虎杖先生、少しお時間をいただけますか?   作:だっちゃまん

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誤字脱字報告本当に助かります。次はなるべくないようにしたいけど、多分きっと確定であると思うので、また見つけたら教えてほしい!!!


感想もありがとう!!励みにしかならない!!




陽愛を求めた、あの手

 

場所はD.U.郊外、シャーレ部室へと続く道。現在そこは目も当てられないほどの地獄と化した戦争が繰り広げられており、向かうまでの道すがら、何度も「四人から離れないで下さいね」と、確認を取られた悠仁は、この目で見るまではまだ現実味がなくて、心のどこかで大丈夫だと無責任に思っていた。

 

しかし、いざ現場に来てみれば、車両移動の意味もようやく分かった。ヘリコプター等の移動手段もあったが、敢えて陸地で移動した理由の全てが目の前にある。

 

「……これホントに現実?」

 

「な、な、なにこれ!?」

 

そう呟くのは、放心状態になった悠仁と愕然とするユウカ。

 

地面には薬莢が幾重にも積もり、硝煙の匂いが空気を支配していた。耳を裂くような砲撃音が鳴り響く中、ヘルメット姿の不審者と、バツ印の白いマスクをつけた、90年代の不良じみた格好の女たちが戦争映画さながらに銃を乱射し、戦車で車ごと踏み潰していく。

 

「これは、ひどいですね…」

 

黒髪の女性に全面同意なのか、この場にいる全員が頷いた。

シャーレから徒歩で向かえる距離になった瞬間、リンや運転手以外の暇な人達及び悠仁を下車させると、「後は任せます」等の言葉を口にして、リン一行はサンクトゥムタワーへと戻って行った。

 

その去っていく車両の背中を呆然と見送っていたユウカは、思わず不満を顕にした。

 

「──何で私達が戦場に出ないといけないのよ!?」

 

「……タワーを動かすには、部室の奪還は必須ですから」

 

「それは聞いたけど!私はこれでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど……!!なんで私が…!」

 

茶髪の子がユウカを宥めるように言っても、既に発火点に到達したユウカは顔を赤らめて、去った車両の跡を睨んだ。

 

それに反して、残りの二人…黒髪の女性と白髪の女性は取り乱すことなく、この状況を受け入れて、諦め気味の笑みを浮かべている。悠仁に至っては、ぽっと出の人間すぎて色々と情報の処理が追い付かず、終わりが見えない映画を延々と見せられているような気分だった。

 

しかし、なんとか喉元まで飲み込んで周囲を見渡す。

 

「……助けに行こう、って言ったら止められるかな?」

 

目の前で撃たれて倒れる不良?を見て、思わず呟いた言葉。だけど誰も返事はしなかった。止めも肯定も、なかった。

だが、四人から漂う余計なことをしないでくれ。と言いたげな雰囲気を感じとった悠仁は笑いながら気まずい空気を誤魔化した。

 

口では強気なこと言ったものの、今の自分が被弾すれば、致命傷になり得なくても……無謀でしかない。呪力も術式もない、伽藍堂な今では。

 

歯がゆいこの感覚は、何年ぶりだろう。

 

気分を払拭するように、改めて自分らが乗った車の異常さ加減を思い返す。どうして車庫にガチガチの装甲を持つ軍事車両があるんだ。本当にここ学園都市?軍事国家の間違いじゃ?なんて疑問も当然の帰結だと思った。

 

さらに、悠仁は呟く。

 

「すっごい場違いなこと言っていい?」

 

「……なんですか」

 

「ユウカ以外の名前知らないじゃん、俺。三人の名前教えてよ」

 

「こんな場所で…?」

 

銃弾と砲声が響く中、名前を尋ねる悠仁に、ユウカは「はぁ?」とでも言いたげな顔。それでも両手を合わせて「頼むよ!」と告げる彼に、黒髪の子が肩をすくめて前に出た。

 

「既にご存知かと思われたんですが…切羽詰まってたんですね。トリニティ総合学園 正義実現委員会所属の羽川ハスミです」

 

「ゲヘナ学園、風紀委員の火宮チナツです、よろしくお願いします」

 

「トリニティ自警団の守月スズミです」

 

羽川ハスミに続いて、茶髪の女性火宮チナツに白髪の女性守月スズミが名乗り出る。それぞれの手に持つ銃の口を下に向けて、胸に手を添えたまま。

 

「おう!よろしくな、みんな!気軽に───」

 

