インフィニット・ストラトス 平和を求める者   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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今回短めです。


03.休日

あの日から半年近い日が過ぎて行った。その間にも色々な事があった。

まず一夏が蒼龍を起動させた事。蒼鱗を使用しながらの高機動格闘戦闘を難なくこなし、彼奴はもう人からの進化を促されたのかもしれない。彼奴自身から聞いた話だが、どうやら相当蔑まれ、疎まれ、出来損ないと言われていたらしく、精神的にも壊れかけていたが、今の彼奴にはそんなものは感じられない。蒼龍が支えになってくれたのが、彼奴を立ち直らせる要因なのかもな。

次に蒼龍の中からまた新たな封印指定を受けたATが出てきた。機体名「ヒュドラ」、蒼龍の随伴機である。狙撃用IPライフルやブレード装備IPピストルなど射撃戦に特化したその最大の特徴は、大量のシールドビットとガンビット(蒼鱗も分別上はブレードビット、以降蒼鱗をブレードビットと呼ぶ事にする)。シールドビットは最大十九基、ガンビットは十六基装備してある。さらに狙撃時にはフォロスクリーンと呼ばれるものが展開し、ガンカメラまで現れるものだから、とんでもない精密射撃が可能。

こんな射撃戦に特化したヒュドラの操縦者になったのは、マドカだ。コアも無事適合し、今は彼女の専用機として扱われている。

その彼女の技能だが…………もうぶっ飛んでいやがる。同時に全ビット三十五基を扱い、自身と一夏を守りつつ、二丁拳銃で乱れ撃ったり、狙撃したり…………最早人であるのかわからない。どんな並列思考処理できるんだ? ちなみに俺は無理。

こいつら、いつも博士の仮想敵目標を相手に訓練している。最も千冬(ちーちゃんの本当の名前)のデータを元に作ったせいで、日に日に強くなってきているんだが。俺が余裕で勝ってしまったから尚更熱がこもり始めてんだよな…………。

そして次、俺らの機体、ATISにリミッターが掛けられた。と言っても、武器の出力云々だけだが。アサルトライフルの時点で凶悪な俺らの武装。最大の破壊力を誇るレールキャノンにいたっては絶対防御を通り越すことが判明。よって実弾兵器は炸薬の量を減らした弾薬を別に用意し、IP兵器及びIPC兵器はその出力を下げられた。具体的には100から45までカットされた…………まぁ、扱いは今までと変わりないからいいんだけど。

まぁそんなこんなでいろんな事があったんだ。電の奴も飯作りの技術上がってきたし、博士にいたってはネットで知り合った人達とオフ会に行ったしな…………いいことばっかしか起きてねえ。

でも、一つだけまだ起きてねえ事がある。

 

(まだ、お前は俺の夢にきてくれないんだな…………ルリア)

 

あのヘタレ(ルリア)と夢の中であってない事だな。

 

 

 

 

 

そんな俺だが、現在日本本土の方に来ている。駅の前にある時計台の下で待ち合わせ中だ。無論、セレベス海のほうから来たのは言うまでもない。

というか

 

『ゆーくんも電ちゃんも、ずっとここにだけいるってのもなんだし、出かけて来たら?』

 

と言われ、着替えさせられ、何やらテレポートマシンに乗せられ、ここに来たと言うわけだ。ジーンズに黒のシャツとジャケットを羽織っているだけだが、普通に社会に溶け込めているからなんとかなってはいるか。それにしても電の奴遅えな。待ち合わせ(博士の奴が電の服を見繕ってるため遅れるとの事。てか、電が普段セーラー服以外着ているのを見た事ねえ)から五分過ぎちまったんだが…………大丈夫、だよな?

 

「ごめんなさい! 遅れてしまったのです!」

 

そんな事を思っていると、聞き慣れた声。俺の目には栗色の髪をした少女が遅れた事に対して謝罪している姿が見える。間違いない電だ。

 

「あの…………あ、あの…………怒って、ますか?」

 

っと、いかんいかん。無言で考えていたら電に恐怖を植え付けてしまったようだ。

 

「いや、そんなに待ってねえし、怒ってはいねえ。そもそもお前、怒られるような事したか?」

「ま、待ち合わせに遅れた事…………」

「女は時間がかかるものだろ? なら仕方ないんじゃないか」

 

ちなみにこれは一夏から聞いた事である。なんでも中学一年の時から現在は不明だか付き合っている彼女がいるらしい。水色の髪をした眼鏡っ娘。たまに酒を飲ませると、その彼女の惚気話を延々と聞かされる羽目に合う。名前は簪って言ってたっけな。

閑話休題。

それでまぁ、出かけたらしいが、女というものは服選びやら、化粧やらで色々と時間がかかるそうだ。俺が出かける前にもそう言われ、遅れても電を怒るなと言われた。いや、怒る気ねえし。

 

「さ、行こうか。あまりここに長くいるのもなんだしさ」

「そ、そうですね」

「…………」

「…………」

 

…………気まずいぞ! 頼む、何か喋ってくれ電!

