原作よりも低能なギレン・ザビ 作:スカウトマニア
79/4 V作戦、ビンソン計画発動
★本作イマココ
79/5 宇宙要塞ソロモン完成
79/6 ジオン潜水艦隊編成、フラナガン機関設立
79/7 ホワイトベース、ガンダム完成。ジム生産開始
79/9/18 原作第一話
79/10/4 ガルマ戦死
79/10/10 マッド・アングラー完成
79/11/5 ランバ・ラル戦死
79/11/7 オデッサ作戦
79/11/30 ジオン軍、ジャブロー攻撃
79/12/24 ドズル・ザビ戦死、ソロモン陥落
79/12/25 NT-1大破
79/12/30 ソーラレイによってレビル、デギン死亡
79/12/31 ア・バオア・クー陥落
ハワイ諸島攻略の後、ジオン地上軍はオデッサ方面軍と北米方面軍共同にて、旧イギリス領に存在するベルファスト基地の攻略に取り組んだ。
ランバ・ラルやノリス・パッカード、黒い三連星、キャスバル・レム・ダイクン、アナベル・ガトー、ケリィ・レズナーなど名だたるエースの他、ノイエン・ビッター大佐やマ・クベ中佐など有能な指揮官が選抜された。
相変わらず水上戦力はまるでないジオンだったが、まだ数の少ない潜水艦だけでなくゴッグやアッガイ、先行量産されたズゴック、使い物になるからとジュアッグまでも駆り出し、キャリフォルニアベース製の新型機も投入されていた。
この中にはグフを素体とした新型機も含まれる。地上用のMSとなれば汎用機であるザクではなく、完全に陸戦用に設計されたグフを素体とするのは理に適っている。
そうして本国との技術的連携のもとに開発された機体は二種。一機はグフをさらに重装甲化し、ギレンの判断によって除外されたフィンガー・バルカンを外装型に変更した上で、両腕に搭載したグフ重装型。
対MS戦ではなく歩兵支援の為に開発された機体であり、それならばフィンガー・バルカンの両腕搭載も決して無駄ではないのだが、歩兵支援にしては口径が大きいし、結局、ザクでよい、というのがガルマやギレンの判断である。
シールドが不要となるほどの重装甲化だったが、運動性と移動速度は極端に低下し、他のMSと足並みを揃えるのは難しく、フィンガー・バルカン二挺も歩兵支援なら、マシンガンやバルカン・ポッドで事足りる。
グフの長所をことごとく潰すこの機体に、生産の許可が降りるわけもなかった。
残るもう一機がグフ飛行試験型である。グフ・フライトタイプとして完成を見る機体の始祖にあたる。
MSの単独飛行というあまりに大きなハードルに挑む本機は、ロケットバーニアの強化と熱核ロケットの脚部集措置を採択し、膝から下の装甲がスカートのように大きく膨らんでいる。
ガルマの入念な釘差しにより両腕部は通常のマニピュレーターとなり、武装はノーマルのグフやザクと共有する形式となる。
技術的ハードルの高い単独飛行は航続距離や速度、飛行高度など多くの問題を抱えていた。
だが見方を変えれば使い様のある機体だった。飛行は出来ない。出来ないが、高度を諦めれば地上を高速移動する高速MSへ早変わりしたのである。
ホバー移動故の姿勢制御の難しさ、旋回半径の大きさ、歩行よりも地形の影響を受けやすいといった課題は残るが、後のドムにもつながるデータを残した本機は、グフ・ホバータイプとして採用されることとなった。
鬱蒼としたジャングルと湿地帯、大小の河川が複雑に絡むジャブロー上層部では、持ち味が殺される可能性が高いのが難点ではあった。
このグフ・ホバータイプを駆って鬼神の如き活躍を見せていたのは、ノリス・パッカード大佐だった。
彼の主君たるギニアス・サハリンが地上に降りてきて、念願の計画に着手すると知らされて、少しでも彼の役に立つよう武功をあげ、またオデッサと北米にとって目の上のたんこぶであるベルファスト基地を攻略して、少しでもギニアスを危険から遠ざけたかったのだ。
ヒートサーベルとザクマシンガンを両手に、61式戦車やファンファンばかりでなく、時には大きな跳躍とヒートワイヤーを駆使して、爆撃の為に降下してくるフライマンタやデプロッグさえも撃墜するその姿は、他のエース達をして感嘆の念を禁じ得ないものだった。
ものは試しとアッグガイに乗り込んでいたキャスバルは、シャア(本物)のジュアッグの支援を受けつつ、ランバ・ラルのゾゴックもいいが、私もグフ・ホバータイプがよかったと愚痴を零しながら、61式戦車を無駄に多いヒートロッドで叩き潰したものだ。
イングランドやアイルランド近海に敷設された機雷はゴッグのフリージーヤードによって無力化され、港湾施設は上陸したゴッグとアッガイに次々と破壊され、ジオン軍の上陸を阻む手段は迅速に駆逐される始末。
支援用MSとしてお試しで投入したジュアッグが意外と活躍したこともあり、ハワイ諸島に続いてベルファスト基地とその周辺は、わずか数日で攻略され、ジオンの支配下に落ちることとなる。
