原作よりも低能なギレン・ザビ 作:スカウトマニア
サイド7での戦いは更に加熱していた。ガンダム開発計画の産物であるゼフィランサス・フルバーニアン、ガーベラが地球連邦トップクラスのエースが乗り込むことによって、ノーマ達を相手に一進一退の攻防を繰り広げている。
ノーマこそファンネルをリアスカートにマウントし、キュベレイ本体の操縦に専念しているが、マリオンのプロトタイプ・キュベレイはファンネルを最大限活用し、ハマーンも次期主力量産機レースから落選したガザCで懸命に戦っていた。
コンセプトがやや被り気味なゼフィランサスFBとガーベラだが、その宇宙を跳ねるバッタの如き加速性能や機動性は、ジオントップクラスのニュータイプ少女達をしても捉えるのは容易な話ではなかった。
同時にヤザンとユウもまたジオンの次世代機の性能とそれを操るパイロット達の力量に、舌を巻く思いをしていた。
「柔い動きをしやがる。なよなよしいんだよ、貴様ら」
言葉とは裏腹に実に楽しそうに、猛獣さながらに笑うヤザンはガザCのナックル・バスターをコンマ1秒の差で回避し、全身に襲い掛かるGを堪能しながらビームの雨で返礼してやった。
ガザCはブロック構造を採用し、メンテナンス性と生産性を高めた機体だ。数を揃えて強力なビーム兵器であるナックル・バスターを集団で撃つのが、基本にして最良の戦法となる。
簡易的な構造であるがゆえに、機体の剛性は脆弱の一言に尽き、間違っても格闘戦を挑んではならない。
加えてMAへの変形機構を有するが作業用MSやMPの流れを汲む為、航続距離が恐ろしく短い。率直に言ってかなりの問題点だ。
MS戦では脆弱性と運動性の低さから格闘戦は大の苦手で、本来強襲や一撃離脱戦法が売りの筈のMA形態は帰還できるか怪しい燃費の悪さと、よくもまあ主力量産機に推薦したなとアクシズ工廠の正気を疑われた出来である。
ただ包囲ないしは集団でまとまった状態からの砲撃の威力は確かなもので、数の揃えやすさも相まって新兵や粗製乱造の学徒兵などを戦力化する分には役立つと評価もされている。
長々と語ったが、つまり、いくらハマーン専用のチューンナップをしたところで、ガンダムタイプの相手をするのはだいぶ無茶だという話だ。
ハマーンは機体を目一杯振り回して、ヤザンの猛烈な攻撃を回避し続ける。MA形態へ変形する暇はない。そもそもMA形態の速度よりもMS形態の運動性の方が、この戦場では必要な場面だ。
「この距離ではガザCには不利が過ぎる。キュベレイがあれば!」
思わずないものねだりをするくらいには、ハマーンは不利な戦いを強いられていた。マリオンのファンネルによる援護がなければ、いくらかの被弾さえ許していたかもしれない。
マリオンもまた大型MSであるプロトタイプ・キュベレイで、一瞬で視界から消え去る速さのガーベラを相手に、実戦経験が足りないなりに対応していたのは流石ニュータイプと言ったところか。
「戦いなんて嫌い、そう言っていられる状況ではないわね。それに連邦のパイロット、手強い」
「味方を支援しながらよく動く。それにあの巨体を捉えきれないとは」
元戦闘機乗りとしてジオンのMSの脅威を嫌というほど味わわされたユウは、地球連邦でもトップクラスのMSを預けられていても、やはり本家のジオンの方が技術は上か、と痛感している。
それに地球連邦でも進められているサイ・コミュニケーターとニュータイプの戦争利用も、ジオンの方が進んでいるのは確かだ。
「オールレンジ攻撃、実戦でやられるとこうも手強い」
同時にファンネルを操るノーマを相手に、性能で劣るガンダムMk-Ⅱで互角以上の戦いを演じていたアムロのずば抜けた技量を改めて思い知らされてもいた。
グリプス2からの援軍とノーマの護衛部隊が間に合えば、戦況は一気にジオン側に傾くが、それを連邦、いやティターンズも分かった上で今回の新型機強奪作戦を実行に移している。
グリプスの港湾ドッグの周辺でひと際大きな爆発が生じ、それに続くようにして小さな爆発が生まれて、命の炎が消えて行く。
「あれは!?」
精神を貫く悲鳴と消えて行く熱にノーマが振り返れば、巨大な機体が流星のように駆け抜けて、ムサイやハイザックを蹴散らす姿が映る。
ガンダム開発計画の産物、ガンダムステイメンが巨大な移動武器庫アームドベース・オーキスとドッキングした『デンドロビウム』だ。
全長140mの半分近くを占める長大な砲身、無数のコンテナを繋ぎ合わせたような巨体が目を引くその中央に、ステイメンが埋め込まれるように存在している。
火器管制を捌く能力と加速性能に耐える頑強な肉体など、多くを求められるデンドロビウムを操縦するのはコウ・ウラキだ。
