インフィニット・ストラトス 平和を求める者   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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013.転校生

セレベス海にて。

 

「皆…………あの時はごめんなさい。守ってあげることが、電にはできなかったのです…………あの時、皆はどんな思いをしていたのですか? ーー」

 

電が、献花を行っている。5月14日、1944年のこの日、駆逐艦電はアメリカ潜水艦ボーンフィッシュの雷撃を受けて沈没、170名近い命が失われた。その事を未だに覚えてる電は、乗組員の冥福を祈るため、この付近での献花を始めたそうだ。

 

「ーーそれでは、またここにくるのです。皆、またね」

「…………終わったか?」

「はい…………戻りましょう、時間も無いのです」

「…………了解」

 

俺はナーガを駐機状態から機動状態にさせる。それと共に、背部拡張ユニットにはB型ユニットを接続させる。ここから学園まで大体一時間くらいでつく。休みの日だから遅刻とかはないけど、早めにこの海域は抜けたほうがいいだろう。…………電が今にも泣き出しそうな感じになっているからな。

 

「ほら、掴まれ」

 

俺はB型ユニットのロールバーを展開させる。どうやらこいつは僚機ごと敵地に突っ込んで行く中々クレイジーな装備だ。よく芝本は思いついたもんだよ。おそらく僚機は影蛇乗達だろうな。

背中に重量が追加される。ロールバーには電のイカリハンマーとチェーンが巻きつけられ、しっかりと固定されているようだ。

 

「固定完了なのです」

「よし、出すぞ」

 

B型ユニットのメインブースターに点火され、爆発的な加速によるGが俺の身体を襲う。まぁ慣れてはいるんだがな。電はロールバーにしがみついて、落ちないようにしている。

 

(…………あんた達が守ろうとした日本とその未来、俺が受け継がせてもらうぞ。だから…………見ててくれ)

 

さらっと視線を先ほどの海域へと向けたのち、俺は現海域を最高速度で突破した。

 

 

「さぁーて、今日も一日頑張るとしますか!」

「テンション高いな、一夏」

「休み中ずっと簪と訓練していたからな。それで、日頃のストレスが吹き飛んだんだろう」

「まぁ、私も参加させてもらったしね。大分、こっちの感覚にも慣れたよ」

「それはなによりなのです」

 

休み明けの俺ら。少し早めに集まった俺たちは昨日どんな風に過ごしていたかとかの情報を共有していた。まぁ、昨日は別行動だったし、気になるといえば気になるのかもしれないな。

 

「そういや、悠助達は何処かに行ってたのか? 姿見なかったけど」

「まぁ、少し、なのです」

「そうか…………ま、無理に話さなくてもいいんだけどさ」

「そう言ってもらえるだけで、気が楽なのです」

 

とりあえず情報共有はいいとして

 

「何があってこんなに騒いでいるんだ?」

「ISスーツの発注時期だからじゃないか? 確か、早めに自分のスタイルを確立するとかなんとか」

「ふーん、俺たちには関係の無い話だな」

「そうだね。私と電は衣服型のがあるし」

「私達も装甲服(アーマースーツ)型だしな」

 

電や響にはセーラー服型のISスーツがある。艦娘は衣服型装甲があるらしく、電達もそれが基本装備なのだとか。これがある限り出血とかはしないらしいが…………あの時会った時はボロボロで血を流していたんだよな。

ちなみに俺達のはAT乗りが標準戦闘時に着用する装甲服だ。防刃防弾に衝撃吸収といった戦闘では必要な機能が搭載されている。頭部もヘルメットを着用することで頭部被弾時にも致命傷にならない設計にはなっているが…………AT用の武装で打ち抜かれたら終わりなんだよな。頭部装甲とか胸部装甲、あとは〔ピー〕アーマーとかよく砕け散っていたな、そういや。人間の弱点だから仕方ねえか。

 

