インフィニット・ストラトス 平和を求める者 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
そして時は流れ、迎えた模擬戦の日。俺と電、一夏、マドカ、簪は同じピットの方にきていた。まぁ、実際にやるのは俺と一夏だけだが、応援がしたいと言ってこっちにきた。まぁ、嬉しいんだけどさ。簪がキラキラした目でナーガと蒼龍を見つめている。が、この際無視させてもらう。
「一夏、調子はどうだ?」
「蒼龍の稼働状況に異常はなし。俺のコンディションも最高だ」
「それならいい。じゃないと、思考制御でいかれるぞ」
「あぁ…………ブレードビット、使うのやめてハンドバスターソードにしようか」
ハンドバスターソードはダメだ。あれ使うと、リミッターかかっていてもシールドをごっそり奪うぞ。かかっていなかったら、一撃でスクラップ。
てか、ブレードライフルの時点であかんけどな。ちなみに一夏はブレードライフルとトンファーブレードの二刀に蒼鱗ーーめんどいからブレードビットを組み合わせた戦闘が基本スタイル。ブレードビット六基も同時に操る一夏だが、その後ろでにこやかな笑顔で応援しているマドカが凄いのは明らかだ。同時に四十の並列思考を行えるのは異常。
「何時ものスタイルでいけばいいんじゃないか?」
「兄さんはその方がいいと思うぞ」
「そうか? それじゃ、そうするか」
『勝者、織斑春介』
どうやらオルコットと春介の試合は春介が勝った模様。代表候補生を下すとはな、奴もなかなかやるかもしれない。
「一夏、最後に確認する。殺すなよ?」
「わかってるって。でも、事故なら仕方ないよな?…………ごめんなさい、冗談です」
「わかればよろしい」
一夏がふざけた事を言ってきたので、オートカノンを突きつけたが問題はないはずだ。
『カタパルトオンライン、織斑一夏、発進どうぞ!』
「よし、それじゃ行ってくる」
「勝って来い」「勝利を期待しているのです」「頑張れ、兄さん」「…………頑張って…………」
「ああ。織斑一夏、蒼龍、出るぜ‼」
インサニティ粒子をスラスターから撒きながら、龍は空へと飛翔した。
「ふん、どうやら来たみたいだね」
「ああ、逃げるわけねえだろ」
「白式…………倉持のやつか」
「へぇ、屑でも知ってるんだ」
というか、それが開発された事で簪の専用機、打鉄弍式の開発が凍結されたんだよな…………仲のいい姉妹の姉、刀奈さんが抗議しても対応をひっくり返さなかったらしい。汚ねえよ、どいつもこいつも。
「ならば、この武器もわかるよね?」
そう言って春介が取り出したのは
「雪片?」
「そう! 姉さんの剣と同じ名の剣だ。僕は君と違って、神に選ばれているんだよ!」
春介のやつは俺にその切っ先を突きつけてそう言ってくる。はぁ、まるでいいおもちゃを貰って自慢している子供じゃねえか。俺はこんなやつと比べられていたのか。
「ふーん…………で? なに? それがどうしたんだ。それに、切っ先を向けたのなら」
俺はブレードライフルの刀身をたたみ
「試合は始まってるんだろ?」
その基部にあるIPライフルを速射モードで三連射した。
「な、何をするんだいきなり⁉」
「試合が始まっているんだろ? だったら、撃たれる覚悟くらいしておけ‼」
「こんのぉ…………屑が調子に乗って‼」
正直、春介の奴は俺がいままで相手して来た、悠助、マドカ、束さんの仮想敵機(千冬姉)と比べたらぬるいものだった。特に悠助の場合は直ぐに攻撃をしかけてくるから、常に身構えている必要があった。あれはトラウマになってもおかしくない。電? ああ…………電は戦いが好きそうじゃなかったからやった事はない。
春介の奴は雪片で切り込んでくるが、それをトンファーブレードでいなしつつ、左腕のIPアームカノンとライフルで削る。
