PERSONA:MUSIC DRAMA   作:黒猫13号

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Chapter3『Welcome to the Club and Group!』

 二〇三〇年四月十九日 昼休み。

 

 体育館裏にて。

「⋯⋯」

「⋯⋯」

「二人ともなんで黙り込んでるのさ」

 芥川幸恵(あくたがわゆきえ)は、箸をパシパシと動かして色とりどりの弁当を楽しんでいた。

「どうして君も参加するのか、ニセアンナさん事件を」

 痺れを切らした瀧慈宗(たきちかむね)は、里芋を口に放り込むと部活用眼鏡を光らしていた。

「だってさーニセアンナさんに襲われるの防ぎたいじゃん、(かなめ)とか⋯⋯よしりーとか」

 山田士狼(やまだしろう)は焼きそばパンを齧ると、昨日の事を思い出す。

 

 あの時、白い扉から出ると待っていたのは、亜麻色の髪を後ろに持っていきふんわりとパーマをかけた髪型が特徴的な幸恵。

 その隣には似た芥川と髪型だが、前髪を降ろした目元と背丈が同じの大人しそうな女子生徒がいた。

 窓の外は夕焼けのままで二人は鞄を持って、立ち入り禁止だよと驚いた反応を見た。

(⋯⋯昨日、芥川の隣にいた女子、芥川にそっくりだったよな)

 芥川の隣にいた女子生徒を思い出しながら、焼きそばパンを頬張り二人のやり取りを眺めている。

 

「二人っきりで話し合いをしたかったのは、みんなを危険に巻き込みたく無かったからなんだ」

 緑茶を飲み終えると、表情は出ていないもののどことなく不機嫌な声色の瀧。

 正論である、士狼は焼きそばをくわえたまま頷いた。

「えーだって、そのぺるそな? っての私にも芽生えるかなって、芽生えるならカワイイのがいいな」

 士狼は咀嚼(そしゃく)物を吹き出し、瀧は開いた口が塞がらない様子だった。

「芥川さんどこまで聞いたんだ?」

 瀧の声が震えている、わなわなという擬音が似合うほどに。

「ぺるそなの使い方からー」

 砕けた口調で芥川は答えると、瀧はずれた眼鏡を上げてレンズを光らせた。

「最初からじゃないか!! 大体今日のお昼は僕達でって、断ったじゃないか!!」

 瀧は立ち上がって大声で怒鳴り、士狼はその気迫に気圧される。

「昨日何かあって、今日はアタシ抜き。逆に怪しいと思ってついてきたー」

 瀧は愕然と肩を落として落ち込むと、話が続けられなさそうなので士狼はフォローにまわる。

 

「⋯⋯芥川。これは遊びじゃない」

 士狼は真剣な眼差しで芥川を見た。

「俺らは戦えるとはいえ、二人がかりでも結構強かった」

 強そうなダイアナの力を借りても苦戦した相手。

 体をボロボロにされたり、氷漬けにされた記憶が蘇る。

「俺達についていったら、死ぬかも知れないんだぞ」

 戦える(すべ)がない芥川が行ったら、あの廊下と劇場で確実に傷つける。

 力無き他人を守る余裕はないと、あの戦いで士狼は学んだ。

 

「⋯⋯!」

 真摯さが伝わったのか芥川は顔を引きつると、黙って頷いていた。

「深入りは僕も賛同しない」

 瀧はため息をついて、芥川を諭す。

 

「ニセアンナさんの事が広がったら、その不安を狙われるかも知れないからな」

 落胆しているのが、芥川の態度から伝わっていた。

「⋯⋯言わないよ。特に要は狙われそうだから」

 要という人物が誰なのかはさておき、瀧の言う通り士狼のように連鎖が起きるのは間違いは無いだろう。

 焼きそばパンを一口齧ると、芥川が言う。

 

「それでもぺるそなを使うところまではいかないけど、みんなを危ない目に遭わせたくない!」

 芥川は真っ直ぐと士狼と瀧を見つめて宣言してきた。

「⋯⋯そのぐらいなら」

 瀧は少々不安な声色ではあるものの、ニセアンナさんを追う事を許可し、芥川の顔は晴れやかだった。

「やった! A組にも知り合いはいるから情報になるよー」

 何故かお金のハンドサインを作っていたずらっぽく笑う芥川の台詞を聞いた士狼はふと、もう一人適材適所と思しき男子生徒の顔が浮かんだ。

「なあ、瀧、芥川。この件を聞いても狙われなそうで、かつ役に立ちそうなヤツ、メンツに入れていいか?」

 

