欠神戒斗の青春記録   作:神座悠斗

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第3話どうぞ!


欲しいもの

 比乃宮と一緒に教室を出て、才麗学園内を見て回ることにした。

 

 アスカーディア内の学園はどの学園も広いが、才麗学園はその中でも広い方だ。軽く見て回るだけでも一日で全てを見ることは出来ないな。

 

 渡り廊下を歩いていると、比乃宮が序列の話を話題に出した。

 

「先生が序列による変化は30位からって言ってたけど、この学園に在籍している生徒は大体520人だったよな。いやー上位約6%の存在にならないといけないのかぁ。先は長いねぇ。」

「確かにそうだな。僕らは学園に入って日が浅い。先輩たちは当然僕らより自分の能力を磨いているだろうから、その差を埋めるのは一朝一夕に出来るものじゃない。僕らが入学するまでにしたことと言えば、自分の力が暴走しないように制御する術を身に着けたくらいだからな」

天耀力(アルナ)の制御か、懐かしいなぁ。俺最初はコツが掴めなくて苦手だったんだよ。1年経ってようやく慣れたんだ」

 

 天耀力。異能使いの覚醒と同時にこの世界に発現したエネルギー。天耀力は僕たち異能使いや天耀力が溜まり結晶化した特殊な鉱石の天耀鉱石(アルブネイト)などが持っている。異能使い(僕たち)非異能使い(ノーリティ)と比べ身体能力などが超人的であるといった特徴があるが、天耀力を持っていることが一番の違いだろう。

 

 天耀力を使って異能使いは身体能力や武器を強化したり、天耀術式(フォルトゥス)が発動出来たりする訳だが、制御出来ずに暴走させると自分の身は勿論、周りも危険に晒すことになる。

 

 過去にはそれが原因で死傷者を出した事故が起きたことがあり、異能使いと非異能使いとの間に大きな溝が生まれかけた。

 

 だから異能使いはアスカーディアに来る来ないに関わらず、天耀力の制御ができるように教育を受けるよう義務付けられた。その結果、溝が深まることは無く異能使いと非異能使いの間で大規模な紛争が起きずに済んだ。

 

 世界滅亡の危機を回避したのに今度は人間同士で争うだなんて馬鹿馬鹿しすぎる。当時の人々の理性に感謝だな。

 

「なぁ欠神。決闘は無理でも組手とか筋トレとか、軽めのやつなら付き合ってくれるか?」

「たまになら良いけど、なんでそんなに僕を誘うんだ?僕みたいな消極的な奴よりもっと気が合いそうな人の方が適任だと思うけど」

「欠神だからだよ。俺のアスカーディアでの初めての友達だし、欠神からはなんだか凄いモノを感じる」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、買い被り過ぎだ。そんなに期待されても困る」

「ははっ、いっぱい期待してやるからなー」

 

 ニヤリとして僕の肩に手を回す。まだ会って少ししか経っていないのに大胆なスキンシップをされても不快感を感じない。それに、比乃宮にとって僕が特別な存在だと言われたことで、僕の機嫌はすこぶる良くなっている。

 

 比乃宮はこのパーフェクトコミュニケーション術をどうやって身に着けたのだろうか。気取っていたり不自然な感じがない比乃宮の言動は誰にでも出来ることじゃない。比乃宮のパーフェクトコミュニケーション教室があったら、是非ともご教授願いたい。

 

「おい!あっちで揉め事が起こってるらしいぞ!しかも才ある三十人(ティアーズメイト)だ!」

「マジかっ。もしかしたら決闘が見れるんじゃないか?見に行こうぜ」

 

 周りの学生たちが興奮して話している。話の内容から、どうやら決闘が始まるかもしれないようだ。

 

 才ある三十人は学内序列の上位30人の呼び名だ。

 

 この学園の上澄みか。気になりはするが、強い興味は無い。このまま学園を見て回ろうか、比乃宮。

 

「才ある三十人か。気になるし、俺らも見に行かないか?」

「あぁ、良いぞ」

 

 比乃宮、お前はこういうのに興味津々だったな。

 

 良い奴の頼みはつい聞いてしまうな。なるべく断りたくないという気持ちが自然と湧いてくる。

 

 この学園のレベルを知っておくのに丁度良い機会だと考えよう。比乃宮との親交を深めることも出来そうだし、悪いことじゃない。

 

 揉め事が起きている所に向かうと、言い争いの声が聞こえてきた。女子と男子で揉めているようだ。

 

 女子の方は我が強そうな印象の人だ。

 

