。

「い……嫌だ!」

 思わず頭を抱えてしゃがんで槍をかわした。

 空振りに白鳥さんが首を傾げた隙に、私はようやく走り出した。

 

 

 

※

 

 旧校舎の扉に向かって、私は廊下を走り出す。

 文化祭の出店の飾り付けが、目に引くけどそんな暇はなかった。

「はあ、はあ……」

 

 息を切らしながら、私は思わず立ち止まってしまった。

 ゆきねえだったら旧校舎にあっという間に、辿りつけてたのかな。

 

 運動もできて、勉強もできて、強くて優しいゆきねえ。

 ちょっとわがままなところもあるけど。

 お父さんもお母さんも早苗さんもいない時、いつも側にいてくれた。

 そんなゆきねえが好きだからこそ、私は──

 

「要!!」

 ゆきねえが先頭を走って、慈宗くんが竹刀を構えているのが見えた。

「ゆきねえ!」

 涙で視界がぼやけている。

「要ちゃん頑張ったな!」

 ああ、由成くんの元気いっぱいの声だ。

 対策部のみんなが足音も鳴らして、やってきてる。

「みんな!!」

 

 私は一歩踏み出す。

 早く学校から出て逃げ切らなきゃ。

 そう思って、疲れ切った足に力を入れないと。

 そうみんなのところへ走ろうとした時、表情が変わっていた。

 

「……えっ……」

 胸には黄金の槍が貫いていた。

「嫌だもうやめて!!」

 崩れ落ちて泣いているゆきねえの悲鳴が聞こえた瞬間、ガクンと体の力が抜けた。

 

「……ああ……」

 後ろを向くと開いた教室のドアは、黄金に染まった膜みたいなのが張ってあった。

 

「お願い! アタシが悪かったから!! 要を連れていかないで!!」

 夕焼けの校舎とどこか気だるげで、激しく燃えているようなピアノ曲がよく似合っている。

 

「……ゆき……ねえ」

 カラフルで綺麗なネイルの指を掴もうと、私は手を伸ばす。

 

「だい……じょうぶだよ……」

 私は思わず笑顔を作った。

「私のペルソナが……シェヘラザードなら……」

 そうシェヘラザードは、悪い王様にお話を聞かせて改心させたもの。

 

「い……きて……帰れるよ……」

 ふふ、困ったな……涙でお化粧が崩れてるよゆきねえ。

「ゆきねえを……おね……が……い……」

 嫌だ嫌だと泣きじゃくるゆきねえを見て。

 私はみんなにそう伝えると、ストンと眠ってしまった。

 

 

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