「魔剣と塔の魔女」の手記   作:上代わちき

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一ページ目「魔女の日常」

 

 

 

◆一「はじめに」

 

 

 

 この手記は大陸半島に住む、一人の魔女の記録。

 要するに、ただの日記だ。

 

 

 いやなに、気まぐれに手記というものに挑戦しようと思ってね。

 暇潰しには丁度いいのさ。

 

 まぁただ何も考えず思ったことを書いてみるとキリがなくなるから、ある程度テーマを絞って綴っていこうと思う。

 

 

 

 

 やぁ。

 「魔剣と塔の魔女」アリアさんだ。

 銀髪を伸ばす、美少女お姉さんだよ。

 

 「闘技と娯楽の街」を拠点に、よく賭博闘技に金を賭けてギャンブルしている遊び人さ。

 大抵は負けちゃうんだけど、だからこそ勝った時の気持ちよさはひとしおだ。

 そこもギャンブルの醍醐味だよね。

 

 ただし、ただ一度の例外を除いてほとんどは赤字に終わっている。

 基本的にギャンブルで生活はできていないってわけさ。

 

 

 

 

 この日もダメだった。

 私のイチオシである"ハリボテ勇者"に銀貨をしこたま賭けたんだけど、ふっつーに負けちゃった。

 おかげで私は素寒貧も同然。

 

 次の闘技までにお金を稼がないといけないわけだね。

 

 

 

 そういうわけで、また街の外にいる魔物を襲うことにした。

 奴らは人類の敵だから傷つけたり殺したりしても罪にならないし、なんなら近隣の村から感謝されるパターンもある。

 そんな奴らからの盗品を売り飛ばせば、また遊ぶ金と酒代を都合できる。

 とても都合のいい生業だった。

 

 

 

 そんな生活を繰り返している私だけど、この日の襲撃はちょっと普段とは違った。

 これは、いつもとちょっぴり違う冒険のお話さ。

 

 

 

◆二「街道と魔物」

 

 私の拠点である「闘技と娯楽の街」。

 大陸半島の河を渡る、港の大都市。

 

 そこから外に出れば、魔物がひしめく危険地帯の草原だ。

 

 

 

 街から出てしばらくは大きな街道がある。

 この道に沿って進む分には比較的安全だ。

 

 都市と都市を行き交う交易商人や、付近の村々を回る行商人もだいたいこの街道を用いるもの。

 かつて魔王を退治した勇者の加護か、それぞれの都市を護る国の魔術師のおかげか、とにかく街道沿いは安全なのさ。

 地平線まで続く草原の景色はのどかで、雄大な青空から吹くそよ風は気持ちのいいものだ。

 

 

 

 また、この辺りの街道には定期的に宿駅がある。

 街道を行く旅人を泊める宿とか酒場とか、後は隣の宿駅まで馬を貸してくれる貸し馬機能を備える施設だ。

 街道の魔物避けを維持する機能もあるそうで、だからこの辺りの情報もよく集まる。

 魔物の強盗計画を立てるにはうってつけの場所さ。

 

 

 

 一方で。

 街道を外れてしまえばそこは魔物どもの巣窟ということでもある。

 今は亡き魔王の領域。

 噂ではかつての魔王を邪悪な儀式で蘇らせようという企みもあるらしいが、まぁ私には関係のない話だ。

 

 どうせあいつら全部皆殺しにして、奴らの持ってる品根こそぎ奪い取るだけだ。

 そうなれば魔王の復活も何もないというもの。

 

 

 私の窃盗活動は、その実世の平和のためでもあるのさ。

 ……世も末だなってツッコミはしないでくれたまえよ。

 

 

 

◆三「闇の魔剣」

 

 改めて、私は「魔剣と塔の魔女」さんである。

 その名の通り、魔剣と塔を扱えるのがウリだね。

 

 今回はそのうちの一つ「闇の魔剣」について綴ろうか。

 

 

 

 街道沿いの宿駅の酒場。

 そこで付近にある一つの村が、魔物の襲撃を受けたという情報を得た。

 

 それ自体はとても痛ましいものだと思う。

 村なりに魔物避けの対策をしていた筈で、でもそれが無駄に終わってしまった。

 魔物が現れた時の、村側の絶望は想像を絶する。

 