さらに騎馬であるデンドロビウムに追従する歩兵役を務めるのは、チャック・キースのジム・キャノンⅡ、そしてサウス・バニングの高機動型ジム・クゥエルの二機。
デンドロビウムのメガ・ビーム砲やマイクロ・ミサイルをはじめとした大火力に晒されて、港湾ドックに係留されていた艦艇は沈められるか、足止めを余儀なくされてしまい、増援が出るに出られなくなっている。
よもや地球連邦軍がこのようなMA──とジオン側は認識していた──を繰り出すとは、青天の霹靂であった。
「あの機体を止めないと皆が出られない」
デンドロビウムはビームを弾くIフィールドを装備しているだけでなく、加速性能も凄まじく、随伴している機体との連携も出来ている為に、撃墜はかなり難しいと戦闘素人のノーマの目でも分かる。
焦りばかりが募る中、動きがあったのはジオン側ではなくティターンズ側だった。レイラの乗るキュベレイがホワイトベースに着艦してしまい、直後に信号弾が打ち上げられて、ガンダムMk-Ⅱ試作0号機からアムロへと通信が入る。
『アムロ、新型機はホワイトベースに着艦した。だが、状況が変わったぞ。トロイホースがジオンの援軍にキャッチされた。戦闘も発生している。僕達はこのまま脱出だ』
「流石にジオンだ。手際が良い。ヤザン、戦闘に熱を上げ過ぎるな! ウラキ少尉、敵機の足止めだけでいい。キース少尉も無理はしなくていい」
アムロは特に厄介な動きを見せるノーマのキュベレイを、ビームライフルとハイパー・バズーカによる間断ない連射で牽制しながら徐々に機体を後退させる。
MS部隊の撤退を支援する為、ホワイトベースとそのバックアップに控えていたアルビオンから数を優先したメガ粒子砲とミサイルの乱舞が戦場へと降り注ぎ始める。ちなみにコウやキースはアルビオンの所属だ。
「待て、逃げるな。ジオンの、父上のMSを持って行くなあ!」
コックピットの中で叫ぶノーマだったが、どれだけガンダムMk-Ⅱに追いすがろうとしても、ゼロのガンダムMk-Ⅱ試作0号機まで加わった弾幕は容易に突破ならず、撤退するガンダム達の背を見送るほかなかった。
かくしてグリプスにおける戦闘はティターンズの目標達成による、ジオンの敗北となったのである。
そしてゼロの口にしたティターンズ所属のペガサス級トロイホースが接触したのは、おりしも周辺宙域をパトロールしていたキャスバル・レム・ダイクン率いる部隊だった。
ルウム戦役やジャブロー制圧戦で活躍を見せ、ジオン・ズム・ダイクンの遺児であるばかりかジオン有数のエースパイロット“赤い彗星”として名を知らしめたキャスバルは、現在、ジオン軍大佐として少数部隊を率いて自由にやっている。
出自と戦果と相まって将官への昇進の打診もあったが、これ以上は自由にやれなくなるという理由で断るファンキーぶりを発揮していた。
そんなキャスバルはパーソナルカラーである赤色に染めたハイザック・カスタムをぶん回し、対峙する強敵との戦いに口角を釣り上げていた。
「連邦のパイロット、やる!」
通常のハイザックのジェネレーター出力や推力を強化し、より高機動性を突き詰めたエース用の機体は、キャスバルの好みに合わせてリミッターを緩めたピーキーな仕上がりだ。
その機体の性能を十二分に引き出し、二つ名の通り宇宙を駆けるハイザック・カスタムの放つビームマシンガンを、対峙する機体は回避するばかりかビームライフルによる的確な射撃で応じてくる。
キャスバルと互角の戦いを演じているのは、黒を主体としたティターンズカラーのガンダムMk-Ⅱだ。宇宙の闇に溶け込むような黒い機体は、一瞬の停滞もない俊敏な動きでジオン屈指のエースを拘束することに成功していた。
黒いガンダムMk-Ⅱには高機動型ジム・クゥエル四機が追従していたが、あまりにレベルの違う戦いに手を出せず、キャスバルの部下が乗っているハイザック、ガルバルディβ四機とこちらも互角の戦いを繰り広げていた。
「アンディ、リカルド、バーニィ、フレデリック、私が決着をつけるまで持ちこたえて見せろよ」
黒いガンダムMk-Ⅱを駆るパイロット──クワトロ・バジーナ(本物)は、噂に名高い赤い彗星の実力に目つきを険しくしながら、彼もまた自分の部下へと指示を出す。
なおキャスバルとクワトロはまるで鏡写しのように瓜二つであった。生き別れの兄弟かクローンと言われたら、思わず信じてしまいそうだ。
『エマ、ジェリド、カクリコン、マウアー、敵はベテランだ。浮足立つな。ホワイトベースとアルビオンの援護はいったん忘れるんだ。赤い彗星を抑え込めば、十分な援護になる』
顔立ちばかりでなく技量もまた全く互角のキャスバルとクワトロの戦いは、機体の性能差、部下達の力量、そして目的の違いなど彼ら自身以外の要素で勝敗が決まるだろう。
戦闘を続ける作風でもないな、とは思うのですが、うーむ。