 数十分後。

 

 スマートフォンの画面を見つめていると、足音が聞こえたので視点をそちらに変える。

「山田! お前はまなな担なのは本⋯⋯当⋯⋯か?」

 現れたのは、菓子パン片手に持った近衛由成(このえよしなり)だった。

 嬉しそうな垂れ目が瀧を捉えたのか、途端に冷え込んで怖じ気ついているのを士狼の瞳に映る。

「た、た、た、た、たき! ⋯⋯ごめん、ちょっとお(いとま)させていただきます!」

 その様子に士狼は騙して申し訳ないという表情を作る。

 近衛は苦手意識のある瀧に対して、青ざめてそのまま立ち去ろうとする。

 追いかけようと士狼が前のめりになった途端、芥川は走り出し、常人離れした跳躍であっという間に近衛の間合いを詰めた。

 

「よしりー? 仲良くね?」

 芥川の圧力をかける台詞に、士狼は罪悪感に満ちていた。

「出たー! 妖怪八艘(はっそう)飛び!!」

 近衛はぎゃあと悲鳴を上げて叫んで崩れ落ちると、芥川はこの情けない幼馴染に向かって、口を開く。

「誰が妖怪だ!」

 芥川のキレのあるツッコミに士狼は思わず拍手してしまった。

 その様子を見た瀧はこれまた、不安そうにこちらを見てくる。

「⋯⋯本当に彼で、大丈夫なのか?」

「大丈夫だと思ったんだけどな」

 士狼は気だるそうな表情を瀧に見せた。

「一年の時にたくさん人に囲まれていたけど、芥川でああだと少し不安が」

 瀧は苦い表情を見せると、士狼は真顔で答えた。

「いけると思ったんだけどな⋯⋯」

 人懐っこく顔が広そうで、かつ将来の不安なんて微塵も感じさせない軽率さを持つ、近衛由成なら、適任なのではと士狼は思った。

 けど瀧は違ったようだ。

 

「てか、おい! 山田! どういう事か説明しろよ!」

 近衛が士狼に抗議すると、士狼は申し訳ない顔をした。

「騙してごめん」

 その言葉に近衛は更に熱が入る。

「騙してごめんだ!? なんで瀧と幸恵もいるんだよ! ⋯⋯ってまさか」

 近衛は気づいたのか芥川に視線を向けていた。

「ゴメーンRE:LINK(リリンク)文、書かせたのアタシなんだ」

 

 数十分前、近衛由成に焦点を当てた案を士狼に提示した。

 幼馴染と頭が回る二人のお墨付きで決定したのはいいが、この場に引き込むのに難点があった。

 近衛由成は瀧慈宗の事を苦手だと思っており、素直に呼び出しても応じないだろう。

 そこで幼馴染の芥川幸恵の出番。

 近衛には上原真奈(うえはらまな)という、アイドルが好きであり、その話をしようと士狼に書かせた作戦であった。

 

「たくっ! 入れ知恵させるなよ。こうなったら山田、お前が前にいた学校のまなな担について話してもらうぞ!」

 士狼は猫目を丸めて深く悩み始めた。

 家族の転勤続きで、そこまで深く話した友達はいないと、黒い目をぐるぐると回して、士狼は黙り込んでしまった。

「⋯⋯振ったオレが悪かった」

 近衛は士狼の心中を察したのか、触れてはいけない物に触ったのかという態度を取る。

「君にお願いがあって呼んだんだ」

 瀧は真っ直ぐと近衛を見ていた。

 トラウマの要因を前にしている事に気づいた士狼は、思いながらハラハラして見守る事にした。

「な、なんだよ。今度はピアスの事か? 指輪はここではしてないぞ」

 金髪のパーマをかけた髪をふわふわと揺らすと、近衛は両手を掲げて瀧に見せつけて返していた。

「⋯⋯実は」

 

 瀧がその様子を見て何かを思ったのか、しばらく見つめた後ニセアンナさんの事を話し出す。

「なるほどな。オレもB組でなんかありそーなヤツいたら、報告するわ」

 真面目な顔を浮かべる近衛を見た士狼は驚嘆(きょうたん)の視線を向ける。

「なんだよ。死ぬかも知れない事態だから、協力してやるよ。それよりも」

 近衛はへらりと表情を変えて士狼に近寄って、腰に吊るしている指揮棒を抜いてきた。

「お前らの力、漫画やゲームみたいでかっこいいよなー!! オレもなんかカッケーの出したい!」

 指揮棒を剣に見立て振っている姿から伝わる、興奮と瞳の輝き。

 ペルソナを得た過程を思い出すとそんな事を考える余裕が無かったと、士狼は少々残念に思った。

 

