インフィニット・ストラトス 平和を求める者 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
「あ"ー、なんで俺らまで行かなきゃならないんだよ、俺の安寧返せ」
「もうここまできたら諦めるしか無いのですよ。それに実際はいいところっていう事もありますし」
「それが本当かどうかは分からないんだがな。俺としては都合がいいかな?」
「私は兄さんと一緒にさえいられればそれでいいし、姉さんにも会ってみたいからな」
四者四様の会話をする俺たち。その原因はあのアホ博士にあった。
『そういえば、ゆーくん達ってまともに学校行ってないよね。はるくんのこともあるしIS学園に行ってきたら?』
そう言われて、人参型ロケットに詰められて着陸したところは人工島。その前にそびえ立つ門からは何かの威厳を感じる。そう、ここが国際IS操縦者育成機関、IS学園である。まぁ、なんというか…………ISが兵器として見られる限り、ここは軍人養成学校と同義なんだがな…………しかも模擬戦もやっているらしいが、もっぱらスポーツ感覚でしかやってない。寧ろ、そういう風な使い方がされているんなら、平和でいいのだが…………戦場に立ってきた身としては、余りにもお粗末すぎるような気がしてきてやまない。
「それで? 確か待ち合わせだったはずだよな。まだこないのか?」
「あと五分で来るはずですが…………遅いですね」
校門の前で待っているわけだが、博士が手配した出迎えの教師がこない、というか遅い。五分前行動はしっかりしなければならない。
「すまない、遅れてしまったな」
そんな事を思っていたら、ウルフテールの女性が出迎えにきてくれた。あれ、この人何処かで見たような気が…………って
「あぁぁぁっ⁉ も、もしかして、ちーちゃん⁉」
「…………その呼び方を知っているとなると、やはり
というか会っているんだよ。ドイツ上空ですれ違った時に。最も、こっちは光学迷彩を作動させていたから見えなかっただろうけど。
「まず自己紹介が優先か。私は織斑千冬だ。お前達は私が担当する一組に入ってもらう。無論、私の言うことには従ってもらわなければならないが…………非常事態では自由に行動することを学園側は認めている。その辺は覚えておいてくれ」
「一応俺からもしておくか。紅城悠助。専用機は持っているが、情報はまだ開示しない。俺以外も専用機を持っているぞ」
「有賀電です」
「織斑一夏、って知ってるか」
「織斑マドカだ」
各々が自由に自己紹介を交わす。なるほど、千冬か。まぁ、ちーちゃんでいいや。特に対した問題もなさそうだしさ。
すると、不意にちーちゃんがこんな発言をした。
「…………済まない、少しだけ公私の私を使わせてもらってもいいか?」
「それなら俺も話したいことがあるんだ、千冬姉」
「兄さん、私の事も忘れないでくれ」
成る程ね。やっと揃った家族で話がしたい訳か。
「電、少し離れるか。俺たちがそうやすやすと聞いていいもんじゃなさそうたし」
「ですね。その方が一番いいと思うのです」
あの二人にとって、おそらくこれが絆を取り戻すきっかけになってくれるのだろう。そんなところに俺のような部外者は要らない。そう言うわけだから、俺と電は適当に門の近くをふらつきまわるのだった。
「その…………久しぶり、千冬姉、それと…………ただいま」
「…………よく、帰ってきてくれた」
俺がそう言い切った時には、すでに千冬姉は俺に抱きついており、柔らかな山が当たっている事に俺は気づいた。
「心配…………かけちまったみたいだな、これは」
「…………当たり前だ、馬鹿者」
「でも、ちゃんと帰ってきたし、妹も連れてきたからな。説教だけはゆるしてくれよ?」
「妹、だと…………もしかして!」
「マドカだよ、姉さん」
そう言ってマドカは俺の後ろから出てきて、千冬姉に顔を見せた。大体十年ぶりになるのか? 劇的な再会だろうな。というか、覚えてる俺らの記憶力が半端じゃない。だって、十年前なんて言ったら、俺ら小学校に入ってるか入ってないかのレベルだぜ?
「うぅぅぅぅ…………マドカぁぁぁっ!」
「ちょ、わっ⁉」
「ぐぇ…………千冬姉、一気に締め付けないでくれ」
「…………よかった…………よかった、生きててくれて」
マドカを見つけた千冬姉は、その堰が壊れたかのように涙を流し、俺たちに抱きしめてきた。だが、千冬姉の力は普通より少し強い。い、いかん…………骨が悲鳴をあげてきた…………。でも、再会なんだから、このくらい抱きつかれても問題はないんじゃないかな?