「皆さん、おはようございます」

「諸君、おはよう」

「「「お、おはようございます」」」

 

と、ここで我らが教官であるちーちゃんと山田先生が教室へと入ってきた。ただそれだけで女子たちは席へと戻り、整列状態になっている。…………カリスマとかそんなものより、単なる恐怖によるマインドコントロールに近いのかもしれないな。

 

「それでは、SHRを始める前に皆さんに報告があります。今日、このクラスに転校生が来ます! しかも、二人です!」

 

山田先生がそう皆に伝えると、案の定どよめきが起こる。てか、そんな情報知らねえし、聞いてもいねえぞ。

 

「それでは、入ってきてください」

 

そう言われて、教室に入ってきたのは、眩い金髪、アメジストの瞳をしたやや中性的な顔立ちの

 

「シャルル・デュノアです。不慣れな点もありますが、皆さんよろしくお願いします」

 

男だった。って、

 

「お、男…………?」

「はい、此方に僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国から転入をーー」

「きゃーー」

「え?」

「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼‼」」」

 

あ"ぁぁぁぁぁっ‼ 耳が死ぬ‼ ガトリングの掃射音を聞いていても、ATがオートで聴覚保護をしてくれるため、こういうことにはならないんだが…………展開も何もしてないから直接ダメージを食らってしまった。周りをみると、一夏と春介は同じように耳を塞いで悶え、シャルルはびっくりして涙目になり、電は驚きのあまり半泣き寸前、響は耳栓をして塞ぎ、マドカは何故かヘッドホンを装備して無傷、窓ガラスにはヒビが入っていた。…………被害甚大じゃねえか。音響兵器かよ。

 

「来た! 我が時代の春が!」

「あの金髪の輝き…………惚れてしまうでしょ!」

「今年の夏は、盛り上がるわよぉぉぉぉぉっ!」

「ヒャッハー! たまんねえなぁ!」

 

…………ついでに、女子も大半が汚染されてしまっていたことについては目を伏せてしまった方がいいだろう。あまりにもカオスすぎてついていける気がしねえ。

というか、あいつ女じゃね?肩幅狭いし、何より胸に膨らみがないか? 怪しい臭いしかしねえぜ。

 

「静かにせんか! まだ一人残っているぞ!」

 

ちーちゃんの怒声で静まり返る女子たち。すげえ、ピタリと止んじまったよ。

さて、そのもう一人というのは、デュノアの横にいる銀髪の背のちっちゃい奴だ。だが、電ほど小さくは無い。電の場合、席にクッションを敷いて丁度くらいだからな。特徴的なのは、眼帯くらいか。あと、どこか俺と似た匂いがする。…………戦場特有の匂いが。

 

「私はラウラ・ボーデヴィッヒだ。階級はドイツ軍の少佐だ。訓練したい者がいれば声をかけてくれ、全力で相手しよう」

「よし、お前達は空いている席に適当に座ってくれ。次はグラウンドで実機訓練を行う。遅れるなよ。それとだ、男子共」

「「「はい?」」」

「デュノアの面倒は頼むぞ」

 

そう言って退室して行くちーちゃんと山田先生。

 

「さて、動くとするか」

「早めに動いたほうがいいだろうな、今日は特に」

「何かあるのですか?」

「まぁ、色々と「兄上〜〜〜!」」

 

そのセリフと共に何故か一夏へと向かってル○ンダイブをしてきたボーデヴィッヒ。だが、一夏はその場からずれて回避する。

 

それがまずかった。

 

「ぬぅ、兄上、何故避けるのだ? それよりもこれは一体?」

「は、はにゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ⁉ そ、それ、い、電のスカートなのです‼」

 

回避したのはいいが、その先にいるのは電。ボーデヴィッヒは電のスカートをつかんでしまい、あまつさえ脱がせてしまうという事態を引き起こした。そして、俺の目の前には突然、魅惑のデルタ地帯が現れたのだった。…………白地にリボン付き、か。

