原作よりも低能なギレン・ザビ   作:スカウトマニア

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偉大な先達と丸かぶりにならないように気を使う回でした。


(指、指か。まずはそこが気になられたようだ)

 オリヴァー・マイの見ている前で、ギレンは椅子に腰かけたまま左手を上げると、指を開いたり閉じたりした。指の動作を確認しているらしい。

 

(指、指か。まずはそこが気になられたようだ)

 

 今回、ギレンに報告を上げたのはYMS-07Bグフ。

 完全な陸戦用MSグフの試作三号機で、この仕様で量産を行う予定となっている。

 地上方面軍の新たな力となるべきグフは、当然、開発チームの熱意と発想と技術力の結晶だ。だからといって結晶が必ずしも眩く輝くわけではないのだから、世の中は世知辛く出来ている。

 

「時にマイ技術中尉」

 

 これまで幾人ものジオンの技術者をひりつかせてきた、ギレンの声音であった。マイは慣れたが、慣れる程、コレを聞かされるくらい質問が重ねられたのは、不本意であった。それだけ総帥に疑問を抱かせる兵器が開発されていた、というわけである。

 

「はっ」

 

「このグフの左手はなぜバルカンになっている? いや、バルカンをなぜ左手に内蔵したのか?」

 

 マイは襟を正して答えた。事前にギレンからの質疑を想定し、応答のマニュアルを作成しておくのは、マイにとってすっかり慣れた手順だ。

 

「はっ。グフは陸戦用MSであると同時に将来、実戦投入される地球連邦のMSとの格闘戦を視野に入れています。

 想定されるクロスレンジでの戦闘において、従来の火器では重量と銃身の長さを原因とする取り回しが問題視され、最小限の動作で効果を発揮する射撃武装が研究されました」

 

「それで腕部を弾倉にし、指先を銃口にしたこの5連装75ミリ機関砲、あるいはグフ・マシンガン、フィンガー・ランチャー、フィンガー・バルカンと呼ばれる代物を開発したのか……」

 

 また名前がいくつも挙げられている、と思いつつ、ギレンはしげしげと自分の左手を見る。たしかに取り回しはいいだろう。手とは人類にとって最も身近で、役に立つ道具といえよう。

 指を曲げての曲射も可能と報告書にあるから、至近距離での使い勝手、あるいは不意を突くのには効果的と素人にも分かる。

 

「意図は分かったが、細かな動作は難しいそうだな。ザクにあった汎用性を捨ててまで得たのが、この機関砲か。その為に盾を装備させたのは私も良い案と思う。

 ヒート・サーベルにも文句は言うまい。刃を高熱化させるたびに消耗し、十数回の使用が限度の使い捨てというのは、近い内に解決を期待したい点ではあるが……」

 

 ギレンの要望する使い捨てにならざるを得ないヒート兵装の代替は、残念ながらまだ研究段階だ。単分子ブレードや超振動系、あるいはビームなどを使ったMS用近接武器が開発されるのは、まだ先の話である。

 そして後に開発される連邦製MSの近接武器はビームサーベルだ。

 ヒート・ホークが切り結んだ例があるから、おそらくヒート・サーベルでも刃を交わせるだろうが、きっちりと刃を立てて敵に当てる技術が求められるのに対し、ビームサーベルは当たれば斬れる代物。

 おまけに重量もはるかに少ないから、ヒート系の武器と比べて軽く、速く、斬れると来ている。これでは格闘戦巧者でも、愚痴のひとつも零すのではなかろうか。

 

「しかし、だ。マイ技術中尉。マシンガンやバズーカを持てなくしてまで、この機関砲を採用するだけのメリットがあるのかね? 見たところ、マシンガンのように予備の弾倉を携行し、リロードすることも出来ないようだ」

 

「はい。リロードに関しては左腕部の装甲を外し、内部の弾倉を交換する必要があります。戦闘中に設備もなくMS単体で弾倉を交換することはまず不可能です」

 

「……ふむ。クロスレンジでの有用性が売りとして、だ。右腕のヒート・ロッドもクロスレンジを想定した武器か? これまでにない新機軸の武器だとは思うが」

 

