ここのお話は親子妄想があります!苦手な方は閲覧非推奨!
テラのハーフについての知識に乏しいので解釈不一致の可能性大
なんでも大丈夫な方だけ閲覧どうぞ
ロドスでは、非オペレーターである患者が出産間近で赤ちゃんを産むことがある。
しかしまさか、あのソーンズとレッドの赤ちゃんが産まれるとは思わなかった。まだまだずっと先のことだと思っていたし、何より私の心構えが出来ていない。
だが周りの反応は誰もが祝福モードだった。ちょっと前までソーンズとレッドが恋人なんて、と噂されていたのが嘘みたいに。
そして私の前でレッド自らが我が子を見せに来てくれた時には驚いた。
「え、双子……?」
レッドの腕には、スヤスヤと眠る赤ちゃんが二人いたのだ。
その双子の赤ちゃんは男の子と女の子であった。男の子の方がループス寄りの見た目であり、女の子の方がエーギル寄りの見た目。とはいえどちらもそれぞれ二人の特徴を持っていたりして、まさしくテラでは珍しいハーフであった。
その内にソーンズも私のところに来たので、赤ちゃんの誕生祝福を伝えると、彼からこんなことを聞かされた。
「正直驚いた。エーギルとループスのハーフは初めて見たが、二人ともエーギルになると思っていたからな」
そう。このテラではハーフの場合、どちらか片親の種族の血が濃くなるはずなのだ。もちろん例外もあるが、そもそもハーフすら珍しいこの世界では、例外も数えられる程しかないだろう。
「どちらにせよ、めでたいことじゃないか。おめでとう」
と私が言うと、ソーンズは一瞬目を逸らした。赤面すらしない彼の表情から、照れている感情を見つけ出すのは難しい。
「それで、二人の名前は決めた?」
と私が聞くと、ソーンズからこんなことを言われたのだ。
「名前はお前が決めてくれ。レッドと話して決めたことだ」
「え、私?!」
予想外の言葉に私は声がデカくなる。
だがソーンズは身動ぎ一つせずにこう語った。
「お前のおかげで二人は無事に産まれたからな。恩人には何か礼をするものだろう」
「礼って、こっちこそお礼を言いたいっていうか……」
「そういうことだ。ロドスに暮らす許可もその内書くから、コードネームも必要だ」
「許可は出す! 許可は出すけどあの、ちょっとソーンズ?!」
ソーンズは言いたいことだけ言って執務室をあとにした。私の言い分なんて、最初から聞く気もなかったのだろう。
私はとんでもない役目をもらってしまったと、半分恐れおののいていた。
そうして私は仕事だけでなく、二人の名付けで悶々と悩む日々が続いた。時には閲覧室で辞書を引いたり図鑑を眺めたり。また神話などを読むことも増えていった。
「最近ドクター、ボーッとしていない?」
「ソーンズさんとレッドさんの赤ちゃんの名づけを頼まれたらしくて」
「ああ、それで!」
という会話はチラチラと聞こえてはいたが私には気にしている余裕がなかった。
そして長い長い数日間を経て私が名付けた二人の名前はこうだ。
ループス寄りの見た目をしている男の子はココット、ソーンズと同じような茶色い髪の毛なのでコードネームは「マホガニー」、エーギル寄りの見た目をしている女の子はナギ、レッドに似た銀色の髪の毛なのでコードネームは「ツルギ」となった。
ロドスにいる以上はコードネームで呼ぶことになるだろうが、家族四人でいる時は本名で呼んで欲しいなと思ながら提案したところ、ソーンズもレッドもあっさりOKして赤ちゃんの名前は私が名付けた通りになった。
とはいえ赤ちゃんの面倒はなかなか大変な様子だった。レッドは赤ちゃんに関しては全くの無知で、何かある度に「ソーンズ、この子泣き止まない」と頼っているのはよく見かけた。
ソーンズも赤ちゃんに対しては知識くらいはあったのかもしれないが、空腹でもなくオムツの汚れもないのに泣く赤ちゃんに戸惑っていたのは見ていて新鮮だった。その内に天井の梁に座って子守りを始めた時はヒヤヒヤしたが。