 魔物と人類は敵対関係だ。

 奴らが容赦することは、期待するべきではない。

 村の人々が辿る末路は、悲惨なものである筈だ。

 

 

 

 一方で、厳しいことを言うようだけど私は同情以上のことはしない。

 村に魔物が現れたというのなら、その村を探って魔物を追い、そいつを滅ぼして金目のものを奪うのみ。

 それが私の生業だ。

 

 

 

 

 実際に訪れた時、村の状態は酷いものだった。

 とにかく悪臭が酷い。

 家々は焼けて、死体も積み重なり、魔物が村の品々を弄んでいた。

 

 そんな魔物の横っ面をぶん殴るのが、私の仕事だよ。

 

 

 

 

 さて。

 私の「闇の魔剣」なのだが、基本的には普遍的な鋼の剣そのものだ。

 魔物を切り裂き、あるいは急所を突き刺すことができる普通の剣。

 

 だが魔力を込めれば、その刀身は紫と黒の闇色に輝く。

 闇の魔力が迸り重く揺れる剣を振り下ろせば、遠くの敵を闇に溶かす"闇の刃"を飛ばせる。

 

 

 それが私の振るう「闇の魔剣」だ。

 

 

 

 村を蹂躙する魔物はアンデッドのようで、何者かが遺体を操るものだった。

 ものによってはそれなりの脅威で、それなりの数がいるものだからそれなりには厄介だ。

 

 だが使い慣れた「闇の魔剣」があるなら、その程度は問題ないというものさ。

 

 

 

◆四「魔族トロント」

 

 金になる盗品とは、まぁ様々だ。

 

 例えば魔物が貯め込んだ宝とか、その辺の人間から奪ったと思わしきコインとか。

 私はそういうのを奴らから奪ってギャンブルにつぎ込んでいる。

 元の持ち主に返すとか、そんな常識的な綺麗ごとは抜きで頼むよ。

 

 

 あとそれなりなのは、魔物の魂や魔力が凝縮してできた禍々しい宝石とか。

 魔術触媒とかに使えるらしくって、割と高値で売れちゃうんだ。

 

 

 

 だけど、今回はとびきりのレアものを引いた。

 賞金首って奴さ。

 

 

 

 「トロント」という名前の魔物がいる。

 詳しいことはあんまし知らないんだけど、とにかく肉体のプロフェッショナルらしい魔物だそうだ。

 現在魔王を復活させようとする勢力の内では、割と有力な存在だそうだ。

 

 世間一般にとって魔王の復活は絶対に阻止しないといけない一大事だ。

 だからこそトロントには多額の賞金が懸けられているわけだね。

 

 

 そのトロントが、今回の仕事場にいた。

 

 

 

 トロントは、まぁ中々に立派な剣を携えていた。

 魔物と言うより、魔族と表現したい人型の理性的なアンデッドだ。

 吸血鬼とは別口な、アンデッドキングとでもいうべきかもね。

 

 まぁそんな相手なもんだから、戦闘には苦労したよ。

 

 

 

 私の「闇の魔剣」の斬撃をいなされるわ、突き攻撃も弾くわ、飛ばした闇の刃も避けられるわ。

 まぁ私も同じぐらいトロントの剣術もいなしてやったけどね。

 

 闘技場の戦士っぽい気分を味わえて、なかなか楽しいひと時だった。

 これで勝つことができたら大金を得られるんだから、ますます楽しい。

 

 

 

 だけど、最終的には逃げられた。

 とても悔しい。

 

 

 

 ただ。

 後から思えば、それはある種の運命でもあった。

 

 

 トロントが逃げて、残りの魔物もすべて金目の宝石に変えてやった後の村には。

 一人だけ、生き残りがいた。

 

 

 

 生き残りの名前は「ポー」。

 

 しばらくの間私と行動を共にする少年。

 そして、後にあのトロントを打ち倒す英雄だ。

 

 

 

 そう。

 これは、少年が魔族を討つ英雄譚だ。

 私は、その英雄譚の見届け人というわけなのさ。

 

 

 そのついでに、金目のものを色々かっぱらっていくけどね。

 

 

 

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