インフィニット・ストラトス 平和を求める者   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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08.再会

…………なんだろうか、少し声が聞こえる。

既に夜中なわけだが、こんな時間に俺は目が覚めてしまった。なぜ目が覚めてしまったかはわからない。おそらく、この声が原因ではあると思うのだが。

 

「…………ごめん、なさい…………」

 

やはりか…………。声の主は隣のベッドで眠っている電。時々、こんな風に寝言を言っている。その声はとても悲しそうで、辛そうなもので、今にも消えてしまいそうな感じがする。初めてあった日の夜もこうして寝ながら声を出していた。

俺は電の方へ向いた。よく見ると、枕元は少し涙が滲んで濡れている。

 

「…………ごめんなさい…………陸奥さん…………山城さん…………日向さん…………霧島さん…………響ちゃん…………ごめんなさい…………」

 

どうやら、最後の戦いの時の事を思い出しているようだ。ほぼ壊滅寸前の時、電が囮となり、小を殺して大を生かす形となった、セレベス海海戦。一人だけ沈んでしまった事への後悔か、残してしまった仲間達への悲しみを感じてか、恐らくは後者であるだろう。

それに、電は艦の時、姉である特Ⅲ型駆逐艦、暁型二番艦、響の目の前で沈んでしまっている。これにより、同型艦は響一隻だけを残す事となり、姉を一人置き去りにしてしまったことに、後悔の念を抱いている、そう言ってもいたな。

 

「…………会いたいよぉ…………みんなぁ…………響ちゃん…………」

 

…………切ねえな。こっちまで泣いてしまいそうだ。いつも明るく振舞おうとしている分、こうした姿を見るのは忍びない。

 

「…………思ってればいつの日にか会えるさ、きっと。俺と違って、現実世界でもう会えないなんて事はないんだからさ」

 

そう言って、頭を優しく撫でてやる。すると、落ち着いたのか次第に寝息が聞こえ始め、スースーと眠ってしまった。

まぁ、電の場合、俺と違って偶然飛ばされてきたみたいな感じだから、そんなノリで誰かはくるかもしれない。そんな風に俺は思っている。俺は、ルリアとは夢以外で会う事は完全に不可能だからな。あいつ、俺に断りもせずあの世に行っちまいやがったし。心臓弱いんならドナーバンク頼れ…………って、無理だな。移植するなんて聞かされたら『それで私以外の人が死ぬから嫌』とか言ってのけそうだ。

 

(…………どれ、電も寝た事だし、寝直すか…………ん?)

 

寝直そうと一旦窓側を向いた時だった。寮から少し離れたところの茂みが揺れたように感じられる。恐らく、人工島東部海岸付近であると思われる。変にアザラシでも上陸したのだろうか?

 

(…………まぁ、見に行っても損にはならないだろう)

 

念のため確認するべく、向かう事にした。しかし、今は就寝時刻。正面から突破するなど不可能である。しようとしたら必ずちーちゃんの折檻を受ける事になるのは間違いない。だが、正面から突破する必要があるかどうかと聞かれたら、答えはノーだ。目の前にあるじゃないか、立派な出入り口が。

俺は窓を慎重に、音を出さないように開ける。怖ぇ…………こんな潜入任務みたいな事するの始めてなんだけど。電に気づかれたらアウトである。あいつ、ドジなように見えて、しっかり者だからな。所謂、委員長タイプだろうか。

なんとか窓を開け、出た直後に閉め、俺はナーガをAT状態で展開した。六角形の非発光体が体を覆う装甲を作り上げ、ISの時と変わらないナーガが姿を現した。だが、ATであるためPICはまず不可能。そしてここ、二階である。

 

(武装スロット変更、両腕部マルチユニット、ワイヤーアンカー選択、射出)

 

よって、両腕部の手首付近に搭載されているマルチユニットからワイヤーアンカーを射出、手すりに巻きつけた。ちなみにこのワイヤー、ナーガの四倍近い重量まで耐える事が可能だ。あと、マルチユニットにはワイヤーアンカーの他にも、グレネードラックなどが選択できる。

