黄金色の紅海   作:青瑠璃

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若干前のお話に繋がってます。なんでも大丈夫な方だけ閲覧どうぞ


子育てするレッド

 

 

「ドクター、助けて」

「ん?」

 ノックをしないでいつの間にか執務室に入ってくるオペレーターは沢山いる。それは気配を感じ取れない私が非力なせいかもしれないが、目を上げた先に映ったレッドとその腕に抱えるその子に、私は大声をあげてひっくり返ってしまった。

「わぁあああああ?!?!」

 え、なんでなんで?

 私は椅子に座ったまま倒れ、そこから動けなかった。

 思考を巡らせる。確かこの前、ソーンズとレッドには双子の子どもが産まれたという謎の夢を見たばかりだ。それなのにまた見ているのか?!

 今度はレッドが赤ちゃんを一人抱えて私の前に立っている!

「ドクター、どうしたの」

 一方のレッドは、私の思考もつゆ知らず、両腕に赤ちゃんを抱えたまま私の顔を覗き込む。どうしたのってこっちが聞きたいよ! どうしたの、その子!

「い、いや、なんでもないよ……」

 私は自分で立ち上がりながら冷静を装った。最近忙しかったからな、今私はまた夢を見ているのだろう。

「その赤ちゃんはソーンズとの子か?」

 夢なら突拍子な発言も許されるだろうと思ったが、レッドはなんの話をしているのか、と興味深そうにその大きな目をこちらに向けた。

「どうしてソーンズの子どもだと思ったの? ドクター」

「いや、それはだな……」

 と赤ちゃんの顔をようやくちゃんと見て気がついた。赤ちゃんには額から小さな角があった。おや、これはエーギルでもループスでもない特徴だ……とようやく私の頭が冷静になってきた。

「その赤ちゃんはどこから連れて来たんだい?」

「ロドスの通路にいた。ずっと泣いてたから、連れてきた」

「あー、そういうことか!」

 そうか、良かった(?)、何が良かったのかよく分からないまま、私はレッドが赤ちゃんを抱えている状況をやっと分かり始めてきた。恐らく医療部かどこからか脱走してきた赤ちゃんなのだろう。見るとそれなりに大きい赤ちゃんなので、ハイハイでもして逃げ出してきたのかもしれない。

「迷子の赤ちゃんだね。とりあえず医療部に連れて行った方がいいかも……」

 と私が言い終える前にレッドは首を振った。

「医療部、誰もいなかった。みんなシュジュツ? に行ったって」

「手術……?」

 私はちらりと、デスクにある報告書へ目を向けた。そういえば今日は、手術予定の患者さんがいて、もう少しで出産を控えた妊婦さんもいた。そして治療中の患者さんの状態が急変して緊急手術の要請と報告もついさっき来たばかりだったではないか。医療部は大忙しで、その隙に誰かの赤ちゃんが脱走したのだろう。

「だったら……」

 トントン。

 別の代替案を考えようとして、執務室にノック音。どうぞと言うと、そこには外勤任務から帰ってきたばかりのソーンズが入ってきた。

「ドクター、報告書を……」

「ソーンズ」

 ソーンズに呼びかけたレッドは、知らない赤ちゃんを抱えたまま相当困った顔をしていただろう。ソーンズは一瞬足を止めた。そして。

「ドクター、どういうことだ」

 なぜかレッドではなく私に言葉を向けるソーンズ。ちょっと怒ってる? 勘違いだよ、多分?

 

 

 

 

「知らない赤ん坊……?」

 説明を終えると、ソーンズは冷静になって私が言ったことを繰り返した。

「医療部には子どもの患者や付き添いもいるからね、そこから逃げてきたのかも」

 と私が言うと、ソーンズはそうかと相槌を打つ。

「それでお前は、医療部の誰かが来るまでレッドに赤ん坊の世話を頼もうとしていたのか?」

「そこまでは言ってないけど……」

 今回のソーンズは妙に私にトゲがあるな。やっぱ少しは嫉妬してるのかな? 私は何もしてないんだけどね。

「もし時間があるなら、ソーンズにも赤ちゃんを頼んでいいかい? 私は赤ちゃんの面倒を見てくれそうな人を探すから」

「時間はある」

 私の指示にソーンズは即答だった。まぁいつかは子育てするだろうし、練習になるかもねと思っていると。

「おんぎゃあおんぎゃあ!」

「わ、ソーンズ、赤ちゃん泣いちゃった……!」

 今まで大人しくしていた赤ちゃんが突然泣き出したのだ。レッドは縋るようにソーンズに助けを求めたが、ソーンズもいきなりのことで対応し兼ねていた。

「待て、レッド! しっかり抱えてないと落とすぞ!」

「でも、強くすると怪我しそう」

「大丈夫だ、こうしたら……」

 とソーンズとレッドが慌てて育児する様子を見て、なんかデジャブを感じた。

「ミルク作ってくるから、ちょっと待っててね……?」

 私は急いで赤ちゃん用ミルクを探しに執務室を出た。私は小走りで医療部に向かいながら、きっと二人に子どもがいたらあんな感じになるんだろうなぁと、孫が出来た祖父みたいな感情に浸っていた。

 

 

 

 

 のちに、医療部の人が来て赤ちゃんは無事に親の元に返されていったが、育児疲れで執務室のソファで寄りかかってうたた寝をしたソーンズとレッドは、本当に幸せそうだった。

「……お疲れ様、二人とも」

 私は二人にブランケットを掛け、照明を暗くした。

 

 

 おしまい

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