「くそっ! 当たれよ!」
「そう言って当たるバカは居ねえっつの」
「うわっ‼」
俺はウイングブースターを点火。一気に加速して、すれ違いざまにウイングブレードで斬りつけた。そのまま一気に上昇。そして
「ぜぇぁぁぁぁぁぁぁっ‼」
展開したブレードライフルを振り下ろしながら、一気に降下した。
「くうっ‼」
少し避けられてしまったが、だがそれでもシールドエネルギーを確実に削れている。俺は迫撃を仕掛けるかのように、トンファーブレードを展開、奴を切った。
「ぐふっ⁉ 僕天才なんだ! クズなんかに負けるなんてーー」
「さっきら、天才だの屑だのうるせえんだよ」
雪片の斬撃をトンファーブレードで流し、ブレードライフルを雪片目掛けて振り下ろす。春介はそれを受け止めるが、あまりの衝撃に顔をしかめる。だろうな、そんな緩い機械仕掛けが施された刀身じゃ、この密度が極めて高い大剣を防ぐのは辛いだろうさ。そもそも、お前、剣道しかやってねえだろ。
「オラァッ‼」
受け止めているだけで精一杯な天才弟の横腹に一発蹴りをいれてやった。案の定、回避できずにダメージをモロに受けている。やべぇ、あの苦悶に歪んだ顔を見てると気分が良くなってくる。俺、あっちの性癖でも生まれたのか?
「ひ、卑怯だぞ! 蹴りを使ってくるなんて!」
「お前さ、これを剣道とかと思ってんだろ? 残念だけどな、こいつは戦闘なんだよ‼」
腹に蹴りを叩き込み、丁度海老が飛び跳ねて逃げるような様になったところを、トンファーブレードで切り上げ、ブレードライフルで斬り下ろし、地面へと叩きつけた。向こうの方もボロボロ、あと一撃くらいか。
「くっ、このままで終われない…………だが、こいつで僕は勝つ‼」
春介がまるで悪あがきのようにそう言うと、雪片の刀身が割れ、そこからエネルギーの刀身が姿を現す。となるとやはり
(零落白夜、か…………)
千冬姉の機体、暮桜の能力でもあるエネルギーを喰らい潰す、ある意味最強の象徴。だが、それは機体に当たった場合のみ。束さん曰く
『あれだけどさー、ちーちゃん攻めの型を使わないからさ、居合い用に作ったものなんだよねー。それに、実体剣と切り結べばただのレーザーブレードだしね』
とのこと。
「これで終わりにしてやるッ‼」
春介は零落白夜を構えて突撃してくる。当たればまずい。ならば
「ふんっ‼」
「なあっ⁉ ゆ、雪片が…………」
雪片を叩き折るしかないだろう。あいにく、正面から叩き斬る事しかできない大剣があるもんでな。ブレードライフル、その特徴は射撃能力だけじゃない。その刀身の質量と切断力だ。打鉄のブレードなど比べ物にならない。
簡単にいえば、武器を破壊するなど容易だってことだ。
「そうらよっ‼」
雪片を折られて呆然としている春介の顔を爪先で蹴り飛ばし、吹き飛ばされている状態のところへIPライフルを五連射。反動で軽く吹き飛ばされ、無様にも地面を転がる運命となった。
「こいつで終わりにしてやる‼」
そして動けずにいる春介目掛けて、俺はブレードライフルを尽きたてたのだった。
その時、俺はためらいというものを感じなかった。何故なんだろうか、それはわからない。募り積もった復讐心が鈍らせたのかもしれないし、模擬戦であることがそうさせたのかもしれない。
『勝者、織斑一夏』
そのアナウンスと共に会場は歓声に包まれた。まぁ、男同士の初の試合だから盛り上がったのかもしれないな。それだとしても、こうやって歓喜の声に包まれるのは、悪くない。…………もしかすると初めてのことかもしれない。そう考えると、自然と笑みがこぼれてしまった。もっとも、フルフェイスだから表情なんて見えないだろうけど。
「なんだよ…………屑のくせに、屑のくせに‼」
そう吠える
