原作よりも低能なギレン・ザビ 作:スカウトマニア
参考資料
ドップ マッハ5
ホワイトベース マッハ12(大気圏外)
コン・バトラ―V マッハ11
ボルテスV マッハ20
ガラッゾ大型ブースター装備 秒速78km 約マッハ229
ダークコロニーで記録された新たなマゼラ・アタックの勇姿を、ギレンは執務室のモニターでじっと眺めていた。
分離機能の有用性、マゼラ・トップの飛行中の有効射程600m、飛行時間最大五分、無反動砲だったり滑腔砲だったり榴弾砲だったりと資料によって異なる主砲の仕様、メリットよりもデメリットの方が多そうな13.4mの車高、マゼラ・ベースに装備されているのは33mm三連装機関砲なのか35mm機関砲なのか3連装バルカン砲なのか……
キシリアとの話し合いの中で洗い出した疑問点を受け取った開発陣は、血の気の引いた青ざめた顔になるか恥辱に燃える赤い顔になったという。
そうしてお出し直しされたのが、現在、ギレンの眺めている新マゼラ・アタックである。
分離機能を排除したことで、その分離機能が邪魔をしていた旋回機能を獲得。
13.4mあった車高は脅威の6.8mへと縮まり、ほとんど半分近く小型化に成功している。
具体的に言うとファーストの設定からイグルーの設定に変わるほどの劇的な変化だ。
確かに小型化しているが、あまりにも大幅な変化に逆にギレンは恐怖すら覚えた。
縮んだ約6m分すべてが分離機能の分とは限らない。いったい、何を犠牲にしてここまで小さくなったのか。
まあ、それでも地球連邦軍の61式戦車の全高3.9mに比べれば3m近く大きいのだが、これ以上の追及は致命的な性能低下か、技術的な限界に到達しそうなので、ギレンは口をつぐんだ。
自ら狂気の沼に片足を突っ込む勇気は、この低能なるギレンにはなかったのである。
ドップがあの形状で最大マッハ5を叩き出すというデータを見た時も思ったが、ジオン公国の技術はこう、どこかが凹んでいるとどこかが尖るというか、控えめに表現しても独創的に過ぎる、と総帥であるギレンでさえ思う。
「ジオン脅威のメカニズムと言えば聞こえはいいが……」
その一方、マゼラ・アタックがここまで小型化しても主砲は変わらず175mmと、火力を維持したのには素直に感心した。
またようやく無反動砲であることが確認され、軍の公式文書なのだから正確な資料を作って欲しいものだと、ギレンはしみじみ思う。
この新仕様のマゼラ・アタックが、地上での戦いにおいて、ザクと連携して支援することにより大きな戦果をあげるはずだ。
「ほう、マゼラ・トップをMSの携行火器として再開発。マゼラ・アタックとの部品、弾薬共有も行えるのなら量産しても無駄はそれほど出まい」
旧仕様のマゼラ・トップの新しい利用方法についても、ちゃっかりと提案されていたのは、開発者達の自分達の思い描いた兵器の名残だけでも残したいという意地だったのだろうか。
いずれにせよギレンの目から見てもバズーカ以上の長射程を誇り、火力も十分に見込めるマゼラ・トップをMS用火器へと転用するのは有効性がありそうだ。
もし分離機能を残したままマゼラ・アタックを運用するとなれば、旋回機能の付与、飛行時間の大幅な延長、マゼラ・ベースの火力向上くらいはしなければならないだろう。
マゼラ・アタックは一人で運用可能なのが利点の一つだが、マゼラ・トップとマゼラ・ベースそれぞれに人員を配置するか、マゼラ・トップは脱出カプセル替わりと割り切って再考すればまた道は開けるかもしれない。
脱出カプセルとして割り切ったら割り切ったで、分離したら無人のマゼラ・ベースは戦場に放置されるわけでこれもやはり問題だった。
どうも開発陣は分離機能維持の方針を諦めていないようなのが、報告書のところどころに見られる。諦めの悪さは買うが、予算と時間は有限であった。
「マゼラ・トップの使い道か。MS用の武装転用以外になにかよいアイディアが出ればいいが、ふ、私のような門外漢よりもよほど良い案がその内に出よう」
マゼラ・アタックについてあれこれと思考を巡らせていたギレンは、記憶の片隅に引っかかるものがあり、端末を操作して以前に報告を受けていた兵器の情報を呼び出して閲覧する。
