欠神戒斗の青春記録   作:神座悠斗

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第12話どうぞ!


違うこと

 さてどうしたものか。僕としては短く終わるはずで振った話だったのに空気が重苦しいものに変わってしまったな。

 

 このまままったく違う話に切り替えても良いのだが、流石に空気を読んでおこう。

 

「そんなことがあったんですね。辛いことだったはずなのに、話してくれてありがとうございます」

「気にしないでくれ。俺としても、この問題を解決しなければならないと改めて認識出来たし、良いきっかけになってくれた」

「まぁ、最近の天羽さんは結構元気そうでしたし、案外いけるかもしれませんよ」

 

 獅子宮先輩の言葉を聞き、疲れているが活力を感じる笑顔を浮かべた彩辻先輩。それで部屋の空気が少し軽くなった気がする。

 

「欠神、今日の放課後時間はあるか?訓練に付き合ってもらいたいんだが」

「すいませんがお断りします。図書館で読みたい本があるんです」

「そうか。それなら仕方ないな」

「いやいや、仕方なくないでしょ。普通断る?彩辻くんから誘われてるんだよ?ただの読書で断るとかしないよ?」

 

 白井先輩がジト目で言ってくるが仕方ないものは仕方ない。現状、僕の中では彩辻先輩と訓練するより読書する方が優先順位が上になっており、これは変わらないのだ。

 

 適当に流そうと思ったら横から助け舟が出た。

 

「それなら白井さんが彩辻さんの訓練に付き合ったらどうですか?今日はどっちも非番ですし」

「確かにそうだな。白井とは最近予定が合わなかったしちょうどいい。白井が良いなら今日の放課後に一緒に訓練をしないか?」

「うへぇ!?い、良いけど」

 

 突然の指名に驚き顔を赤くしながら了承する白井先輩。

 

 それにしても獅子宮先輩は凄いな。白井先輩の恋路を応援しながら僕を助けてくれるだなんて、感謝しよう。

 

「そうだ、欠神。聞いてみたいことがあったんだ」

「何ですか?」

「欠神はどうやってその強さを手に入れたんだ?子供の頃から鍛えていたのか?」

「そうですね。家がそういう教育に熱心で、食らいついていたらいつの間にかこうなってました」

「なるほど。あの見事な天耀力(アルナ)操作もそれで習得したのか。今度機会があれば、ぜひ教えて欲しい」

「まぁ、機会があれば」

 

 誤魔化すために出したが……家、か。

 

 あそこを家と言うのは違う気がするが、僕が10数年生まれ育った場所ではあるし、家と言っても良いか。

 

 それから残りの昼休みの時間は、決闘の時に何をしたのかを解説して午後の授業まで時間が進むのを待った。

 

 

 

 

 午後の授業も終わり、放課後になった。とりあえず図書館に行って昨日見て気になっていた本を読むか。比乃宮も神崎も説明会で気になっていた部活に入部することを決め部活に行っているので、今日は僕1人だ。

 

 友達と一緒に過ごす時間は悪くないが、1人の時間も良いものだな。

 

 ゆっくり、静かに、自分だけの世界に浸っていられる感覚が心地良い。

 

「ん?お前は……」

 

 声がした方を見ると、天羽先輩が立っていた。今日は部活があるはずだが。

 

「こんにちは。今日は部活に行かないんですか?」

「……あぁ、少し疲れてな。今日は休むことにしたんだ。ここは静かで落ち着くし、ちょうど良いんだ。えっと……欠神だったよな。欠神は比乃宮と仲がとても良いんだな。今日の昼はあいつと一緒にいたんだが、ずっとお前のことを話していたよ」

「そうですか。何だか照れますね」

「欠神はいつも冷静で底知れない所があって、とにかく凄い奴なんだとさ。欠神、良い友達を持ったな」

「はい、僕もそう思います」

「ほんと、大切にしとけよ」

 

 天羽先輩が話しながら僕の目の前の席に座るが、僕としては喋ることが無いので困るな。昨日の帰り道で会った時も、大体比乃宮と神崎が喋っていただけで僕はあまり話していなかったので、1対1で喋るとなると気まずさを感じてしまう。

 

 どうしようか考えていると、天羽先輩から話し始めた。

 

「なぁ、欠神。お前ってさ、比乃宮のことどう思ってる?」

「どう、とは?」

 

 急に何だ?天羽先輩を見てみるが、真剣な顔をして真っすぐこちらを見ている。それで余計に意味が分からなくなる。

 

 まぁ、そうだな……答えるなら。

 

「良い奴ですよ。アスカーディアを出た後も友達でいたい、そんな感じです」

「そうか。それが、今のお前の気持ちか」

 

 天羽先輩は僕の答えを聞いて何か考えるように黙り込んだ。

 

 あの質問の意図は何だったのだろう。比乃宮を大切な後輩だと思っているから、友人関係も気にかけている、ということなのか?だが、それならもっと軽く質問するくらいで良いだろう。

 

 考えていると、天羽先輩がまた僕を向いた。

 

「突然な質問で悪かった。配慮とかそういうのは苦手なもんでな。率直に言うと、俺はお前らのことが心配なんだよ。ほら、比乃宮は強くなることに夢中って感じだから、欠神とかと上手くやれてるかどうか心配で聞いてみたかったんだよ」

 

 そういう意図だったのか。確かに、天羽先輩の言いたいことは理解できる。

 

 1つのことに熱中して他が疎かになり、取りこぼしてしまうというのはよくある話だ。

 

「心配してくれてありがとうございます。でも、比乃宮なら大丈夫ですよ。あいつはそういうこともちゃんとやれるタイプですから」

「そうか。なら良い。じゃあ、俺はもう行く」

 

 天羽先輩は席を立ち、帰ろうとしている。そこで、僕は気になっていたことを聞いてみることにした。

 

「あの、天羽先輩は彩辻先輩と仲が良かったんですよね」

 

 僕の言葉に先輩は反応して動きを止め、同時に雰囲気が一変するのも感じた。

 

「それが、どうかしたのか?」

「実は、僕は彩辻先輩と友達とまではいきませんが、知り合い程度の関係にあるんです。そこで2人が仲違いしたことを聞いたんです。失礼を承知でストレートに言いますけど、そんなに嫌だったんですか?親友と呼べる程の仲だったのに、全て失くすことになるかもしれないのに、自尊心を満たしたかったんですか?」

 

 殴られても文句は言えないくらいのことを言っている自覚はあるが、それでも聞いてみたかった。僕はその感情を知らない。だから知りたいんだ。

 

「はは……」

 

 僕の言葉を聞いて天羽先輩は少し笑った。気のない笑い声は乾いていて、何処か痛々しく感じた。

 

「そうか。まぁ、そう思うよな。ぶっちゃけそれが原因の1つって感じでもあるし。でも違う。それは

1番じゃない。それよりも、許容できないことがあった。それだけだ」

「じゃあ何が1番の原因だったんですか?」

「奪われたから」

 

 天羽先輩が顔だけ振り向いて言うが、その横顔は仄暗く危険さを感じる顔だった。

 

 それだけ言って天羽先輩は図書館を去った。

 

 奪われたと言っていたが、一体何を奪われたんだろう。

 

 机に置いていた本をまた手に取り読むが、頭の片隅で天羽先輩の言葉を考えていた。

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