原作よりも低能なギレン・ザビ   作:スカウトマニア

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今回はギレンの出番はございません。


赤い彗星のキャスバル

 グポォン、とザクのモノアイから独特の音声が発せられて、機体内部に響き渡る。

 今、キャスバル・レム・ダイクン少佐は地球連邦軍のMS開発計画とされる“V作戦”の詳細を掴むべく、部下を引き連れてサイド7に存在する唯一のコロニーへと潜入する最中に遭った。

 建造途中のコロニーは半分ほどが作りかけだが、住環境は機能しており、現在は一万人ほどが暮らしている。その多くは軍の関係者から地球から政府の命令で無理やり移住させられてきた人々だ。

 連邦軍の宇宙における唯一の軍事拠点ルナツーの近傍にあり、異常があればすぐさま救援が駆けつけられる距離だが、ジオン宇宙軍のちょっかいが頻発していることから、実際に救援の部隊を出すのはほぼ不可能だろう。

 

 第二次降下作戦とベルファスト攻略戦で功を上げたキャスバルは、宇宙に戻るにあたりザクⅡF型の総合性能向上型であるS型を受領していた。

 通信機能を強化するブレードアンテナを標準搭載し、30パーセント近い推力の向上と推進材の積載量増加、冷却・燃焼システムの改善は勿論、装甲材や内部システムにも手が加えられ、熟練のパイロットが搭乗した場合、F型とは一線を画する性能を発揮する。

 

 指揮官型とも言われるS型ザクをパーソナルカラーの赤に染めたキャスバル機に続くのは、後期生産型として性能全般が向上したザクⅡF2型三機。

 機体の軽量化と機動力の向上に加え、これまで生産されたF型と他機種のデータを反映させた結果、性能のみならず信頼性も増した機体だ。この世界のF型の時点でF1.5型程度の性能を確保していたが、本機もまたザクⅡ改もといFZ型に近いスペックに到達している。

 

 連邦軍の内通者や潜入工作員の情報通りならば、V作戦で開発されている機体はザクを大きく上回る性能を持ったMSであるはずだ。

 その存在の実態をいち早くキャッチすることは、ジオンにとって今後の戦略目標に大きな影響を与える要素となる。

 

 スラスターを使わずに慣性飛行でコロニーの開閉口へと到達し、従来の作業ポッド用の開閉スイッチをザクの手で捻り、隔壁を開く。MSもまた作業用重機を祖先とするからこその、都合の良さであった。

 キャスバルは新兵のスレンダーが乗るザクを待機させ、同じく新兵のジーン、古参下士官デニムを引き連れ、心地よい緊張感と共にコロニー内部へと侵入する。

 

 国父ジオン・ズム・ダイクンの遺児にして、今もジオン公国内に大きな勢力を持つダイクン派の象徴とも言うべきキャスバルだが、彼自身は父の政治基盤を受け継ぐつもりはなく、ダイクン派の神輿として担ぎ出されるのも勘弁なのが本音だった。

 もし父ジオンをザビ家が暗殺したのが事実であるのなら復讐の道を歩む覚悟はあり、ザビ家の実態をより近くで観察するべく、そしてまた真実を知る為に軍人の道を歩んでいる。 

 もっとも、キャスバルの生来の気質が戦場の空気を好む戦士であったのも、こうしてMSに乗っている大きな理由だったが。

 

 アンリ大将やランバ・ラル大佐、ダグラス・ウォーデン大佐などを後ろ盾とするキャスバルの下に、デニムはともかく新兵が宛がわれたのはザビ家からの嫌がらせではなく、一指揮官として部下を育てる経験を積ませる為と、彼が独力で軍内に派閥を持つ力と意志があるかを確認する意味も含まれていた。

 シン・マツナガやアナベル・ガトー、ニムバス・シュターゼン、ヴィッシュ・ドナヒューといった腕利きを回す案も出たが、彼らはいずれも各戦線を支えるエースである。

 同重量の黄金よりも貴重な彼らを一部隊に集結させるのはどうか、という意見とそれをしてはキャスバルを甘やかしすぎだという意見から、見送られている。

 

 ムサイではなくザンジバル級を母艦として用意されているのは、ダイクン派のせめてもの梃入れというよりも、非凡なパイロットであるキャスバルを大気圏内外で活動可能なこの艦でこき使う為である。

 ある程度の出世と栄達は必要と考えるキャスバルにとって、この措置はむしろ歓迎するところだった。正面からに限ればマゼラン級と撃ち合っても勝てるザンジバル級を、キャスバルは嫌いではなかった。