「…………吠えることだけは天才だな。悲しいぜ、俺は」
そう言葉をつぶやきながら。
「お疲れさん。よくやったじゃねえか」
「おう。ありがとよ」
一夏の勝ちでしめられたこの試合、見ていて楽しかった。今回はブレードビットを一切使用してないんだが、それでも近接戦闘においてはちーちゃんレベルであるだろう。というか、一夏の場合、サーベルなどの細身の剣よりはブレードライフルのような大ぶりの大剣クラスが向いてるのかもしれない。
「てか、あの馬鹿だけどさ…………いつかISに見放される可能性があるな」
「それは何時ものあの力なのか、兄さん?」
一夏は蒼龍に触れてから人の気配を過敏に感じるようになっていた。そして、その効果はISのコアまでにおよんでいる。どうやらコアには感情のようなものがあるらしく、博士はそれを
「多分な…………どうしちまったんだろう、俺は」
そうつぶやく一夏の瞳は、少し翡翠色の煌めきを持っていた。これは蒼龍を起動させて暫くしてからの反応だ。まるで蒼龍の放つインサニティ粒子と同じ色。関連がないわけではなさそうだが、博士にもわからないようだ。
『オルコットさんの補給が終わりました。続いて紅城君、発進どうぞ』
「悠助さん、時間なのです」
「そうか。わかった、直ぐに出る」
アナウンスの指示通り、俺はカタパルトにナーガを固定する。装備は…………そうだな、オートカノンを使ってみよう。
「悠助さん、頑張ってくださいね」
「俺も応援してるからな」
「私もだ。あと、電に手を出そうとしたから潰して来い」
「…………応援してる」
「ああ。それとマドカ、そいつには同意」
『カタパルトオンライン、紅城悠助、発進どうぞ!』
そのアナウンスと共に俺は前傾姿勢を取る。そして、ホライゾナル・スラスターを点火。
「ナーガ、出る!」
臨界に達したスラスター推力により、俺は再び空を舞った。今回は拡張背部ユニットは装備しない。たまには素の機体でやりあって見たいものだ。
俺がアリーナに出ると、そこには青の騎士ーーというか、オルコットがいた。騎士と言うか、手にスナイパーライフルを構えている時点でなんとも言い難いが。
機体はイギリスの第三世代ブルー・ティアーズ。中距離射撃に重きを置いた兵装が中心。…………ほんとあの国は狙撃好きだな。ATすらスナイパーライフルと専用バイザーは必須装備だったしな。
「あなたも逃げずに来たようですわね」
「ああ。逃げる理由もない」
「それでいいんですの。…………先日の非礼を詫びたいので」
オルコットが何を言い出すかと思いきや、突然詫びたいとかなんとかと言い出した。どんな心境の変化があったんだよ。こんな一週間ちょいでころころ変わるなど、チョロすぎるぞ。
「あー…………そのことなんだけどさ、電にも謝っとけよ?」
「勿論、承知しておりますわ。さて、時間も押しているようですし、始めましょうか」
「そうだ、なッ‼」
俺とオルコットは互いに引き金を引き、先手を相殺する。チッ、ばれてたようだ。俺は一旦後退、地上へと降りる。さて、こっからが俺の本領発揮だ。陸戦型歩兵搭乗型戦機乗りとしての血がめぐる。なんてったって、ナーガは陸戦が主体だからな。
「あらあら、初弾を相殺するなど…………貴方が初めてですわ。ですから…………最初から本気で行きますわよ!」
そう言ってオルコットは、肩のフィンアーマーから突起を飛ばしてきた。あれは…………ガンビットか⁉ 厄介な物を…………まぁ、四基だからいいか。ガン、シールドが四十機も飛び交う中を当たらずに回避するのが良くあったからな…………マドカのあれは精神的に削ってくる。電は開始三秒で沈黙したからな。
「そうか…………でもな」
その様子を見ながら俺はオートカノンのフォアグリップを引き起こし掴む。弾薬十分、銃身冷却装置も異常なし。
