教室に入り、まずは自分の席を確認する。黒板という名の大きなモニターに表示されている自分の名前がある席に移動する。僕の席は窓際の一番後ろか。
「おっ、お隣さんが来た」
席に座ろうとしたら声をかけられた。横に顔を向けると活発な雰囲気の男子がこちらに手を差し出していた。
短髪で髪の色は薄紅色。瞳は瑠璃色で三白眼気味だ。整った容姿で肌は少し日焼けしており、所謂運動部系イケメンというやつだ。
「俺は
「
差し出された比乃宮の手を取り、握手をしながら自己紹介をした。何気にこの学園に来て初めて人と話したな。比乃宮、お前は僕の第一村人になったぞ。心の中で讃えていると、比乃宮が話を再開した。
「いやー、主人公席に座りたかったけど欠神にとられちゃったよ」
「主人公席?それはどういう物なんだ?」
「欠神の座ってる席のことだよ。アニメとか漫画で大体主人公が座ってる席がそこだからさ、俺も座ってみたいなぁなんて思ってたんだよ。てか、欠神はアニメとかあんまり見ない感じ?」
なるほど。この席はそんなに特別なのか。もしこの席を狙って襲われるようなことがあればどうしよう。早急な席替えが必要になるな。僕は席にこだわりは無いから問題ないな。
「親がかなり厳しくて娯楽とか流行りに触れてこなかったんだ」
「マジか、そりゃ大変だったな。でもちょうど良いな。アスカーディアは全寮制で親の目は届かないから、これまで触れられなかった分、いっぱい楽しもうぜ」
「あぁ、そのつもりだ」
比乃宮は良い奴だな。こういう奴が将来大成して良い家庭を築くんだろう。僕の中の比乃宮の評価を向上させていると、始業を告げるチャイムが鳴り、スーツを着た女性が教室に入ってきた。
第一印象はおっとりとした雰囲気の優しそうな先生。身長は150センチ後半位だろうか。童顔で可愛らしく、なんだか守ってあげたい気分になる。小動物でも見ているのか僕は。
「新入生の皆さん、初めまして。このクラスを担当することになった
笑った。それだけでニパァ、という擬音が聞こえ、矢吹先生に後光が差した。駄目だ、クラスメイトが1人倒れそうになっている。可愛いことは正義らしいが、これじゃ凶器だ。正義って難しいな。
「アスカーディアでのルールは各自配布されたスマホで確認してください。スマホは学生証であると同時に、アスカーディア内のすべての施設を利用したり、クレジットカードのように商品を購入したりすることが出来ます。利用するときはスマホを提示したら利用できますが、ポイントを消費するので残高はよく確認してくださいね」
スマホを手に持ち見せながら説明をしている。アスカーディアではこの端末で商品の決済をはじめ、メールのやりとりやSNSの利用などが出来るようだ。便利ではあるが、失くしたらその分不便になりそうだ。
「ポイントは毎月最低で5万ポイント振り込まれます。振り込まれる日はその月の最初の日で、自動で振り込まれることになっています。ポイントは1ポイントにつき日本円で1円の価値があります。」
月に5万円は貰えるのか。高校生には十分な額であり、散財に気を付ければ生活に困ることはないだろう。しかし最低か。考えていると女子が手を上げて質問した。
「最低ってことは、支給されるポイントを増やすことが出来るんですか」
「はい。出来ますよ。ポイントを増やす方法は2つあります。1つ目はバイトなどの労働です。学生らしいポイントの増やし方ですね。2つ目は学内序列を上げることです。アスカーディアは実力主義な面があって、強い生徒ほど多くの恩恵を受けれます。ポイント以外だと寮の部屋が広くなる、とかですね。序列による変化は30位から現れます。序列は生徒間の決闘で上げれて、
バイトでコツコツと頑張って増やすか、決闘で一気に増やすか。二択を選ぶことが出来るのか。今のところポイントに困る予定はないし、僕はどちらも選ぶ気は無いが、もし選ぶならバイトだな。
僕は決闘なんて明らかに穏やかではないことなんてやりたくない。3年間を平和に過ごして卒業したいものだ。
「決闘に序列か。話には聞いてたけど面白そうだな。闘ってみてぇ。」
比乃宮が大好物を前にした小学生のようにウキウキとしている。僕の隣人は結構好戦的なタイプだったようだ。誰彼構わず喧嘩を売るようなことはしない、分別のある戦闘狂といったところか。いや、冷静な判断が出来るなら戦闘狂ではないのか。
「質問は無いですか。もしあったらまた先生に言ってください。では、本日は以上です。さようなら」
ぺこりと頭を下げ、先生が退出した。教壇から降りる時にこけそうだったが、大丈夫なのか。見た目も相まって高校生、いや中学生に見えるぞ。雰囲気は小動物だし、本当に大人なのか。少し心配になってきた。
「あの先生は結構ドジっ子だな。大人っていうより同い年みたいだ」
「確かにな。でも、厳しい人ではなさそうで良かった。矢吹先生が担任なら、のんびりとした学生生活を過ごせそうだ」
「同感。3年間担当するわけだし、この担任ガチャで当たりを引けたのは運が良かった。てか、欠神は決闘とか興味ないのか?」
比乃宮が首をかしげながら聞いてきた。
「無いよ。ポイントは今支給されているので十分だと思っているし、わざわざ決闘する理由がない」
「マジかー。欠神と闘ってみたかったけど、それじゃ出来そうにないな」
決闘に意欲的でないことを伝えるとすぐに引き下がってくれた。こちらとしては凄くありがたい。残念がっているが、悪く思わないでくれ。それに、比乃宮ならすぐに決闘相手を見つけれるだろう。コミュニケーション能力が高く、顔が良くて優しい。
友達もすぐに作れるだろうし、近いうちに僕は友人Aになるんだろうな。
そう考えると、少し悲しい気持ちになった気がする。