虎杖先生、少しお時間をいただけますか?   作:だっちゃまん

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始まりは数年後の、貴方に送る手紙 ★

 

───我々は望む、七つの嘆きを。

───我々は覚えている、ジェリコの古則を。

 

目を開けた瞬間、現実が喉元を刺す。

座席に縛りつけられた身体。走る電車の車内。そして──血に濡れた制服の少女が、目の前にいた。

 

知らない場所だ。

 

声も出せない。体も動かない。呪力も、感じない。だが、それ以上に異様だったのは──少女の目が、自分ではない“誰か”を見つめていたことだ。

 

「……私の、ミスでした」

 

か細い声が車内に落ちる。白い制服。頬に滲む赤。そして、罪悪感に濡れた瞳──。

 

──一体、誰と間違えられてる?

 

悠仁は、状況を把握しきれないまま、少女の言葉に耳を傾けていた。しかし、無意識に拳を握っていた。その言葉が、かつての自分を重ねるには充分すぎるほど、痛かったから。

 

「……私の選択は、間違っていました。結局、この結果になって初めて、あなたの方が正しかったと分かったんです」

 

苦しげな吐息。押し殺すような声。それら全てが、あの渋谷で泣き叫んだ自分と、重なっていた。伏黒を救うために、宿儺の指を飲み込んだ。

釘崎が倒れ、ナナミンが散った。何も救えなかった呪術師の末路。その記憶が、少女の姿に焼き付いた。

 

「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。何も思い出せなくても、恐らくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから。ですから……大事なのは経験ではなく、選択。あなたにしか出来ない選択の数々」

 

滲んだ、その先にある感情と今映されている瞳の景色は───彼女にしか分からない。選択を誤り続けた自分に、まだ誰かが手を伸ばしてくれるのなら。呪術師としての悠仁じゃなく、人としての"悠仁"が必要とされているのなら。

 

「責任を負う者について、話したことがありましたね。あの時の私には分かりませんでしたが……。今なら理解できます。大人としての責任と義務。そして、その延長線上にあった、あなたの選択。それが意味する心延えも」

 

しかし、その言葉は己に語り掛けてない……自分が見ている目線で、本来の場所に座る、誰かへと紡がれている。"先生"と呼ばれるその存在は、自分じゃないのかもしれない。

 

彼女の語る相手は、本来別の誰かだったのかもしれない。いや、彼女の語る"先生"は、きっと俺じゃない。でも、それでも──。

 

「……今さら図々しいですが、お願いします、先生」

 

その一言が、魂を突き動かす。

 

そうだ。自分は、誰かにそう言われたかった。

自分の“選択”が間違いじゃなかったって、誰かに信じてほしかった。

 

──だからこそ。

 

この声に、応えなければならない。

 

後悔や間違い、そのすべてを目の当たりにして、それでも歩いた呪術師としての道。正しい生き様を選ぶために、突き進んだ。でも、その行動が間違っていたと認めたくなかった自分は、その後も選択肢を間違え続けて───そうして残ったのが、虎杖悠仁としてではなくて、呪術師としての自分の在り方だった。

 

彼女の涙が、微かに光に滲む。

 

「ですから、先生。私が信じられる大人である、あなたになら……この捻れて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を───そこへ繋がる選択肢は…きっと見つかるはずです」

 

光によって照らされた彼女の顔は、ハッキリと映った。

 

「だから先生、どうか───」

 

 

 

 

 

これは、過去の物語の繰り返しではない。呪術師・虎杖悠仁としての旅路は終わった。けれど──人としての虎杖悠仁の物語は、今ここから始まる。

 

本来は交わることの無く、捻れたこの世界で、選ばなければならない。

たとえ、それが過去の自分を嘲笑う行為だとしても。過去をなぞるだけではなく、超える選択を。もう一度、自分の選択を信じるために。

 

仲間のいない、呪力もない世界。その身に呪いが消えても、想いだけは決して消えぬ。

 

──これは、再び選び直す者たちの物語。

 

──そして。

 

再び、先生として、誰かの手を取るための物語だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

“拝啓、───先生。如何お過ごしでしょうか、突然で申し訳ございませんが、折り入ってお願いがございます。この声がもし届いてるのなら…どうか。本来の軌跡から外れ、大きく捏造される私達の世界(青春)を───救っていただけませんか?”

 

 

 

 

 

 

涙に滲んだ手紙の文字を、指でなぞった。

 

 






東堂、ごめん……お前のこと忘れてないよ。

後書きで雰囲気ぶち壊す作者です。

これ書いたの五条と宿儺がバトってる頃だから、結末とか全部妄想で書いてました。今更変えるのもあれなんで、このまま続けさせてください。

ブルアカを初期からやって、呪術廻戦を初期から読んでたという地味に自慢したいことを誰にも言うことなく持っていた作者です。ブルアカの二次創作に触れた瞬間意味のわからないぐらい、この二つをクロスした小説を書きたいって思った次第でございます。

テキーラ飲んでストゼロを飲んだ勢いで書いちまったやつを掘り起こして投稿したぜちくしょうめ。虎杖が先生になったら絶対に脳破壊やばいし、生徒の情緒をブチブチ割きに来るだろうなって思ったら、いても経ってもいれなくなったんだ!!

まぁ、少し真面目な話ブルーアーカイブのストーリーを虎杖悠仁が辿ったら、どういう結末になるんだろうって思っただけです。

うん、だからこれ書くことにした。シリアスと鬱を考えたくないのに元の素材が全部こっち寄りなせいで、ズブズブよ。

おれわるくない。

虎杖が良い男なのが悪い。おれが女の子なら惚れてる罪なヤツだよ
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