「俺も負けられねえんだよ‼」
オートカノンのトリガーを引いた。刹那、轟音が絶え間無くアリーナに響き始めた。オートカノンはかつて銃身破裂事故引き起こしたリヴォルヴァーカノンを教訓に開発された、大口径速射砲。88mmの砲弾は回転式チェンパーではなく、チェーンベルトによって装填され、ジャムる心配がなくなった。詰まってもチェーンベルトがかきだすからな。ちなみに発射速度、チェーンガンクラス。完全に変態技術である。
「きゃあぁぁぁっ‼ か、かすっただけなのに、なんてダメージなんですの⁉」
「知らんわ!」
あ、やばい、反動がかなりくる…………いくらフォアグリップがあると言っても反動はそこそこくるんだよ。基本は三秒間とか五秒間とか時間を決めてバースト射撃をするからいいんだが、現在垂れ流しっ放しだから、負荷が大きい。ちなみに今回は標準のドラムマガジンじゃなく、ベルトリンク給弾だから何時もより長く撃ててる。
「これじゃ、ティアーズを動かそうにも…………!」
「動かされる前にぶっ壊す!」
ビットの悪夢が出る前に!
あわれビットはオートカノンの餌となり、その性能を発揮することなく、次々と沈黙していった。というか、たかが四基だ。落とせない訳がない。
「ーーふふっ、かかりましたね」
だが、オルコットはこの不利な状況下で余裕の表情を見せた。何を考えていやがる?
「ビットは全部で六基ありましてよ!」
「ミサイルかよ!」
残されたビットーーもといミサイルが俺へと飛んでくる。あー、オートカノンでの迎撃間に合わねえや…………仕方ねえ、博士の試作品使ってみるか。
視線操作で右側の増設スロットを有効化する。
そしてこめかみのあたりからレーザーが放たれた。これが博士の試作品、レーザーCIWS。弾薬費があまりかからないレーザーを放つ機関砲が搭載された。しかもその出力は小口径ながら莫大な熱量を誇る。ミサイルなど簡単に誘爆を誘えた。ちょうど、目の前で起爆。危ねえ、シールドバリアの作用範囲ギリギリだぜ。
「ふっ、これで私の勝利は確実ーー」
「レーダーちゃんと見ようか?」
「え?」
オルコットが気づくがもう遅い。俺は既にオルコットのはるか上空にいる。ホライゾナル・スラスターをちょっと角度変えて噴射したらこうだ。ちなみにオートカノンは格納済み。代わりに持ってるのは、ロングライフルだ。アサルトライフルよりも強い弾丸を使用する火器である。しかも取り回しがロングのくせにしやすいから、空中戦では世話になったな。
「索敵はしっかり行え。戦場ではそれが命取りだ」
躊躇いなどなく、一マガジン二十五発を頭に撃ち込んだ。装甲のない頭部とかなら普通に絶対防御が作動する。そうなれば、自然とシールドエネルギーも削られ、
『勝者、紅城悠助』
何時の間にか試合は終わっていた。あっけないとか、そういうのはあまり感じはしなかったが、劉ヶ崎重工私兵部隊演習のような内容(精神的に死ぬ)より軽いせいか、本当に兵器として理解しているのかと不安になった。最も、博士はそう使われることを望んではいなかった。だが、今は違う。自分の願いを叶える時まで、そう使われることを甘んじて受け入れるそうだ。
「俺は戻る。次は狙撃当ててみろよ」
「ええ、次こそは勝たせていただきますわ」
その返答を受け取った俺はピットゲートに飛んで戻った。さて、残る試合は春介か…………あ、一夏もいたけどマドカにやらせよう。あいつもうずうずしてるようだし。
「さて、次の試合だが、どうやら俺と春介が先にやるようだ。損傷もほとんどないし、このままいってくる」
「わかったのです。でも…………」
戻って直ぐに出ると伝えると電が抱きついてきた。俺は一時的に装甲を解除、痛くないように優しく受け止めた。
「怪我、だけはしないでくださいね…………?」