 

「ゆ、悠助さんも、な、何を見てるんですか⁉ 破廉恥なのです‼」

「す、すまん」

「すまなかった、許せ」

 

慌てて目を逸らすも脳裏にはしっかりと焼き付いてしまったから離れることは無い。まずい、これは非常にまずい。煩悩が刺激され、先ほどの光景がフラッシュバックされる。

 

「…………朝から不幸なのです」

「飴やるから元気だせ」

「というか兄さん、その銀髪とは知り合いなのか?」

「まあな。マドカもそうだぜ。じゃ、ラウラ、また後で」

「了解した」

「どれじゃ、行くか」

 

電に飴玉をあげて機嫌を直してもらい、俺ら男子共は今日の使える更衣室である第三アリーナを目指して移動した。

 

 

けどさ、結構事ってまともに働く事無いんだよな。

 

「「「…………」」」

 

ズゴゴゴゴ、とでも効果音がつきそうな感じで、廊下が女子の群れで塞がれていた。

 

「おい、何処かにスパイが混じっていたのか? 情報の回り、速すぎるだろ…………」

「知るかよ…………で、どう突破する?」

「突然するのは無理ゲーだと思うけど…………?」

「え、えーと、これはどういう状況?」

 

退路はすでにないし、進行ルートも封鎖されている。窓から飛び降りるしかないんじゃないのか? まるでそうしろとでも言ってるかのように開いているし。

 

「お前ら、五秒後窓に向かって走れ、いいな?」

「了解っと」

「ま、マジで?」

「嫌な予感しかしない…………」

 

よし…………突っ切るとしますか‼

 

「おらぁぁぁぁぁぁっ‼ 走れぇぇぇぇぇぇっ‼」

「「урааааааааа‼」」

「え、えええっ⁉」

 

まず俺が窓に足をかけて跳ぶ。それと同時にナーガをATモードで展開、左腕のワイヤーアンカーを射出、壁に打ち込む。それと同時に降ってくる一夏、春介、デュノアを回収する。何とかうまくいったな。

 

「二度としたくねえな…………」

「は、はひー。死ぬかとおもた」

「めんどいから、このまま行くぞ。時間がまずい」

 

俺はその態勢でホライゾナル・スラスターを起動、ブースト移動で第三アリーナへと向かった。

 

 

「何とか着いたな」

「お前…………なんでそんなに平気なの?」

「慣れ」

「結局それかよ…………」

 

第三アリーナの更衣室についた俺たちだが、早速さっきの一件で疲れた。本当女ってなんなんだよ、下手に男子よりもあるんじゃねえの。

 

「そういえば自己紹介してなかったね、僕は織斑春介」

「そんで、俺が兄の一夏だ。よろしくな」

「俺は紅城悠助だ。よろしく頼むぜ」

「僕はシャルル・デュノア。僕の事はシャルルでいいよ」

「それじゃ、僕たちの事も名前で呼んでいいよ」

 

さて、自己紹介を一通り終えたという事で

 

「さっさと着替えるか。じゃないと、出席簿(バスターソード)の餌食になっちまうぜ」

「うぅっ、それは勘弁…………姉さんのあれは本当に死ぬから」

「でも、実際着替え終わってるんだが、なぁ一夏」

「まぁ、いつも着たままでいるしな」

「ぼ、僕もなんだよね」

「ってことは、着てないのは僕だけってことか?」

 

だんだん冷や汗をかいていく春介。顔も心なしか青い。

 

「じゃ、遅れるなよ(生贄頼むわ)、春介」

「ま、待って兄さん⁉ 言ってることと本音が違うんだけど⁉」

 

本日の授業前に一人の少年の体がグラウンドに沈んだのは言うまでもない。本日も平和なり、ってか。

 

 

「兄さん…………恨むよ」

「悪い悪い、ハハハ」

 