「そもそも君が呼ばれたのは、狙われなさそうだから、力は得られないと思う」

 ニセアンナさんのピアノと一緒に現れ、無機質な槍を貫かれて、シャドウが生まれ、ペルソナという力を得た。

 つまり槍を貫かなければ、発生しない事案である。

 

 シャドウに殺されかけた瀧は、近衛の呑気さの少々苛立ちを感じさせる声色で紡いだ。

「へえ、そうなのか⋯⋯いやーオレの人生は順風満帆(じゅんぷうまんぱん)で困っちゃうな」

 興味深い表情を見せたかと思えば、すぐにテヘヘと表情を作る近衛を見て、士狼は調子のいいやつだなと最後の焼きそばパンを齧った。

 

 二〇三〇年四月十九日 放課後。

>対アンナさん対策部


 ◀[次の角を右に曲がる]

 

 [分かった]▶

 

 二つの吹き出しに既読がつく。

◀[お前、まじで吉田杏奈の未練を調べる気か?]

 シルバーアクセサリーアイコンは聞いてくる。

[流れで]▶

 デフォルトアイコンは返して、既読の文字を確認。

 

◀[流れって、調べるのかお人好しだな]

 別のデフォルトのアイコンが液晶に浮上する。

◀[俺はとても良いことをしていると思うよ]

 アイコンの上には小さく書かれていた。

 瀧慈宗と。

[瀧はな。俺はこれ以上関わるつもりは無かったんだ]▶


 四人はRE:LINK(リリンク)でニセアンナさん対策部と名付けたグループを作り、こうして連絡を取り合う事にした。

 士狼は液晶画面で愚痴をこぼすと、部室と思しき教室を見る。

 

(ここがオカルト部)

 近衛が言っていた部活。

 広さは普通の教室よりも狭い。

 旧校舎のアンナさんについて何かを知っているのだろう、士狼は襟元を正すとドアを開く。

「はーい、こちらオカルト部⋯⋯やや?!」

 迎えたのは黒いおかっぱ頭に魔女のように高く尖った鼻が特徴的な、丸眼鏡の野暮ったい女子生徒がこちらを見ている。

「君、見ない顔ね入部希望!?」

 そう判定されるとずささささという音と共に、士狼に近寄ってきた。

 士狼はびっくりして後ろに引いてしまう。

 

「いや、相談事に来たけど」

 士狼の言葉に女子生徒は怪訝な表情を作る。

「入部希望じゃないの!?」

 何を言ってるんだという顔をされてしまった。

 士狼は話を続ける。

「近衛由成からの紹介で来た」

 士狼は正直に言うと、女子生徒はああという表情を作った。

「辞めた後輩とよく話をしてたわ」

 女子生徒はやれやれと答える。

「⋯⋯後輩?」

 士狼は目を丸くしてその言葉の意味に気付いた。

 

「なんか漫画の影響で入ったけど下調べが面倒くさいって、辞めちゃった」

 がっくりと女子生徒は眼鏡をずらして落ち込むのを見ると、体を反りあげて元の体勢に戻る。

「ようこそ! オカルト部へ私は三年A組相馬光希(そうまみつき)

 書類で溢れかえっている本棚を背にして、相馬光希は挨拶をする。

「そして、この部活の部長です! よろしく!」

 笑顔を見終えると、士狼は辺りを見渡すと真っ先に疑問をぶつけた。

「この部活、他に誰かいるんですか?」

 士狼は先輩を目にして思わず敬語になる。

「⋯⋯」

 その質問に対して、先輩は固まった。

 

 

「はー『旧校舎のアンナさん』に関してね」

 士狼は椅子に座ると、分厚いファイルや雑誌や何やら怪し気な題名が書かれた本達を見る。

 相馬先輩はそこで何かを漁っている。

(すごい部室だな)

 独りでこれを管理しているのかと、士狼はその情熱と努力に関心していた。

「先輩方ももちろん調べてたわよ、ピアノ関連の怪談は王道だからね!」

 余程嬉しいのか声が弾んで、少々早口気味である。

 