 身長は175センチ位で、スラッとしていてただスタイルが良いように見えるが、スカートから伸びる足についた筋肉を見るにかなり鍛えているのだろう。

 

 痩せているというより、引き締まっているという表現が正しいな。

 

 男子の方は体格がかなり良く、身長も高い。僕より高いな。制服の上からでも分かる筋肉と強面な顔のせいで少し威圧感がある。

 

「私が先だったよね。だから私がこの商品を買うの」

「いーや俺の方が先だったね。これは俺の物だ」

「貴方は先週も『月曜日限定!超甘フワクレープ~1人一つまでだよ☆~』を買ってたでしょ。そして私は買えてない。もう2週間も食べれていないの。だから譲りなさいよ。」

「それはお前の落ち度だろ。この商品を買う権利は平等にあって、それをお前が無駄にしてるだけだ」

「貴方が友人を使って2個も買ったから私の分が無くなったんでしょうがっ!卑怯よ!」

「欲しい物があるのなら全力で手に入れるべきだ。俺は全力を尽くしたまでだ」

 

 なんだろう。こういうのはもっとちゃんとした、というか……とにかく今目の前で起こっているどうでも良い言い合いじゃない展開が待ってると思ったんだがな。例えば、

 

『もう私に付きまとうのは止めてって言ったよね』

『あぁ?良いだろ、俺と決闘しろよ』

 

とか。他にも、

 

『私の友達に何したの!?』

『お前をその気にさせるにはあれが手っ取り早いと思ってよ。どうだ?やる気になったか?』

 

 といった展開が待っていると思ったんだが、僕の考えが間違ってるのか?

 

 高校生、それも学園のトップ層がスイーツを巡って喧嘩をするだなんて、誰が予想できるんだ。

 

 しかも男子の方がかなりグレーなことをやってるのがこの喧嘩のしょうもなさのレベルを上げている。

 

 そこまでして食べたいのか、先輩。捨てたプライド()をスイーツで満たしているというのか。

 

「もっと空気がひりついてると思ったんだが、違ったみたいだな」

「比乃宮もそう思うか。良かった、俺だけじゃなくて」

 

 仲間がいることに安心していたら、喧嘩がヒートアップしていた。

 

「もう良いわ。話し合いじゃ解決しそうにない。決闘よ」

「俺も同じことを考えていた。決闘で商品を買う者を決めるぞ」

 

 するのかよ。スイーツを賭けて決闘するのかよ。決闘するかどうかは自由だが、本当にするのか。

 

「マジかー、本当にやるのか。まぁ決闘が見れるしいっか。第一決闘場でやるみたいだな。俺らも行こう」

 

 とりあえず比乃宮と決闘場に移動し観戦することにした。どちらが勝ってもどうでも良いと思っているのは僕だけではないだろう。

 

 決闘場に移動して観戦席に2人で腰を下ろす。比乃宮が話を切り出す。

 

「欠神はどっちが勝つと思う?序列では女先輩の方が上だけど、男先輩はその1つ下らしいし、戦うのはこれが初めてみたいだから、予想が難しいんだよな」

「詳しいな。知ってたのか」

「いや、調べた。学園の公式データベースに序列と決闘の記録ログが公開されてるから見たんだ。データベースには学園のマップとかオススメの飲食店とかも載ってるから便利だぞ。ちなみに、女先輩の名前が太刀川玲奈(たちかわ れいな)先輩で、男先輩が佐野錬治(さの れんじ)先輩だ。」

 

 データベースには色々な情報がありそうだな。僕はオススメの飲食店が気になるな。今度比乃宮と行ってみよう。

 

「正直分からないな。比乃宮が言ってたことが正しいなら、どちらが勝ってもおかしくない」

「そっか、俺も同じ。まぁ、学べるところがあったら良いなぁって位の気持ちで見るか」

 

 比乃宮にははぐらかしたが、僕は太刀川先輩が勝つと思っている。天耀術式の有無、そして能力次第で予想は変わるが、今のところは太刀川先輩が勝つ可能性が高い。

 

 太刀川先輩から感じた天耀力の総量と出力、鍛えた肉体からそう判断した。

 

 一見、男性の佐野先輩が勝ちそうに見えるが、男女の筋力の差は天耀力による身体能力の強化を使えば大きな問題にならない。身体能力の強化は元々の数値(肉体)と天耀力に左右されるので、鍛えていればその分強くなりやすい。

 

 太刀川先輩なら佐野先輩と押し合いになっても勝てるだろう。

 

 勝敗について考えていると、開始のアナウンスが聞こえてきた。もうすぐで始まりそうだな。

 

 僕の予想を上回る結果になったら面白いな。

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