気軽に、先生って呼んで!、そう続けようとして、躊躇うように口を噤んだ。しかし、それも一瞬で…口ごもっただけと思われるような1秒にも満たない時間。

 

まだ、自分は先生と呼ばれる資格を持っていない。自分から名乗るには、何もかもが足らない。

 

「──俺のことは、悠仁でも虎杖でも、好きに呼んでよ」

 

四人の困惑する表情に構うことなく、生身のまま一歩前を踏み出す。ユウカの「えっと…せ、先生!勝手に行動は……」と背後から心配する言葉に、右手をひらひらさせてグッドポーズを作るだけ。

 

悠仁の真意が分からず、呆ける中スズミとハスミが悠仁の左右を陣取るように、或いは守護するように立つ。ハスミはライフルを片手に、悠仁へ視線を送る。

 

「先生、貴方は護衛対象です。この先どうなるか分かりません、私たちの後ろに」

 

「私たちでも、銃弾全てを捌き切れるか分かりませんので」

 

スズミの一言を聞いてもなお、悠仁は一歩も下がろうとしない。チナツは周辺を警戒し、なにをしでかすか分からない悠仁にユウカは溜息を吐いて、銃のグリップを握る。

 

そんな四人を流し見する悠仁は笑みを深める。

 

悠仁の視線の先には固まって、破壊の限りを尽くす不良軍団の姿がある。軍隊のような規律も見えず、統率は取れているが最低限、精々自由に暴れろ程度のものだろう。特に率いているリーダーがいる様子もなく、言ってしまえば寄せ集めの集団だ。

 

その認識は、左側で前を見据えるハスミも同様のことを考えていたのか、やや険しそうに告げる。

 

「戦闘を行う場合、先生を守る事が最優先───シャーレの奪還は二の次です」

 

「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトス外の方、私たちと違い、弾丸一発でも致命傷に成り得ますから。早く後ろへ」

 

チナツは銃を構え、スズミは地面をつま先で叩き。ユウカは両手に銃を携えた。

 

「分かってるわ。先生は戦場に出ないで、後方の安全な場所に───」

 

「俺もみんなと一緒に行くよ」

 

「「「え…!?」」」

 

彼女達の提案を、悠仁は首を振って答えた。

しかし、ユウカ達と同じように銃を握って戦うつもりはなく、リーチのある武器を使う訳でもない。銃を扱うにしても、この戦場に立つには異質で不適当であると自負している。

 

しかし───闘いに於いてはその限りでは無い。

 

「────頑張るっきゃないっしょ!みんなが頑張ってんのに、俺だけ安全圏で見てらんないからさ。俺が出来ることは少ないけど、出来る限りみんなをサポートするよ」

 

かつて、呪術師として呪霊に立ち向かった魂を胸に、悠仁は拳を握って、腰を落とす構えを取った。呪力は帯びず、強化も不可能。そんな自分に憂いはあれど、負ける気はしない。

 

ハードモードと云う事に変わりは無いが、だとしてもだ。

 

「せ、先生!?何を言ってるんですか!?」

 

「そうです!先生に万が一があれば…!」

 

捲し立てるユウカとスズミは悠仁の蛮行とも取れる発言を諭そうとするが、一切合切を「大丈夫!」と切り捨てる。ハスミやチナツからの「待機しててください!」と言われても、歯牙にもかけない。

 

そして。

 

「じゃあ、俺が少し減らすよ」

 

制止の声を振り切って、彼は走る。否───消えた。

 

「え…」

 

「せ、先生…?」

 

四人が呆然と見つめた先は、空白。悠仁が至た空間は既に過去となった。突如として、視線の奥で悲鳴が上がる。四人は釣られるように奥を捉えた。

 

────異常。それが、彼女達の心情を表すに事足りる精一杯の表現だった。

 

実力こそ、あの時より落ちているが…それでも培った経験は風化せず、呪いの王の器としての肉体は更なる進化を遂げて、当時以上の身体能力を発揮するまでに至った。

 

しかし、それでも足らない。未完成の肉体では、悠仁を満足に戦える領域まで引っ張っていないのだ。それに反して、悠仁の戦闘を初めて目の当たりにした四人は言葉を忘れ、息を呑んだ。

 

「…うそ、先生は本当にキヴォトスの外から来たのよね…?」

 

「その、はずです…」

 

「…何者、なんでしょうか。先生は」

 

掠める鉛は一つとして無く、体に当たろうものなら上半身や下半身を捻り、或いは跳躍などをして躱す。座射、角度、位置…全てを見切ったような動きで戦場を乱す。

 