「ヒルドルブ、MSの開発によって迷走を深め、陽の目を見ることなく埋もれたか」
宇宙世紀72年に開発をスタートしたヒルドルブは、地球連邦軍の陸上戦艦を仮想敵とした、ジオン地上戦力の切り札となる超ド級戦車であった。
しかしMSの有用性に対抗するべく、上半身を起き上がらせて半人型となる変形機構やザクの武装を扱える一対の腕の搭載と、MSの機構を組み込んだモビルタンク(MT)という新たな兵器カテゴリを得たあたりから雲行きが怪しくなる。
全長35.3mという巨体と220tの超重量でありながら時速110kmを叩き出す、ザクの三倍以上の出力のジェネレーター。
たった一人の搭乗員で操作可能な高性能OS、メガ粒子砲に取って代わられた宇宙戦艦の実弾を流用した30cm砲の威力は、この時期の兵器としては素晴らしい代物だ。
しかしその巨体と重量ゆえにヒルドルブはコムサイには積み込めず、HLV (Heavy-lift Launch Vehicle大気圏離脱艇)にしてもヒルドルブ一両の為に一基用意しなければならない。宇宙から地上へ降ろすのが実に難しかった。
そして、ヒルドルブに求められた役割はザクと旧マゼラ・アタックで十分に果たせるものだった。そうとなれば、ザクとマゼラ・アタックを複数詰め込んで地上に降ろす方が応用も利くというもの。
目玉の30cm砲にしても威力は絶大であること間違いなしだが、お蔵入りした砲弾の在庫処分に近いものがあり、新たに生産してもヒルドルブ以外に使い道がなく、運用コストの高騰に繋がっている。
これでヒルドルブが主力戦車として大量生産予定であるとか、同じ砲弾を使う兵器が多数あるのなら話は変わるのだが、変わらないのが現実だった。
戦車形態では側面にザクマシンガンの直撃を受けても耐えきる重装甲を誇りながら、モビル形態では変形機構の複雑さもあってか、むき出しになる正面装甲は少なからず脆弱であった。
またいくら一人で運用できるOSがあるとはいえ、可変機構を十全に活かすとなれば搭乗員への負担は大きく、熟練の搭乗員の育成はMSよりも更に困難と言えよう。
「評価が芳しくないのも納得は行くが、しかし……」
可変機構の搭載によりタンク形態とモビル形態の二つを持つ特異性は、今は役に立たなくても後の世に影響を与えるのではと感じさせる。
またモビルタンクとしてではなく、ガスタービンエンジンではなく核融合炉を搭載した破格の戦車として開発を続行していれば、また話は違ったのではないだろうか?
「迷走した時は原点に立ち返るものか。ふ、私の意見など総帥という肩書が無ければ、一読の価値もないだろうが、総帥は現場を知らぬ素人だと笑い話の種にでもなれば価値はあるな」
モビルタンクという画期性を始め評価するべき点はいくつか見受けられるが、ヒルドルブの開発当初のコンセプトに立ち返り、大きく、固く、強い戦車をこそ開発するべきではないのか。
ギレンは概ねこのような内容の文章をしたため、後日、ヒルドルブの開発チームへ送ることとした。これまで自分の意見が開発者達を大いに振り回し、結果的に本来あるべき姿を大いに捻じ曲げてきた自覚がないあたり、このギレンはやはり低能であった。
仮にヒルドルブがギレンの予想を超える超ド級戦車として復活を果たしても、製造コストを考慮すれば主力戦車はマゼラ・アタックが勝ち取るだろうが、マゼラ・アタックとは違う役割を得て戦場に砲撃を轟かせる可能性は生まれる。
もしこの世界のギレンが何かの間違いで、本来の世界では680mmという冗談じみた火砲を装備したザメルというMSが開発されたのを知ったら、ヒルドルブの30cm砲で悩んだ自分が馬鹿らしくなるに違いない。
そしてヒルドルブの流れを汲んだと思しい機体になにを思うのだろうか。
ガルマ三部作は名作です。ネタ被りしないように気を付けています。
なんだか今日になって急に感想が増えて驚いています。お陰さまで日刊ランキング2位です。凄い! ありがとうございます。ありがとうございます。
二番煎じ、三番煎じの話ですが、暇つぶしになれば幸いです。