なおこの時のジュアッグの活躍により、支援用MSという発想に目から鱗の落ちたジオン開発陣は本国、キャリフォルニアベースを問わず開発に熱を上げることとなる。
結果的にベルファスト攻略戦は、市街地へ戦禍が及ばないように配慮する余裕があるほどジオン軍の圧勝であった。
そうして黒煙たなびくベルファスト基地を遠く見守る人々の中には、両親と幼い弟妹と共に避難したミハル・ラトキエの姿もあったが、孤児となっていない彼女はスパイなどする理由はきっとないだろう。
また一つ、連邦軍が地上の拠点を失った頃、宇宙でも新たな戦力の開発には余念がなかった。ソロモンやグラナダ、ア・バオア・クーの工廠やジオニック社などが協力し合い、いくつかの機体が既にギレンの下へと報告される段階まで開発が進められていた。
ソロモン司令部のドズルと大型モニター越しに顔を突き合わせたギレンは、恒例となった新型機の情報共有と検討を行うところであった。ギレンの執務室には例によって解説役のオリヴァー・マイの姿がある。
三人の手元のモニターやタブレット型情報端末には、共通してとある機体が映し出されている。まん丸い黄色い頭に不気味な複眼と今にも獲物を丸のみにしようと開かれた口と、上下に生えた五本の鋭い牙。
頭の左右にある丸い肩から伸びる腕とその先端から伸びる湾曲した鎌。脚部や胴体らしいパーツは見受けられず、横倒しの筒が機体下部から生えている。黄色いコレがMSでないのは一目瞭然だった。
「MIP社製造のMA-04Xザクレロ。出力180,000馬力、最高速度はマッハ5.2、武装は腕部ヒートナタ×2、口内拡散メガ粒子砲×1、背部四連装ミサイルランチャー×2。
大推力による速度で接近し、拡散メガ粒子砲で敵部隊を牽制・撃墜、ヒートナタを用いた艦艇への一撃離脱をコンセプトとする宇宙戦用MAです」
ザクレロ、ドズル、キシリア、ガルマの三人で会議をした際にドズルからお出しされたMAのことだ。
ガルマが言葉を濁したように怪物然としているというか、何を考えてこうしたのかと開発者の正気を疑う外見をしている。
まあ、ザクを初めて見た連邦軍の兵士も一つ目の巨人が宇宙に居る、と驚愕したわけであるし、ジオンの生み出した兵器は最初の頃からアースノイドの感性とはかけ離れているのだろう。
「すでに課題の洗い出しは行われているようだな。目標の速度には達せず、拡散メガ粒子砲はパワーコンデンサーこそ優良だったものの、射程が短い。
腕部が短く脚部がないことからAMBACは機能せず、運動性は低い。速度は足りず小回りが利かず敵に捕捉されやすく、射程が短い為にそれでも接近しなければならない」
ギレンは背もたれに体重を預けて、小さく音を立てた。ドズルは腕を組んで渋い表情だ。
「はっ。ギレン総帥のおっしゃる通りに現状のザクレロは一撃離脱に徹するにしても、機動を予測しやすく、対空砲火に絡め捕られる可能性が極めて高いものと推測されます。
先にMS部隊で艦載機を引き付けていれば、その隙を突いて敵艦へ接近するくらいはできるでしょうが……」
「わざわざ量産するような代物ではないな。これでは拡散メガ粒子砲よりも対艦ライフルかバズーカでも仕込んで対艦攻撃に特化させるか、ムサイのメガ粒子砲辺りを内蔵させた方がよいのではないか? それとこのヒートナタだが、オリヴァー中尉、貴官の見解はどうだ?」
ドズルは、兄貴が他人に意見を求めるのは珍しい、それだけあの技術士官を評価しているのか、と口には出さずに臆することなく意見を述べ始めるマイを見る。
「はっ。ヒートナタはMSは勿論、艦艇の装甲にも有効な切れ味を発揮します。サラミスやマゼランの艦橋、主砲、甲板であっても斬り裂けます。
しかし、ザクレロの機動性、運動性を考慮しますと、ヒートナタが有効な距離まで接近するのは難しいと言わざるを得ません。
また接近できたとして、すれ違いざまに切りつけるように使用するわけですが、目標と接触しないように接近しなければなりません」
ヒートナタの威力そのものは悪くない。原作でもルナチタニウム合金製のガンダムの、肘のヒンジ? カバー? を斬り飛ばすというか、傷つけた実績がある。まあ、それしかないのだが。
「MSのように敵艦に纏わりつくような機動が出来ないザクレロでは、そうする他ないわけだな。ふん、この奇妙な見た目で連邦の兵が驚きはするだろうが、その隙を突いて距離を詰めるのもコンセプトの内か」
「元の形がこうですから、ノーズアートでもありませんし……MSとは異なる衝撃を連邦諸兵に与えるのは間違いないかと。
話を戻しますが、AMBACによる機動を期待できない以上、ザクレロは接近に合わせて速度を殺すわけには行きません。速度を落としては再加速するまでの間に蜂の巣にされてしまいますから。