「わ、私の事も覚えているの、姉さん?」
「当然だろ! 私の大切な家族なんだからな!」
「姉さん…………ただいま」
「おかえり…………マドカ」
そう言って千冬姉はマドカに微笑んだ。あの表情を見せるのは本当に嬉しいことがあった時だけ。千冬姉、よかったな。
「それとだ…………私は一夏に謝らなければならないんだ。あの時は助けてやれなくてすまなかった…………」
さっきとは表情が一転し、俯き加減でそう言ってきた。やっぱり気にしてるんだ…………悠助に聞かされた通りだ。
「あの時、政府の奴らはお前が誘拐されたことを秘匿したんだ…………しかも極め付けはこうだ『あんな出来損ないを失うよりも称号を失う方が嫌なのでな』だと。私は切れてその女を殴ったがな。結局知らされたのは決勝戦が終わってからだ。いや、私が甘かったんだ…………家族の一人も救えずに、何が世界最強だ…………!」
千冬姉は爪が食い込むほど拳を握っている。…………やっぱり、千冬姉は千冬姉だ。誰よりも強い、だからこそ人一倍責任を抱えやすいんだ。俺は千冬姉の拳を優しく自分の手で包んだ。
「千冬姉、俺はさ、助けにきてもらえなかった時、見捨てられたんじゃないかって思った。でも、その後、ちゃんと探しにきてくれてたじゃないか。許すもなにも、俺は千冬姉を嫌うことはない。だって、俺の大切な家族なんだからさ」
そう、優しく語りかけた。あの時、悠助にあの映像を見せてもらえなければ今頃、千冬姉を嫌っていたかもしれないし、復讐心すら生まれてたかもしれない。でも、それは仮定の話。今は、責任を背負い過ぎた千冬姉を受け入れる時なんだ、きっと。
「うわぁぁぁぁぁぁ…………ごめん、ごめんなぁ…………一夏…………」
「これではどっちが姉かよく分からないな」
「たまにはいいだろ。強さも弱さもひっくるめて、人間なんだからさ」
しばらくの間、子供のように泣きじゃくる千冬姉を宥めるのに時間が掛かったのは言うまでもない。
「それで、俺らはどうすればいいんですか?」
「頃合いを見て呼ぶから待っててくれ」
「了解です」
まぁ、教室まで来たんだがな、ここで待機って命令がちーちゃん、もとい織斑先生から出されたわけだ。その間、俺らはどう過ごすかと言うと
「頼む…………簪に会わせてくれ…………あいつの事が心配でさ…………」
「兄さん、何だか毒の瘴気にちかいオーラが漏れてるよ…………」
「ところで、電達は何をしてればいいんでしょうか?」
「俺が知るか。とりあえず、適当に筋トレしてるぞ」
全くもって一体感が無かった。これが俺らの安定クオリティ。…………もういい、キャラは完全に崩壊してきたから、このキャラで行こう。
「おい、入って来い」
「お呼びのようだぜ。俺が先に行った方がいいのか?」
「頼む」「その方がいい」「なのです」
「了解っと」
そう言って俺は教室の中へと入る。中は案の定女子以外いない。しかも、目には死ぬ覚悟が見て取れない。ISの役職には代表とその候補生がある。競技会に選出される選手のようなものだが、実態は兵器としてISを運用する際の兵士だ。つまり、時には人の命を奪う事すら考えなければならない。それに、ここは教育機関ではあるが、軍人育成学校と同じだ。殺し合いの練習をする場所と考えてもいい。別に俺の価値観を押し付けるつもりはないが、せめて緊張感くらいは持った方がいい。俺はそう思う。
そんな中、女子の中に一人の男を見つけた。おそらくあれが世界初の男性操縦者、織斑春介だろう。なんとも汚ねえオーラが滲みでてること。周りを見下すことしか考えてねえようだ。
「紅城から順に自己紹介してくれ」
いかんいかん、自己紹介しなければ。あの時の二の舞にはなりたくないからな。
「紅城悠助だ。まぁ、こんなところに迷い込んだ
「有賀電です。その、ドジなところもありますが、仲良くして欲しいのです」
「私は織斑マドカだ。ビットの操作なら任せておけ。…………フフ、怖いか? そういうことでよろしくな」
「俺は織斑一夏。そこにいる春介の兄貴だ。なぁ、戦いは敵の懐に飛び込んでやるもんだよなぁ? ってことでよろしく」
「その辺でいいだろう…………織斑兄、妹、その紹介はどうかと思うぞ?」
「「折角なのでネタをブチ込みました」」
