インフィニット・ストラトス 平和を求める者   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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01.出会い

「博士、ここは何処なんだ?」

「ここは束さんの隠れ家。世界的にも有名だし、国際指名手配されてるしね〜。この手作り無人島にいるしかないんだよ」

 

無事ゲートを越えた俺と篠ノ之博士がいるところは、どうやら彼女の隠れ家、アジトであるようだ。ナーガの座標データもこの世界のものに置き換わっているから何と無くはわかる。どうやらセレベス海上の島なんだが…………さっきさらっととんでもない事を言ったよな。

 

「…………手作りの無人島ってーー」

「ああ、それ? いやーちょうどいい島が無くてね、ISでちょちょーっと潜って海底火山に刺激与えて来てさ作っちゃった♪」

「さらりとアホな事言い出すんじゃねえ‼」

 

最早、博士といるとキャラが壊れる。もう一層の事、キャラ崩壊でも起こしてやろうか? というか逆にキャラを維持するのも疲れるしな…………素を晒せ出すのもありか。

 

「まーまー落ち着いて。今から中に案内するよ」

 

博士がそう言って指を鳴らすと、何やら島自体が揺れ始めた。な、何が起きてるんだ? そして、地面がせり上がり、ハッチらしきものが姿を現し、スライドして開く。

 

「何処の漫画とかアニメ基準で作ってんだよ、おい‼ どう考えてもジ○ブローじゃねえか‼」

 

ちなみに俺の世界では歩兵搭乗型戦機が世に出回っている中、アニメではガ○ダムシリーズが人気で、芝本の変態がそれを真似たATを作り、ナーガの中に格納させやがった。というか、ナーガも何と無くは近いんだよな…………。

 

「あ、わかる⁉ あれ束さん感動しちゃって、真似て見たのです!」

 

篠ノ之博士は案の定、芝本と同類だった。

 

「…………とりあえず、中を案内してくれ」

「はいはーい、こちらですよご主人様☆」

「死ね」

 

あまりにもふざけた対応だったのでナーガのバスターナックルで殴ったが、何も問題はないよな?

 

 

「ここが居住区だよ〜…………ってか、さっきのは酷くない? 流石の束さんでも死ぬかと思ったよ〜」

「劣化ウラン弾を撃ち込んで欲しいのか? そこまでのマゾならこちらも喜んで撃ってやろうじゃないか」

「ごめんなさいしんでしまいます」

 

というわけで一通り中を見終わった俺。格納庫もあれば工廠もあり、居住区の風呂場には温泉まであった。だがしかし、研究者体質のせいか、食料のほとんどが栄養補給のみしか考えてない合成食品。肉とかそういうのはナシ。栄養補給剤では腹は満たせないので、燃料切れしやすい俺にとってここは地獄にも等しい環境だった。

 

「とりあえず、食糧の備蓄がくそな為、後々補給するとして…………今日のメシ、どうするんだ?」

「ふっふっふ…………こんな事もあろうかと! これを見よ!」

 

食糧が乏しいこの環境で今日のメシを如何するかと博士に問うたら、あるものを出して来た。それは箱に入っている。も、もしかして…………

 

「ボ○カレーネクスト⁉ しかも、特盛り用⁉ こっちにもあったのか⁉」

「え? そっちの世界にもあったの? 妙に繋がりがあるんだねえ、この世界」

 

ありがたい事にレトルトカレーが存在していた。しかも、特盛り用だ。俺の腹は完全に満たされる事だろう。ただし、悲しいかな。ここの備蓄がくそな為、米は貯蔵されていなかったのだ…………カレーのみかよ。まぁ、食えないよりはましだけど。

 

「そういえば米なかったね…………何かないかな〜、ってあった」

「米か⁉」

「いや、大量の日本産小麦粉」

「それはそれですげえな」

「これでパンでも焼く?ーーって、材料ないんだった…………」

「水で溶いて焼くだけでもなんとかならんか?」

「そうしようか」

 

米はなかったが、代わりに薄焼きと俺が呼んでいる水溶き小麦粉を薄く焼いたやつを作る事となった。まぁ、何故か小麦粉一トンほどあるから、腹の満たせる分だけ作れるだろうよ。

 

「よっし、それじゃ作業するかーーそういや、水とかはどうしてんだ? 海水を使うわけじゃないよな?」

 

俺の懸念。蛇口から海水が出てくる事。いくらなんでもそれはヤダ。健康には気を使っているから、塩分の取り過ぎだけはしたくない。高血圧になるからな。

 