初心者じゃない。戦いという非日常を何度も、それこそ…自分たちに匹敵するほどの修羅場をくぐり抜けている、そんな気迫が彼の背中から放出している。

 

「おーい!みんなー!俺一人だとちょっと当たりそーだから助けてぇー!」

 

悠仁の情けない声が戦場に轟く。果てしなくこの場に似合わないソレに、先と前の悠仁に対する認識の齟齬で苦労する四人だった。彼女達の目の前で見せた、異常な強さ。ハスミの脳内を過ぎる「トリニティの怪物」を彷彿させる勢いを湛えたまま、彼女達も悠仁の後に続いた。

 

「先生!待ってください!私達も────って、はやくない!?もうあんな場所に…!」

 

「くっ…!追い付くには私達も全力を発揮しなければなりません…!」

 

「あー!もう!仕方ないわね!!」

 

「本気で行きましょう、みなさん」

 

「自警団として───私はいつでも本気ですよ、チナツさん」

 

「そうでしたね。参りましょう!」

 

「「「はい!!」」」

 

ユウカ、ハスミ、チナツは覚悟を決める。スズミに限っては所属場所が正義を掲げる組織ゆえ、その覚悟は一入に篭っていた。いや、スズミだけではなく、ハスミもそうだろう。

 

正義の名を冠した委員会に所属するのだ、悠仁の異常を目の当たりにして動揺を見せただけで、実際のところ本気で挑む気があった。

 

改めて、その決意の表明をしたのだ。やがて、悠仁に追い付いた彼女達は愛用する銃を用いて悠仁の邪魔になる不良たちを蹴散らす。

 

訓練で培ったものではない──それぞれの信念が重なったとき、陣形は自然と形を成していた。悠仁を囲うように各々が位置に着いて銃弾から護るように、或いは自分たちの決意表明が行動となって現れている。

 

「みんな強いのな!頼もしーよ!」

 

「先生が勝手がすぎるんです!もう少し、言うことを聞いてください!」

 

「ごめんごめん!体が勝手に動いちゃうんだよー!」

 

そんな軽口を叩きながらも、悠仁は会話の最中に右拳を不良の顔面に一発。「ごめん!強すぎたかも!」と心配するその横では、ユウカが華麗な足さばきで駆けながら、右手の銃を乱射。弾丸は正確に敵に命中し、彼女はそのまま翻って、物陰から悠仁を狙っていたスナイパー目掛けて躊躇なく発砲した。

 

標的に被弾こそしなかったが、一連の流れを汲み取ったハスミがライフルを構え、撃つ。物陰に隠れようとしたスナイパーの頭に被弾した。起き上がる気配は一切ない。狙撃、防御、後援、遊撃。四種の神器が揃った彼女たち含めた悠仁の連携は初めての出来にも関わらず、一糸乱れぬ統一感に包まれている。

 

「目標到達までもう少しです、この調子ならすぐ着くかと」

 

「ナイス!スズミ!」

 

「先生、明後日の方向から敵が来ます!」

 

「りょうかい!」

 

「そちらの敵は私が引き受けます」

 

「ほんっとに乱戦よね…!防ぎきれない弾は私に任せてくださいっ!」

 

役割を果たし、得手不得手を補うように彼女達の連携は磨かれる。ライフルを携えたハスミが遠距離を担当し、後方支援を得意とするチナツは攻撃に回りつつもみんなのサポートを補い、遊撃者として閃光弾などの手榴弾を用いて戦場をかき乱すスズミ、そして─────あらゆる攻撃を一身に受けながらも乱撃を繰り返すユウカ。

 

その四人だけでも完成されたチームだが、そこに加わるように───悠仁は彼女達の距離を計算し、最適な行動を導き出す。身勝手に動かすように見えて、悠仁は天性の戦闘センスで戦場と彼女たちに適応していた。

 

「────計算、完了っ!」

 

ユウカは派手に視線を引きつけ、弾倉の弾が切れると同時にユウカは演算を完了させる。彼女を中心に円形のシールドを形成し、表面に弾丸が触れるとあらぬ方向へと逸れる、電磁シールドの防御を展開する。

 

派手派手しい淡い水色の膜と、前に躍り出た彼女は訓練用の的さながら、複数の銃口に狙われて一斉に火を噴いた。本来であれば彼女をハチの巣にしたであろうそれは──悉くシールドに拒まれ被弾することは無い。

 

「すげぇ!!何それ!」

 

「目の前に集中してください先生!後で説明しますからっ!」

 

「絶対教えてよ!」

 