「…………まぁ、いい。とりあえず席につけ。授業を始める」
そして案内された席は俺と電が隣合わせ、一夏とマドカが隣合わせである。運がいいのか悪いのかわからん。
「はにゃっ⁉」
「どうした?」
「きょ、教科書、束さんのところに忘れてきてしまったのです…………」
「…………俺のを貸す」
「…………ごめんなさい」
初日からやらかした電なのであった。…………困り顔、悪く無かったな。って、何考えてんだ俺⁉
「よう悠助、調子どうだ?」
「うん? あぁ、問題ない、問題はないんだが…………」
「…………はにゃぁ〜」
「電が轟沈寸前だ」
「…………よく頑張った、電」
授業終了後の休憩時間。なんとも言えない脱力感が襲ってきている俺に対し、電は頭に中破の文字が貼られており黒煙をあげているかのように見える。というのも、教科書忘れた上に、初っ端ちーちゃんに当てられテンパり、舌を噛んで恥ずかしい思いをしまくった。…………昨日までの努力、一瞬にして無駄になったな。ん? 何の努力かって? 緊張しない努力をしてたんだ、こいつ。
「どうやって再起させる?」
「再起方法知らねえよ。硝煙の香りでも嗅がせるか?」
「…………はっ! 何やら身の危険がしたのです!」
「あ、起きたようだぞ」
電、再起動完了。
「流石に硝煙の香りはキツイか」
「平気でいられるのはお前だけ」
「な、何をしようとしていたのですか⁉」
ハハハ、と電をからかう俺たち。電はからかうといい反応してくれるからなー、とマドカが言ってた。ちーちゃん譲りのどSが混じってるようだ。
「こんなところにいたのか」
談笑しているところにやってくるのは、一夏に似た顔つきだか少し垂れ目の男、織斑春介。と、髪のなげえ女。確か、博士の妹だっけか? あいつは興味なさそうに言ってたけどな。
「春介か…………何の用だ?」
「全く、どのツラ下げて僕の前に顔を出してるんだよ、この屑」
「その通りだ。この落伍者」
「どのツラって、このツラだが? それもわからないのか?」
「ふん、精々今の間を強がっているがいいさ。どうせ、天才の僕には勝てないんだからね」
そうとだけ言ってどっかに行った。何だありゃ? 醜い心しか無かったな。
「おい、一夏、大丈夫か?」
「ああ。それよりもあいつは気をつけた方がいい。人を見下すことしか考えてないし、何をやらかすかわからないからな」
「なんとも悲しい人ですね」
一人だけ黙っているマドカ。何をしているかと言うと
「あいつ…………兄さんを馬鹿にした…………せめて死んだと感じる前にーー」
「やめろ、バカ」
L96AWSを取り出して得意の狙撃をしようとしていた。いやまて、そもそもその狙撃ライフル、どこから取り出したんだ? 質量保存の法則、無視かよ。
「なぜ止める、悠助」
「バカか、ここで殺したらお前、一夏と離れる羽目になるぞ」
「そ、そうだった…………すまなかったな」
どこまでも大好きなお兄ちゃんが一番のマドカである。完全にブラコンじゃねえか。
ともあれ、なにやら一波乱がありそうな学園生活となりそうだ。そう思い、俺は次の授業の準備をした。
「さて、授業に入る前にクラス代表を決めなければならない。まぁ、なんだ、学級委員のようなものだ。代表は来月のクラス対抗戦に出ることにもなる。代表とその補佐、自薦他薦は問わない。誰かやりたいやつはいるか?」
クラス代表? 面倒臭そうだ。あまり面倒ごとには突っ込みたくはないし、厄介なんで俺はパスしたい。ちなみにあいつらの様子を見ると
『人前に立つのは嫌なのです…………』
『だるそうだな、誰かやってくれ』
『兄さんの補佐ならやるぞ!』
こんな感じだ。マドカはどこまでいってもキャラがぶれていない模様。ブラコンすげえ。
ちなみに電は代表とかには向かないだろ。あいつ、敵に砲身を向けることができないからな。誰も傷つけたくないからだという。演習なら大丈夫とか言ってたが…………それすらも不安だ。
「はい! 織斑君を推薦します!」
「私は一夏君を!」
「紅城君に一票!」
「ここでは小さきものが全て! よって有賀さんを推薦します!」
案の定、俺らと春介が推薦された。うむ…………なんでこうなるんだよ! はぁ⁉ 面倒くせえもの持ち込みやがって!