「流石に蒸留した水あるけど…………今五リットルほどしか残ってないから、海水で溶いて。塩っ気も付くからいいんじゃない?」

 

蛇口からは出てこないらしく安心したが、残りが五リットルと心許ない。仕方ない、博士の提案通り海水で溶くか…………って

 

「アホか⁉ 3%の塩分とか死ぬわ‼ 塩っ気どころじゃなくて、塩そのものだ‼」

「今蒸留機を使って補給してるから、そのガトリングガンだけはやめて‼ 劣化ウラン弾装填してるでしょ⁉」

「ああ。できれば使いたくはないんだからよ…………冗談はほどほどに。俺も気をつける」

「あ、蒸留する海水が足りなくなってきたな〜。ゆーくん、汲んできてくれる?」

 

冗談に銃弾で返そうとしたが、そこはなんとか自重する。実際劣化ウラン弾はG型ユニット標準搭載だからな…………。

というか、蒸留元が足りなくなってきたらしく、ポリタンクを渡される俺。満タンにしたら、人じゃもてなさそうだな。まぁ、水は死活問題だからな、早いとこ行くか。

 

「了解した。あと、今ある分で適当に薄焼き作っといてくれ」

 

俺はそう言ってアジトから出る。すると潮風が俺の頬を撫でて行く。割と心地がいいものだ。嫌いではない。

 

ーー次に生まれてくる時は…………平和な世界だといいな…………ーー

 

「っ! 今の声は一体…………」

 

そんな風に風の心地よさに浸っている時だった。頭の中にそんな声が響いてきた。今にもその灯火が消えてしまいそうな弱々しい声。そして僅かにだがあたりに漂う血の匂い。別に俺の嗅覚が異常に発達しているわけではないが、どうも毒物とかを匂いで判別していた頃があるから、ある程度は薄くても感じられるのかもしれない。

俺はポリタンクをその場に置き、血の匂いが漂ってきている方へ向かった。

 

 

「何があったんだ…………?」

 

その血の匂いの源へ向かったが、そこには信じられない光景があった。多分、俺より年下くらいの少女が怪我だらけで流れ着いていた。一見傷は浅いが、如何せん箇所が多い。失血死などあまり想像はしたくないが、念の為脈を確認するべく、首の近くにある動脈へ指を当てた。

 

(脈はあるな。それに息もしている)

 

どうやら、生きているようだった。しかし、どうしたらいいのだろうか。戦場でもないからこのまま見捨てるなんて事は俺にはできそうにない。

俺は彼女を抱き上げ、博士の元へ連れて行く事にした。その時、傷に響いたのか彼女は顔を少ししかめるが、何か安堵したのか安心した顔をなった。

 

(…………可愛いな、この子)

 

不覚にもそう思ってしまう俺がいた。

 

 

「それで連れて来ちゃっと」

「ああ。見捨てる事はできないからな」

「それには束さんも同意見だよ。ゆーくんが見捨てるような人間じゃなくて良かった」

 

博士の合意も得て、あの少女を治療する事にした。と言っても傷口の消毒や包帯を巻いたりしただけだけど。今は俺らの横にあるベッドに寝かされている。

 

「でも、なんでこんなところについたんだろうね?」

「近くで船舶の事故とかあったか?」

「いや、ここ数ヶ月そんな事起きてないよ」

 

流石の博士でも彼女が漂着した理由がわからないらしい。まあ、普通船舶の事故とかじゃあんな傷そうそうつかないだろうしな…………。

 

「ま、目を覚ましてから話を聞かせてもらうしか無いよね」

「そうだな。それが近道か」

 

一先ずの結論を出し、なんとか用意できたメシでも食いに行こうかと立ち上がった時だった。

 

「…………ここは…………どこ、なのです…………?」

 

彼女が目を覚ました。声を聞いた俺たちは百八十度回頭、彼女の方へ向かった。

 

「ここは博士が勝手に作った無人島の中にあるアジトだ」

「あ、あなたは…………?」

 

彼女は少しおどおどとした調子で俺の名前を聞いてきた。

 

「俺か? 俺は紅城悠助。君は?」

「特Ⅲ型駆逐艦暁型四番艦、(いなずま)です」

 

…………。

 

「博士ー、すまん、俺中二病患者を拾ったかもしれない」

「ひ、酷いのです‼ 電は中二病でもなんでもないのです‼」

 

電はそう言って反抗してきた。と言っても、幼い顔立ちな上に涙目…………あからさまに犯罪臭しかしねえ。

 