手すりに無事ワイヤーを巻きつけ、静かに地上へと降りる。ここで脹脛のスラスターを使おうものなら、噴射音で捕まる。ただでさえ、ラジエーターの音が少ししているんだから。それでも、静音性は従来の機器よりも高い。

なんとかして地上へと降りた俺は一旦ナーガを格納、それと同時にワイヤーも非発光体として消えた。さて、準備も整ったことだし、正体を見破りにでも行きますか。俺は腰からハンドガンを取り、いつでも撃てるよう構えて進んだ。

 

 

「…………下ろしてくれないか? 流石に恥ずかしい…………」

「…………」

 

…………うん、なんとか正体を掴めたよ。そう、掴んだんだ、そう思いたい。

俺の目の前にはなぜか木に宙ぶらりんーーもとい片足をロープで縛られ吊るされている少女がいる。そのせいで見えそうになっているスカートの下を守ろうと片手でそれを押さえている。…………誰だよ、アザラシでも上陸したのだろうかとか考えたバカは…………って、俺か。

 

「…………お、お願いだ、早く下ろして…………頭に血が下がってきて気持悪い…………」

「…………」

 

とりあえず、ハンドガンはホルスターに戻し、代わりにナイフを取り出す。そして縄を切った…………そこまではいい、少女が落ちなければ。

 

「くぴょっ⁉」

 

案の定、木から落下。謎の悲鳴をあげ、頭に中破のマークが見え隠れしていた。あれ? 前にもこんなことが…………俺の目疲れてるのか?

 

「スパスィーバ、すまない、助けてもらってしまって」

「まぁ、気にするな。何故木に宙ぶらりんになっていたのか気になるしよ」

 

そんなことよりも、なんでそんなに早く立ち直れるの? そう突っ込んでやりたくなった。

 

「…………その、なんと言ったらいいのかな」

 

彼女は言い淀んで、言葉を濁す。え? そんなにやばいことでもやらかしたの?

 

「…………そこに、美味しそうなピロシキが置いてあったものだからつい取ろうとして、そうしたらいつの間にか木に宙吊りになっていたんだ…………」

 

彼女は恥ずかしそうにそう言って、落ちていた彼女のものと思われる帽子を深く被った。そんな訳あるかと周りをよく見ると近くにはいい匂いを放つピロシキが皿に置かれていた。…………だれがこんな罠をし掛けたんだろうか、俺はとても気になってしまった。というかこの子、理由がフリーダムすぎるわ。

 

「お、おう。それでなんでここにいるんだ? 少なくともここの生徒には見えないが」

 

というか、彼女の服装だが、何処かで見たことがあるような気がする…………ってか、電が着ていたセーラー服と同じじゃん。

 

「実は妹を探しているんだ…………海戦で行方不明になって、その海戦があった海域を越えたらここにいたんだ」

 

海戦で行方不明…………それを聞いた時、俺は一人の少女が頭に思い浮かんだ。あの日、傷だらけで俺たちの元へやってきた、心優しき少女を。そいつは、今でもかつての仲間に会いたがっている。もしかすると、目の前にいる彼女はーー

 

「ーーそうか、その妹を探しているんだろ、特Ⅲ型駆逐艦、暁型四番艦電を。暁型二番艦、響」

「!」

 

彼女ーー響は驚いた表情をした。なぜその事を知っているんだ、自然と目がそう訴えてきている。いや、知ってるも何も、俺のベッドの横で寝てるんだが。それに、電からは姉妹の事をいろいろ聞かされたし。白銀の髪をしていたら、二人目の姉、響であると教えられたしな。

 

「まぁ、くればわかるさ。こっちに来な」

「あ…………うん、わかった」

「やけに素直だな。普通なら抵抗の一つや二つはされるところなんだが」

「電の事、知っているのだろう? 今は少しでも電の事が知りたいからね。それに、君の目は嘘をついているようには見えなかったよ」

「そうか。そんなに電の事、気にしてるんだ」

「まぁね。…………電は、私が守れなかったから、余計にさ」

 