「おっファイルあった」

 持ってこられたのは一冊のファイルであり、その薄さに士狼は首を傾げた。

「⋯⋯あの、これしかないんですか?」

 士狼は怪訝な表情を作った。

「うん。いくら調べても、それしか進まなかった」

 たはーと苦笑いを浮かべる相馬先輩を見て、士狼は期待外れだと落ち込んだ。

「この薄さだったら、わざわざファイルにしなくてもいいんじゃないですか?」

 現代っ子の士狼はパソコンやスマートフォンにまとめた方がコンパクトなのではと、提案した。

「自分用にあるけど、やっぱり物があった方が、研究してる感出るよね!」

 ずいっと相馬先輩は顔を近づけてレンズ越しの双眸(そうぼう)は輝かせ、士狼はその熱量に硬直した。

 相馬先輩は向かい側の席に座りファイルを開いた。

 

「えっと『旧校舎のアンナさん』ね。まずは該当するであろう事件は、二〇〇五年十一月九日の新聞記事ね」

 付箋が貼られたページを開いて、記事を見せつけられる士狼。

「市立天音高等学校、飛び降り自殺」

 嬰琴(えいきん)市の新聞を読み上げる士狼。

「先輩曰く、新校舎の屋上が立入禁止なのはこれだって」

 士狼はだから、昼は屋上を選べなかったのかと思った。

「で、二週間後に学生向けコンクールの全国大会が控えていたのね」

 ページは飛び、地区大会の優勝者の名前には吉田杏奈の文字があり、士狼の背筋は凍りついた。

 

「本当に幽霊だったんですね⋯⋯」

 士狼は夕焼けの旧校舎で会った吉田杏奈を思い浮かんでいるが、それを知らない相馬光希の反応は。

「そうよ!」

 実在しているのよと全身に語られて、ダン! と机を叩いて前のめりで詰められ、相馬先輩の口は止まらなかった。

 この態度はただ相談しに来た士狼にとっては、暑苦しく感じ遠ざけたくなってきた。

「次の新聞だとコンクールのプレッシャーで自殺したって書かれてるんだけど、プレッシャーで死んだなら⋯⋯二十五年間もピアノを弾き続けている?」

 マシンガンもとい、ラッパーの如きの口さばきに士狼は思った。

(マジで帰りたい⋯⋯)

 本心を漏らすんじゃ無かったと後悔。

 心が折れそうだと、心の中で泣きじゃくってしまう。

 これがゲームだったら、帰りますかのウィンドウが出て、帰りますかを選択すると『学力』と『魅力』と『寛容さ』は得られないが、『勇気』を得られそうな気分だった。

 

 

 二〇三〇年四月十九日 夜。

 

 自宅、転勤族なのでマンション形式の社宅に山田士狼は住んでいた。

 風呂からあがると、寝間着のシンプルなルームウェアに着替えると、スマートフォンの液晶画面に通知欄が浮かび上がっていた。

 

>対アンナさん対策部


◀[オカルト部、どうだった?]

 デフォルトのアイコン、瀧である。

[しんどかった]▶

 と士狼は苦い顔で打つと、既読の文字。

◀[手強そうだな]

 瀧が打つと、可愛らしいキャラが壁越しにこちらを見るスタンプが送られてきた。

 

◀[皆の衆やっほー、わたしだよー]

 洒落た香水瓶に華やかに飾りつけられたアイコンが、乱入してきた。

 名前は芥川幸恵。

[こんばんわ]▶

◀[芥川さん、ようやくだね]

 士狼は挨拶、瀧は初めて会話に入ってきた事を言う。

 

◀[習い事があって、ようやく終わったの。それでオカルト部行ったんだーなんの為に]

 士狼は説明を文字にして打つと、数秒で既読が付き、数分後に返信してきた。

 芥川はレスポンスが速いなと、士狼は生唾を飲む。

 

◀[確かに耐えきれなくなって、死んじゃったら⋯⋯学校に残らないよね]

 シルバーアクセサリーアイコンが入室してきた。

 その知らせから数分後、吹き出しが浮かんだ。

 

◀[ちっす。いやーあの熱量(マジ)度、アイツが辞めただけあるよなꉂꉂ(ᵔᗜᵔ* )]

 士狼は笑う凝った顔文字にイラッとすると、近衛にこう返信する。

 

[知ってるならなんで言わなかったんだ、こっちは長時間も話を聞かされたんだぞ]▶

 