「…………するかよ。ナーガは俺の相棒だ。こいつといる限り怪我なんてしないさ」
そう言って俺は電の頭を軽く撫で、再び装甲を纏う。さっきから戦ってばっかの俺には、戦う事が好きじゃない電へとかける言葉がない。
だが、こいつは模擬戦、実戦じゃないって自分に言い聞かせ、カタパルトに乗る。
「ナーガ、出る!」
俺は本日二度目となる出撃をしたのだった。
「ふん、屑が。僕を待たせるなんて随分態度が大きいんじゃないのか?」
…………アリーナに出た瞬間これかよ。人間の膿か? そのくらいきたねえな、こいつ。
『こ、この野郎…………俺の恩人に向かって‼』
『なのです!』
…………ピット側もピット側で春介の事に対してキレ始めてる。別にいいのにさ、戦場なんて罵声なんか普通に聞こえてたし。中には差別用語とかもあってやばかったんだよな…………はじめての戦場でビビったのは、砲撃音とか爆撃とかよりも、随伴していたアメリカ企業のAT乗りの台詞だな。放送禁止ワードが普通に出てたもんだから、印象強く覚えてる。
「知らねえな。第一、俺はお前なんて興味ねえ」
「こいつ…………言わせておけば!」
「俺は事実を言ったまでだが?」
「はっ、そういう君もあの雑魚と一緒にいるのかい?」
「誰の事だ?」
春介がいう雑魚とはなんの事なのだろうか? 一夏? いやいや、あれは強いだろ。じゃ、マドカ? もっとちげえな。簪? 日本の代表候補生だから違う。そうなると、雑魚とは多種多様な魚の総称しかないんだが…………
「何言ってるんだ、君のそばにいるあの泣き虫なクズ女の事だよ」
…………は? 誰だよ? 泣き虫なやつならいるが、クズというクズは俺の目の前にいるお前以外いなさそうなんだが?
「名前は…………なんだっけ? ああ、そうだ、有賀電だ。よかったじゃないか、クズのくせに僕に名前を覚えてもらえるなんてさ」
ブチィ
正直、脳の血管が切れた。は? 電がクズ? そんなわけねえだろ。あいつは強い。戦って殺す事しかできねえ俺よりも、胡座かいて踏ん反り返ってるお前よりも、強いし努力家だ。
『い、電がクズ…………なのです…………か?』
『お、おい電⁉ どうした⁉』
『い、嫌なのです…………い、電は…………電は…………嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ‼』
『あ、有賀さん⁉ しっかりして‼ ねえ⁉』
『嫌なのです‼ 違うのです‼ 電はクズじゃ…………クズなんかじゃ…………うっ、うぅっ…………』
『電…………気をしっかり、私たちがいるからーー』
俺は無意識の内に回線を切っていた。いや、聞きたくなかったからだな。あの叫びを…………電が言われたくなかった、あの言葉を。
電は前の世界で生まれた時、最初の提督とやらにあって鎮守府というところにいたらしいが、相変わらずドジばっかするものだから、酷い扱いを受けた事があるらしい。詳しく聞こうとも思ったが、今にも泣きそうな顔をしてたからやめさせた。そして、その時の記憶があるせいで、クズとか言われると今でも思い出して、心が瓦解する…………春介の奴もわざとじゃないから仕方ない。と、割り切るなど、俺にはできない。機械の心でも、ある一定の信号を流せば暴走するぞ。
「…………す」
「は? 何言ってるんだい?」
「…………ろす」
…………ダメだ、あの頃の感情が生み出されてる。確実に理性だけでは抑える事などできない。
「…………電、泣かせた奴…………殺す」
ーー搭乗者バイタル、規定数値に到達
ーージェネレーター、コア、TCM同調率上昇
ーーリミッター、一時解除
ーーCODE:OVER DRIVE
戦う事に明け暮れ、人のプリミティブな感情にしたがった、俺の心の内に潜む戦闘の蛇龍が目を覚ました。
ーー