彼女が言った事を最後まで聞き取れなかったが、まぁ、聞かない方が得かもしれないな。電は姉の前で沈んだ事を後悔し、響は妹を守れなかった事を後悔している。その悲しみは、俺に分かる由も無い。今はそっとしておいてやるのが一番だ。

 

「そういえば君の名前を聞いていなかったね」

「俺か? 俺は紅城悠助、ただの学生さ。それよりも着いたぞ」

 

まぁ、到着したと言っても寮の外なんだが。正面から入るのは不可能、唯一空いている窓は俺らの部屋。

 

「…………しゃあねえか。ナーガ、ATモード」

 

再びナーガを展開する。全身を六角形の非発光体が覆っていき、それらがすべて装甲として形成される。最後に『ARMOR COMPLETED』の文字を確認、ナーガの起動は完了した。

 

「な、なんなんだ、それは…………」

「詳しい説明は後だ。少し黙ってろよ」

 

俺は響を左手で抱えながら右腕のワイヤーアンカーを射出し、ベランダの奥にケーブル先端のアンカーを固定させる。よし、後はワイヤーを巻き取るだけだ。

 

「ウィンチ、稼動開始」

 

極限まで静められた巻き取り音を立てながら、俺たちの体は二階へと上がって行く。ウィンチのパワーすげえな。

 

「ハラショー…………これはすごい」

 

響も驚いている模様。何故こんな事で驚いているのかに疑問を持ったがすぐに解消された。こいつ、世界越えた上に、ISについて知らないんだ。

そんなこんな考えているうちに、ベランダへ到着。ナーガを格納し証拠を隠滅させる。見つかったら即死だ、即死。

窓を開けて中へ入る。電は何事もなかったかのように気持良さそうに寝ている。ふうっ、ばれては無いようだぜ。

 

「電…………」

 

一緒に入って来た響は電を見つけると静かに駆け寄った。

 

「やっと会えたね…………私、さみしかったよ。ううん、艦隊の皆がさみしがっていた、電が行方不明になったりなんてさ」

 

優しく語りかける響。おそらく一年近く会っていないからか、その表情は安堵し、笑みを浮かべている。肝心の電は一切合切気づいていないようだが。

 

「ねえ、悠助」

「いきなり呼び捨てかよ…………なんだ、どうかしたか?」

「私はどうしたらいいんだい?」

「あー…………考えてなかったな」

 

今夜一晩響をどうするかという事だ。いや、別にナニをするわけじゃないぞ。ただ、どこに寝させようかという問題。ここは二人部屋なのでベッドは二つしか無い。三人が寝るには少々狭い。弱ったものだ…………殆ど最後の手段を使うしか手はなくなってしまった。

 

「…………俺のベッドを使え。特別に許可する」

「いいのかい? 君の寝る場所がなくなると思うんだけど…………」

「女を床に雑魚寝させるよりはマシだ」

 

実際、そう思っているんだから仕方ない。それに、雑魚寝なんて前はよくしていたからな。

 

「そう…………それじゃ、お言葉に甘えて寝させてもらうね、スパコーィナィ(おやすみ)

 

そう言って響はモゾモゾとベットの中に入ると、直ぐに寝息を立てて寝始めた。疲れていたのだろうし、電に会えて安心して緊張の糸がほぐれただろうしな。というか、響ってロシア語話せるのか…………会話する時、難しくなりそうだな。

 

(さて、俺も寝るか)

 

予備として保管しておいた寝袋を取り出し、俺も寝る準備を始める。まぁ、これがあるとないとじゃかなり違うしな。

ひとまず寝袋に入り、響についてこれからどうするかと考えながら、俺は眠りについた。

 

 

翌朝4:30。

結局、いつものように起きてしまった。まぁ、この時間帯ならちーちゃんも起きているだろうし、なんとかなるか。

俺は響を起こしに向かう。電はまだ寝かせておいても問題ないだろう。どうせ、起こそうとしても起きないんだし。

 

「おい響、起きろ」

「ん…………なんだい、まだ布団の中にいたい…………」

 