「閃光弾、投擲します!」

 

「おっ───けい!」

 

光の火花が散らないギリギリの範囲に投げ込まれた閃光弾は、視線を引き付け反撃しようとユウカを注視するほど、その効力を発揮する。視界を埋め尽くす光量に目をやられ、悶えた。

 

言葉を交わすことなく、悠仁とハスミは連携して発砲した。ハスミがカバーする中、悠仁は一気に距離を詰め──相手の顎を狙って一撃。脳震盪を誘うには十分な打撃だった。相手は呪霊ではなく、生身の人間だ。殺さないよう手加減をする必要がある───だが、此処の住人は元の世界では有り得ないほど体が頑丈。

 

「おまえら、容赦なさ過ぎるぞ!!もっと手心ってものを知らないのか!?」

 

「じゃあ、生身の俺に発砲しないで!?」

 

「───暴れてる貴方たちが悪いんでしょ!」

 

身体機能そのものが比べ物にならないであろう、スペックの差がある。だからこそ、鉛玉に当たっても頭にヒヨコを回す程度で済むのだろう。自分が受ければ怪我は免れないだろうに、末恐ろしい。

 

そんな考えを抱きながら、未だに再起しない不良をまた一人と、落とす。ハスミも同様にライフルの引き金を引いた。金属音を掻き鳴らしながら火花が散る、放たれた弾丸は真っ直ぐ対象へと進み、目を覆って悶える一人の不良、その頭部を弾く。大きく後ろに仰け反った不良はそのまま地面に倒れ込み、数度痙攣してから動かなくなった。

 

「ハスミ、すげぇよかっこいい!チナツも援護ナイス!」

 

縁の下の力持ち、チナツがこっそり回復剤などを投擲してスズミやハスミ達の肌を掠めた傷跡を癒しながら、あらゆる援護に回っていた。それだけではなく、自らも戦闘に回っていたのだ。弾を避けながらの正確な投擲、仲間の背後からの援護射撃。誰もが前だけを見て戦う中、彼女だけが全体を見ていた。影のMVPとは、まさに彼女のことだろう。

 

「そんな真剣に言われると…少し照れますね」

 

「ふふ、ありがとうございます」

 

そして、ユウカとスズミの二人は同時に身を乗り出して今しがた隙を晒した二名の不良を射撃。弾丸は二人の頭部を綺麗に弾き、不良達は揃って昏倒。敵性戦力は半壊して───六人。

 

鎮圧完了まで、あとすこし。終わりが見えた戦場に最後の気合いを見せる三人は一斉に駆け出した。既に悠仁の行動を咎める者は、この場にいない。寧ろ、彼を先行させるようにして散っていく。

 

「閃光弾投げます!」

 

スズミが叫び、安全ピンを抜いた閃光弾を固まる不良たちに投げ込む。二度目の閃光弾、流石に一度目と同じ効果は望めない。飛来したそれを目視した時点で不良たちは物陰に身を隠し耳を覆う。だが、それでいい。

 

なぜならそれは、誘い込むための最後の仕掛けなのだから。

 

防御姿勢を取った不良たちの一瞬の隙、意識の死角を狙うように、悠仁は閃光弾が炸裂すると同時に不良の背から飛び出し、拳を握った。

 

「ちょっと揺れるけど、我慢な!」

 

振り向いた一人の顎を正確に打ち、隣で驚く不良の背後で、シールドを纏ったユウカが不良に肉薄する。

 

「私の力、見せてあげます!」

 

叫ぶや否や、近場の不良を射撃し、逆の手で他の不良を狙う。二挺持ちによる複数対象同時攻撃を見せる彼女は両腕を広げる様にして構えた。銃口から火を噴き、凄まじい勢いで流れゆく空の薬莢が地面に転がっていく。

 

無防備に攻撃を受けた不良達の叫びは空に消えて、無情にも地面に叩きつけられる。横腹から側頭部にかけて複数の被弾を受けた不良は、小さく痙攣しながら、銃を手放し──そのまま、二度と立ち上がることはなかった。

 

「────終わったぁ!」

 

「ふぅ…ようやくね」

 

「私も鎮圧完了です!」

 

「此方も終わりました」

 

残りの三人も役割を果たし、悠仁達が突撃した瞬間に対象を絞って射撃などの役回りをしていた。チナツ、ハスミの二名は中・遠距離から的確に不良の頭部を狙い撃って、スズミは悠仁とユウカをサポートしつつ、至近距離からスズミの連射を受けた不良は白目を剥いて倒れ込んだ。残った不良達すべてが戦闘不能に陥り、十数名の不良達が地に伏せた。