「はい。ヒート・ロッドは全長17.5メートルに達し、摂氏400度まで放熱可能な電磁鞭です。対MSとの格闘戦においては鞭部分を用いて敵機の武器や機体そのものを切断、あるいは巻き付けて電流を流し、機体とパイロット双方にダメージを与えることも可能な、画期的な武器となります」

 

 実際、ルナチタニウム製のガンダムの爪先を切り落とす威力がある。ギレンはマイを一瞥した。彼との付き合いも長い。参謀部のおべっかの目立つ者達よりも、ギレンの彼に対する評価は高かった。

 ジオン公国総帥たるギレンを相手にしても自分の仕事を全うする為に意見することもあるこの技術屋は、ギレンがジオン国民に求める姿勢を体現している。

 

 ただジオンに生まれたから優良種なのではない、優良種たらんと努力するからこそ優良種足り得るのだ。

 持って生まれた地位や立場に胡坐をかくのでは、地球連邦政府の腐敗した高官達にも劣る。少なくとも彼らは甘い汁を吸えるその立場を守る為なら、努力を厭わないからだ。

 

「ではマイ技術中尉。この兵器は本当にザクに続く主力量産機として、地上方面軍に生産を命じるべき兵器なのか? 同量の黄金よりも貴重なジオンの将兵の命を預けるのに足りる、信頼できるMSか?」

 

 ギレンはマイがイエスと答えたなら、それを信じるつもりだった。それだけ目の前の青年が誠実で真摯であると知っている。マイは逡巡した。顔色が変わり、それでも意思を固めて口を開く。

 

「本機、グフの格闘戦におけるコンセプトそのものは決して間違ったものではありません。搭載された武装もそのコンセプトに可能な限り沿いながら、新機軸の技術と発想を盛り込んだ意欲的なものです。

 しかし、フィンガー・バルカンはクロスレンジでの有用性は認められるものの、それ以外のレンジでの火力、継戦能力ともに著しく低く、ザク・マシンガンに見劣りするものであります」

 

「続けたまえ。気に病むことはない。ここには貴官と私しかおらん。余人の耳には漏れんよ」

 

「いえ。小官は他者に恥じ入るようなことを申し上げてはおりません。これは、本独立戦争において必要な情報であると確信しております。

 またグフは、爆撃機とSFSの機能を併せ持つド・ダイとの連携を想定しています。ド・ダイに搭乗中のグフはフィンガー・バルカンを使用する他ありませんが、連邦軍の航空兵器を相手にするには不足と言わざるを得ません。

 またマニュピレーターの繊細さの喪失により、ザクとの武装共有が著しく困難となり、ヒート・ロッドは威力絶大なるも操作性は著しく困難です

 卓越した技量のパイロットでなければ、自機の破損の可能性を考慮しなければならないのも問題を内包しています」

 

 伸ばしたヒート・ロッドが根元から先端に到るまでコンピューター制御されているならまだしも、実際はそんなことはなく、生身で鞭を扱うかの如くMSで操作をしなければならない。

 いくらベテランのMSパイロットでも、生身で鞭を自在に操れる者がどれだけいるだろうか。もし居たとしてもMSでの鞭捌きに反映させるのは簡単ではないだろう。

 ギレンとしては開発陣の意欲は買うが、もっとこう、現実を見て欲しいと切に思うところ。

 

「グフは一部の格闘戦に長けたベテランやエースに向けた機体である、と言わざるを得ません。遺憾ながら主力量産機とするには、運用に難を抱えています」

 

「私もおおむね同じ意見だ。パイロットの中でエースの占める割合は、十パーセントもあるまい。必要なのは十パーセントのエースの為の機体ではなく、九十パーセントの兵士達の為の機体なのだ。

 大半の兵士にこの仕様のグフは手に余ろう。正直、格闘戦に移行する前に物量に物を言わせた連邦に、穴だらけにされるのではないかと思えてならん」

 

 宇宙を制したとはいえ、地球連邦との国力差は歴然としている。MSも生産が始まれば、地球連邦はあっという間に数を揃えてくるだろう。

 少なくともザクに勝てることを目標に開発された地球連邦のMSが、走りかかるグフを相手に列を成し、手にした武器を撃つ姿が二人には容易に想像できる。

 