「な、なぁ、織斑先生や…………辞退とかできます?」
「本人のやる気次第と言いたいんだが…………無下にもできんからな…………すまん、受け入れろ」
俺、轟沈。
「…………絶対無理なのです」
「…………不幸だぜ」
「…………兄さん、私が支えるからしっかりして」
電、一夏、中破。
ともかく、何が何でも回避せねば…………一方の春介は、ニタァと含みのある嫌な笑みをしていやがる。
「よし、あと無いなら、この中から決めるぞ」
「待ってください! 納得いきませんわ!」
突然、机を叩いて上がったのは金髪の…………確か、イギリスの代表候補生、セシリア・オルコットだ。なんだなんだ?
「男をクラス代表として選出するなど正気ですか⁉ 男が代表などいい恥さらしですわ‼ 織斑先生はこの私にそんな屈辱を一年も味わえというのですか⁉」
どうやら、自分の名前が出ないことに対する、憤怒に近いものだった。仕方ねえじゃんかよ、担任が世界最強の時点で諦めるしかない。だが、俺はこいつに僅かな希望をかけた。俺達が代表枠から外れることを願って。
「大体、男がこんかところにいること自体間違っているんです‼」
「それは同感」
「さらに、男と暮らすだけで虫酸が走りますわ‼ そもそも、こんな極東の地で生活すること自体、私にとっては耐え難い苦痛でーー」
そんな僅かな希望は叶わず、こいつが女尊男卑に染まりきった存在であることが判明してしまった。というか、これを聞いているちーちゃんの眉間に小皺がより始めているんだが…………ここで流血沙汰にはならないよな?
「そういう君の国はなんなんだろうね。メシマズグランプリ栄光の一位?」
「なっ⁉ あなた! 今、私の祖国を侮辱しましたわね!」
「どっちが先にしてきたのかな?」
春介も参加して完全に子供の口喧嘩。互いの罵り合いしかやってねえな。くだらねえ…………本当にくだらねえ。国の誇りがなんだ? 俺にはそんなものはないぞ。
「そこにいる貴方はなにも言わないのですか?」
「俺か? ああ、興味ないからな」
「ふん、どうせ男なんてそんなものですわ。結局、種馬にしか過ぎませんことよ」
「それは言い過ぎなのです‼」
オルコットの野郎が変にヒートアップして俺にまで飛び火してきた時、電が突然反論し始めた。何がいつもは気弱な彼女を突き動かしたかは知らないが…………電が本気で怒っているのはわかる。
「なんでそんな事をいうんですか⁉ 貴方は一人で生きて行くことができるんですか⁉」
「っ…………!」
「そんなことばかりじゃ、悲しすぎるですよ…………」
「このっ…………! 減らず口を‼」
オルコットの野郎は電にズカズカと歩み寄り右手を振り上げた。電はおそらくこれからくる痛みに堪えようと目をつぶる。…………やらせるかよ。
「おい」
パァン
俺は腰につけていた拳銃を放った。軽い音だがそれとは裏腹に壁には一発の弾痕がついた。そして、オルコットはその音に驚き驚愕の表情をしている。
「そろそろ俺も限界だ。電の奴はお前と同じく自分の考えを言っただけだ。何も危害は加えちゃいない。だが、お前はしようとした。償ってもらわなきゃなんねえよなぁ?」
ナイフホルスターからダガーナイフを取り出し、逆手持ちで構える。
「ひっ…………」
「さぁ、お前は強い女、俺は種馬なんだろ?」
「…………そこまでにしておけ、紅城。織斑妹がなにやらハンドガンじゃないハンドガンを撃とうとしているぞ」
「了解です。マドカ、IPピストルはやめとけ。遺体が原型をとどめないぞ」
「はーい」
どうやらガチの流血沙汰になりそうでやばかったぜ…………。ちなみに電はなんとか泣かずに済んだ。…………泣かせたことがないからよくわからないが、大変なことになるのは間違いない。てかほぼ確定。
「それとだ、こんなグダグダになったからには模擬戦で決めてもらう。その際有賀は参加しないし、推薦も取り消させてもらう」
どうやら俺らは模擬戦になるようだ…………はぁ、まあそれならいいか。