 帰りたいと思った後、そういう空気じゃなかったので結局は帰れなかった。

 なのでどうして吉田杏奈は死んだのかという仮説を、丁寧に練られた根拠を熱量を込めてプレゼンテーションされた。

 毒沼に入れられた気分だという怒りを文に込める。

 既読がつく。

 

◀[言ったら逃げると思って、けどお前は逃げなかったのエライと思う]

 近衛の返信、絵文字が煽りに見えた。

◀[興味がない話に長く付き合えるって確かに、できる事じゃないよ]

 と瀧。

◀[わたしも思うよ]

 と芥川。

 二人のフォローで士狼は泣き出しそうになった。

 

 

>対アンナさん対策部


◀[で、結局分かったのは、二〇〇五年十一月九日に吉田さんの遺体が確認された事と、死因は別にあると]

 瀧が簡潔にまとめると、近衛が返信してきた。

 

◀[じゃあ山田が聞かされた残りは、先輩の仮説だべりかよ⋯⋯行かせた俺が悪いけど、全部聞いてきたお前すげーな⋯⋯]

 近衛から、羨望を感じる文章と謝罪するスタンプが送られてきた。

 

◀[これ以上、話を広げさせるな近衛くん]

 瀧が本題からそらさないように釘を刺す。

 

[先輩の仮説だと、プレッシャー以外の要因があったから、ピアノを弾き続けていると言っていた]▶

 頭痛が襲ってきたようだと、士狼はあの拘束を思い出す。

 

◀[僕の見立てと一緒か]

 瀧から送られると、芥川の吹き出しが表示された。

 

◀[私たちと同じところまでしか来てないわけね]

 静まり返る、液晶画面。

 士狼は指をゆっくりと動かすと、こう送信した。

 

[ただの自殺事件として処理されたみたいだから、先輩も未練について協力して貰う事にしたよ]▶

 この事を相馬先輩に告げたら、えらく興奮して話していた。

 

◀[おーけーじゃあ、ここでお開きだな]

 と近衛はグループから退出した。

 

◀[おやすみなさい]

 芥川はスタンプも送ると退出した。

 

◀[じゃあ僕も宿題があるから]

 皆退出した。


 

 スマートフォンをホーム画面に戻し、インターネットに接続する。

 ベートーヴェン、告別、ソナタと検索欄に打ち込んだ瞬間、電話が鳴った。

 瀧だ。

 タップすると、瀧が話しかけてくる。

 

「山田くんちょっといいかな」

「なんだ?」

「その⋯⋯遅れたけど、助けてくれてありがとう」

 瀧は照れもなく凛とした口調で礼を言って来た。

「あの時、断ってごめん。俺に付き合ってくれたのは、本心じゃないんだと思って」

 士狼は拒絶してしまった事に謝罪する。

「いいんだ。僕が君をそう見てしまってたせいだから⋯⋯それに」

「それに?」

 瀧はしばらく黙った後にどこか嬉しそうな口調で返ってきた。

 

「俺のやってきた事は無駄じゃないんだって、今日分かったよ」

 士狼は昼間、近衛が掌を見せてもうしていませんのポーズをしていたなと思い出す。

「よかったな」

「後は鴨沢くんの事もよろしく頼むよ」

 士狼はそう約束したなと思いながら、なんだか晴れやかな様子の瀧に微笑み言葉を紡ぐ。

「それじゃあ、また明日学校でおやすみ」

 瀧は爽やかな声色で告げてきた。

「おやすみ」

 電話が途切れると、士狼はいい気分でベットに寝転がり天井を眺めていた。

 

 

 二〇三〇年四月二十日 深夜 ????

 

 夕飯時、随分と嬉しそうにその話を子どもから聞いた。

 自分はその場で、なんとかやり過ごす事ができた。

 だがそれでも、子どもに心配をかけてしまった。

 気づかれていないだろうか。

 自分は彼女の事を───

 

 気持ちを落ち着かせる為に、ある曲を聞こうとCD棚から取り出す。

 この曲は彼女と繋げていた曲だ。

 神が仕込んだのだろうか、この曲は良き知人の再会を願っていると、込められたものらしい。

 だからこの曲であの時の彼女と再会し、気持ちを落ち着けさせるのだ。

 自分は、そのCDを音楽プレイヤーに入れて再生ボタンを押した。

 

ChapterⅢ『Welcome to the Club and Group!』 FIN

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