…………。何この生き物、というか特Ⅲ型駆逐艦。電もそうだが、仕草の一つ一つが可愛らしいんだが。って、そんな思考している暇は無い。

 

「いや、マジで起きろって」

「んん…………りょーかい」

 

なんとか、響を起こす事には成功した。

 

「よし、じゃあ行くぞ。着いて来い」

「どこに行くんだい?」

 

ん? そんなの決まっているだろ

 

世界最強の教師(ちーちゃん)のところだ」

 

 

「それで私のところに来た訳か…………」

 

という事で現在寮長室に来ている。博士がいうにちーちゃんはIS学園の教師陣の中で最高の権限を持っているらしい。それも学園長に通用するレベルの物を。そういうわけで、響の処遇をどうにかできないかと思い、来てみたわけだ。

 

「まぁ、そういう事です。なんとかなりませんか?」

「流石に私ではどうにもならないな…………なんとかしてやりたいのはやまやまなんだが」

 

だよなー。普通に考えて無理な話だ。組み込むにせよなんにせよ、人数の割り当てが決まっている以上、そう安易に変更など利くはずない。

 

「えー? 別にいれてやってもいいんじゃないのー?」

「だから、こっちにも都合があるんだ、束ーー」

 

そう言い切った瞬間、ちーちゃんは近くに立てかけてあった日本刀を一気に振りかぶって勢い良く振り下ろした。って、博士⁉ なんでこんなとこにいるんだよ⁉

 

「ちょ、ちーちゃん待って‼ それ死んじゃうって‼」

「うるさい、黙って斬られろ」

「酷い⁉ ゆーくん! 黙ってないで助けーー」

「慈悲は無い」

「こっちはツルハシ⁉ てか、見捨てられた⁉」

「…………あ、ウオッカあるんだ」

 

突然現れた博士に向かって振り下ろされる刀とツルハシ。その乱闘を端から見てる響。このカオスな時間は暫く続いた。てか、響、ウオッカ飲むなよ?

 

「ぷはー、これはなかなかいいウオッカだね」

「「「飲めるのか⁉」」」

 

 

五分後…………

 

「今日は見逃すが…………何故お前がここにいる?」

「んとねー、新しいIS反応がびっきーからしたんだよ」

「びっきー? 誰だ?」

「響ちゃんの事だよ」

「そのあだ名は初めて言われたね」

 

どうやら、響がIS持ちであるらしい。

 

「それも電ちゃんと全く同じ機体…………装備も同じだよ」

「というと、駆逐・特Ⅲ型か?」

「がっつり日本語読みしたね…………まぁ、そう。量産型であるかはわからないけど、データは欲しいからね、そっちにも損はないと思うよ」

「確かに一理あるな…………響、と言ったか? お前はどうしたい?」

 

ちーちゃんはおもむろに響へと話題を振った。

 

「私は妹のーー電のそばにいたい…………もう、電を一人にはさせたく無い」

 

その言葉には、かつて電を守れなかった事、一人海上に置き去りにさせてしまった事、それらの事を悔いているように聞こえてくる。そして、もう二度と繰り返させない、その誓いともとれる。

 

「…………わかった。すぐ学園長に掛け合ってみよう。どういう判断が出るかわからないが、それまではここにいろ」

「もし無理でも、束さんと一緒に暮らせるからね〜」

 

その思いを感じたちーちゃんは学園長に掛け合ってくれるようだ。もし本当にこれが叶えば、再会を待ち望んでいた二人の願いを叶える事ができる。そう思うと、俺も少し頬が緩んだ。

 

「あ、ゆーくんが微笑んでる…………レアだから写メっとこ!」

「あ! コラ‼ 何勝手に撮ってんだよ‼ 消せ‼ 恥ずかしいから消してくれ‼」

「お断りしま〜す」

「こんにゃろぉ…………!」

 

クソ〜〜〜‼ ある意味黒歴史になるぞ、俺が微笑んだなんて一夏達が知ったらまたネタにされる!