 

そんな様子を見た悠仁は伸びをして、強ばっていた気持ちを吐き出した。

 

「おつかれ!みんなすごい強いじゃん、めちゃくちゃびっくりした」

 

「それはこっちのセリフです!なんですか、あの動き!目の前で消えてるし!」

 

「動きもそうですが、戦いに慣れてる方特有の仕草が多く見受けられます」

 

「えぇ…キヴォトス外から来た方とは到底思えませんでした」

 

「先生は本当に人間…ですよね?」

 

「人間だって、ちょっと力が強い」

 

「ちょっと……?」そんな目線を一身に受ける悠仁は笑って誤魔化す。ユウカの驚きもチナツの冷静な分析も、ハスミやスズミのような勘繰る発言全部が悠仁の戦闘後では仕方ない疑問だろう。続けざまにユウカは頬に朱色を散らして、腕を組んだ。後半に連れて影を落としながら。

 

「まぁ、その。先生がいてくれてほんとに助かりました。素手で戦ってたのは驚きでしたけどね。せめて銃は使うと思ったら、全然違うし。拳の方が強いってどういうことですか……」

 

「実際、撃つより速いし強かった気がしますよね…」

 

「……そのへんは、ちょっと昔に色々あって」

 

悠仁は気まずそうに頭をかく。深追いしようとしたユウカとスズミに、ハスミが手を置いて止める。

 

「やめておきましょう。訊かれたくない過去って、誰にでもありますから」

 

「……そうですね。ごめんなさい、先生。気を遣わせちゃって」

 

「ごめんなさい、先生」

 

「いや、気にすんなって。別に隠してるつもりもないし、ただちょっと」

 

そう言って肩をすくめる悠仁の顔に、軽い笑みが浮かんでいた。だがその瞳の奥に一瞬だけ陰が落ちたのを、誰もが気づいたわけではない。

各々が悠仁の異常な強さに対する認識を口にする中、全員に共通するのは悠仁が持つ異常的なまでの身体能力に対する畏怖と興味だろう。

連邦生徒会長が直々に指名し、超法規的措置と言われるシャーレの顧問なだけの実力は確かにあると、納得できるものが彼には備わっている。

 

だからこそ、超人じみた力があるゆえに彼を縛る抑止力になり得るかどうかの思いもあったが、彼の人となりを見たらその憂いも杞憂に終わるだろう。と。

 

「ま、とにかく全員無事でよかった。そろそろ向かおうぜ」

 

悠仁の言葉に、四人は力強く頷く。生徒達も皆、この先を不安に思うことは無い様子で悠仁を先頭に走った。戦闘に関しては、悠仁にとって得意分野。肉体労働は元より、呪術師として成る前からそれしか無かった。

 

むしろ、彼女達の隣に並ぶ為には必須の力だったのかもしれない。元より備わっていた才能は、かつての戦いが今の悠仁を作っている。たとえ、右を左も分からないとしても…培った経験さえあれば。

 

最良の選択肢を、今度こそ選ぶために。

 

『───小僧。せいぜい噛み締めろ』

 

考え、首を横に振る。後悔に濡れてしまった選択肢を選び続けた過去と、向き合って超えなきゃいけない。今の悠仁の中には悲劇を起こす存在は既にいない、しかし───逆を言えば「悠仁ではどうにも出来ない相手」が来た時、生徒を守れるかどうかだ。

 

当時は宿儺が居たからこそ、我武者羅に突き進んで……。でもその結果が、あの渋谷の事件を引き起こした。歪んだ終着点にした元凶は、己自身。宿儺は己が選んだ末に手に入れた悲劇の種でしか無かった。

 

先頭を走る悠仁の背中から、悲哀の念を感じ取ったユウカは呟く。

 

「先生?どうかされました?」

 

「───なんでもない」

 

ただ、出会った時から変わらない笑顔を見せて、前を向いた。先陣切るその背中は確かに頼もしく、大きい筈なのに───。大きなものを背負いすぎて、縮こまる少年のような淋しさを湛えているように見えた。

 

 

 





「やっぱ、一箇所に集めて飲み物ぐらいは置いといた方が良かったかな?」

「「「必要ないです」」」

とか言っちゃうんだろーなー!!悠仁は!!戦いには容赦ないけど、終わったあとの情けとか掛けちゃうんだよなぁきっと!ほんっとに罪な男すぎる!やだわぁそのまま情緒をぶち抜いてアゲていこうぜ!!

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