「魔剣と塔の魔女」の手記   作:上代わちき

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二ページ目「塔と儀式」

 

 

 

◆一「闇の塔」

 

 やぁ「魔剣と塔の魔女」さんだよ。

 

 この名の通り、私には「魔剣」と「塔」を所有している。

 今回は特に後者について語ろうか。

 

 

 

 闇の塔。

 私が持ち歩いている「塔」であり、普段は霊体化している。

 必要な時だけ召喚して、その恩恵に与れるわけだね。

 

 

 

 塔は三階建て。

 

 一階「暖炉窯と水晶玉の間」

 二階「時空の鐘」

 地下一階「捕食の牢」

 

 

 これが私の持ち歩く家であり、切り札だ。

 

 この塔をフル稼働させてしまえば、だいたいどうにでもなる最強の逸品。

 まぁそんなことをすれば魔力ポーション代で大赤字になるけどね。

 

 だから普段は一階の「暖炉窯と水晶玉の間」だけ使っている。

 一階に出入りする分には魔力使わないからね。

 

 

 

 

 「暖炉窯と水晶玉の間」は、文字通り"暖炉窯"と"水晶玉"がある大部屋だ。

 

 "暖炉釜"は、部屋奥の常に火がついた暖炉にある釜。

 魔力を使えば以前食べたものは何でも取り出せる、最強の魔法の釜だ。

 飢えとは無縁だね。

 

 一方"水晶玉"は部屋の天井に浮き上がっていて、青白い光の粒子をまき散らす照明代わりになるクリスタル。

 だがその真髄は、過去や遠くの景色と音を映し出す魔術触媒。

 物語を映像として映し出したり、遠くの街の闘技を観戦したりできるってわけだ。

 本来は賢者が世界を観測するためのものらしいが、それはそれとしてこれがあれば退屈とは無縁だ。

 

 

 他にも赤い絨毯を敷いたり本棚を揃えたり、実は屋内庭園の疑似露天風呂とかあったりするけど、まぁその辺りは割愛する。

 いずれにしろ、街の外で夜を明かすならこれが色々と便利さ。

 

 

 

 え、どうやってこんなとんでもないものを手に入れたかって?

 過去に結構な大勝ちしたから、その金で魔導書買って、魔術の知識や魔剣と一緒に入手しただけだよ。

 

 

 

◆二「少年ポー」

 

 魔物"トロント"を逃がした後、夜を明かすことにした。

 

 村の生き残りである、少年の"ポー"を介抱するため。

 魔物に襲われただけあって酷いケガだったから、「塔」を召喚してその中で保護することにしたのさ。

 「塔」の中なら安全だ。

 

 

 少年は無事治療できた。

 一晩ほどかかったが、魔術の知識さまさまさ。

 

 

 

 少年"ポー"。

 

 「豊穣と風車の村」に住む農家の子で、普段は農作業や内職の手伝いをしていたそうだ。

 だが魔物"トロント"達が村を襲ったことで、その日常は壊された。

 私が村を訪れなければ、割とやばかったかもね。

 

 

 

 

 さて。

 そんな少年だが、どうやらあの魔物トロントに用があるそうだ。

 

 妹を、奴に連れ去られたらしい。

 病弱な女の子で、村ぐるみでお世話していた大切な子らしい。

 だから奴から奪い返したいそうだ。

 

 

 

 交渉の結果、少年を連れてトロントへ会いに行くことになった。

 少年は、この辺りの地形に詳しい。

 私としては好都合で、もしかしたらトロントの追跡が容易になるかもしれない。

 

 そういうわけで、二人で出発することとなった。

 

 

 

◆三「豊穣と風車の村」

 

 豊穣と風車の村。

 私が訪れた村のことで、今でこそ魔物"トロント"によって徹底的に破壊されているが、平時では小麦や色んな野菜が採れる豊かな農村だそうだ。

 村の面積は広く、北の方に行けば風車のある丘にたどり着ける。

 

 街道からは外れたところにある村だけど、だからこそこの村は街道に酒場と宿を兼ねる宿駅を出していた。

 村で採れた野菜を宿駅で売って、その金で結構潤っていたようだね。

 