 その分、側面はサラミス級の砲撃でも大きなダメージを負うくらい、ひどい有様だったが。

 

 コロニー内部の警備は呆れるほどザルだった。思わずキャスバルが罠を疑うほどだ。

 ザク四機がここまで接近しても警報一つならず、隔壁が開いてMSに内部へ侵入されてもまるで慌てた様子もない。

 木々の合間にザクを隠し、コックピットから出てカメラで内部を見回すまで、なんのトラブルもないときた。

 

 キャスバルは赤い軍服に素顔という風体だが、同じくコックピットから出たデニムはきちんとパイロットスーツ姿だ。

 どんな戦場でもパイロットスーツを着用せずに戦い抜くキャスバルの姿勢は問題視されつつも、一種の英雄性を発揮して彼の人気を高めている。

 

 デニムのカメラの先では少年少女の乗るエレカが人気のない道を走る姿が見え、人々の姿はほとんどない。アムロ・レイとフラウ・ボゥだ。

 このコロニーに入港した連邦軍の新型戦艦を、マダガスカルが追尾していたのはバレていたから、万が一に備えて住人はシェルターに逃げているのだろう。

 

 どこか弛緩した空気が変わったのは、運び出されるMSのパーツ群を見つけた時だった。

 このコロニーで開発されたMSを新型戦艦──通称“木馬”へと運び込むつもりなのは、間違いない。そうされる前に破壊してしまえば、ジオンの脅威は大きく減ることになる。

 コックピットで不測の事態に備えていたジーンが鼻息荒く、興奮を抑えきれない様子で年若い上司へと通信を繋ぐ。

 

『キャスバル少佐、今ならなんの邪魔もなく連邦の新兵器を破壊できます!』

 

 目の前の手柄に焦がれる新兵のお手本のようなジーンに、コックピットに戻ったキャスバルは淡々とした調子で答える。ジーンの心中は察するが、それを許すつもりは彼にはなかった。

 

「ジーン、今回の我々の目的はあくまで偵察だ。新兵器の破壊が目的ではない」

 

『ですが、新兵器を破壊したとなれば勲章ものです。目の前の手柄をみすみす見逃すんですか!?』

 

『ジーン、少佐に対して言葉が過ぎるぞ!』

 

「デニム、構わん」

 

『しかし、少佐』

 

「若さとはこういうものだろう。私自身、覚えがある。ジーン、ここには民間人も居る。例え連邦側のコロニーとはいえ、これ以上、我々ジオン公国が同じスペースノイドの血を被るような真似は避けねばならん。同朋殺しの異名など、これ以上欲しくはないのだよ」

 

『っ』

 

 そんなのは今更だ、という言葉をジーンはかろうじて飲み込む。

 連邦のコロニー駐留艦隊との戦いで各サイドにいくばくかの被害を出した時点で、既にジオンは同朋殺しを行っている。

 加えてコロニー落としにより人類史上最大の大量虐殺国家の汚名も被っている。

 これ以上、どれだけ同じスペースノイドを殺したとて、汚名が晴れるわけでもなし。

 そんな事よりも自分の手柄に対する執着がジーンの中では勝っていた。

 

 それでも言葉を飲んだのは上司があのキャスバル・レム・ダイクンだからだ。

 ことと次第によってはザビ家の独裁をひっくり返す可能性を持った上司である。そうでなくてもこの独立戦争で多大な戦果を挙げた英雄様なのだ。覚えを良くしていいことはあっても、悪くしていいことなど万に一つもない。

 あくまで自分の為にジーンは出世への渇望を押し込んだのだった。

 

「それに私は欲深くてな。ここで連邦の新兵器を破壊するよりも……」

 

『なんです?』

 

「すべて頂いてしまった方がいいだろう?」

 

 自分よりもはるかに強欲なキャスバルの提案に、ジーンは呆気にとられた。

 ジーンを説き伏せたキャスバルの判断の下、四機のザクはコロニーを離れ、木馬ことホワイトベースが正規クルーとV作戦の成果を乗せて、ルナツーへと向かうのを虎視眈々と待つ。

 ジオンが網を敷いて待ち構えているのを、当然、ホワイトベース側も分かっていたから、パイロット達を機体に乗せて襲撃に備え、ルナツーへも救援を乞うている。

 

 ホワイトベース艦長パオロは経験豊富なベテラン士官だ。これまでの艦艇とは一線を画すホワイトベースの性能にしきりに感心しながら、こちらを追尾してくるジオン艦に対して、強い警戒の念を抱いている。

