数日後。約束通り、ソーンズから長い長い文体が届いた。
最初のタイトルには確かにはっきりと「俺とレッドが恋仲になった経緯」と大きめの文字で書かれていた。
私は仕事の合間を見てソーンズが書き上げた書類を読み始めた──
最初は俺が恋をするとは思ってもいなかった。
きっかけは、お前が俺とレッドのいる戦隊をよく組ませたからだろう。レッドはテキサスやプロヴァンスがいない日、研究室にいる俺のところによくやって来た。
レッドはしっかりノックをするから、そこはお前たちの教育の成果なんだろうな。研究室前にカメラを設置しているから、確かに最初はなぜレッドがここに来たんだろうとは思った。だが拒否をする理由もないから訪問を許したということだ。
結果から書くと、レッドは研究室に来ても何もしなかった。清潔空間と仕切っている透明カーテンを無断で入ってくることもなかったから俺はそのまま放置していたはずだった。その内に適当に置いてあったままだったベンチソファでうたた寝をするようになったのは驚いたがな。ループスは聴覚も優れているだろうから、俺の研究中の音や足音でも聞いていたのかもしれない。それが子守唄になったのかまでは俺はレッドからは聞いたことはない。
しかしそれらを繰り返すだけでも、俺も人間なのだろうな。レッドのことを度々頭の中で思い出すことが増えた。任務で顔を合わせることも多かったし、余計その回数は増えていった。
そしてレッドからのアクションがあった。どうでもいいことで俺に話し掛けてきたんだ。キスってどんな味なのかとか、赤ちゃんはどう生まれるのかとか。
キスの味までは答えられなかったが、赤ん坊が生まれる仕組みは説明してやった。だが半分は理解していないみたいだった。まぁそんなことはどうでも良かった。
だが、レッドのアクションはますます多くなる一方だった。レッドに腕を掴まれたり、突然頭を撫でてきたり。それで周りが騒ぐものだから一度、お前に戦隊を変えてくれと頼んだことがあったな。俺とレッドを同じ戦隊にするなと。俺は非効率なことが嫌いだったから、計算上邪魔なものは遠くにやりたかったんだ。今思えばそれは俺の大きな誤算だった。
そうしてしばらくは俺もその周りもいつも通り穏やかになったはずだった。だが変わらずレッドは研究室に訪れるし、何か話す訳でもないまま気が済んだらどこかに行く。何度か俺の実験が爆発したこともあったが、それでもレッドは暇な時には俺の研究室に来た。だから俺はレッドに訊いてみたんだ。
「なぜ俺の研究室に来る」
「ソーンズがそばにいるから」
それは俺が実験を爆発させても、レッドを庇っていつも無傷だからという理由だったかもしれない。これもレッドの真意までは聞いたことはないが俺にとってはどうでもいいことだった。
レッドを庇わずに実験をわざと爆発させることも考えたが、主にソイツの担当医に何か言われるのは困るから庇わなかった日はない。ただ、そうしてレッドを守ったり顔を見合わせるだけで俺の中にも心境の変化があったんだ。
それは俺がレッドのいない戦隊で作戦を遂行していた時だった。やたら距離感の近い女に腕を掴まれたりしていたんだが、レッドはこんなふうに強く引っ張ったりしなかったのに、と思い出して俺は気づいた。
俺はレッドに恋心を抱いていると。
それだけじゃない。頭を撫でてくるのも、他の女よりレッドがいいと思った。うたた寝しているレッドの顔の方を見ていたいと思った。
だから俺はお前に元の戦隊に戻してくれと頼みに行ったな。それはお前もよく覚えているだろう。俺とレッドを同じ戦隊にしろと。
それからはずっとレッドを目で追ってばかりだった。だからといって任務の手は緩めてはいない。むしろレッドがそばにいることで、ますます俺の力が増していた。それは計算上出してもはっきりと分かることだった。ここに計算を書き出してもいいが、また長くなるから今は辞めて置こう。
そして次にやることは決まっていた。レッドを呼び出し、俺は自分の心を告白した。
「俺はお前が好きだ」
レッドはしばらく俺を見上げて何も言わなかった。俺は一つ聞いてみたんだ。
「お前は俺が好きなのか」
するとレッドの回答は一言だけだった。
「レッド、ソーンズのこと好き」
それを聞いた瞬間、俺の中で実験成功した時よりも強い達成感や感情が溢れた。これが恋愛感情だったんだろう。だから俺はレッドに言った。
「両思いってことなんだな」
「両思い?」
「二人とも好きだということだ」
「ふぅん……」
そんな会話だった。