 連邦のMSが手にするのは果たしてマシンガンかバズーカかガトリングガンか……正解はビーム兵器である。

 現実は予想よりも非情であると、この時の二人は知らない。まあ、大気圏内ならビームは減衰著しいから、宇宙で使われるよりはまだマシだが、たいして慰めにはならないだろう。

 

「しかし、この機体を使いこなせる技量のパイロットからは、フィンガー・バルカンの速攻性能を評価する声もあります。

 切り結ぶ距離でほぼノーモーションで射撃できる優位性を、オプションでも用意できればと思うのですが……」

 

「オプションか。その程度ならば……」

 

 ギレンは思案する表情になり、改めてグフの報告書に目をやる。ふと彼の視線にデスク上の電話が目に入った。滅多に使われない総帥直通の回線用の端末である。

 

「電話。電話か」

 

「?」

 

 疑問符を浮かべるマイにギレンは閃いたアイディアを伝えた。有用であるなら彼らがキチンと形にしてくれようと、それだけの信頼があった。

 

「なに、簡単なことだ。不意を突くのであるのなら、腕にばかり着目する必要はあるまい。ヘッドフォンの如く外付けで頭部に機関砲なりなんなり装備させてもよかろう」

 

 後年、ガンダムMk-Ⅱやジェガンに装備されるバルカンポッド。そのアイディアがギレンの頭の中から飛び出てきた瞬間であった。

 ギレンのアイディアを聞いたマイはなるほど、と一つ頷く。MSの頭部はメインカメラの他、重要かつ繊細な電子機器が詰め込まれている。

 今から機関砲を内蔵するとなれば大型化か性能低下を余儀なくされるが、ヘッドフォンの如く外付けの装備とするなら、仕様変更の負荷は小さくて済むはずだ。

 

「総帥のそのアイディアは有用かもしれません。急ぎ、技術部の面々に伝えます」

 

「私の思い付きを形とするには貴官らの手腕が必要だ。よろしく頼む」

 

 ギレンの疑問に端を発したグフの仕様について、渾身のコンセプトを疑われた開発陣は七転八倒、丑の刻参りをしかねない惨状を呈したが、自国の総帥からの指摘には確かに説得力があった。

 結果としてグフは両腕が通常のマニピュレーターへと変更され、ヒート・ロッドはワイヤー化の上、ボックス型の外付けオプション兵装へと変更されることとなる。そしてギレンのアイディアを基とし、パイロット達の要求に応えて頭部にバルカンポッドが装備された。

 

 頭部にバルカンを内蔵したジオンの機体としては、ザクⅡFS型をカスタマイズしたガルマ専用ザクが挙げられるが、この世界では60mmバルカン砲二門を内蔵したバルカンポッドを装備したグフが代表例となる。

 MSへのオプション装備の開発は更に加熱し、ザクⅡJ型の装備の一つ、三連装ミサイルポッドを腕部に装備できるよう調節され、シールド裏にシュツルム・ファウストやグレネード各種、ヒート系の武装や予備弾倉を懸架するアイディアも出てくることとなる。

 

 フィンガー・バルカンを外付けオプションとした三連75mm機関砲も開発され、ベテランの中にはヒート・ワイヤーの上に重ねて装着し、ワイヤーに引っ掛ける形で機関砲そのものを射出し、敵機に命中と同時に誘爆させる戦法をとる者まで出たという。

 さながらワイヤークローでオーラショットをぶつける、オーラバトラーの如き戦法であったが、あまりに贅沢な無駄遣いとしてこっぴどく叱られるというリスクがあった。

 こうしてグフは当初からいわゆるB3グフ、グフ・カスタムと呼ばれる機体に近い仕様で、正式な生産が決定したのであった。

 




かの名作のごときキレは出せませんでした。

たしかワイヤークローでオーラショットを相手にぶつけるダンバインを見た記憶があるんですが、実は定かではないです。ジオン製MAってことにしてブブリィやガラバを出そうかなんて考えていたこともありました。
聖戦士伝説がPS5とかでリメイクしないかな。
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