「わかったわかった、信じるから泣くな。ただし後でちゃんと理由を話してくれ」

「本当…………ですか?」

「ああ。ここで嘘はつかん」

 

若干しんみりとしたムードになっていたが、その空気をぶち壊す人間が一人。

 

「はいはーい、みんなのアイドル、篠ノ之束だよ〜。よっろしく〜」

「よし、今からその頭吹き飛ばしてやる」

「ごめんなさい、調子に乗りました、許してください、あとその大型のライフルを下げて」

 

とんでもない登場の仕方をしてきやがったからブラストライフルを突きつける俺。中身は多目的榴弾、対非装甲・装甲目的用弾頭である。

 

「ふふっ、なんだか那珂ちゃんや愛宕さんみたいな人ですね」

 

その後ろでは電が何かを思い出すかのように、そして笑っていた。頭に巻かれた包帯さえ無ければな…………傷がよくなる事を祈ろう。

 

「…………まぁ、自分から言ったが、これがここの主、篠ノ之束、変態だ」

「ちっちっち、束さんは度のつく変態技術者なのだよ〜」

「死ぬか?」

「モウナニモイイマセン。そういえば電ちゃん、で合ってる?」

「は、はい」

「そうだね〜、いーちゃん? しっくりこないな〜。ねえ、漢字でどう書くのかな?」

「で、電気の電なのです」

「よし、決まった! (でん)ちゃんで決定〜!」

 

博士、おそらくルビタグを振らないとよくわからないアダ名だと思うぞ…………。

 

「それで、電ちゃんはなんでこんなところに流れ着いちゃったの?」

 

博士が一番聞きたい事を聞き出してくれた。あ、本題忘れるところだった…………こっちにきてからいろいろありすぎて記憶能力でも低下したんだろうか。

 

「それは…………電もよくわからないのです」

「どういう事?」

「確か、電は瑞鶴さんや陸奥さんを含めた第一艦隊と響ちゃんと金剛さんを含めた第二艦隊で、セレベス海の深海棲艦掃討に向かったのです…………」

 

話を聞くにその深海棲艦というのは人間や電をはじめとする似た存在、艦娘達の敵よのうな存在らしい。沈んだ艦の怨霊だとか艦娘の成れの果てとか言われているらしいが、詳しい事は彼女も知らないようだ。ただわかっている事は、あらゆる海域に出現し無差別に攻撃をしかけてくる事だけ。…………電はそんな奴らでも助けたいと言っているが。

 

「ですが、電のいる鎮守府の最高戦力である陸奥さんに山城さん、日向さんに金剛さんですら中破に近いダメージを受けてしまって…………」

「沈んだ、のか?」

「いえ、撤退命令が出されましたので、海域を離脱しようとしたのですが…………」

「回り込まれたりしたの?」

「…………はい。でも、陸奥さん達はこれ以上ダメージを受けてはいけない状態…………戦闘続行は不可能と判断したので…………電が囮になったのです、みんなを逃がす為に」

「…………」

「…………」

「結果として、直撃をもらっちゃいまして沈んでしまったのですけど…………でも最後に電に一つだけ通信が入って、無事が確認できたので安心したのです。そして目が覚めたら」

「ここにいたと?」

「はいなのです…………」

 

電はそういうと顔を俯かせ、俺からは表情を読み取る事はできなくなってしまった。それもそうか。彼女にとって辛い事を思い出させてしまったわけだからな。

 

「しかし、セレベス海に沈み、セレベス海に現れるとは…………何かあるのか、この海域に」

 

ふと、呟きが漏れてしまった。実際気にもなっていた事だしな。

 

「艦だった頃にもセレベス海で沈んでいるので二回ですね、沈んだのは」

「…………さらりと泣ける事言うな」

 

…………最早呪いでもかかっているのであろうか? 同じ海に二度沈み、そしてその海に生まれたなんて、どんな縁があったんだよ。俺はそう思わずにはいられなかった。

 

「…………できるのならあの人にもう一度会いたいなぁ」

「あの人って?」

「最後の通信をくれた人です。電によくかまってくれた、優しい人なのです!」

「そんで、誰なんだ?」

 

この時、俺に予知能力とかそういうのがあればと、俺は後悔した。

 

「霧島さん、なのです」

 