というわけで現在春介の掘り出し作業中だ。首から下が完全に埋まっているため、引っこ抜くのはアウト。

 

「つーか、そんなスコップよく持ってたな、お前」

「元作業機械だからな。他にも色んな工具が入ってるぜ」

 

そのため、ナーガは再び作業員搭乗型重機へと戻った。土木作業用の大型スコップを使い、春介の周りの土をよけていく。これが意外にも神経をすり減らすんだよ。何故か斬れ味がいいから、下手にボディーに触れてしまえば…………後は察してくれ。

 

「ふぅ、除去作業は完了だな」

「すまないな、紅城。手間を取らせた」

 

ここで、あんたのせいだろうが、とは絶対に言ってはいけない。そう、一夏が目で訴えてきた。…………そんなにやばいの?

とりあえず、俺たちも列の方へ合流するとしよう。えーと、俺は…………あ、電と響の間か。

 

「よう、お前ら」

「あ、悠助」

「なのです」

「まぁ、二人ともなんだか楽しそうだな」

「それは、この写真によるもの」

「どれ…………ブフォッ⁉」

 

その写真は、今朝の電のパンモロ写真だった。それと同時に電の赤面…………いつこんなものを撮ったんだ、響は。

 

「やりました」

 

サムズアップするな。反応に困るだろうが。

 

「ひ〜び〜き〜ちゃ〜ん?」

「な、なんだい?」

「一体どんな写真を撮っているんですか⁉ というか、その写真を悠助さんに見せないで欲しいのです‼」

「えー? でも、悠助、なんだか満更でもない顔してるよ?」

「なぁっ⁉」

 

な、なんだ⁉ 俺無意識のうちににやけてでもいたのか⁉ いや、確かにこういうのはレアだし、年相応の反応だから可愛いとか思ったりしてるけどさ…………。

 

「ゆ、悠助さん⁉」

「ぬあっ⁉ に、にやけてねえ‼ そんなバカな真似ーー」

「ーーほう、私の前で私語とはいい度胸だな?」

「あぶねっ‼」

 

いつの間にかいたちーちゃんによって危うく殺されかけた。咄嗟にスコップでガードするも、衝撃が腕へと伝わってくる。あ、あれが出席簿の破壊力なのかよ…………特殊合金製じゃねえのか?

 

「ほう、不意打ちを防ぐとはやるな。よし、これより授業を始める。まずは、専用気持ちによる模擬戦を見てもらう。丁度よく、活気のある生徒がいたからな。紅城、やれ」

 

あ、そういうことなんですね。マジか…………まぁ、やるだけやりますか。

 

「…………了解」

 

俺はナーガを展開する。六角形の発光体が体を覆っていき、わずか0.2秒程度で機体が展開されていた。同時に右の兵装スロットをアサルトライフルにセットする。これが基本装備だからな。

 

「あれが紅城君の専用機?」

「無骨なデザインよね」

「いかにも量産前提って感じっぽーい」

「なんだかうち(アメリカ)の海兵隊みたいネー」

 

様々な言われようだ。まぁ、量産化は検討されていたようだし、あながち間違っちゃいないか。最も、量産タイプにはG型ユニットを装備できないらしいが。

 

「それで? 俺の相手は?」

「慌てるな。そのうちくる」

「すみません! 遅れました!」

「な?」

 

俺は到着した相手に驚きを隠せなかった。なんと、相手は

 

「これより、紅城対山田先生の試合を始める」

 

あの山田先生だったのだから。

 

「では、紅城君、模擬戦お願いしますね」

「あっはい」

 

とりあえず、山田先生に着いていって上昇する。それにしても山田先生が相手か…………使用機体はラファール・リヴァイヴ。フランスの第二世代量産型。拡張に余裕があるから、どんな状況にでも対応可能なマルチロール機。固定武装は無し。さて、どんな戦い方でくるんだろうね。

 

「それでは、試合開始!」

「行きます!」

 