育休ということで、ソーンズもレッドも外勤任務に出ることはなくなったが、暇があると代わる代わる訓練所に行っているのは私も見掛けてはいた。育児で疲れているだろうに、二人ともオペレーターであることは一時も忘れなかったのだ。
そんなある日、クルースとパフューマーが小さく笑いながらコソコソとしていた。どうしたんだと声を掛けようとしてシーッと静かにするように言われ、宿舎のソファへ目を向けると。
そこには、レッドが赤ちゃん二人を抱えたまま三人揃って眠っていたのである。これは写真を撮ろうよと、カメラを引っ張り出して撮った程だ。あとでソーンズに贈ってあげよう。
そうして、ソーンズとレッドの子ども、マホガニーとツルギはロドスみんなに見守られながらスクスクと育っていった。
子どもの成長というのは早いもので、マホガニーとツルギが五歳になった時にはすっかりそれぞれの個性も出ていて、やんちゃ盛りとなっていた。
まずマホガニーは、ソーンズに似て五歳にして父親が作る薬の名前と調合方法を全て覚えた。ついでに勝手に執務室に入ってきては、
「どくたぁ、これ賞味期限きれるよ!」
と言いに来るくらい冷蔵庫をチェックする。
そしてツルギはというと、レッドと同じくらい身体能力が高く、いつの間にか高いところによじ登っていることがあった。赤ちゃんだった頃、ソーンズがわざわざ天井の梁で子守りをしていた方の子だ。
「ツルギ?! いつの間にそんな高いところで寝ているんだい??」
特に冷蔵庫の上で寝ているから困ったものだ。
「あ、ぼくもそこで寝るー!」
丁度足元にいたマホガニーは、そう言って冷蔵庫を登り始める。なるほど、そうやって登っていたのか。今度は登れないようにちゃんと片付けないと……って関心している場合じゃなくて!
「冷蔵庫の上には登っちゃダメ! 怪我させたらお父さんとお母さんに怒られるから!」
私は両腕にそれぞれ二人を抱えてソファに下ろす。保育士さんってこんな気持ちなんだろな。私は世の保育士さんに心の中で崇拝した。
「パパもママも怒らないよ! だってぼくたち、ケガしないもん!」
とずーっと喋っているマホガニーだが、一方のツルギは口数が少なかった。発語の問題は医療部からも問題ないと聞いてはいたが、いつもボーッとしたり私を見つめるばかりであまり喋らない。ソーンズもレッドも口数少ないし、そこはよく似ただけなのかもしれない。
「ねぇどくたぁ、一緒にあそぼ! ぼく、ボール持って来たんだよ!」
私が考え込んでいるとはつゆ知らず、マホガニーは延々と喋り続けている。
……ん? ボール?
ここに来た時から、マホガニーは手ぶらだったはずである。ボールなんて持ってきていない、と思っていると、マホガニーは服の下から蓋をした試験管を取り出してきてぎょっとした。
「見てて、どくたぁ! ぼくが初めて作った風船ボールだよ!」
「ちょ、ちょっと待って、マホガニー!」
ドガーン!!
「……っていう夢を見たんだ」
私は執務室で、今日の秘書であるアーミヤに長い長い夢の話をし終えた。
アーミヤは私のとんでもない夢を否定することなくクスリと笑ってこう言った。
「確かに、ソーンズさんもレッドさんも、子どもに怒らなさそうですよね」
「そっちの話??」
アーミヤって時々天然だよね、と思いながらも、あまりにも細すぎる夢に私は何度も思い出していた。
「まぁ確かに……」私は頷く。「それに、ツルギちゃんが全然喋らなかったのも気になるんだよなぁ。今度また夢の続きでも見ないかな……」
「今度は、夢じゃなくて現実になるかもしれませんね」
アーミヤが、冗談なのかガチで言ってるのか分からない口調でそう言った。そうなのかな……そうなのかも? ソーンズとレッドの仲の良さから、そんな気もしてきて嬉しいような、寂しいような気持ちになってきた。
「私も、もし自分の子どもが産まれたら、ドクターに名付けを頼むかもしれません」
「え、マジ?」
「ふふ、もしもの話ですよ?」
そんなもしもの未来の話のためにも、私は早く鉱石病の完治方法を見つけないとな、と思った私だった。
おしまい