彼女の口から出てきた答えに自然と身構えてしまった。霧島…………もしかして、ルリア…………? いや、そんな事はないはずだ、あいつは俺と同じ世界の住人だし、俺と再会するまで戦争もテロも見た事のないやつだからな。俺は一先ず深呼吸をして心を落ち着かせた。そして、電のいう霧島は別の存在であると判断した。

 

「頭はいいんですけど、夜戦になると敵戦艦をタコ殴りにしちゃって…………インテリヤクザなんて名前もあったのです。でも、本当は優しくて面倒見のいい、電のお姉さんのような存在だったのです。あ、本当のお姉ちゃん達は、暁ちゃんと響ちゃん、雷ちゃんの三人なのですよ」

「そうなのか(優しいってのはあいつに似ている…………そもそもこいつの雰囲気がルリアに似ているな)」

 

霧島と名のつくものは皆性格がどこか近い点でもあるのだろうか。俺はそう思った。

 

「それで、電ちゃんはこれからどうするの? 話を聞く限り世界をまたいじゃったみたいだよ」

「そ、そうなのですか? …………もう、元の場所には帰れないのですか?」

 

電は涙目になってそう聞いてきた。言葉に迷う。まぁ、別に俺が戻れないからと言って、こいつが戻れないという通りは無いしな。

 

「戻る方法が見つかるまでここにいたらいいんじゃないのか?」

 

いつの間にかそんな言葉が勝手に出ていた。電は驚いたような表情をしているが、内心俺も驚いている。何故だろうか、俺はこいつの事を放っておけない。ルリアと同類の匂いがする。

 

「別に博士も構わないだろ?」

「そうだね。それに電ちゃん、IS持ってたし」

「あいえす…………ですか?」

 

ーー博士、電に説明中ーー

 

「なるほど…………電はそのISを持ってたのですね」

「うん。機体名は[デストロイ・TYPE-Ⅲ(特Ⅲ型駆逐艦)]。兵装は12.7cm連装砲、10cm連装高角砲、61cm三連装魚雷発射管。あと近接用にイカリハンマーがついてるね」

「それは…………あの時の艤装と同じ装備なのです」

「そうなの? でも、この装備凄いよ。全ての火器に回復弾なんてものもあるし、まるで戦う事を避けたような…………」

「なるべくなら戦いたくは無いですから…………平和が一番なのです」

 

ここにもいた…………平和を願う因子が。俺も戦場に身を置いていたし、彼女も戦いに出ていた。そういった者の中には、戦いの凄惨さを知り、身を引く者もいる。きっと彼女も同じ思いをしたのだろう。まぁ、俺は戦うしかできないんだがな…………戦いのない世界を作る為に今を戦うなど矛盾した考えであるが。

 

「電にはおあつらえ向きってことだな」

「そういってるゆーくんも人のこと言えないよ。その籠手、ISコアが組み込まれている歩兵搭乗型戦機だっけ? 便宜上ATIS(アティス)って呼ぶよ、アームド・トルーパー・インフィニット・ストラトスの略だね。その機体[RGATX3-71 ナーガ]、背部拡張ユニットの換装を現地で行える画期的なシステムを搭載した陸戦型歩兵搭乗型戦機」

「ついでに言うと、変態技術の集まりな」

「まぁね。でも、この装甲材質、オリハルコニウム合金だけど並のISの武器では破壊できなさそうだし、アサルトライフルの時点でハイブリッド・ナノハニカム装甲を破壊できるんだよ」

「つまり、異常ってことか?」

「そうだね〜」

 

博士はそう言うと、データの表示されているディスプレイに見入った。てかオリハルコニウムって第三から第四世代ATの標準装甲だったはず。ちなみに主要採掘国はアフリカや南米の国々。向こうではそのおかげで貧困など気にならないほどの急成長を遂げた。

 

「悠助さんって前世は戦艦だったのですか?」

「それはない」

 

電のしょうもない質問を軽く答えて流し、俺は博士に向いた。

 

「博士、その異常な機体だが、もう一機あるぞ」

 

そう、ナーガの中に眠る機体。俺は戦闘傾向として使う事はできないが。

 

「それって何? 知らないんだけど…………」

「今出して見る。ーー封印指定解除、TCM接続、解放する(パージ)

 

籠手のパネルにコマンドを打ち込み、中で行われていた封印指定(TCM(トルーパー・コア・モジュール)の取り外し、これが無いとただの重い鉄塊)を解除し、機体を取り出す。俺も久しぶりに見る機体だ。大型のブースターユニットを搭載し、それぞれ違う折り畳まれた大剣を両手に構え、首回りのアンテナに囲まれた頭部にある蒼のブレードアンテナの下にはメタリックグリーンに輝くデュアルアイ。基本色は眩いほどの白。