合図と共に、アサルトライフルを放ってくる山田先生。俺はそれを避けながらも、反撃としてアサルトライフルを放つ。銃火器としては平均的な性能で扱いやすいアサルトライフルだが、反面決定打には欠ける。おそらく、グレネードとかでも仕込んではいるだろう。

 

「射撃の腕は中々ですね!」

「そいつは、どうも、っと!」

 

俺は左腕のマルチユニットからグレネードランチャーを選択、40mmHE弾を数発放った。一般的なグレネードだが、破壊力はある。わりと使い勝手のいい武器だからな。ちなみにこの武装のアイデアが蒼龍のアームカノンに受け継がれている。

着弾と同時に爆煙が生じる。が、油断はしない。いきなり撃たれてお陀仏になったら話にならねえ。

 

「そう簡単にはやられませんよ‼」

 

どうやら、肩部に接続されているシールドバインダーが防いだようだ。その証拠に焦げ跡のようなものがついている。

山田先生はライフルを投げ捨て、ショートブレードを展開、俺に向かって高速で突っ込んできた。近接戦もお手の物かよ…………厄介だが

 

「こちらも同じだ!」

 

左腰から対装甲ナイフを抜刀、逆手持ちでショートブレードと切り結んだ。ぶつかった時の振動が腕を走って感覚が鈍るが、そんな事を言ってられる余裕はない。俺は近接戦闘が普通より上くらいだから、きついんだよ。ナイフとブレードの鍔迫り合いが起こる。刀身の暑さ、リーチではこちらが圧倒的に負けている。だが、硬度とグリップの持ちやすさではこちらが有利だ。

 

「やりますね! まさかその機体で近接戦もこなすなんて!」

「そちらこそ! 訓練機でその性能、本当の敵だったらやられてるかもしれないな!」

「ぐうっ‼」

 

ショートブレードを対装甲ナイフで弾き飛ばし、ガラ空きになったところへ、俺は展開しておいたガトリングを浴びせた。無数の弾丸が撃ち込まれていき、そして

 

「そこまでだ!」

 

模擬戦は終わった。

 

 

放課後。

 

「それにしても、悠助ってあんなに強かったのね」

「普通くらいじゃないのか?」

「いや、教師をほぼ手玉にとった時点ですごいから」

 

いつものメンツ+シャルルでアリーナへときていた。訓練目的なのは言うまでもない。

 

「ところでさ、悠助や一夏ってISの訓練するんだよね?」

「それ意外に何があるんだ?」

「いや、もし良かったら僕と模擬戦してくれないかな?」

「それなら、俺がするぜ」

 

そう名乗り出たのは一夏だった。まぁ、最近なんだか模擬戦したそうな顔してた…………ってかこの間やってたばっかか。

 

「それでは、私達は観戦していますわ」

「…………一夏の戦い方、楽しみ」

「おう、それじゃ行ってくるぜ」

 

そんなこんなで模擬戦が始められた。

 

 

二分後。

 

「「「…………」」」

「そうらよっ‼」

「うわぁぁぁぁっ⁉」

 

…………最早一方的な試合展開だった。最初のうちは様子見なのか数回打ち合ってたりしたけど、今じゃそんなことはない。トンファーブレードとブレードライフルによるコンボがひたすら決まっていく。

 

「え…………一夏ってこんなに強いの?」

「しかも、まだ二つしか武器を使っていませんのよ…………」

「…………人間離れしてる」

「あ、ターンのついでにウイングで斬った⁉」

「なんでもありだな、兄さんは‼」

「「剣筋がみえない(のです)」」

 

ほかの面々の反応はこうだ。だよな…………あんな動き、できるやついねえって。しかも、扱いにくい大剣だからな…………あいつ、エースクラスの実力はあるんじゃないのか?