 

「あの…………」

 

そんな切なる願いが届いたのか、口を開いてくれた電。

 

「て、手を繋いでもらっても、いいですか?」

 

だが、口から出て来た言葉は想像を絶する破壊力を持ったものだった。ぐはぁ、やめてくれ、その少し弱気な声で言うのは。あと、自然と上目遣いになっていることに気づけ。その目は卑怯だぞ…………。

ちなみに電の服装だが、いつものセーラー服と違って年相応の女の子が着るような服だ。具体的にいえば、白のカーディガンの下に水色のワンピース、あといつもの黒ソックス(なんでも、前の世界で無理やり姉達に黒タイツを履かせられたのがトラウマになりかけているとか)。

 

「あ、ああ。それくらいならいいぜ」

 

そういって俺は電の手をとった。柔らかい感触とかぐわしい匂いが感じられる。そこにある女子の体温に、俺は妙にどきりとさせられたのだった。

 

 

 

 

 

「…………束さん、あの二人って付き合ってるんですか? 妙にお似合いなんですけど」

「確かにね…………長い間暮らしていたけど、ここまでとは」

「というか、意識し過ぎているだろう…………初々しいな」

 

影から二人の姿を見守る三人の姿があったとか。

 

 

 

 

 

「〜〜〜♪」

「えらくご機嫌だな」

「こういう平和な時間が大好きですから」

「まぁな。それは俺も同感だ」

 

俺は電との買い物をかなり満喫していた。といっても、俺は特に必要な物は無いし、電も物欲が無いからな…………ただ適当に見回って、談笑して楽しむ、それだけでも十分だ。

ただ一つの問題といえば、周りの目線か。俺と電はそこそこの身長差がある。俺は173cmだが、電はおそらく140cmない。端から見ればロリコン、誘拐犯と思われてもおかしくはない。だがあえて言っておく。俺はロリコンじゃねえし、電と同年代だ。何も捕まるような要素はない…………はず。

 

「…………」

 

しばらく歩いていた時、不意に電が立ち止まった。なんだ、一体?

 

「どうした? 何か欲しい物でもあったのか?」

「べ、別になんでもないのです」

 

そう口で言ってはいるものの目線は明らかに違う方を向いている。その先にあったのは…………たい焼き? もしかしてあれが欲しいのか?

 

「悪りぃ、少し腹減ったからなんか買ってくる。少し待ってろ」

「あ…………」

 

俺は一旦電と別れ、たい焼き屋の方へ向かった。丁度腹も減ってたからな。…………小倉あんでいいか。

 

 

「間違って二つ買って来ちまった。一個食わないか?」

 

無論嘘である。普段欲も何も言わず、ドジを踏もうがなんだろうが、努力しているこいつは、誰かに甘える事を知らないのか? そんな事は無いと思いたいが…………

 

「いいのですか?」

「俺がいいと言っているんだ。食っておけ」

「でも…………」

「こういう時は受け取っておくのが礼儀ってものだぞ」

 

そういって俺はたい焼きの入っている紙包みを電に渡す。電の奴は一瞬驚いた表情をするが、それもつかの間。

 

「優しいですね…………悠助さんは」

 

目を閉じて何かを呟いた。生憎、その声は周りの喧騒に消されて聞こえなかったが。

 

「それじゃ、いただくのですーーあちっ」

 

電はたい焼きを食おうとするも、まだ熱かったようだ。というか、予想以上に熱かったのか、火傷してそう…………このドジっ子、この先不安しかねえ。

 

「! 美味しいのです!」

「はは、そいつはよかったな」

 

女というのは甘い物が好きなのだろうか? 電はたい焼きに噛り付くとご満悦そうな表情をする。本当に幸せそうだよな。

電には笑っていて欲しいと、俺は思っている。他人の喜びを一緒に喜び、他人の不幸を一緒に悲しむ…………そんな心優しい奴に涙は似合わない気がするんだよな。

本当に純粋な笑顔。俺はその笑顔が好きだ。だから…………守りたい。

 

「それにしても、なんだか嫌な感じのする人と会ってしまったのです…………なんというか」

「腐った思考でも持っていやがるのか?」

「…………そんな気がしたのです」

 

たい焼きを食い終えた俺らだが、どうもこの世界最大の膿のようなものと遭遇したらしい。

女性権利団体。

この世界をISというものをダシにして権力を得ており、誰構わず男から金を巻き上げる、奴隷のようにこき使う、そして男と一緒にいる女までを粛清する、圧力団体だ。

俺と電はそんな思考の連中が嫌いだ。男女は皆平等であるはず…………戦場は無情だが、それを否が応でも伝えてくれた。一歩踏み出せばいつ死ぬか分からない。それは男も女も同じだった。だが、この世界はどうだ? ただ椅子に踏ん反り返っているだけの連中が、男達が必死になって得た権力を我が物のように使い、男を虐げる。かつての男尊女卑の反対だ。それに…………ISというものを使える可能性があるだけで威張ってんじゃねーよ、という話でもある。だって誰でも使えるらしいし。

 

