それから数日後。
アーミヤやケルシーにはソーンズとレッドの話はそれとなく受け流して二人は恋仲であるということを公認したあとのことだった。ソーンズからの「二人で話したい」というメッセージが端末に届き、私は彼の研究室に向かった。
研究室に入るとソーンズはじっとして待っている訳でもなくまた実験をしていたが、私を見るなり防護服を脱いで手洗いを済ませ、よく来たなと出迎えてくれた。
「話は簡単だ。この前のレッドの話だ」とソーンズは話し続ける。「レッドは本当に、俺のことを性的に見ているのか?」
何か研究について聞かれるのかと思ったので、そんなことだったのかと私の肩から力が抜けた。そして私は首を振って正直に答えた。
「レッドから話は聞いていないが、ソーンズのあの文書から彼女は明らかに君に好意的なんだと思うよ。だから証拠や証言は必要ないと判断したんだ」
「……そうか」
ソーンズの黄金色の瞳はキョロリと研究室を見渡した。話し終えるとソーンズはさっさと自分の研究に戻るだろうが、未だ私の前に立っているということは、何か聞きたいことがまだあるように思えた。
「それで、レッドは今も君の自室に来るのかい?」
私から話を振ってみた。ソーンズはすぐに答えた。
「ああ」
包み隠さずなんでも話してくれるソーンズだが、こうもなんでも話されると気まずいものもあるんだなと私は思った。
「ということは、一線は越えたと?」
かなり遠回しな言い方をした。しかしソーンズは私の目をしっかり見て、
「いいや」と否定した。「今は無理だと言っている。それに、俺はレッドのことをよく知らないからな」
今はって。そう言うってことはいつか結婚とかしちゃうんだろな。私はそう思い込んで勝手に寂しくなったりもした。いやぁ、きっと喜ばしいことなんだろうけどな。なんだか複雑だ。
と考えていると、ソーンズの眉間に僅かに皺が寄った。あ、今私変な顔をしているのかもしれない。私は表情をなんとか取り繕いながら誤魔化すように別の話を振った。
「レッドのことをよく知りたいなら、テキサスやプロヴァンスから直接聞いてみるのはどうかな? レッドはいつも二人とよくいるし、お互いループスだからループスについても少しは分かるかも」
「分かった」
ソーンズはそう言うと、ようやく踵を返して研究の続きに向かった。ソーンズの言動はいつも簡潔だ。ということは本当に、ソーンズは彼女たちに話を聞きに行くかもしれない。
「まぁ、ソーンズなら大丈夫かな……?」
プロヴァンスならまだしも、テキサスのところには大体ラップランドがいる。ソーンズはコミュニケーションには大きな問題はなさそうなんだが……別の火種にならないといいのだが。