 緒戦の大敗によって宇宙軍の人材と戦力が著しく目減りしてしまい、士官学校卒業したての若者が反攻の要になるホワイトベースに配属されているのも、その一端となるだろうか。

 

 ルナツーに辿り着くまで緊張に満ちたブリッジの空気が弾けたのは、ミノフスキー粒子が戦闘濃度で散布され、それでもレーダーに映るほどの距離に敵機が接近してくるのを捕捉した時だった。

 

「レーダーに感。急速に接近する熱源を感知、一つはザクですが、他二つはデータベースに登録なし、アンノウンです。更にその後方にザク三機、また敵艦と思しい熱源を探知しました」

 

「仕掛けてきたか。MS隊を発進させろ。離脱ルートの算出を急げ。主砲、副砲、ミサイル、当たらなくても構わん。まずは接近する敵の足を止めるのが先決だ。用意が整い次第、撃ち方始め!」

 

 マゼラン級にも引けを取らぬメガ粒子砲がホワイトベースの右舷、左舷から、実弾式の主砲が船体中央甲板上部から次々と発射されて、迫りくるキャスバル隊へと襲い掛かる。

 モニター越しに流れるメガ粒子砲の連射に、キャスバルは木馬と呼ぶ新型戦艦の火力を素直に賞賛する。

 

「ほう、これはまともに撃ち合ったらザンジバルでも怪しいかもしれんな。当てるつもりのない砲撃は時間稼ぎか? デニム、ジーン、スレンダー、私が連中の動きをかく乱する。貴様達は私達の支援に徹すればいい。無理はするな。トクワン、デミトリー、貴様達には私と共に無理をしてもらう。出来るな?」

 

 この時、キャスバル隊にはMAビグロ、ザクレロがパイロットのトクワン、デミトリーと共に配備されていた。

 顔に傷のある強面の男がトクワンで、ジオンでも屈指のMA乗りであり、出っ歯の目立つデミトリーはそのトクワンの部下だ。

 

『少佐こそ、ザクで我々のビグロとザクレロについて来られるので?』

 

「ふ、言ってくれる。その物言い、嫌いではない。では新しい注文を付けよう。木馬は可能な限り損傷の少ない状態で確保したい。武装は破壊して構わんが、ブリッジやエンジンブロックへはなるべく攻撃を加えないでもらいたい」

 

 連邦の新兵器全てを手に入れたいとジーンに豪語したのは、本気だったらしいキャスバルの注文に、改良されたザクレロのコックピットで、デミトリーは泡を食ったようにこう言った。

 

『そりゃまた、難しい注文ですぜ、少佐!?』

 

 対艦攻撃はMAの本分だが、攻撃を加える部位の指定と与える被害の制限まで加えられては、これはかなりの難度と言わざるを得ない。

 シミュレーターと実機訓練は山ほど積んでいるが、まだ実戦の回数をこなしていない点が、デミトリーの心に小さな不安の染みを垂らしている。

 

『ふふん、良いじゃないか、デミトリー。連邦の新兵器を相手にMAの威力を思い知らせてやる良い機会だ。少佐も我々になら出来るとお考えなのでしょう?』

 

「二人が私の下についてまだ時間は短いが、その実力は知っているつもりだ」

 

『そこまで言われたなら、やってみせる以外に道はありませんでしょう。覚悟を決めろ、デミトリー。それともお前とザクレロには出来んか?』

 

『いえ、ザクレロは出来るMAです。自分なら性能を十分に引き出せます!』

 

『というわけです、少佐。む、連邦のMSが!』

 

 三人が会話しながら囮となってホワイトベースの砲撃を引き付けている間に、ホワイトベースの特徴的な突き出たデッキからは、リニアカタパルトで加速したMSが順次、出撃していた。

 額にV字型のブレードアンテナを持ち、人間のようなツインアイに白をメインにしつつ、おもちゃのように派手なトリコロールカラーのMSは、真っ赤な盾とライフルを装備している。

 色違いの黒い機体も出撃しており、こちらは大きなバズーカを右肩に担いでいる。

 すなわちガンダム二号機とプロトタイプガンダムである。

 

 これだけではなく、ガンダムに比べればシンプルな真っ赤な五体に──正確には白い頭部以外が赤い──両肩から二門のキャノン砲を伸ばし、両手で長大なライフルを構えた機体、ガンキャノンが三機出撃している。

 このほかにもMSと戦車の中間のようなガンダンク四機があるのだが、こちらは宇宙空間での戦闘に向いていない事もあり、出撃を見合わせていた。

 