 

「こいつでっ‼」

 

シャルルはシールドをパージして隠してあったパイルバンカーを放つも、一夏はすでにそこにはいなかった。

 

「っ⁉ 一体どこに⁉」

「はいは〜い☆」

 

背後から急襲した一夏は、あまり目立った活躍を見せてないIPビームサーベルで、シールドを斬り裂いた。

 

「そんじゃ、これで終わり」

 

そこからアームカノンを五連射。模擬戦は一夏の勝ちで終わったのだった。ただ一つ、感想を述べるとしたら

 

「「「えげつねえ…………」」」

 

考えることは、どいつもこいつも同じなようだ。

 

「な、なんなの一夏って⁉ 初心者だよね⁉ 僕と同じようなレベルのはずだよね、ね⁉」

「いや、マドカとやりあってたらいつの間にかこのくらいなってたし。それに、俺一年前から乗ってるから」

「「「…………え?」」」

「いやー、誘拐された後束さんにひろわれてさー、その時にこいつを起動させたんだ」

「いや、それよりもそんなに前に動かしてたって事に驚きなんだけど…………」

「まぁ、兄さんとはいつも引き分けで終わってたんだけどな」

 

というか、俺はお前らが怖いぜ。どんな並行処理能力を持ってるんだよ、ビットを同時に操りながら近接格闘戦とかぶっ飛びすぎだろう。なんなの、人間FCSなの?

 

「兄上! ここにいたのか!」

「お、ラウラ。なんだ、お前も訓練?」

「まあな。それよりも、兄上の妻はどちらに?」

「ぶふっ‼」

 

ボーデヴイッヒの発言に、簪が思いっきりむせた。

 

「い、一夏ぁっ⁉ な、何をこの子に吹き込んだの⁉」

「い、いやぁ、祖国に愛する人がいると、ついな…………」

「つい、じゃないよ〜〜〜‼」

 

簪は顔を紅くして一夏をポカポカと叩いている。なんとも微笑ましい光景だ。こういうのをみていると、向こうと比べていかに平和かわかる気がする。

 

「そういえば、自己紹介していなかったな。私はラウラ・ボーデヴイッヒ、ドイツ軍少佐であり、兄上の一番弟子だ」

「俺は弟子をとってねえよ」

「というか、あんたはいつ知り合ったのよ⁉ 毎回毎回やる事ぶっ飛びすぎよ‼」

「いや、千冬姉の様子を見に行った時、こいつが基地の外みたいなとこで一人練習してるのを見つけてさ、それで相手してやったんだ」

「近接格闘戦には自信があったが、一瞬で砕かれたな。気がついたときには、首に手を添えられていたぞ」

「一夏さんって、民間人ですの?」

「次第に兄上には憧れを感じてな、いつの間にか兄上と呼ぶようになっていた」

「その後、マドカと射撃訓練とかしてたわ。マドカがマグナムを片手で撃ったりしてたけど」

「…………マドカまで人を辞めるつもり?」

「私は普通のつもりだぞ⁉」

「てか、千冬さんによくばれなかったわね」

「深夜に行っていたからな」

 

そういえばそんな事もあったな。翌朝に蒼龍とヒュドラが島に帰還してくるときも時々あったし。その度にスクランブル出撃をさせられていたんだが。しかし、そういう事が裏であったのか。そっちのほうは初めて知ったぞ。

 

「ねぇ、それよりも僕気になる事あるんだけど…………」

「なんだい?」

「いや、そこにいる二人って、中学生じゃないよね?」

「「違う(のです)」」

「ですよねー」

 

うん、やっぱりいるんだよな、電と響を中学生扱いする奴らが。でもまあ、見えなくもないからな…………だって身長測ったら140にギリギリ届いてなかったし。同年代なのに、下手に手を出せばロリコン扱いされる、ある意味悪魔の兵器だ。

 

「さて、さっさと訓練でも始めようぜ。このままだと、俺らが来た意味がなくなっちまう」

「そうなのです。早いところ始めましょう」

「それじゃ、私対全員で」

「「「勝てるビジョンが見えない⁉」」」

 