しばし、俺と博士のデスレースが行われたのは言うまでもない。

 

「…………あのバカは放っておくとして、お前はISについて知っているのか?」

「そのISがよくわからないんだが…………」

 

そんなやり取りが争いの端であったとかなかったとか。

 

 

 

 

 

「ところでさ、響って何処の所属だったんだ。電からは第二艦隊所属と聞かされてるけど」

「私は第二艦隊旗艦。ちなみに電は主力第一艦隊旗艦だよ。しかも、一番練度も高かったしね。夜戦では敵戦艦を一撃で無力化させた事もあるよ」

 

…………見た目によらないって本当なんだな。俺は電への評価を改める必要があると、この時思った。

 

 

 

 

 

博士に向かってなぜか作られていた三式弾を大型バズーカで撃ち込んで海に落とした俺は、響を寮長室に預け電を起こし、朝飯を食って、教室に向かっていた。…………ふぅ、ここまでの事をダラダラと説明するのは怠いんだがな。

 

「そういえば今日はいい夢を見たのです」

 

教室で席につき、ナーガの装備を整理している時、電がふと思い出したかのようにそう言って来た。

 

「どんな夢なんだ?」

「響ちゃんとお話した夢です。なんだかとても現実味があったのです」

「そうか…………良かったな」

 

電はその事が夢ではない事にまだ気づいてはいない。だが、俺はまだ本当に響が来た事を伝えるわけにはいかない。ここに編入できるかもわからないし、なにより再会にはサプライズがあってもいいだろう?

 

「よう、悠助。お前は今度の対抗戦、どうみる?」

「私としては実戦経験者からの一言が欲しいな」

 

一夏とマドカが来た。どうやら今月末のクラス対抗戦について俺からの意見を聞きたいらしい。

 

「実際、うちの代表は代表候補を打ち破っているわけなんだが、簪も簪でその能力は国家代表までに近づいている。しかし、二組と三組には専用機持ちがいない。おそらく一組と四組の一騎打ちになりそうだな」

「なるほど」

「だが、訓練機が必ずしも負けるというわけではない。寧ろ相手側の練度によっては勝つ事もあるだろうさ」

「駆逐艦が重巡洋艦を倒す事と同じみたいですね」

 

まぁ、俺としての見解はこんなところか。それに、どうせ競技種目のようなものだし、実戦じゃないからそんなに戦力比が変動する事もなさそうだしな。

 

「ふーん、やけに分析してるようだけど、その一騎打ちに二組も入れてくれないかしら?」

 

そんな時、廊下の方から声をかけられる。そこには、髪をツインテールにした、電より少し大きいくらいの女子が、おおよそ似合ってない様子で立っていた。

 

「お前…………鈴か?」

「そうよ、中国の第三世代機持ちの代表候補、凰鈴音よ。一夏、久し振りね」

「そうだな、三年ぶりくらいか?」

「そうね、最後にあったのが中一だったかしら?」

 

どうやら一夏と知り合いなようだ。中国の代表候補生、凰鈴音については情報が彼方此方に出回っている。第三世代機についても公言されているしな。

 

「龍驤さん…………?」

「誰がまな板よ⁉」『誰がまな板や⁉』

「おい、今違う人の声が混じっていたような気がするぞ」

 

…………電、もしかして、前の世界に似たやつがいたのか? よし、ウィキで探してみよう。あった、龍驤は軽空母か…………確かに飛行甲板に見えなくもないか、とあるパーツが。

 

「とりあえず、また後でくるわ。そんじゃね〜」

 

そう言って彼女は二組の方へと走って行った。しかしなぜだろうか、快活そうな彼女の顔に一筋の汗が流れていたんだが…………何が起きたんだ。

 

「よし、お前ら席につけ。SHRを始める」

「…………あいつの千冬姉レーダーすげえな。今でも現役かよ」

 

あ、そういう事か。ちーちゃんが苦手なのか。何があったのかは知らないが、一応合掌しておくか。

 

「さて、今日は転校生を紹介する。入って来い」

「失礼するよ」

 