「…………なんで人は差別とか区別とかして生きているんでしょうか…………電には分からないのです」

 

電はため息交じりにそんな事を言う。

 

「仕方ないんだ…………初めからそうだった、人は誰かと比べられて生きてきて、そして自分を守るために自分より弱い存在を作りたがる…………そういうもんなんだ」

「悲しいですね…………」

 

自分で言っていて悲しくなってきた。俺の答えは最もなものなのかもしれないし、違っているのかもしれない。だが、今は

 

「まぁ、そんな辛気臭い事は帰ってからでも考えようぜ。せっかくこっちまできて気分転換してるんだ。羽休めはしっかりしておこうぜ」

 

そんなシリアス、どっかに捨てちまえ!(某地球連邦軍少尉風に)

こんな日まで辛気臭い考えしてても何もいい事なんてないし、余計に疲れるだけだ。

 

「そうですね。それじゃ、今日は思いっきり楽しむのです」

「その意気だ。まぁ、またそこら辺をほっつき歩いて見回る程度だけど」

「それじゃ、早速行くのですよ!」

「おい、ちょ、引っ張るな」

 

俺は電に手を取られそのまま人混みの方へ引っ張られて行った。その小さな手から伝わってくる温もりに、俺は再び鼓動をはね上げてしまうのだった。

 

 

 

 

 

「はにゃぁぁぁっ! しょ、衝突してしまったのです…………」

「マ○オカートじゃよくある事」

 

 

 

 

 

「…………なぁ、マドカ。あの二人、親子にしか見えないのは俺だけか?」

「いや…………私にもそう見えるんだ…………年は私達と同じはずなのに」

「もう、早くくっついちゃいなよ! 焦れったい!」

「…………あぁ、簪は今頃なにしてるんだろ。連絡はちょいちょいとってるけど」

 

見守る三人も、二人の初々しい姿に焦ったさを感じているようだ。

 

 

 

 

 

「とても楽しかったのです!」

「俺も久々に楽しめたかな。電の可愛らしい悲鳴も聞けたし」

 

俺はそういって電をからかう。うん、あんな声初めて聞いた。まぁ、可愛らしいから許す。…………って、見事にロリコンへと毒されてる気がしてやまん。いや、電は体がロリなだけで、年齢的には問題ないんだ。

 

「う…………そ、それを言われると、少し恥ずかしいのです…………」

「でも、実際可愛かったからなんとも言えないんだがな」

「え…………?」

 

電は驚いたような表情をして俺を見てくる。なんでそんな鳩が豆鉄砲を食らったような顔を…………待てよ、俺は今なんて言った? …………完全に落とし文句じゃねえか⁉ 何俺はそんな事を平然と言ってるんだ!

 

「え、あ、あうぅ…………」

 

ほら見ろ! 電がオーバーヒート寸前になってるぜ! 顔は真っ赤だし…………もうどうしたらいいんだよ! 俺、年齢=彼女いない歴だし!

 

「そ、そのだな、何か気に障ってしまったか?」

 

当たり障りのない言葉で電を現実に戻そうとするが、肝心の電は

 

「電が可愛い…………ふにゃぁ〜、そんな事を言われるなんて、電はとても嬉しいのです〜」

 

…………ダメだ、完全に夢の世界に行ってやがる。こういう時はデコピンで

 

「はうっ⁉」

「現実に戻って来い」

 

一気に戻してやる他ない。ちなみにこの方法だがルリアにもよく効いた。親父のを食らうと頭蓋骨に罅が入りそうになる。あれは指弾では無いのだろうか?

 

「…………」

「…………」

 

結局さっきの一件のせいで再び無言の時間に突入してしまう俺と電。何と無く話し辛い空気が形成されてしまっていた。

 

「…………でも、電は嬉しいかったのです」

 

電は耳を澄まさないと聞こえないような声でそう言った。

 

「例えそれが嘘でも、言ってもらえると心が暖まって…………とても気持ちがいいのです」

 

電の顔は少し赤くなっている。それが夕日のせいなのか、それとも別なものなのかはわからない。だが、その表情は柔らかな笑みを浮かべていた事に間違いは無い。

俺は繋いでいた手を離し、電の頭を優しく撫でた。突然撫でられて驚いてはいたようだが、次第に気持ち良さそうに目を細めていった。

 

「帰るか」

「なのです」

 

こうして俺たちの休日は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

「…………なぁ、博士。あと一夏とマドカ、そこにいるんだろ。いい加減出て来い」

「「「完全に気づかれてた⁉」」」

 

尾行してた三人の姿を確認し、博士のテレポートマシンでセレベス海上の島へ帰ったのだった。…………尾行するならステルス迷彩でも使えよ。気配でわかるっての。

 

「ところでいつから三人がつけているなんて気づいていたのですか?」

「待ち合わせしている時から感じてはいた」

「…………人間レーダーですか?」

「それはちげえ」

 

 

 

 

 

そして、三月。一つのニュースで、彼らは驚かされる事になる。

 

『世界初! 男性IS操縦者現る』

 

男性操縦者として現れた人が織斑春介であるという事に。

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