また、減速を許されない状況で接近し、ヒートナタを振るうわけですから、激突を避ける為にある意味ではザクで格闘戦を行うよりも高等技術が求められます。
ソロモン工廠からはこの問題点について、フレキシブル・ベロウズ・リムを取り入れて腕部の伸長か、ヒートナタの代わりにマシンガンやミサイルランチャーの装備、足りない速度を補う為のブースターの増設などが提案されています」
高速で距離を詰めながら伸びる鎌を振り回し、口と頭からミサイルと銃弾をまき散らす、黄色い怪物の首となるわけだ。なるほど、これはザク以上の衝撃を対峙する連邦兵に植え付けるに違いない。
「拡散メガ粒子砲はどうする? 用途を変えるかそれとも別の武器を仕込むか?」
「直近は別の武器に置き換えて運用するのが良いかと愚考します。拡散メガ粒子砲についてはギニアス・サハリン少将より改善案があると、意見を頂戴しております」
「ほう。確かにあやつはその手の技術に明るかったな。アッザムといいザクレロといい、MAのビーム兵器運用に縁のある男だ」
MAが作られる度に、名前の挙がる男となりつつあるギニアスだった。実際、彼はこの後もMAが開発される度、もっというと小型化が上手く行かないビーム兵器関連について、意見を求められる重鎮となる。
ギニアスとしてはアプサラス計画に専念したかったろうが、その計画にとっても有用なデータを得られるうえ、自身ならびにサハリン家の名声と人脈獲得の機会とあって、断ることはしなかった。
『改善案通りにすれば、より使い物になると報告を受けている。スペック通りの性能を発揮するのなら採用もありとは思うが、どうだ、兄貴』
マイが居るもののギレンからの許しを得て、ドズルは普段の言葉遣いになっていた。
「そうなるとほとんど別物だな。これなら新規にMAを開発するのと対して変わらんだろう。ビグロだったか。後発のMAがあるのなら、ザクレロを改修してまで作る価値はあるのか?」
『うむ、そこなんだがな、ビグロは速度がある分、Gがキツイ。これに耐えられるパイロットはジオンの中にもそう多くはない。
元々、MAは少数生産するものだから、パイロットが少ないのもそこまで致命的な問題ではないが、ザクレロならパイロットのハードルを低く出来る。MA以外にもガトルやオッゴ、ジッコがあるが、それ以上の戦力も必要になって来るだろう』
「MS適性に弾かれた者達の戦力化を兼ねての提案を絡めて来るか。考えたな。いいだろう、多少手を加えるか用途を変えれば使い物になるのなら、ジオンは諸手を挙げて歓迎するべきなのだ」
『おう。しかし、兄貴、ルナツーは放置したままでいいのか? あそこさえ落とせば連邦は宇宙の拠点をすべて失う。そうなれば重力戦線により注力できるだろう』
「もっともな話だが、下手にゲリラ活動を行う連中を増やしたくないのだよ。ルナツーという拠点があればこそ連邦宇宙軍の残存戦力はあそこに集まり、閉じこもる。
それにまだ味方が生きていると分かっていれば、連邦も捨て置く事は出来ん。精々、リソースをルナツーの維持に割いてもらおうではないか」
『ジャブローからルナツーへの輸送ルートを確認しても、そうそう宇宙船ドックが見つかるとも思えんが』
「そちらはもののついでだ。宇宙軍にはしばらくは輸送船団の護衛とゲリラの掃討、軌道封鎖を続けてもらうぞ」
『ルナツーを攻略しないのなら、その間、新兵共にみっちり訓練を受けさせられるから、構わんがな。地上軍への補充の人員についても手配は問題ない。護衛も十分すぎるぐらいに用意した。今の連邦艦隊では襲い掛かる気にもなれんだろうよ』
「うむ、キシリアとガルマを地球に降ろしたとはいえ、兵達には我々が決して見捨ててはいないと信じてもらわねばならん。ジャブローを攻略し、連邦政府に白旗を上げさせるにはまだまだ戦いが続くのだからな」
その為には人員と物資のリソースを厳選の上で配分しなければならないのだが、いささか新型機開発に予算を割きすぎている傾向にある。
これでも原作よりはマシな状況なのだが、ギレンは微塵も楽観視はしていなかった。マゼラン級が完成した時もそうだったが、MS関連以外の技術において地球連邦の方が先を行く部分も少なからず存在している。
それらの技術とMSの開発が噛み合った時、地球連邦は短期間で恐るべき性能の機体を開発してくる、とギレンは危惧していたからだ。
みんな大好きザクレロ。
TVアニメに出た時のままの外見です。ビームライフルの直撃を受けても無傷という、なぞの耐久性を見せましたが、あれはいったい、なんなんでしょうね?
丸い形がよかったのか、対ビームコーティングが凄かったのか、お話の都合か。
原因が分からないので作中ではザクレロの装甲については触れませんでした。
追記
ノーズアート云々の箇所を修正。