ちなみに電だが、戦闘がダメということをちーちゃんは知っているから、こういう形になった。めでたきことかな。
「来週の放課後、総当たりで行うとしよう。それで文句ないな?」
「はい」
「了解です」
「イエス、マム」
「わかりましたわ」
「よし。それならば授業に入ろう。それと紅城、発砲するなら教師に許可を取ってからにしろ」
「取ってからならいいんですか⁉」
ちーちゃんの発言に驚きを隠せないでいる、副担任の山田先生。相当影が薄くてようやくの登場の模様。実際には一時限目からいた。なんとも悲しい扱いであった。
「そんで部屋別け?」
「どうやら二人部屋か三人部屋になるかもしれないらしいのです」
時間は飛んで放課後、寮へ入る事を余儀無くされた俺たちだが、部屋わけの件で問題が発生。どうも三人部屋ができる結末となった。
「あ、その件だけど俺とマドカと簪で三人部屋にするから」
「簪って、お前の彼女の?」
「ああ。どうやら入学が決定した時、この組み合わせは確定していたらしいぞ、刀奈さんが」
「だれそれ?」
「生徒会長」
どうやら一夏達が三人部屋となる形で話は纏まった。まぁ、俺は一人部屋が良かったんだがな…………劉ヶ崎重工の社員寮が一人部屋だったから。
「俺達が1021か」
「こっちは1022。隣同士だな」
「そんじゃ、飯の時、食堂で待ちあうか」
「了解したぜ」
そういう事で一夏達も自分たちの部屋へと入って行った。それじゃ、俺たちも入るとするか。
「…………何だこりゃ⁉ どこのビジネスホテルだ⁉」
「こ、こんなに柔らかいベッドは初めてなのです‼」
これは寮じゃない。寮の名をしたホテルだ!
何はともあれ、一旦荷物を置き部屋の中を確認する。不安要素だけは取り除いて置きたいからな。盗聴器とか。
「悠助さん!」
「どうした⁉ 盗聴器か⁉」
「ここで料理できそうなのです!」
「お、マジ?」
電飯(電が作る飯)が食えるのか。たまには作ってもらうとしようか。
「こちらの荷ほどきは終わったので、食堂の方に行きますか?」
「ん? そうだな…………先にいって席でも取ってるか」
「はいなのです!」
ある程度荷ほどきを終えた俺たちは一足先に食堂へと向かったのだった。
「兄さん、もう二人とも来ているぞ」
「悪い悪い。ちょっと話し込んで遅れちまった。簪、自己紹介」
「あの…………更識簪…………です。よ、よろしくお願いします」
「すごい美人さんなのです‼」
「おお、いい女に恵まれたな、一夏」
食堂にて、一夏の彼女に驚いたり
「な、なぁ、悠助、それ一人で食うのか?」
「おう」
「…………常識外れ…………」
「見てるだけで腹が満たされそうだ…………」
「そうか? 軽いもんだけど?」
「頼まれた通り、もう一つ持ってきたのです」
「「「アンビリーバボー!」」」
俺の晩飯(カツ丼二キロ)に驚いたりと、賑わいが絶える事は無かった。
「食った、食った〜♪」
「食べ過ぎだと思うのです。はい、お茶なのです」
「お、ありがとよ」
食後、自室でくつろぐ俺。電は茶を出してくれたりとなんともいい子である。絶対、嫁にしたくなるだろう。…………俺、何言ってるんだろ?
「ところで悠助さん、模擬戦、勝つ自信あるんですか?」
電は唐突にそんな事を聞いてきた。まぁ、そうだろうな。ATとしてならまだ、ISドライバーとしては未熟だからなぁ…………でもな
「負けはしねえよ。戦場を駆け巡っていた俺に油断はない」
実戦を経験した事のない奴と比べれば、覚悟も何もかも違う。それに…………電には言ってないが、俺は人を殺しても何とも感じない
俺はそう心配をしてくれる電の頭を撫でた。
「ふにゃぁ…………」
気持ち良さそうに目を細める電の姿を見ていると、こちらも安心する気がする。あの日、傷ついた彼女を助けた日から俺は決めた。気弱な彼女が安心して暮らせる世界を作ると。だから、ルリア…………少し力を貸してくれ。
「信頼、してるぜ。
「『私の代わりにーを大切にしてあげてね、ーー』」
「ま、待て、待ってくれ! ーーー‼」
…………そんな夢を見た気がした。