 

「[RATX4-01 蒼龍]…………インサニティ粒子を攻性変化を主軸にあいつ(芝本)が開発した機体だ」

「かっこいいのです…………!」

 

電はどうやらこの機体を気に入ったようだが、どう見てもこの機体エ○シアに近いんだよな。何を思ってこんなデザインにしたんだあいつは…………

 

「そ、それで装備は? みたところ両腕の大剣しかないようなんですけど…………」

「みてくれはそうだろうけどな。まず右腕の武装は可変ブレードライフル。IPCの施された大剣にIPライフルを組み込んである、近・中距離兵装だ」

 

IPCとはインサニティ粒子コーティング技術であり、芝本が考案した変態技術だ。各部にあるコネクターに接続される事により、ジェネレーターから生成されるインサニティ粒子を一定形状で保つ事が可能である。その場合、物理ダメージは遥かに高まり、オリハルコニウム合金を容易に切断・貫通させる事が可能だ。

 

「左腕の大剣はトンファーブレード。トンファーとしても、ブレードとしても使用が可能な近接兵装だ。後ろ腰にある二本の棒状の物体はIPビームサーベル。攻性インサニティ粒子をそのまま剣状に形成した兵器で、出力調整もできる。格納されているものでは、ハンドバスターソード。刀身が高純度アダマニウムで鍛造された兵装だ」

 

アダマニウムはオリハルコニウムほどではないが、高い強度を誇る。純度次第では、厚さ50cmのオリハルコニウム合金を切断することだって可能だ。ちなみにハンドバスターソードの純度は98.87%。予算とか度外視した結果である。この武装一つで影蛇二機生産できるんだよな…………

 

「あとはブースターユニットにあるブレードウイング。刀身の一部にIPCが施してある。そして、この機体最大の武装が独立機動武装[蒼鱗]。近接と射撃の両方ができ、そのブレード部はインサニティ粒子の結晶から削り出されている。ただし、並列処理能力が無ければ使った瞬間に廃人確定の兵器だ」

 

まあ、可変ブレードライフルの刀身の一部にもインサニティ粒子の結晶体が組み込まれているんだよな。それにIPCときたら…………最早リミッターが必要かもしれない。

 

「ははは…………ISが破壊されちゃいそうだよ、粉砕の方で」

「人間の乗るものではないと思うのです⁉」

「誰も乗れる奴がいない上に危険だからの封印指定だったんだぞ。まあ、乗れる奴が出たらそいつに託すつもりだ」

 

だが、高速高機動近接戦闘を行いながら、並列処理できる奴がいるのだろうか? いたら才能に恵まれた奴だな。

 

「それじゃ、機体はこっちで預かるとして…………ご飯にしよっか!」

「あ、そういや忘れてたな。三人分あるんだろ?」

「もっちろん! さ、電ちゃんもご飯食べよ!」

「い、いいのですか?」

「いいも悪いもないだろうさ。ついでに、お前もいずれ社会に出るだろうし、電だけじゃ不都合が出るだろ」

 

実際、電には俺たちにある苗字が存在していない。それは少々不憫だと思った俺は、かつて艦だった頃の彼女の艦長達を調べた。その中に一人偉大な艦長がいた。それは戦艦大和の艦長を務めた男。

 

「お前は今日から、有賀(ありが)電だ。よろしくな」

 

有賀艦長からいただいた。おそらく、彼女には相応しい苗字であると俺は思っている。

 

「その…………そ、その…………ありがとう」

 

彼女は顔を赤らめながらだが、年相応の笑みを見せてくれた。やはり彼女には笑顔が似合っていると思うな。彼女に辛い思いはもうさせなくていい…………平和な世界を見せるしかないな。

 

「いいって事よ」

「ほら、早くきてよ〜。カレー、冷めちゃうよ」

「カレーなのですか⁉ 今行くのです!」

 

元気だなぁと思いながら、俺もまたその栗色の髪を追うのだった。

 

 

 

 

 

「そういえばさ、電ちゃんって何歳?」

「14歳なのです」

「俺の一つ下か」

「いや、ゆーくんの細胞なんだけど、一年ほど若返ったみたくて…………電ちゃんと同い年だよ」

「ま、マジで⁉」

 

意外な事実に驚く俺。ふぅ、ロリコンにならずにすんでよかった…………って、何を考えてるんだ俺は‼

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