「連邦軍は既に二種類のMSを完成させていたのか。見た目から推測するなら、白いのと黒い機体は白兵戦向け、赤い機体は支援機だな。さしずめ連邦のザクキャノンか。ふ、ジュアッグのコピーとはならなかったようだ」

 

 かつてアッグガイに搭乗して、シャア(本物)のジュアッグに援護された経験を持つキャスバルとしては、連邦がジュアッグをコピーしたらどうなるのか、とそれなりの興味があったのだが、残念ながら彼の期待は裏切られてしまった。

 そのキャスバルの顔色を変えたのは、ガンキャノンの支援砲撃よりも先にガンダムが両手で構えたライフルからピンク色のメガ粒子が発射され、いくらかの余裕をもってそれを回避した瞬間からだった。

 

「なに!? 連邦軍はMSに戦艦並みのビームを持たせているのか? ゲルググにもまだ装備されていないというのに、先を行かれたわけか」

 

 ゲルググは今次大戦において、ジオンが最終的な主力量産機候補としている機体だ。基本性能はグフやドムを越えて、先行量産された機体が入念なテストを受けている。

 ただ装備予定だったビーム兵器の小型化に難航しており、機体のみが完成間近という状態だ。地球連邦とてMSの研究は戦前から行われていただろうが、本腰を入れたのはルウム戦役以降だろう。

 その数か月でMSにビーム兵器を持たせるとは……

 

「やはり侮れる組織ではないか。ならば次は機体の性能を見させてもらおう。トクワン、デミトリー、予定変更だ。白と黒の機体は私が引き受ける!」

 

 キャスバルは推進剤の大量消費と引き換えに機体を加速させ、通常のS型とは比較にならない機動で白黒のガンダムを獲物と定める。

 正規パイロットの操るガンダム二機も、相手がルウムで名を馳せた赤い彗星のキャスバルと気付いたのか、動きにわずかな動揺が見られた。

 

 動揺に背を押されて、二機のガンダムが発射したバズーカとビームを、キャスバルのザクは目にも止まらぬ動きで回避しつつ、マシンガンを構える。

 銃撃の振動が機体に反映され、改良に改良を重ねた120mmの銃弾はまずプロトタイプガンダムの胴体を舐め、そのまま滑るようにスライドした射線がガンダムの胴にいくつかの火花を散らす。

 

「全弾、弾いただと? なんという装甲だ。ドムでも比較にならんな。ならば、機動性を見させてもらう」

 

 今ではジオンMSの標準装備となったシールドを、キャスバルのザクも当然装備している。

 シールド裏に予備のマガジン、ないしはシュツルムファウストやクラッカーなどの携行武器を装備するのが標準的なチョイスだが、今回はシュツルムファウストを四本マウントしていた。

 

「マシンガン以外は通じるか?」

 

 立て続けに発射されるプロトタイプガンダムのハイパーバズーカは、キャスバルのザクの回避方向を誘導する為のものだった。

 等間隔に発射されるバズーカを右斜め上に跳ねるように飛んで避ける赤いザクを狙いすまし、突き刺さるようにビームが放たれる。ビームはキャスバルのザクが一秒前まで居た空間を貫き、彼方へと消えて行く。

 

「狙いは悪くないが、それだけに読みやすい」

 

 右手一本で保持したマシンガンの銃弾をばら撒き、二機のガンダムがシールドを構えて弾くのを横目に、キャスバルのザクは機体の限界に挑むような急旋回と急減速を駆使して、二機のガンダムの頭上を取った。

 シールド裏からシュツルムファウストが白煙の尾を引いて発射され、二本ずつ、二機のガンダムへ! これをプロトタイプガンダムはシールドを頭上に掲げて受け、ガンダムは頭部の60mmバルカン砲二門で見事に撃ち落す。

 

 そして、キャスバルの読み通りに防御した二機のガンダムの後ろに、赤いザクの姿があった。強烈な蹴りがまずガンダム二号機の腰裏に叩き込まれ、その反動を利用した飛び蹴りがこちらを振り向くプロトタイプガンダムの腹に突き刺さる。

 吹き飛ぶプロトタイプガンダムへザクが迫り、上半身を起こしたプロトタイプガンダムが右肩から伸びる棒を引き抜く。

 そこからビームの刃が伸びるのを見て、キャスバルの背筋に冷たい汗が流れる。それをキャスバルは不快に思わなかった。

 

「──っ!」

 