そんなこんなでマドカ対その他(俺と電と響、一夏を省く)の模擬戦が行われた。結果はその他の負けであったが…………。具体的は

 

『ビット、フルオープン‼』

『な、何基のビット出してんのよ⁉』

『軽く十基を超えていますわ‼』

『…………ねぇ、僕達って死ぬの?』

『僕にもわからないけど…………』

『…………ああ、確実に』

『『負けたな』』

『フルバースト‼』

 

こんな感じだな。

 

 

「ひ、酷い目にあった…………」

「あれがマドカだからな」

 

訓練を終えた俺らはアリーナの更衣室にて着替え中だ。まぁ、俺と一夏はそのままでもなんとかなるようなスーツだから着替える必要ないけど。

 

「すみません、男子の皆さんはこちらにいますか?」

「あ、はい。全員います」

 

そう言って入ってきたのは山田先生だった。一体何の用なんだろうか。

 

「そうですか。なら、皆さんに朗報です!」

「と言うと?」

「男子の大浴場が解禁されました!」

「「マジですか⁉」」

 

一気に詰め寄る織斑兄弟とびっくりして後ずさる山田先生。へー、風呂はいれるようになるのか。まぁ、ずっとシャワーで済ませてきたようなものだから、風呂に入りたいという欲はないな。汗と血を洗い流せればそれで十分だし。

 

「はい! 皆さんが頑張っているので、先生、頑張りました!」

 

そう言ってガッツポーズをする山田先生。だが、シャルル以外の野郎共は一気に目をそらした。…………そりゃあ、山田先生の胸部衝撃緩和装甲がでかいんだよ、揺れるし、目に毒ったらありゃしない。それに、俺と一夏の場合、身近にいた女があまり起伏の少ないフレームという事もあるんだがな。

 

「わ、わかりました。ありがとうございます」

「では、使用時間などは後日伝えますので。とりあえず今日は、十分後に一時間ほど解禁します。遅れないできてくださいね?」

 

山田先生はそうとだけ言って更衣室を出て行った。

 

「…………兄さん」

「…………春介、俺の言いたい事わかるな?」

「…………ああ、今ならわかるよ」

「…………よろしい、ならば」

「「突撃だぁぁぁぁぁぁぁっ‼」」

「風呂が! 湯船が! 僕を呼んでいるっ‼」

「うぉぉぉぉっ‼ 漲ってきたぁぁぁぁぁぁっ‼」

 

全力で走り去っていく織斑兄弟。その速さ、マジで人間かと思えるほどだった。織斑って人外の血を引いているのか?

 

「な、何だったんだろう、今のは?」

「さあな? …………まぁ、こっちの方が状況はいいか」

「? 何か言った?」

「いや、何も」

 

思ってもいない好条件ができた。あいつらの風呂好きに今は感謝しておこう。

俺は確かめなければならないからな。

 

「シャルル」

「何ーーうわっ⁉」

 

俺はシャルルが振り向いた瞬間に右腕をホールド、一気にひねりあげる。空いている右手はいつでも撃てるように、ハンドガンホルスターのある腰に伸ばしてある。

 

「い、いきなり何をーー」

「ーー正直に答えろ」

 

少し脅迫も含めて、ハンドガンを抜き取り後頭部へ押し付ける。あまりこういうのは担当じゃないから下手だがな…………何もやらないよりはいい。

 

「お前は一体何者なんだ? シャルルーーいや、

 

 

 

 

 

 

 

 

女スパイさんよォ」




えーと、この作品で登場している一夏の専用機である蒼龍の仮組が終わりました。

一「作る暇あったら執筆しろよー」

……いいじゃんかよ、ガンプラで再現したんだから

【挿絵表示】


塗装とかはまだ先になりそうです(リアルがめっさ忙しいので)
文は進まない代わりに、あたらしいネタしか思いつかない……
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