 

 

 街道だけでなく村の中心地にも酒場はあり、そこそこ立派な教会もあり、そしてその周りにはどこまでも畑が広がり続けている。

 ぽつりぽつりと民家があったりするのも印象的だ。

 

 

 

 だけど、この村は魔物"トロント"達に襲われた。

 村なりに魔物への対策はあった筈で、さらには自警団もいた筈。

 

 それでもトロント達には対抗できず、少年とその妹を除いた殆どは死んでしまったようだ。

 

 

 

 一方で、村には隠された地がある。

 

 それは土着信仰に由来する祭祀場であり、北の風車の近くに道が隠されている。

 少年の案内があってはじめて見つけることができた。

 大陸半島を支配する教会の目を掻い潜って、伝統的な土地神サマを祀っていたのだろうねぇ。

 

 

 静謐な洞窟を改造して作られたその祭祀場は、やはりというべきか儀式に詳しい村の老人が主導して作ったものであるらしい。

 であれば、そこは魔力や儀式と相性がいい霊地である筈。

 

 

 

 魔物が身を潜めたり、あるいは何らかの儀式をする場所としてはうってつけとなる。

 探る価値はありそうだ。

 

 

 

◆四「再戦」

 

 どうやら私の見立ては当たっていたようで、案の定魔物トロントはいた。

 少年の妹もね。

 

 見た感じ儀式の途中だったようで、まずはそれを闇の刃で思いっきり邪魔してやった。

 これでトロントの部下の殆どは消し飛んだ。

 

 

 続いて「闇の塔」を召喚して、地下一階の権能である「捕食の牢」を発現。

 塔の地下一階部分から大量の触手を呼び出し、トロント達を食わせようとしたってわけだ。

 本来それは魔力の補給のための手段なのだが、魔物どもの金になる素材を放棄することにもなるから、金を稼ぐ場合ならやりたい手段じゃない。

 

 だがおかげでいい感じに目立つことはできて、最終的に少年は儀式の贄にされそうになっていた妹を救出できた。

 トロント達の意表を突くいい隠密だった。

 

 

 

 さて、儀式の具合を見る限り"少年の妹に、神格を宿らせる"手合いと私は考察している。

 

 後から知った情報だけど、少年の血筋は結構な代物のようでね。

 一方で"贄"となる人間は、一定の年齢の女性が最も相応しいとする文献は少なくない。

 贄を求める者が怪物の類なら、よりその傾向は強まる。

 

 

 少年の妹が狙われたのはここが理由だろう。

 

 

 

 だが少年の妹は、儀式から切り離した。

 これはトロントの計算を崩すもので、奴の首を狙う私にとって好都合だ。

 後は、儀式の首謀者であるトロントを斬り殺してその賞金を頂くだけ。

 

 

 

 

 けど、そこから先はトロントの方が上手だったね。

 

 少年の妹を救出したのはよかったけど、もうすでにトロントは少年の妹から"最低限欲しかったもの"を奪っていたらしい。

 すでに儀式は最終段階に移行して、そのまま儀式は完遂された。

 

 

 トロントにとって、神格を宿らせる先は少年の妹のつもりだった。

 だから少年の妹が救出されることは誤算である筈だけど、奴は狼狽えることなく保険の贄を用意していた。

 それは、トロント自身だ。

 

 

 トロント自身に神格を宿らせる。

 その形で、トロントの儀式は成功してしまったのさ。

 

 

 

 

 トロントに宿った神格とは、名を失ったかつての"魔王"そのもの。

 あの伝説の再来が相手となると、流石に私でも厳しい。

 

 魔王権限の余波で地形は崩れ、そのまま少年達ともども谷まで落ちてしまうこととなる。

 

 

 

 魔王の復活。

 勿論実際のところは、その第一段階ってところで、完全な復活にはそれ相応の準備と計画を必要とするもんだろうけど。

 それでも一般人の私にとってはたまったもんじゃない。

 

 まったくもって、とんでもないことに巻き込まれちゃったもんだよ。

 

 

 

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