 呼吸を忘れる一瞬の交錯の末、プロトタイプガンダムの首が飛び、その背のバックパックへとヒートホークが叩きつけられて、さしもの黒いガンダムも機能を停止する。

 キャスバルが二機のガンダムを相手取っている間、三機のガンキャノンはビグロの速度とメガ粒子砲によって翻弄され、そこをデニムら三機のザクF2型にまとわりつかれていた。

 ジーンは掛かり気味の動きを見せ、逆にスレンダーは慎重すぎるくらいだが、その正反対の動きがガンキャノン側を混乱させる効果を発揮していた。怪我の功名一歩手前といったところか。

 

 ガンキャノンもまたガンダムのものより長射程・高威力のビームライフルを持ち、肩のキャノン砲はザクを一撃で吹き飛ばす威力と、無視できない高火力の化身。

 接近戦用の武器はないがガンダムを上回る重装甲とシンプルなパワーそのものが、武器として機能する厄介なパワーファイターだ。

 

 それでもこの時点で勝機を見出すなら、懐に飛び込むべきだろう。

 ガンキャノンのパイロット達は機体コンセプトにあった中距離以上の支援砲撃にこそ訓練の熱を入れていて、接近戦の訓練時間はそれ未満であるはずなのだ。

 その点、トクワンのビグロがガンキャノン相手に回ったのは、ありがたい判断だった。

 ビグロの速度にガンキャノン側はまるでついて来られず、デニム達への重圧を減らしてくれている。

 

「機動性もザクより上か!」

 

 マダガスカルも参戦し、ホワイトベースと撃ち合う中、ビームサーベルを抜いたガンダムとキャスバルはヒートホークで激しく打ち合っていた。

 ただでさえ消耗の激しいヒートホークは、ビームサーベルと刃を合わせる度に焼かれ、猛烈な勢いで損耗している。今回の戦いでお役御免だろう。

 そしてキャスバルは目の前の白い機体の性能に舌を巻いていた。明らかにザクでは話にならない。同じ腕前のパイロットが乗り込んで戦ったら、まずザクに勝ち目はない。

 

「この性能の機体を、主力機として量産するとは、考えたくないがっ」

 

 ガンダムがシールドを手放し、両手でビームサーベルを握る。勝負を仕掛けてくる、とキャスバルの口の端が吊り上がる。楽しんでいた。

 ガンダムのパイロットは機体を低く構えて、突進しながら下方からの斬り上げを狙う。

 軽く振るうだけでザクを両断するふざけた威力のビームサーベルのその下を、キャスバルのザクは潜り抜け、振り上げたヒートホークがガンダムの胴体を下から上へと三日月の軌跡を描いて斬り裂く!

 

 まるでランバ・ラルのグフとアムロ・レイのガンダムの一騎討ちを、再現するかのような光景であった。

 下段からの斬り上げの更にその下へ潜り込まれてからの斬撃に、ガンダムのパイロットは驚愕し、コックピットハッチが斬り裂かれた現実を前にしても放心していた。

 

「MSのパイロット、機体を停止させて投降しろ。このままコックピットを潰すのは簡単だが、それをしないで済むのならそれに越したことはない。お互いにな」

 

 キャスバルのザクのモニターには、ビグロの両腕に背後から掴まれて拘束されたガンキャノン二機とザク三機に包囲されたガンキャノン、そしてホワイトベースのブリッジの前で大口を突き付けて威嚇するザクレロの姿が映っていた。

 あの増速の為のブースターを搭載し、両腕をガトリング砲に換装の上、口内の拡散ビーム砲をメガ粒子砲に換装したザクレロの異形を、間近で見る羽目になったホワイトベースのブリッジクルーに、キャスバルは本気で憐憫の情を寄せていた。

 

 かくしてサイド7を出港したホワイトベースはキャスバル隊に敗北を喫した。

 パオロ艦長やテム・レイ技術大尉、ブライト・ノア、リュウ・ホセイ、ジョブ・ジョン、タムラ以下正規クルーは捕虜となり、ガンダム、プロトタイプガンダム、ガンキャノン三機、ガンダンク四機、ホワイトベースがジオンの手に落ちた。

 自ら開発した機体と共にホワイトベースに乗り込んだ父がジオンの手に落ちたと知り、アムロ・レイ少年が膝から崩れ落ちるのはもうしばらく後のことである。

 




※ジークアクス未視聴、これから視聴予定のある方は下の文章を無視してください。






























ちなみに私はジークアクスでギレン(本物)が生きて出てくる派です。罪悪感とかもないタイプに思えるのですが、あの世界のギレンはそう、という設定なのかな?
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