「魔剣と塔の魔女」の手記   作:上代わちき

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四ページ目「村の財産」

 

 

 

◆一「勇者」

 

 この辺りでは"魔王"の存在は、それなりに知られている。

 となれば、当然魔王を倒したという"勇者"の知名度もそれなりだ。

 

 ただし例によって都市や村ごとにその詳細は違っている。

 魔王と同様に、どこに勇者の真実が眠っているかは判然としないのである。

 

 あ、今更だけど私の水晶玉に正確性は求めないでね。

 あれ、"元の用途が観測用"ってだけで、今は娯楽用だから。

 

 

 

 そういうわけで、私の考える"正確な情報"を以下に記す。

 

 大陸半島にて魔王が台頭し、奴が恐怖を以て支配地を拡大した頃。

 どこからか若者が現れて、魔王の軍勢に支配される地を次々と解放していった。

 それはいずれ魔王の悪行を阻むものであり、最終的に魔王と勇者は雌雄を決することとなる。

 最後に勝ったのは、勇者であった。

 

 これが勇者についての情報だ。

 

 

 

 また、勇者は光の聖剣を振るったとも言われているが、これが真実だとわかったのは後のこと。

 村を訪れた時点の私はまだ半信半疑だった。

 

 それから、魔王を倒した後の勇者がどこにいったかも曖昧だ。

 時の権力者に地位を与えられたとか、新たな冒険へ出かけたとか、はたまた恋人と共に隠居したとか、色々と説がある。

 

 

 

 結論を言おう。

 勇者は、私が訪れた「豊穣と風車の村」に血筋と財産を遺していった。

 

 意外なところに、意外な答えがあったのさ。

 

 

 

◆二「邸宅の地下」

 

 改めて、この時点の私達について語ろう。

 

 魔王顕現の余波で谷に落ちて、けれども谷に隠された道を見つけて村に戻ることができた。

 その際にたどり着いたのが、村長邸宅の地下だ。

 

 

 

 村長はここに財宝を隠していた。

 その財宝こそが、"勇者"にまつわるものだ。

 

 おそらく勇者はこの地を隠居先にした。

 それは件の土地神が理由なのか、それともこここそが故郷だったからなのかもしれない。

 真実は判然としないが、村長はその勇者の財産を今日まで受け継いできたのは事実。

 

 

 それと驚くべき情報はもう一つ。

 勇者の血筋はこの「豊穣と風車の村」に広まっている。

 勇者やその子孫の血筋を受け入れ、世代を重ねる過程で村中に広まった。

 

 

 つまり、この時の私と行動を共にしている少年"ポー"。

 そして魔物トロントに狙われ、一時は儀式に組み込まれてしまった妹。

 この二人もまた、勇者の子孫だ。

 

 

 少年の妹が儀式の贄としてトロントに攫われたのは、血筋としての質が高いから。

 おそらくトロントはそれを探る術があったから、彼女だけ生かした。

 

 その結果私と少年に救われて命は助かったんだから、何が功を奏するかわかったものじゃないね。

 

 

 

◆三「勇者の財産」

 

 さて、改めて探索の時間だ。

 村長邸宅地下には勇者の財産が眠っている。

 

 事態が事態だ。

 ぜひともかっぱらわないとね。

 

 

 

 ここに眠る品は色々だ。

 村長が代々受け継いで、護ってきたんだろうねぇ。

 

 腐敗の可能性がある王国や教会を信用せず、勇者の財産がもたらすだろう利益にも屈せず、時が満ちるまで耐え続けてきたんだ。

 村は滅んだが、その気高い役目は確かに果たされた。

 

 

 

 具体的に言うと、かつての資料などが遺されていた。

 厄介なことにかつての言語を用いているようで、私には解読できなかった。

 この辺りは街に持ち帰って、タリアの奴に委ねてしまった方が世のためかもしんないね。

 あいつならその辺は間違いない。

 

 

 

 それ以外にもいろいろあるけど……。

 そうだね、後の話だけどこのまま「財産の行き先」についてつづろうか。

 

 基本は村の生き残りである少年に委ねることとなる。

 いくら私でもこの状態で盗掘はできないから、正当な所有者に渡すしかない。

 ただ少年にその辺りの知識はないから、当面は知識のある大人が財産を保管することとなる。

 

 まぁつまり、資料同様にタリアの奴に全部渡したよ。

 その後のことは、少年とタリアが話し合うこととなるだろう。

 

 

 

※追記

 

 勇者が遺した資料の中には、まさかのえっちな本があった。

 つまり、勇者の性癖がわかるってことだ!!!

 

 いやぁすごくわくわくする。

 厳格な資料はぶっちゃけやる気ないけど、大昔のえっちな本なら一人で解読を試みるのも悪くない。

 これは大切に保管したいところだ。

 

 

 まぁでも少年に見つかっちゃったんだけどね。

 渋々共有せざるを得なかった。

 

 

 ……これ少年の教育によくない奴だなって気づいた時には、まぁ色々手遅れだったよ。

 後々記述するけど、こんなのが可愛くなるぐらいのことも少年に教えちゃったし。

 

 私にまともな教育とかは期待しないでくれたまえ。

 

 

 

◆四「光の聖剣」

 

 埃っぽくて薄暗い地下室には、勇者の財産が遺されていた。

 

 それは大抵資料の類であったりしたけど、力ある遺産も一つ遺されていた。

 魔王が顕現した今だからこそ役に立つものだ。

 

 

 

 それは「光の聖剣」だ。

 なんとなしに私の持つ「闇の魔剣」とどこか似ているが、しかしその性能は段違いだ。

 

 この聖剣は、資格ある者が持てば黄金の刃を現す。

 その刃を振り下ろせば、その輝きを以て敵を圧倒できる。

 その威力は「闇の魔剣」の比ではない。

 

 

 これがあれば、魔王となったトロントを倒せる筈だ。

 

 

 

 ただし、この「光の聖剣」の真価を発揮させるにはいくつか条件があるようだ。

 前提として、まず勇者の血筋が振るわなければならない。

 そして、未熟な者ではその力を十全に発揮することはできない。

 

 

 つまり。

 勇者の子孫である少年であっても、今すぐに黄金の刃を振るうことはできないというわけだね。

 

 

 

 でも、私にとってはこれで十分だ。

 赤字のリスクがあるが、お誂え向きの切り札がある。

 そいつでイカサマして、魔王を吹っ飛ばす。

 

 それなりの賭けにはなるけど、むしろその方が私らしいや。

 

 

 

 そのギャンブルの結末は、次回にて綴ろう。

 

 

 

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