この声は…………間違いないな。あいつの声だ。電もなんだかびっくりしたような表情をしている。

教室に入って来たそいつは、白銀の髪を長く伸ばしており、そのアイスブルーの瞳がロシアの氷原を表現しているように思われる。

 

「有賀響だよ。電のお姉さんになるね。皆、よろしく」

 

そう言い終えると一礼する。なるほどな、電と姉妹だから同じ名字に設定したようだ。ちーちゃんの配慮だな。その張本人は疲れたような表情をしているが、姉妹が一緒にいれて良かったなと目で言っている。

 

「可愛い…………!」

「妖精さんみたい…………!」

「私、お持ち帰りしたいわ!」

「まったく、最高だぜ!」

「「ハラショー!」」

 

などなど歓喜の声が女子たちの間から流れ始める。が、響の視線は一向に一点を差したままだ。

 

「響…………ちゃん、なのですか?」

 

電だ。そして彼女も席を立ち、響の方へと向かって行く。ちーちゃんは、いつもならさっさと席に座れという場も、今回だけは特別にしておいてやろうと、朗らかな笑みを浮かべている。

 

「おいお前! 今は千冬姉の時間だぞ! 勝手に席を立つなよ!」

 

だが、それを邪魔するやつが一名ほど。言わずとも春介である。どうやらちーちゃんが取り仕切るこの場にしゃしゃり出てきた事にイラついている模様。

しかし、言われている肝心の電は、そんな事無視して響のもとへ歩みを進める。

 

「無視するなぁぁぁぁぁっ‼」

 

無視された事が気に触ったのか、腕を振り上げ電を叩こうとする春介。だがな、この姉妹の再会を邪魔だけはさせん。

 

「ふべっ⁉」

「お前の場じゃない、すっこんでろ」

 

マドカがシールドビットを展開し、質量兵器として春介の頭部へ直撃させる。その勢いがあってか春介は意識を一気に刈り取られる。

 

「おのれっ! よくも春介を!」

 

そして掃除用具がそれに切れて、真剣を抜き、電に切りかかってくる。こっちは、俺の担当だな。

 

「周りにも被害が出るだろうが」

「あべしっ⁉」

 

刀身をナーガ展開済みの手で掴み砕く。その後、マドカの飛ばしたシールドビットで同じく気絶させられる。反乱分子はこれで排除完了っと。

 

「電…………そうだよ、響だよ」

「響、ちゃん…………うえっ…………うわぁぁぁぁぁん…………ぐずっ…………会いたかったのですよぉ…………」

「うん…………私も、電に会いたかったさ。無事で安心したよ」

「ひっぐ…………響ちゃんも、元気そうでよかったのですぅ…………ぐすっ」

「全く、本当に泣き虫なんだから…………でも、仕方ないか、ぐす…………もう離れたくないよ…………」

「電も…………もう離れたくないのです…………今度こそ、一緒にいましょう…………」

「そうだね…………」

 

電が響に抱きつき、それを響が優しく受け止める構図。本当によかった…………電に前言っていたからな、いつかは必ず再会できるって。それが今実現しているんだ。こんなにいい事はない。それが、自分ではなくても自然と胸が熱くなってくる。

 

「なあ悠助、なんであんなに電は泣いているんだ…………? 再会なら笑いあえるんじゃ…………」

「一夏、あいつらは生き別れに近い状態にあったんだ。長い間音信不通。安堵して緊張の糸が切れちまっているんだ。お前とちーちゃんの時のようにな。だから…………今はそっとしておいてやってくれ」

「…………わかった」

 

二度と会う事ができなかったかもしれない二人なんだ、このくらい許されてもいいだろうよ。よく見れば何人かは共感して涙を流し、それ以外の人も微笑ましく二人を見つめている。

この状態は暫く続いたが、何も悪い事は起こしてないため、お咎めはなし。寧ろ、感動の再会という事でそのうちパーティでも開こうかという流れになった。

あと、春介と掃除用具は三日間の自室謹慎と、受けられなかった授業内容のレポートをまとめさせられる羽目になった。あえて言おう、自業自得であると。

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