ここはロドス。各地を移動しながら戦場に出撃したり、一方で鉱石病の治療を提供している製薬会社である。
殺伐としたテラの中でロドスという巨大な艦は、戦場に出撃するオペレーターや治療を求めにやって来た患者たちのオアシスのような場所でもあった。ひとときを過ごす彼らは、各々硬いクッキーを焼いたり、追いかけっこして遊んだり、または料理や研究に没頭している者が行き通っている中、ロドス過去最大の騒動が起きたのである。
それは……。
「また一緒にいますね、あの二人……」
「もしかして二人とも、もう付き合っているんじゃないの〜?」
「えー? あのソーンズが? レッドさんと……?」
そう。ソーンズとレッドは、恋仲になったという騒動だ。
「ということで、ソーンズとレッドは本当に恋仲なのかと確認のために二人をここに呼んだんだけど……」
私はドクター。このロドスでトップを務め、オペレーターたちの指揮官である。
たった今私は、ドクターという権限で、騒動のど真ん中にいるソーンズとレッドをこの執務室に呼び出したところだ。私はデスクの椅子に、二人はその前で立って並んでもらっているが……。
レッドが、明らかに恋仲とやるようにソーンズの腕にべったり絡みついているのだ。なのにソーンズは特段変化のない表情で私を見つめ、レッドを振り払う様子もない。
そしてソーンズはとうとう口を開いた。
「そうだ」
たったそれだけ答えて。
私は硬直した。しかしソーンズはそれ以降言い訳をすることも、冗談だと茶化すこともせず真っ直ぐとこちらを見、レッドはレッドでこちらの声を聞いているだろうに否定してこない。というか二人が(主にレッドが)私の目の前で恋人アピを辞めなくて何かがつらい。独身男性の私を置いて……。
「えっと、経緯とかを聞いても?」
ソーンズもレッドも何も語ってこないので、私はなんとか心を落ち着けて訊ねた。するとソーンズが、ふっと目を伏せた。
「話は長くなるが、あとで書類にしてお前に渡すとかでもいいか?」
「ま、まぁ、それでもいいけど……」
むしろソーンズがレッドに恋に落ちた話を私が文体になったもので読んでもいいと? それとも本当はレッドにめちゃくちゃアタックされたとか?
どちらにせよオペレーターの深いプライベートなことに踏み込み過ぎただろうかと私がうんうんと悩んでいるのを他所に、ソーンズはいつも通り淡々としていた。
「用がそれだけなら帰るぞ」
「あ、えーっと……」
まだ何か聞かなきゃいけないことある気がする。とは思ったが、衝撃的過ぎて私の口から言葉が出てこなかった。
「行くぞ、レッド」
「分かった」
ここに来て初めてソーンズがレッドに掛けた言葉だった。それは何気ないものだったはずなのに、ソーンズが見たことないくらい優しい顔をしていて私は呆気に取られた。
あ、本当に恋をしているんだ。
めでたく恋仲となったレッドの尻尾が、嬉しそうに揺れている。本当に、彼らは恋人同士になったというのか。私はソーンズの顔を見てそう信じずにはいられなかったのだ。